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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E21D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21D
管理番号 1111006
審判番号 不服2004-10772  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-24 
確定日 2005-02-04 
事件の表示 特願2000-141820「セグメントの継手装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月22日出願公開、特開2001-323788〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成12年5月15日に出願したものであって、平成16年3月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年6月18日受付けで手続補正がなされたものである。


【2】平成16年6月18日受付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年6月18日受付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
〔1〕補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「雄継手(2)を有する第1のセグメント(1)の接続面(11)に雌継手(15)を有する第2のセグメント(20)の接続面(22)をつき合せて第1のセグメント(1)と第2のセグメント(20)とを接続するためのセグメントの継手装置において、第1のセグメント(1)の接続面(11)に設けられた雄継手取付孔(13)にボルト状の頭部(4)を有する雄継手(2)が摺動自在に取り付けられ、第2のセグメント(20)の接続面(22)の雌継手(15)は雄継手(2)の頭部(4)が係止される係止部(17)と頭部(4)が挿入されこの頭部(4)を係止部(17)にガイドするガイド部(16)とを備え、前記雄継手(2)のねじ部(6)に螺合される雌ねじ(8a)を有するウオームホイルナット(8)はウオーム(W)と係合するウオームホイル部(8b)を有しており、そして第1のセグメント(1)には前記ウオーム(W)を挿入する駆動穴(3)がセグメントの内周から半径方向外方に成形されており、互いに離隔した前記接続面(11)と(12)との近接動作に応じて、雄継手(2)の頭部(4)が第2のセグメントのガイド部(16)によりガイドされて係止部(17)と係合してねじ部(6)の回転により第2のセグメント(20)を第1のセグメント(1)の方に引き込むことを特徴とするセグメントの継手装置。」(以下、「補正発明」という。尚、上記記載中、「接続面(11)と(12)」は、「接続面(11)と(22)」の明白な誤りである。)
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

