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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E21D
管理番号 1108667
審判番号 不服2004-3225  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-19 
確定日 2004-12-06 
事件の表示 平成11年特許願第347004号「推進管内走行車」拒絶査定不服審判事件〔平成13年6月19日出願公開、特開2001-164882〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年12月7日に出願された特願平11-347004号の特許出願であって、平成15年11月25日付の原審における拒絶理由通知に対して平成15年12月18日付で意見書が提出されて、平成16年1月19日付で拒絶査定がなされたところ、前記拒絶査定を不服として、平成16年2月19日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、平成16年3月8日付で明細書についての手続補正がなされたものである。

第2 平成16年3月8日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成16年3月8日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の発明
平成16年3月8日付の手続補正は、特許請求の範囲の【請求項1】の
「【請求項1】推進管内に敷設された枕木上に固定されて、等しい間隔をおいて延びる2本のレールの上に乗り、各レール上を少なくとも2個の車輪が転動して進行する走行車であって、上記各車輪が何れもトレッド面の両側に、トレッド面から突出するフランジを備えていることを特徴とする、推進管内走行車。」
の記載を、
「【請求項1】推進管内に敷設された枕木上に固定されて、等しい間隔をおいて延びる2本のレール上を進行する走行車であって、直角四辺形の台板の4隅にそれぞれ1個ずつの車輪を備えており、各レール上を2個の車輪が転動して進行する走行車において、上記各車輪が何れもトレッド面の両側に、トレッド面から突出するフランジを備えていることを特徴とする、推進管内走行車。」
と補正する(以下、この補正を「本件補正」という。)ものである。
しかして、上記本件補正は、請求項1に記載された発明特定事項である走行車について、「2本のレールの上に乗り、……進行する走行車であって、」を「2本のレール上を進行する走行車であって、直角四辺形の台板の4隅にそれぞれ1個ずつの車輪を備えており、」と限定し、また、同「少なくとも2個の車輪」を「2個の車輪」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、これを「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。

2.引用刊行物及び該引用刊行物に記載の事項
原審における拒絶査定の理由に引用された本願の特許出願前に頒布された刊行物である特許第2635925号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、「推進工法における走行台車及および軌条」に関し、次の事項が記載されている。
「【0003】図17および図18は、本出願人が先に出願した特願平5-119836号の推進工法を説明するための図面である。図17は推進工法によって掘削しているトンネルの平断面図で、図中1は地盤を掘削して設けた発進立坑、2はこの立坑1より所望の方向へ掘り進む掘進機、3はその後方に追従する測量管、4,(41,42,43…4n-1,4n,4n+1)は推進管で、これらの推進管4は立坑1内に設けた油圧ジャッキ5によって順次押し込まれる。
【0004】シールド掘進機2内には、図18に詳細に示すように、天井の2個所に受光器61,62が取り付けられており、また下方には傾斜計7が設置されている。また測量管3内には、前部の天井に掘進機検出装置8が取り付けられており、この掘進機検出装置8の下面にはラインレーザー光源9が突設されている。10は測長ワイヤであり、11は下方に設置された無線通信機、12はその後方に設けた充電器、13は制御装置であり、また63は後方の天井に取り付けた受光器である。
【0005】また14は、各推進管4内および測量管3内に設けた走行レールで、この走行レール14上に走行台車15が走行自在に設けられている。16は走行車輪、17は駆動装置、18は台車15上に設けたジャイロセンサー、19は走行距離計測装置、20はその走行距離検出部、21は台車15の後部に立設した平面鏡、22は測量プリズム、23は無線通信機、24は制御装置、25はバッテリー、26は立坑1内に設けた測距測角儀である。
【0006】そして走行台車15は、発進立坑1と測量管3の間の区間を往復走行し、両端の相対位置と姿勢を計測する。すなわち発進立坑1においては測距測角儀26をもって走行台車15が立坑1の付近において停止したときの位置と姿勢を計測した後、その走行台車15を切羽側へ走行させ、その走行距離と方向を連続的に計測しながら随時軌道を計算して走行台車15の停止位置を求め、測量管3内では掘進機検出装置8がそのレーザー光を回転させ掘進機2の位置と姿勢を計測するものである。」
「【0024】図5は本発明の第2発明を示すもので、14は2本のレール、29はこの発明の台車で、この走行台車29の車輪は少くとも3個とする。図5の場合、台車29の一側に2個の車輪32を設けると共に、台車29の他側に1個の車輪33を設けてある。本実施例においてはこれら3個の車輪の内、前後する2個の車輪32,32をそれぞれ図6(a),(b)に詳細に示すように、両鍔付き車輪にする。32aはその鍔部である。車輪33には鍔は設けず、通常のローラ形状にする。
【0025】このように前後する2個の車輪32,32を両鍔付き車輪にすると、この台車29はこの両鍔付き車輪32,32と、ガイドとなる1本のレール14によって横滑りを生じることなく正確に走行することができる。」
「【0037】また、図5に示すように、走行台車29の車輪を少くとも3個とし、その内前後する2個の車輪を両鍔付き車輪32とすれば、この両鍔付き車輪32がそれぞれレール14に対して横滑りを起こすことなく確実に追従するため、走行台車29の走行が正確となり、ひいては推進工法の精度も向上する。」
「【0042】【発明の効果】本発明は上述の通りであるから、推進工法における管路の線形が変化しても、その管路内を走行する台車の車輪の横滑りをなくすと共に、レールに対する追従性を正確にして台車の安定性を確保することにより、推進工法の性能を向上することができるという効果が得られる。」
そして、引用刊行物の図5には、枕木上に平行に敷設された二線式軌条の走行レール14上を走行する長方形の台板を備えた走行台車29の底面図が図示され、また、図6(a)及び図6(b)には、それぞれ両鍔付き車輪32の正面図と側面図が図示され、さらに図17及び図18には、「油圧ジャッキ5によって順次押し込まれる推進管4の管路内に固定される枕木上に二線式軌条のレール14が平行に敷設され、該レール14上を4個の車輪16を装備した走行台車15が走行自在に走行するようにしたトンネルの推進工法」の説明図が図示されている。

