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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B23F
管理番号 1111841
審判番号 無効2003-35063  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-02-18 
確定日 2004-12-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3165658号発明「歯車加工方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3165658号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件特許第3165658号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成9年6月6日(優先権主張同9年4月10日)に出願され、拒絶の理由の通知に対して、同12年5月1日に明細書の補正がなされ、同13年3月2日にその発明について特許権の設定の登録がされ、これに対し、同13年6月29日及び同13年10月25日に異議の申立てがされ、取消しの理由の通知に対して同14年5月27日に訂正請求がなされ、同14年11月21日に訂正を認め、請求項1及び2に係る特許を維持する旨の異議の決定がされたものである。
2 これに対して、請求人は、本件の請求項1に係る特許は、特許法第17条の2第3項及び第126条第2項の規定に違反してなされたものであるので無効であり、また、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項及び第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであるので無効である旨主張している。
3 当審では、平成15年6月27日に、本件の請求項1及び2に係る発明は、本件出願の優先権主張日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用例1(「GEAR TECHNOLOGY 」,NOVEMBER/DECEMBER 1994,p.26-30(請求人が証拠として提出した甲第4号証参照))、引用例2(「三菱重工技報」,Vol.32,No.6,1995年11月号,p.411-414(同甲第8号証))、引用例3(「機械技術」,第44巻第9号,1996年9月1日,日刊工業新聞社,p.61-64(同甲第9号証))、引用例4(「日本機械学会講演論文集」,No.800-6(’80-4,第5期通常総会・機械工作,金属加工,機素,潤滑他),p.101-103,1101 高速度鋼ホブによる高速ホブ切りの研究-主としてホブの刃先形状の影響について-(同甲第10号証))、引用例5(「日本機械学会講演論文集(C編)」,48巻436号(昭57-12),p.375-381,高速度鋼ホブによる高速ホブ切の研究(第1報,平歯車のホブ切におけるホブの損傷ついて)(同甲第11号証))、引用例6(日本機械学会講演論文集(C編),48巻436号(昭57-12),p.383-391,高速度鋼ホブによる高速ホブ切の研究(第2報,はすば歯車のホブ切におけるホブの損傷について)(同甲第12号証))、引用例7(「日本機械学会講演論文集,No.788-3(78-10,九州支部・中国四国支部合同企画 佐賀地方講演会),p.114-116,213 高速度鋼ホブによる高速ホブ切りの研究-特に水溶性切削油剤の効果について-(同甲第13号証))に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により無効とすべきものである旨の無効理由を通知した。
4 これに対して、被請求人より、その指定期間内である平成15年8月26日に訂正請求がなされたものである。

第2 平成15年8月26日になされた訂正請求による訂正の可否に対する判断
1 訂正の内容
上記訂正請求による訂正の内容は、次のとおりのものである。
(1) 訂正事項a
願書に添付した明細書(上記異議の決定において訂正が認められた平成14年5月27日付訂正請求書に添付された訂正明細書)の特許請求の範囲の請求項1に記載された切削速度の範囲である
「120m/minをこえて400m/min以下」を、
「180m/min以上400m/min以下」と訂正する。
(2) 訂正事項b
願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0010】及び【0048】に記載された切削速度の範囲である
「120m/minをこえて400m/min以下」を、
「180m/min以上400m/min以下」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1) 訂正事項aについて
ア 目的の適否
訂正事項aは、請求項1における切削速度の範囲を「120m/minをこえて400m/min以下」から、それより狭い範囲である「180m/min以上400m/min以下」に限定しようとするものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