〔2〕引用刊行物とそれに記載された技術事項
1.原査定における拒絶の理由で引用し、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平8-135385号公報(以下、「刊行物1」という。)には、シールドトンネル覆工用RCセグメントの埋込み継手に関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(1)「【請求項1】シールドトンネル覆工用RCセグメント内に埋め込まれて使用されるものであって、雌型嵌合体と、該雌型嵌合体に嵌合する雄型嵌合体と、該雄型嵌合体を該雌型嵌合体に向けて前進・後退させる駆動機構とを備え、前記雌型嵌合体は一方のRCセグメント内に設けられ、前記雄型嵌合体及び前記駆動機構は隣り合う他方のRCセグメント内に設けられ、前記雌型嵌合体と前記雄型嵌合体とは前記一対のRCセグメントの境界を介して対峙しており、前記駆動機構の操作部の少なくとも一部は前記他方のRCセグメントの内側の空間に露されていることを特徴とするシールドトンネル覆工用RCセグメントの埋込み継手。【請求項2】前記雄型嵌合体の先端には雄型嵌合部が設けられ、該雄型嵌合部の後側には棒状体が延設され、該棒状体にはネジ部及びウォームホイール部が形成され、該ねじ部はRCセグメントに直接又は他の部材を介してナット状金具に回転可能に支持され、該ウォームホイール部には前記駆動機構のウォームが歯合され、該ウォームには前記操作部が連結されていることを特徴とする請求項1記載の埋込み継手。【請求項3】前記ウォームホイール部には1個以上または一対のウォームが該ウォームホイールを挟持するように歯合していることを特徴とする請求項2記載の埋込み継手。【請求項4】前記一対のウォームは相互に逆回転するようになっていることを特徴とする請求項3記載の埋込み継手。【請求項5】前記雄型嵌合体は該雄型嵌合体を被覆するケース内に収納されていることを特徴とする請求項1〜4記載の埋込み継手。・・・【請求項8】前記操作部の端部が多角形になっていることを特徴とする請求項1〜7記載の埋込み継手。」(【特許請求の範囲】)
(2)「【産業上の利用分野】この発明は、地下鉄、道路、上下水道、電力、通信のとう道、共同溝などの建設に使用するシールドトンネル覆工用RCセグメント(RCセグメントを通常コンクリートセグメントと呼ぶこともある。)の継手に関するものである。」(段落【0001】)
(3)「【作用】請求項1記載の発明において、駆動機構の操作部を一方の方向に操作すると、駆動機構により雄型嵌合体が前進し、雌型嵌合体に嵌合する。駆動機構の操作部を他方の方向に操作すると、駆動機構により雄型嵌合体が後退し、雌型嵌合体が雄型嵌合体に引っ張られ、RCセグメントが雌型嵌合体とともに駆動機構側のRCセグメントに密着する。」(段落【0018】)
(4)「【実施例】図1はこの発明の一実施例に係る継手の部分斜視図、図2はRCセグメントの斜視図、図3及び図4はこの発明の一実施例に係る継手の側面図、図5はこの発明の一実施例に係る継手の平面図である。」(段落【0019】)
(5)「RCセグメント10は所定の厚さを有する矩形の板状体からなり、円筒の一部を形成するように円弧状に湾曲している。RCセグメント10の内部には、図1及び図2に示すように、この発明に係る継手20が埋め込まれた状態で設けられている。」(段落【0020】)
(6)「継手20は、雌型嵌合体22と、雌型嵌合体22に嵌合する雄型嵌合体24と、雄型嵌合体24を雌型嵌合体22に向けて前進・後退させる駆動機構26とからなる。」(段落【0021】)
(7)「雌型嵌合体22は一方のRCセグメント10内に設けられている。図3〜図5に示す雌型嵌合体22は洗濯ばさみ状のものからなるが、図6に示すような形状のものでももよい。雄型嵌合体24及び駆動機構26は隣り合う他方のRCセグメント10内に設けられている。雌型嵌合体22と雄型嵌合体24とは一対のRCセグメント10,10の境界を介して対峙している。」(段落【0022】)
(8)「雄型嵌合体24の先端には雄型嵌合部28が設けられ、雄型嵌合部28の後側には棒状体30が延設され、棒状体30にはネジ部32及びウォームホイール部34が形成され、ネジ部32はナット状金具36に回転可能に支持され、ウォームホイール部34には駆動機構26のウォーム38,38が歯合し、ウォーム38,38には操作部40が連結されている。」(段落【0023】)
(9)「ウォームホイール部34には一対のウォーム38,38がウォームホイール部34を挟持するように歯合している。この一対のウォーム38,38は相互に逆回転するようになっている。ナット状金具36は後述するケースに支持されている。」(段落【0024】)
(10)「雄型嵌合体24及び駆動機構26はこれらを被覆するケース42内に収納され、RCセグメント10を形成するコンクリートから保護されている。ケース42はRCセグメント10内に固定されたアンカー44に連結支持されている。」(段落【0025】)
(11)「駆動機構26の操作部40の少なくとも一部は他方のRCセグメント10の内側の空間に露されている。操作部40の端部は機械で回転させ易いように多角形になっている。」(段落【0026】)
(12)「次に、この埋込み継手の動作について説明する。まず、トンネル内にRCセグメント10をトンネルの壁面に沿って円筒状に仮組みする。」(段落【0027】)
(13)「次に、トンネルの内側から操作部40の端部に回転装置(図示せず)を嵌合させ、回転装置を一方の方向に回転させ、操作部40を矢印Aで示す方向に回転させると、ウォーム38,38が矢印a,bで示す方向に回転する。なお、この回転のために1個以上の歯車をウォーム38,38間に使用する(図示せず)。ウォーム38,38が矢印a,bで示す方向に回転すると、ウォームホイール部34が矢印Bで示す方向に回転し、雄型嵌合体24がネジ部32をナット状金具36内で回転させながら矢印Cで示す方向に前進する。雄型嵌合体24の雄型嵌合部28が雌型嵌合体22に当接すると、雌型嵌合体22の開口部22aが開き、雌型嵌合体22の開口部22aに雄型嵌合体24の雄型嵌合部28が嵌合する。」(段落【0028】)
(14)「次に、回転装置を逆の方向に回転させ、操作部40を矢印Aで示す方向と逆の方向に回転させると、ウォーム38,38が矢印a,bで示す方向と逆の方向に回転し、ウォームホイール部34が矢印Bで示す方向と逆の方向に回転し、雄型嵌合体24がネジ部32をナット状金具36内で逆転させながら後退し、雌型嵌合体22は雄型嵌合体24に引っ張られ、雌型嵌合体22側のRCセグメント10は駆動機構26側のRCセグメント10に引っ張られ、駆動機構26側のRCセグメント10に密着・連結する。」(段落【0029】)
(15)「【発明の効果】この発明によれば、セグメントの内周面から駆動機構を駆動させて、雌型嵌合体に雄型嵌合体を嵌合させることができるので、RCセグメントの組み立ての機械化が可能になるという効果がある。」(段落【0030】)
これら(1)〜(15)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「雄型嵌合体24を有する他方のRCセグメント10の境界面に雌型嵌合体22を有する一方のRCセグメント10の境界面をつき合せて他方のRCセグメント10と一方のRCセグメント10とを接続するためのRCセグメントの埋込み継手20において、他方のRCセグメント10の境界面に設けられたケース42内に雄型嵌合部28を有する雄型嵌合体24が摺動自在に取り付けられ、一方のRCセグメント10の境界面の雌型嵌合体22は雄型嵌合体24の雄型嵌合部28が係止される開口部22aを備え、前記雄型嵌合体24の棒状体30は、そのネジ部32を介してナット状金具36に回転可能に支持され、そのウォームホイール部34に螺合されるウオーム38は操作部40との係合部分を有しており、そして他方のRCセグメント10には前記操作部40を挿入する穴がセグメントの内周から半径方向外方に成形されており、互いに離隔した前記境界面相互の近接動作に応じて、雄型嵌合体24の雄型嵌合部28が一方のRCセグメント10の開口部22aと係合して棒状体30の回転により一方のRCセグメント10を他方のRCセグメント10の方に引き込むRCセグメントの埋込み継手20。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

