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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1111198
異議申立番号 異議2003-73149  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-22 
確定日 2005-01-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第3418549号「有機性汚水の処理方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3418549号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第3418549号(平成10年4月30日出願、平成15年4月11日設定登録)の請求項1〜5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、適宜「本件発明1」という)は、次のとおりである。
「【請求項1】カルシウムを含んだ有機性汚水に対して少なくとも、炭酸ソーダを用いたカルシウム除去処理と生物処理と凝集沈殿処理と砂濾過処理と活性炭吸着処理とをこの順に行って、浄化された処理水を得るとともに、前記カルシウム除去処理で発生したカルシウム含有汚泥と、前記生物処理および凝集沈殿処理で発生した汚泥を濃縮した濃縮汚泥とを別途に汚泥脱水機によって脱水し、系外へ搬出される脱水汚泥となすことを特徴とする有機性汚水の処理方法。」
2.申立て理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1〜2号証を提出して、本件請求項1に係る発明は甲第1〜2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
3.甲第1〜2号証の記載内容
甲第1号証:「エバラ時報 第169号」株式会社荏原製作所(1995年10月20日発行)第51〜55頁
甲第1号証には、「一般廃棄物最終処分場浸出水」を処理する(第51頁第1行)こと、その処理内容は「カルシウム除去処理、生物処理、凝集沈殿処理、砂ろ過処理、活性炭吸着処理」である(第51頁左欄第15〜17行)こと、その処理順序は前記したとおりの順序で行って処理水を得る(図1)こと、「炭酸ナトリウムを用いてカルシウムを除去処理する」(第53頁左欄第14〜21行)こと、「カルシウム除去処理で発生したCa汚泥と凝集沈殿処理で発生した凝沈汚泥を濃縮した凝沈濃縮汚泥とを脱水機によって脱水して系外へ搬出する脱水汚泥とする」(図1)ことが記載されているから、「炭酸ナトリウムを用いたカルシウム除去処理、生物処理、凝集沈殿処理、砂ろ過処理、活性炭吸着処理とをこの順に行って処理水を得るともに、カルシウム除去処理で発生したCa汚泥と凝集沈殿処理で発生した凝沈汚泥を濃縮した凝沈濃縮汚泥とを脱水機によって脱水して系外へ搬出する脱水汚泥とする一般廃棄物最終処分場浸出水の処理方法」という発明(以下、適宜「甲1発明」という)が記載されていると云える。
甲第2号証:パンフレット「岡山市山上最終処分場」岡山市(平成7年5月発行)第1〜4頁
甲第2号証には、第2〜3頁のフローシートの記載から「埋立処分地浸出水に対して、炭酸ソーダを用いたカルシウム沈殿処理、生物処理、凝集沈殿処理、砂ろ過処理、活性炭吸着処理とをこの順に行い、カルシウム沈殿処理で発生したCa汚泥と凝集沈殿処理で発生した凝沈汚泥を濃縮した凝沈濃縮汚泥とを脱水機によって脱水して脱水汚泥とする」ことが記載されていると云える。
4.対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「炭酸ナトリウム」は本件発明1の「炭酸ソーダ」に、同じく「Ca汚泥」は「カルシウム含有汚泥」、「脱水機」は「汚泥脱水機」にそれぞれ相当し、また、甲1発明の一般廃棄物最終処分場浸出水はカルシウム除去処理、生物処理、凝集沈殿処理、砂濾過処理、活性炭吸着処理されて浄化された処理水が得られることは明らかであるから、両者は「被処理水に対して少なくとも、炭酸ソーダを用いたカルシウム除去処理と生物処理と凝集沈殿処理と砂濾過処理と活性炭吸着処理とをこの順に行って、浄化された処理水を得るとともに、前記カルシウム除去処理で発生したカルシウム含有汚泥と、濃縮汚泥とを汚泥脱水機によって脱水し、系外へ搬出される脱水汚泥となす、被処理水の処理方法」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:被処理水が、本件発明1はカルシウムを含んだ有機性汚水であるのに対し、甲1発明は一般廃棄物最終処分場浸出水である点。
相違点2:濃縮汚泥が、本件発明1は生物処理および凝集沈殿処理で発生した汚泥を濃縮したものであるのに対し、甲1発明は凝集沈殿処理で発生した凝沈汚泥を濃縮した凝沈濃縮汚泥である点。
相違点3:濃縮汚泥とカルシウム含有汚泥との脱水を、本件発明1は別途に脱水しているのに対し、甲1発明は別途か否か不明である点。
そこで、先ず相違点2について検討する。
この相違点に関して、異議申立人は、甲第1〜2号証記載の「生物処理した後の全混合物を凝集沈殿処理し、その凝集沈殿処理で発生した凝沈汚泥」は本件発明1の発明特定事項である「生物処理および凝集沈殿処理で発生した汚泥」に相当すると主張しているので、この点について検討する。本件発明1の前記発明特定事項は、文法上からも発明の詳細な説明段落【0022】の「生物処理設備13および凝集沈殿設備14で発生した汚泥」の記載及び図1に生物処理設備13から汚泥を取り出すように図示されていることを参酌しても「生物処理で発生した汚泥および凝集沈殿処理で発生した汚泥」と解するのが相当である。一方、甲第1〜2号証には「生物処理で発生した汚泥」について認識されておらず、仮に、事実上生物処理で汚泥が発生しているとしても、「生物処理で発生した汚泥を凝集沈殿処理した汚泥」であり、「生物処理で発生した汚泥」とは云えない。
してみれば、甲第1〜2号証には「凝集沈殿処理で発生した凝沈汚泥を濃縮して凝沈濃縮汚泥とする」ことは記載されているが、「生物処理および凝集沈殿処理で発生した汚泥を濃縮して濃縮汚泥とする」点は記載乃至示唆されていない。
また、一般的に、生物処理の単一処理において生物処理で発生した汚泥を分離し、一部を返送し、残りの余剰汚泥を濃縮することは慣用手段であるが、生物処理の単一処理におけるものであるから、本件発明1の生物処理と凝集沈殿処理の連続処理における生物処理および凝集沈殿処理で発生した汚泥を濃縮することは直ちには導き出すことはできない。
そして、本件発明1は、前記の点により、脱水効率の向上等の明細書記載(明細書段落【0033】)の効果を奏するものである。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲第1〜2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
5.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-01-11 
出願番号 特願平10-119790
審決分類 P 1 652・ 121- Y (C02F)
最終処分 維持  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 中村 泰三
西村 和美
登録日 2003-04-11 
登録番号 特許第3418549号(P3418549)
権利者 株式会社クボタ
発明の名称 有機性汚水の処理方法  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 森本 義弘  

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