イ 新規事項の有無
願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0017】に、「切削速度80m/minから切削速度180m/minまで高めていくと、逃げ面摩耗は減少し、また、広いxの値の範囲でホブ16の摩耗が実用摩耗限界を下回る。切削速度を180m/minより高めていくと、逃げ面摩耗は増加していく。」と記載され、段落【0022】に、「切削速度を180m/minで逃げ面摩耗が最も少なくなる。」と記載され、願書に添付した図面である図2乃至4に切削速度を180m/minとしたときのグラフが示されていることより、願書に添付した明細書又は図面には、切削速度を180m/minとする実施例が記載されていると認められる。
したがって、切削速度の下限を180m/minとし、切削速度の範囲を「180m/min以上400m/min以下」とする訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。
ウ 拡張・変更の存否
訂正事項aの訂正によって発明の目的が変更されるのものでもないので、訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項bについて
訂正事項bは、訂正事項aで訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるためのものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおりであるので、上記訂正は、特許法第134条第2項並びに同条第5項の規定によって準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件発明に対する判断
1 本件発明
上記のとおり、訂正が認められたので、本件の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、平成15年8月26日付訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
高速度工具鋼製の刃部を備えたホブを用いて歯形を創成する歯車加工方法において、
前記ホブとして、
(Ti(1-x)Alx)(NyC(1-y))
0.2 ≦x≦0.85
0.25≦y≦1.0
なる組成の膜を少なくとも一層コーティングしたホブを用い、
切削速度を180m/min以上400m/min以下の範囲とし、
切削油剤を用いずに切削を行なうドライカットで歯形を創成することを特徴とする歯車加工方法。
【請求項2】
請求項1において、切削部にエアを吹き付けて歯形を創成することを特徴とする歯車加工方法。」
2 引用例記載事項
上記引用例1、2、4及び6には、次の事項が記載されていると認める。
(1) 引用例1
ア 第29頁右欄第7行-第30頁左欄第3行
「チタニウムナイトライドは多くの用途があるが、最近のコーティングの幾つかは、用途が特定されている。例えば、TiCNは、TiNが許容できるレベルとならない擦過性の強い領域(鋳鉄加工)では有望である。一方、TiCNは、高速度が試みられる場合に、温度に敏感である。温度が問題となる場合は、TiAlNがより良い選択であり得る。まさにこの理由で、高速度工具鋼にTiAlNを被覆したホブでドライホブ切りしたいくつかの業績がある。」
イ 第30頁左欄第15-44行
「最後に探索すべきは、最近なされた、ギヤのドライホブ切りの業績である。この主題については、開発された多数の分野があるが、共通の目的は、クーラントを使用することなくギヤのホブ切りを行うことである。クーラントを使用することなくギヤのホブ切りを行う利点は多いが、とりわけ以下の費用のコストダウンを含む。
・・・新たなコーティングに関する実際の解決策は、用途に依存することになろう。このテクノロジーを開発するための基本的な方法は、
・高速度工具鋼製ホブ
・超硬製ホブ
・サーメット製ホブ
に分類することが可能である。
(ドライホブ切りに)最初に成功したのは、TiAlNを被覆した高速度工具鋼製ホブである。この例の材料の除去率は、高切削速度かつ低速送りの超硬製ホブのホブ切りに相当する。工具寿命は、TiNを被覆した工具でクーラントを使用したものより、良い方であった。」
上記記載事項より、引用例1には、次の「歯車加工方法」の発明が記載されていると認める。
高速度工具鋼製の刃部を備えたホブを用いて歯形を創成する歯車加工方法において、
前記ホブとして、TiAlNなる組成の膜を少なくとも一層コーティングしたホブを用い、
切削油剤を用いずに切削を行なうドライカットで歯形を創成する歯車加工方法。
(2) 引用例2
ア 第412頁左欄第2-4行
「2.1 高速・高剛性化
超硬ホブで焼入れ前ワークのむく切りをする場合、切削速度は250〜400m・min-1が工具寿命に最適である.」
イ 第412頁左欄下から第14-9行
「2.3ドライカット対応
・・・一方では切削油剤による加工熱の除去作用がなくなるためワーク温度が上昇する.また,飛散する高温の切くずにより機械温度が局所的に上昇する.そこで,冷却したエアを加工部に吹付けワークの冷却と切りくずの排出を行った.」
ウ 第412頁右欄第1-3行
「3.1 生産性の向上