2.同じく、実公昭62-6984号公報(以下、「刊行物2」という。)には、アクチユエータに関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(1)「出力軸たるねじ棒を螺合進退させるためのナツト状のドライブスリーブの外周に、当該ドライブスリーブに回転力を付与するための伝動ホイールを着脱可能に装着したものにおいて、・・・このドライブスリーブの中間部外周に前記伝動ホイールをトルク伝達機構を介して空転不能に嵌合させ、・・・ていることを特徴とするアクチユエータ。」(実用新案登録請求の範囲)
(2)「この種のアクチユエータは、出力軸たるねじ棒をナツト状のドライブスリーブに螺合させるとともに、このドライブスリーブの外周にウオームホイールその他の伝動ホイールを設けておき、前記ドライブスリーブを前記伝動ホイールを介して電動機等によつて回転駆動することによつて前記ねじ棒を螺合進退させ、このねじ棒の先端で弁の開閉等を行わせるようにしたものが一般的である。」(1頁2欄1〜8行)
(3)「出力軸たるねじ棒1をナツト状のドライブスリーブ2の内周に設けた送りねじ部2aに螺合させるとともに、このドライブスリーブ2の外周に伝動ホイール、例えば、ウオームホイール3を着脱可能に装着し、前記ドライブスリーブ2を前記ウオームホイール3および当該ウオームホイール3に噛合させたウオーム4を介して図示しない電動機により回転駆動することによつて、前記ねじ棒1を軸心方向に進退させるようにしている。」(2頁4欄15〜23行)
これら(1)〜(3)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物2には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「ねじ棒1に螺合される送りねじ部2aを有するドライブスリーブ2の外周に、ウオームホイール3を、トルク伝達機構を介して空転不能に嵌合させ、ウオームホイール3に噛合させたウオーム4を回転駆動することにより、ドライブスリーブ2及びウオームホイール3を介してねじ棒1を軸心方向に進退させるようにしたアクチユエータ。」