3.引用刊行物に記載の発明
引用刊行物には、図5に「平行に敷設される二線式軌条の走行レール14上を走行する長方形の台板を備えた走行台車29」が図示され、また、段落【0042】に「推進工法における管路の線形が変化しても、その管路内を走行する台車の車輪の横滑りをなくすと共に、レールに対する追従性を正確にして台車の安定性を確保することにより、推進工法の性能を向上することができるという効果が得られる。」と記載されていることからみて、引用刊行物における第2発明の走行台車29が、「油圧ジャッキ5によって順次押し込まれる推進管4の管路内に固定される枕木上に平行に敷設された二線式軌条のレール14上を走行自在に走行する、トンネルの推進工法に使用される推進管路内走行台車」であることは明らかである。
そうしてみると、上記引用刊行物における前記摘記事項及び添付図面における記載からみて、引用刊行物には、「油圧ジャッキ5によって推進管4が順次押し込まれる推進工法に用いられ、推進管4の管路内に固定される枕木上に平行に敷設された二線式軌条のレール14上を走行自在に走行する走行台車29であって、前記走行台車29は、その長方形の台板にレール14上を転動する少くとも3個の車輪を有し、その内の走行台車29の片側のレール上を転動する前後2個の車輪が、車輪の両側に突出する鍔部32aを有する両鍔付き車輪32である推進管路内走行台車」の発明(以下、これを「引用発明」という。)の記載が認められる。