超硬ホブ切りでは切削速度を従来のハイスホブ切りに対し2〜3倍高速化できる。」
上記記載事項より、引用例2には、ドライカットによる歯形を創成する歯車加工方法において、切削部にエアを吹き付ける、及び、超硬製の刃部を備えたホブを用いてドライカットで歯形を創成するときの切削速度を高速化し、250〜400m/minとするという技術事項が記載されていると認める。
(3) 引用例4
ア 第101頁第5-8行
「1 緒言 歯車の生産量が最も多いのは,自動車用などに用いられる中モジュールの歯車である。これらの歯車は生産の高速化に伴い,切削速度100m/min以上の高速ホブ切りが強く望まれている。」
イ 第103頁下から6-3行
「自動車用量産歯車等に良く用いられる浸炭鋼(SCM415材等)の中モジュールのはすば歯車は高速度鋼ホブで切削速度180m/min程度の高速ホブ切りが可能である。」
上記記載事項及びその高速ホブ切りがウエットカットであることは技術常識より明らかであることより、引用例4には、歯車生産の高速化に伴い、高速度工具鋼製の刃部を備えたホブを用いてウエットカットで歯形を創成するときの切削速度を高速化することが強く望まれている、及び、その切削速度を180m/min程度とするという技術事項が記載されていると認める。
(4) 引用例6
ア 第383頁表題
「高速度鋼ホブによる高速ホブ切の研究」
イ 第383頁右欄第6-8行
「この歯切り法によれば,浸炭鋼をホブ切する場合,切削速度180〜200m/min程度の高速ホブ切りが可能となった.」
ウ 第383頁表1
切削油として有機モリブデン添加油を使用すること。
上記記載事項より、引用例6には、高速度工具鋼製の刃部を備えたホブを用い、ウエットカットで歯形を創成するときの削速度を180〜200m/min程度とするという技術事項が記載されていると認める。
3 対比・判断
(1) 本件発明1について
本件発明1と引用例1に記載の発明とを対比すると、引用例1に記載の発明のTiAlN膜は、その組成割合について明らかにされているものではないことから、特別な組成割合のものではないと理解できるものであり、そして、例えば、「神戸製鋼技報」,Vol.43,No.3/Oct. 1993,通巻第175号,p.25に記載されているように、引用例1の頒布当時、Ti(1-x)AlxN膜の代表的な組成はx値が0.5のものであることは、技術常識であるので、引用例1に記載の発明のTiAlN膜は、その代表的な組成割合のもの、即ちTi(1-x)AlxNで表した場合のx値が0.5のもの、あるいはそれからあまり外れない組成割合のものであるx値がおおよそ0.5であるとみるのが相当である。
そうすると、本件発明1と引用例1に記載の発明とは、膜について、(Ti(1-x)Alx)(NyC(1-y))で表した場合のx値がおおよそ0.5で、y値が1.0であること、即ちTi(1-x)AlxN 但し、x値がおおよそ0.5で一致していることになり、両者は、次の一致点及び相違点1を有していることになる。
一致点
高速度工具鋼製の刃部を備えたホブを用いて歯形を創成する歯車加工方法において、
前記ホブとして、
Ti(1-x)AlxN
x;おおよそ0.5
なる組成の膜を少なくとも一層コーティングしたホブを用い、
切削油剤を用いずに切削を行なうドライカットで歯形を創成する歯車加工方法。
相違点1
本件発明1では、切削速度の範囲が、180m/min以上400m/min以下であるのに対し、引用例1に記載の発明では、どのような切削速度であるのか明らかではない点。
そこで、上記相違点1について検討すると、例えば、上記2の(2)及び(3)のとおり、超硬製の刃部を備えたホブを用いてドライカットで歯形を創成するときの切削速度を高速化するという技術事項が引用例2に記載され、歯車生産の高速化に伴い、高速度工具鋼製の刃部を備えたホブを用いてウエットカットで歯形を創成するときの切削速度を高速化することが望まれているという技術事項が引用例4に記載されているように、ホブを用いて歯形を創成する際に切削速度の高速化を図ることは、自明の課題であって、刃部の材質が超硬であるか高速度工具鋼であるか、ドライカットであるかウエットカットであるかにかかわるものではない。
そして、このような自明な課題の下、上記2の(3)及び(4)のとおり、引用例4及び6には、ウエットカットにおいてであるが、本件発明1と同じ高速度工具鋼製の刃部を備えたホブを用いて歯形を創成するときの切削速度を180m/min程度及び180〜200m/min程度とするという技術事項が記載されているのであるから、引用例1に記載の発明において、その切削速度として180m/min以上400m/min以下の範囲に含まれるものを試みることは、当業者が容易に想到することができたことである。
なお、引用例1に記載の発明の切削速度が、仮に、請求人が主張するとおりの80〜120m/minであるとしても、切削速度の高速化を図ることの阻害要因となるものではないので、同様の理由により、切削速度を180m/min以上400m/min以下の範囲に含まれるものとすることが当業者にとって格別困難であるとすることはできない。
また、本件発明1の「180m/min以上400m/min以下の範囲」に含まれる切削速度は、Ti(1-x)AlxN 但し、x;おおよそ0.5なる組成の膜を少なくとも一層コーティングした高速度工具鋼製のホブを用いてドライカットで歯形を創成する際の実用上有効な切削速度といえるものであるので、これと同じホブである引用例1に記載のホブを用いてドライカットで歯形を創成する際にも、上記の範囲に含まれる切削速度は当然に実用上有効な切削速度となるものである。