3.同じく、特開2000-54795号公報(以下、「刊行物3」という。)には、セグメントに関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(1)「【発明の実施の形態】以下、本発明のセグメントの実施の形態を図によって説明する。図1及び図2において、符号1はセグメントである。このセグメント1は、平面視矩形状に形成されたコンクリート製のセグメントであり、掘削穴の周方向への接合端面である周方向接合端面2同士を接合させるとともに掘削穴の軸方向への接合端面である軸方向接合端面3同士を接合させることにより、これらセグメント1からなる筒状壁体Tが掘削穴内に構築されるようになっている。」(段落【0012】)
(2)「次に、これらセグメント1の互いの周方向接合端面2・・・同士の接合構造について説明する。」(段落【0013】)
(3)「(掘削穴周方向への接合構造)このセグメント1は、図3に示すように、周方向接合端面2の一方が雄側周方向接合端面(一方の周方向接合端面)2aとされ他方が雌側周方向接合端面(他方の周方向接合端面)2bとされている。雄側周方向接合端面2aには、図4に示すように、複数の雄継手4が設けられ、雌側周方向接合端面2bには、図5に示すように、雄継手4と同数の雌継手5が設けられている。」(段落【0014】)
(4)「雄継手4は、図6及び図7に示すように、略中心に孔部6が形成されたベース板7と、・・・ベース板7の表面側から孔部6へ挿通されておねじ部10aを袋ナット8のめねじ部8aへ締結させることによりベース板7から突出された状態に固定されたボルト(棒体)10とを有するもので、・・・。」(段落【0015】)
(5)「また、ボルト10には、ベース板7側から順に、円筒状に形成されたスペーサ12、平ワッシャ13、複数の皿バネ(弾性部材)14が設けられており、平ワッシャ13、皿バネ14及びボルト10のヘッド(大径部)15から、後述する雌継手5の係止板23へ係止する係止部16が構成されている。そして、上記構造の係止部16の平ワッシャ13とベース板7の表面との間隔がスペーサ12によって所定寸法にされている。」(段落【0016】)
(6)「雌継手5は、切欠部22が形成された係止板23を有するもので、・・・この雌継手5の係止板23の切欠部22は、その端部近傍が端部方向へ次第に広がるテーパ状に形成され、さらに、切欠部22の端部近傍における係止板23の裏面側には、端部から次第に厚さを増す方向に傾斜したテーパ面27が形成されている。」(段落【0018】)
(7)「・・・この雌継手5が設けられた雌側周方向接合端面2bには、雌継手5の、係止板23の切欠部22側に凹部28が形成されている。」(段落【0019】)
(8)「上記構造の雄継手4と雌継手5とを接合させる際には、雌継手5の側部に形成された凹部28に雄継手5のボルト10を配設させるように、セグメント1の雄側周方向接合端面2aと雌側周方向接合端面2bとを互いに当接させた状態にてスライドさせて、雌継手5を構成する係止板23の切欠部22に雄継手4を構成するボルト10を嵌合させる。」(段落【0020】)
(9)「このようにすると、ボルト10の係止部16を構成する平ワッシャ13が係止板23のテーパ面27に当接し、このテーパ面27の傾斜方向へ案内されて係止板23の裏面側へ入り込む。・・・。」(段落【0021】)
これら(1)〜(9)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物3には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「セグメント1,1の互いの周方向接合端面2同士の接合構造であって、一方のセグメント1の雄側周方向接合端面2aにおいては、ベース板7の略中心に形成した孔部6に、ヘッド(大径部)15を有し平ワッシャ13等を装着したボルト(棒体)10が取り付けられて係止部16が形成され、他方のセグメント1の雌側周方向接合端面2bにおいては、切欠部22が形成された係止板23を有する雌継手5が取り付けられるとともに該係止板23の切欠部22側に凹部28が設けられて雌継手が形成され、係止部16と雌継手とを接合させる際に、係止部16のヘッド(大径部)15等が、雌継手の凹部28により案内されて係止板23の切欠部22に係合するようにした、セグメント接合構造。」