4.対比及び一致点・相違点
ここで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「推進管4の管路内」「平行に敷設された二線式軌条のレール14」「走行台車29」「長方形の台板」「車輪の両側に突出する鍔部32aを有する両鍔付き車輪32」及び「推進管路内走行台車」が、本願補正発明の「推進管内」「等しい間隔をおいて延びる2本のレール」「走行車」「直角四辺形の台板」「車輪がトレッド面の両側に、トレッド面から突出するフランジを備えている」及び「推進管内走行車」にそれぞれ対応する。
してみると、本願補正発明と引用発明とは、「推進管内に敷設された枕木上に固定されて、等しい間隔をおいて延びる2本のレール上を進行する走行車であって、直角四辺形の台板に車輪を備えており、各レール上を車輪が転動して進行する推進管内走行車」である点で、両者の構成が一致し、次の点で相違する。
相違点: 本願補正発明の走行車が「直角四辺形の台板の4隅にそれぞれ1個ずつの車輪を備えており、各レール上を2個の車輪が転動し、上記各車輪が何れもトレッド面の両側に、トレッド面から突出するフランジを備えている」のに対し、引用発明の走行台車29は、長方形の台板に備える少くとも3個の車輪の内の片側のレール上を転動する前後2個の車輪が、車輪の両側に突出する鍔部32aを有する両鍔付き車輪32となっているものであって、直角四辺形の台板の4隅にそれぞれ1個ずつの車輪を備えているか否かが明確ではなく、また、各レール上を転動する各車輪が何れもトレッド面の両側に、トレッド面から突出するフランジを備えていない点。

5.判断
(1)相違点についての検討
直角四辺形の台板の各4隅にそれぞれ1個ずつの車輪を備え、2本のレール上を走行する走行体等の台車において、各レール上を2個の車輪が転動し、前記各車輪の何れもがトレッド面の両側にトレッド面から突出するフランジを備える両鍔付き車輪とすることにより、走行体等の台車の車輪がレールから脱輪することを防止する技術は、本願の特許出願時の周知・慣用技術(例えば、特開平8-53063号公報及び特開平9-272436号公報を参照)である。
そうしてみると、前記周知・慣用技術に基いて、引用発明における走行台車29を、直角四辺形の台板の各4隅にそれぞれ1個ずつの車輪を備え、2本のレール上を走行する走行体等の台車とし、かつ、各レール上を転動する2個の車輪の各車輪が何れもトレッド面の両側にトレッド面から突出するフランジを備える両鍔付き車輪とすることにより、本願補正発明の上記相違点に係る構成を得ることは、当業者が困難性を要せずに容易になし得ることである。
そして、本願補正発明の奏する作用・効果は、上記引用発明及び周知・慣用技術から予測できる範囲のものであって、格別顕著のものということができない。

(2)まとめ
したがって、本願補正発明は、上記引用刊行物に記載の発明(引用発明)及び周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成16年3月8日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、特許出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのもの(以下、これを「本願発明」という。)である。
「【請求項1】推進管内に敷設された枕木上に固定されて、等しい間隔をおいて延びる2本のレールの上に乗り、各レール上を少なくとも2個の車輪が転動して進行する走行車であって、上記各車輪が何れもトレッド面の両側に、トレッド面から突出するフランジを備えていることを特徴とする、推進管内走行車。」

2.引用刊行物及び該引用刊行物に記載の事項並びに引用発明
原審における拒絶査定の理由に引用された引用刊行物、及び前記引用刊行物に記載された事項は、前記「第2」の「2.引用刊行物及び該引用刊行物に記載の事項」欄に記載したとおりであり、また、引用刊行物に記載されている発明(引用発明)は、同「3.引用刊行物に記載の発明」欄に前記したとおりのものである。

3.対比・判断
本願補正発明の発明特定事項は、本願発明の発明特定事項である走行車について、「2本のレールの上に乗り、……進行する走行車であって、」を、本願補正発明の「2本のレール上を進行する走行車であって、直角四辺形の台板の4隅にそれぞれ1個ずつの車輪を備えており、」と限定的に減縮し、また、同「少なくとも2個の車輪」を「2個の車輪」と限定的に減縮する補正の結果によるものであるから、本願発明が本願補正発明の上位概念の発明であることは明らかである。
してみると、本願発明の下位概念の発明に当たる本願補正発明が、前記「二、」の「5.判断」欄に記載したとおり、引用刊行物に記載の発明(引用発明)及び周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願補正発明の上位概念に相当する発明特定事項からなる本願発明も、本願補正発明についての理由と同様の理由により、引用刊行物に記載の発明(引用発明)及び周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用刊行物に記載の発明及び周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-08 
結審通知日 2004-10-12 
審決日 2004-10-25 
出願番号 特願平11-347004
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E21D)
P 1 8・ 575- Z (E21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 勝治  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
佐藤 昭喜
発明の名称 推進管内走行車  
代理人 酒井 正美  

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