そうすると、引用例1に記載の発明において、その切削速度を180m/min以上400m/min以下の範囲に含まれるものとすることは、単にホブの実用上有効な切削速度を確認したといえるものであって、当業者にとって格別困難であるとすることはできない。
(2) 本件発明2について
上記1のとおり、本件発明2は、本件発明1に「切削部にエアを吹き付け」るという限定事項を付加したものであり、本件発明2と引用例1に記載の発明とを対比すると、両者は、上記相違点1に加え、本件発明2では、切削部にエアを吹き付けるものであるのに対し、引用例1に記載の発明では、そのようなものではない点で相違している(以下「相違点2」という。)。
相違点1については、既に検討しているので、相違点2について検討すると、上記2の(2) のとおり、ドライカットによる歯形を創成する歯車加工方法において、切削部にエアを吹き付けるという技術事項が、引用例2に記載されているので、相違点2は、引用例1に記載の発明に上記の技術事項を単に採用することにより容易に想到することができたことである。
4 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、引用例1に記載の発明並びに引用例2、4及び6に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第1号に該当する。
したがって、請求人が主張する特許法第17条の2第3項第126条第2項及び第36条第6項規定違反について検討するまでもなく、本件の請求項1及び2に係る特許は、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
歯車加工方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 高速度工具鋼製の刃部を備えたホブを用いて歯形を創成する歯車加工方法において、
前記ホブとして、
(Ti(1-x)Alx)(NyC(1-y))
0.2≦x≦0.85
0.25≦y≦1.0
なる組成の膜を少なくとも一層コーティングしたホブを用い、
切削速度を180m/min以上400m/min以下の範囲とし、
切削油剤を用いずに切削を行なうドライカットで歯形を創成することを特徴とする歯車加工方法。
【請求項2】 請求項1において、切削部にエアを吹き付けて歯形を創成することを特徴とする歯車加工方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速度工具鋼製の刃部を備えたホブを用いて歯形を創成する歯車加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図12及び図13に基づいて一般的なホブ盤を説明する。図12には一般的なホブ盤の全体構成、図13には切削部の詳細状況を示してある。
【0003】
図12に示すように、ホブ盤1には取付具2を介してワーク3が支持され、ホブヘッド4には高速度鋼からなる刃部を備えたホブ5が駆動回転自在に支持されている。図13に示すように、取付具2はテーブル6に支持され、テーブル6の回転によりワーク3が回転するようになっている。また、ホブヘッド4にはホブ軸7が駆動回転自在に設けられ、ホブ軸7にホブ5が固定されてホブ軸7の駆動によりホブ5が回転するようになっている。図13中の符号で、8は切削部に切削油剤9を供給するためのノズルである。
【0004】
ホブ盤1を用いてワーク3に歯形を創成する場合、取付具2を介してテーブル6にワーク3を取付け、ホブヘッド4のホブ軸7にホブ5を固定する。テーブル6を回転させることによりワーク3を回転させると共に、ホブ軸7を駆動回転させることによりホブ5を回転させる。ホブ5及びワーク3を回転させた状態でホブ5をワーク3に切り込ませることで、ワーク3の外周がホブ5の刃部により削り取られて歯形が創成される。
【0005】
ホブ加工は、歯車の噛み合い運動と同様な運動で歯車を加工する方法であるため、ワーク3の外周に所定の歯形が創成されるように、ホブ5及びワーク3の回転数とホブ5の切り込み量等が設定されている。切削中はノズル8から切削油9が切削部に供給され、切削部の潤滑及び冷却が行なわれる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ホブ盤1による歯形の創成において加工コストを低減するには、ホブ5をより高速で回転させ、短い時間で加工を行なう必要がある。しかし、現状では摩耗等の関係で、ホブ5の刃部の周速度(切削速度)は120m/min程度が上限であり、ホブ5の回転速度及び加工時間の短縮には限度があった。このため、加工コスト低減の障害になっているのが実情である。
【0007】
近年、超硬製のホブを用いて切削速度200m/min〜300m/minで高速加工する技術が出現し、ホブ盤による歯形の創成の高能率化が図られている。超硬製のホブを用いる場合、超硬は脆いので切削油剤を供給して加工を行なうとヒートクラックが生じて欠けが発生してしまう。このため、超硬製のホブを用いる場合には切削油剤を供給しないで加工を行なうドライカットが主流となっている。超硬は高速度鋼に比べて耐熱性及び耐摩耗性が格段に高いため、ドライカットを行なっても問題はない。