〔3〕対比・判断
1.補正発明と刊行物記載の発明との対比
そこで、補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「雄型嵌合体24」,「他方のRCセグメント10」,「他方のRCセグメント10の境界面」,「雌型嵌合体22」,「一方のRCセグメント10」,「一方のRCセグメント10の境界面」,「RCセグメントの埋込み継手20」,「ケース42内」,「雄型嵌合部28」,「開口部22a」が、補正発明の「雄継手(2)」,「第1のセグメント(1)」,「第1のセグメント(1)の接続面(11)」,「雌継手(15)」,「第2のセグメント(20)」,「第2のセグメント(20)の接続面(22)」,「セグメントの継手装置」,「雄継手取付孔(13)」,「頭部(4)」,「係止部(17)」にそれぞれ相当し、
そして、刊行物1記載の発明の「雄型嵌合体24」の「棒状体30」と、補正発明の「雄継手(2)」の「ねじ部(6)」を有する部分とは、「雄型嵌合体24」或いは「雄継手(2)」の「棒状部」である点で技術的に共通し、
また、刊行物1記載の発明の上記「棒状体30」の「ウォームホイール部34」に螺合される「ウオーム38」と該「ウオーム38」に係合する「操作部40」とからなる機構と、補正発明の上記「ねじ部(6)」に螺合される「雌ねじ(8a)」及び「ウオーム(W)と係合するウオームホイル部(8b)」を有する「ウオームホイルナット(8)」と該「ウオームホイルナット(8)」の「ウオームホイル部(8b)」に係合する「ウオーム(W)」とからなる機構とは、「雄型嵌合体24」或いは「雄継手(2)」の「駆動機構」である点で技術的に共通し、
さらに、刊行物1記載の発明の上記「操作部40」と、補正発明の上記「ウオーム(W)」とは、上記「駆動機構」の「駆動部材」である点で技術的に共通し、刊行物1記載の発明の上記「操作部40」を挿入する「穴」と、補正発明の上記「ウオーム(W)」を挿入する「駆動穴(3)」とは、「駆動穴」である点で技術的に共通するものと云えるから、両者は、
「雄継手を有する第1のセグメントの接続面に雌継手を有する第2のセグメントの接続面をつき合せて第1のセグメントと第2のセグメントとを接続するためのセグメントの継手装置において、第1のセグメントの接続面に設けられた雄継手取付孔に頭部を有する雄継手が摺動自在に取り付けられ、第2のセグメントの接続面の雌継手は雄継手の頭部が係止される係止部を備え、前記雄継手の駆動機構を有しており、そして第1のセグメントには前記駆動機構の駆動部材を挿入する駆動穴がセグメントの内周から半径方向外方に成形されており、互いに離隔した前記接続面相互の近接動作に応じて、雄継手の頭部が第2のセグメントの係止部と係合して棒状部の回転により第2のセグメントを第1のセグメントの方に引き込むセグメントの継手装置。」(但し、符号を省略して記載する。「〔3〕対比・判断」の項における、以下の記載においても、同様。)の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
「雄継手」の「頭部」に関して、補正発明が、「ボルト状の」ものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、そのようなものであるのか否か定かでない点。
<相違点2>
「雌継手」に関して、補正発明が、「頭部が挿入されこの頭部を係止部にガイドするガイド部を備え」たものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、そのようなガイド部を備えたものであるのか否か定かでない点。
<相違点3>
「駆動機構」に関して、補正発明が、「雄継手のねじ部に螺合される雌ねじ」及び「ウオームと係合するウオームホイル部」を有する「ウオームホイルナット」と、該「ウオームホイルナット」の「ウオームホイル部」に係合してこれを駆動する「ウオーム」とからなるのに対し、刊行物1記載の発明は、「雄継手」(「雄型嵌合体」)の「ウォームホイール部」に螺合される「ウオーム」と、該「ウオーム」に係合してこれを駆動する「操作部」とからなるものであり、補正発明とは、別異の「駆動機構」を構成している点。

2.相違点についての検討
<相違点1,2について>
相違点1,2について検討するために刊行物3をみると、刊行物3には、上記したような「セグメント接合構造」の発明が記載されており、刊行物3記載の発明の「一方のセグメント1」,「雄側周方向接合端面2a」,「孔部6」,「ヘッド(大径部)15」,「係止部16」,「他方のセグメント1」,「雌側周方向接合端面2b」が、補正発明の「第1のセグメント」,「接続面」,「雄継手取付孔」,「ボルト状の頭部」,「雄継手」,「第2のセグメント」,「接続面」に相当し、また、刊行物3記載の発明の「雌継手5」及び「凹部28」からなる「雌継手」が、補正発明の「雌継手」に相当し、さらに、刊行物3記載の発明の「雌継手」における「凹部28」が、補正発明の「ガイド部」に相当することが明らかであり、したがって、刊行物3には、補正発明における相違点1に係る技術事項である「ボルト状の頭部を有する雄継手」の構成、及び、同、相違点2に係る技術事項である「頭部が挿入されこの頭部を係止部にガイドするガイド部を備えた雌継手」の構成が記載されていることになるから、補正発明における相違点1,2に係る技術事項は、何れも、刊行物1,3記載の発明から当業者が容易に想到し得たものと認められる。
<相違点3について>
相違点3について検討するために刊行物2をみると、刊行物2には、上記したような「アクチユエータ」の発明が記載されており、該「アクチユエータ」は、「ウオームホイール3に噛合させたウオーム4を回転駆動することにより、ドライブスリーブ2及びウオームホイール3を介してねじ棒1を軸心方向に進退させるようにした」ものであるところ、刊行物2記載の「アクチユエータ」の技術が、請求人が主張するように、「バルブの開閉等に使用されるアクチユエータであって、引用例1のシールドトンネル覆工用RCセグメントの埋込み継手とは、技術分野を全く異にするもの」(請求書、(4)(b)参照。)であるとしても、刊行物1記載の発明における棒状の部材である「雄型嵌合体24」の軸心方向への進退機構として該技術を用いることに、格別の技術的困難性、及び、何らの適用阻害要因を認めることができないものであり、そして、刊行物2記載の発明の「ねじ棒1」,「送りねじ部2a」,「ドライブスリーブ2及びウオームホイール3」,「ウオーム4」が、補正発明の「ねじ部」,「雌ねじ」,「ウオームホイルナット」,「ウオーム」に相当することが明らかであり、したがって、刊行物2には、補正発明における相違点3に係る技術事項である「ねじ部に螺合される雌ねじ」及び「ウオームと係合するウオームホイル部」を有する「ウオームホイルナット」と、該「ウオームホイルナット」の「ウオームホイル部」に係合してこれを駆動する「ウオーム」とからなる「駆動機構」の構成が記載されていることになるから、補正発明における相違点3に係る技術事項は、刊行物1,2記載の発明から当業者が容易に想到し得たものと認められる。

3.まとめ
そして、補正発明によって奏する効果も、刊行物1〜3記載の発明から普通に予測できる範囲内のものであって、格別なものがあるとは認められないから、補正発明は刊行物1〜3記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものと云わざるを得ない。

〔4〕むすび
したがって、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。
以上のように、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。


【3】本願発明について
〔1〕本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成16年6月18日受付けの手続補正が上記のとおり却下されたので、平成16年3月1日受付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「雄継手(2)を有する第1のセグメント(1)の接続面(11)に雌継手(15)を有する第2のセグメント(20)の接続面(22)をつき合せて第1のセグメント(1)と第2のセグメント(20)とを接続するためのセグメントの継手装置において、第1のセグメント(1)の接続面(11)に設けられた雄継手取付孔(13)にボルト状の頭部(4)を有する雄継手(2)が摺動自在に取り付けられ、第2のセグメント(20)の接続面(22)の雌継手(15)は雄継手(2)の頭部(4)が挿入されるガイド部(16)と係止部(17)とを備え、前記雄継手(2)のねじ部(6)に螺合される雌ねじ(8a)を有するウオームホイルナット(8)はウオーム(W)と係合するウオームホイル部(8b)を有しており、そして第1のセグメント(1)には前記ウオーム(W)を挿入する駆動穴(3)がセグメントの内周から半径方向外方に成形されており、雄継手(2)の頭部(4)が第2のセグメントのガイド部(16)から挿入されて係止部(17)と係合してねじ部(6)の回転により第2のセグメント(20)を第1のセグメント(1)の方に引き込むことを特徴とするセグメントの継手装置。」(以下、「本願発明」という。)

〔2〕引用刊行物とそれらに記載された事項
これに対し、原査定における拒絶の理由で引用し、本願出願前に日本国内において頒布された引用刊行物の記載事項は、上記【2】〔2〕に記載したとおりである。

〔3〕対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明において、「頭部(4)が係止される係止部(17)と頭部(4)が挿入されこの頭部(4)を係止部(17)にガイドするガイド部(16)」を、「頭部(4)が挿入されるガイド部(16)と係止部(17)」に変更し、また、「互いに離隔した前記接続面(11)と(12)との近接動作に応じて、雄継手(2)の頭部(4)が第2のセグメントのガイド部(16)によりガイドされて係止部(17)と係合し」を、「雄継手(2)の頭部(4)が第2のセグメントのガイド部(16)から挿入されて係止部(17)と係合し」に変更するものである。
そうすると、本願発明の技術事項を全て含む補正発明が、上記【2】〔3〕に記載したとおり、刊行物1〜3記載の発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も、刊行物1〜3記載の発明に基づき当業者が容易に発明できたものと云わざるを得ない。

〔4〕むすび
したがって、本願発明は、刊行物1〜3記載の発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-08 
結審通知日 2004-12-08 
審決日 2004-12-21 
出願番号 特願2000-141820(P2000-141820)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E21D)
P 1 8・ 575- Z (E21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 勝治  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 南澤 弘明
新井 夕起子
発明の名称 セグメントの継手装置  
代理人 高橋 敏忠  
代理人 高橋 敏邦  

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