【0008】
上述したように、超硬製のホブを用いることで加工能率が高くなり、この点で加工コストを低減することが可能となる。しかし、超硬性のホブは非常に高価であるため、コストが極めて高くなり、加工能率を高めてもトータルのコストが悪化してしまう。また、超硬は脆いので突発的な欠損が発生する虞がある。このため、超硬製のホブは広く実用化されていないのが現状である。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、超硬製の工具を用いることなく切削速度を大幅に向上させることができる歯車加工方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の歯車加工方法は、高速度工具鋼製の刃部を備えたホブを用いて歯形を創成する歯車加工方法において、
前記ホブとして、
(Ti(1-x)Alx)(NyC(1-y))
0.2≦x≦0.85
0.25≦y≦1.0
なる組成の膜を少なくとも一層コーティングしたホブを用い、切削速度を180m/min以上400m/min以下の範囲とし、切削油剤を用いずに切削を行なうドライカットで歯形を創成することを特徴とする。
また、切削部に空気を吹き付けて歯形を創成することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1に基づいて本発明の歯車加工方法を実施するホブ盤の構成を説明する。図1には本発明の歯車加工方法を実施するホブ盤の切削部の概略を示してある。
【0012】
図に示すように、ホブ盤にはテーブル11が回転自在に支持され、テーブル11には取付具12を介してワーク13が支持されるようになっている。また、ホブ盤にはホブヘッド14がテーブル11に対して接近離遠自在に設けられ、ホブヘッド14にはホブ軸15が駆動回転自在に支持されている。ホブ軸15には高速度鋼からなる刃部を備えたホブ16が固定されている。ホブ16は、ホブ軸15の駆動回転により回転されると共に、ホブヘッド14のテーブル11側への移動により切り込み送りされる。
【0013】
ホブ盤を用いてワーク13に歯形を創成する場合、取付具12を介してテーブル11にワーク13を取付け、ホブヘッド14のホブ軸15にホブ16を固定する。テーブル11を回転させることによりワーク13を回転させると共に、ホブ軸15を駆動回転させることによりホブ16を回転させる。ホブ16及びワーク13を同期回転させた状態でホブ16をワーク13に切り込ませ、ワーク13の外周がホブ16の刃部により削り取られて歯形が創成される。切削中は、切削油剤を供給することなくドライカットで切削を行なう。
【0014】
ホブ16としては、TiAlの窒化物、あるいは、TiAlの炭窒化物をコーティングした高速度鋼(ハイス)製のホブ16が用いられる。ホブ16にコーティングされるTiAlの窒化物、あるいは、TiAlの炭窒化物は、単層コーティングされたもの及び多層コーティング中に一層でもいずれかの材料がコーティングされたもが用いられる。
【0015】
上述したホブ盤を用いた本発明の歯車加工方法の第1実施形態例を説明する。ホブ16として、(Ti(1-x)Alx)Nの組成からなる材料を膜厚1.7μmで一層コーティングした高速度鋼(SKH55)製のホブ16を用い、切削油剤を供給せずに切削を行なう(ドライカット)。
【0016】
図2には(Ti(1-x)Alx)Nの組成からなる材料のxの値と逃げ面摩耗との関係、図3には(Ti(1-x)Alx)Nの組成からなる材料のxの値とクレータ摩耗との関係を示してある。図2及び図3におけるホブ16は、(Ti(1-x)Alx)Nの組成からなる材料を一層コーティングした高速度鋼で、モジュールmが2.5、口数3、外径90mm、刃長90mm、溝数12である。また、ワーク13は、材質がSCM435、モジュールmが2.5、歯数が45、歯幅が30mm、ねじれ角が20度である。そして、加工条件は、アキシャル送り2mm/rev、ワーク13の加工数は350個である。
【0017】
図2に示すように、切削速度が80m/minで、xの値が0.2≦x≦0.85の範囲にある組成の(Ti(1-x)Alx)Nをコーティングしたホブ16が実用限界(0.2mm)を下回り、実用可能となる。切削速度80m/minから切削速度180m/minまで高めていくと、逃げ面摩耗は減少し、また、広いxの値の範囲でホブ16の摩耗が実用摩耗限界を下回る。切削速度を180m/minより高めていくと、逃げ面摩耗は増加していく。xの値の範囲を0.2≦x≦0.85とすば、切削速度が80m/minをこえて400m/minまでの全領域で逃げ面摩耗は実用可能な範囲に収まる。
【0018】
逃げ面摩耗の実用限界は0.2mm以下であるが、図3に示したクレータ摩耗の実用限界は0.1mm以下であることが望ましい。図3に示すように、クレータ摩耗は切削速度が80m/minの時に最も少なく、切削速度が高まる程増加する。しかし、切削速度が400m/minに至っても、クレータ摩耗は0.05mm程度であり、問題のない範囲に収まっている。
【0019】
以上により、xの値が0.2≦x≦0.85の範囲にある組成の(Ti(1-x)Alx)Nのコーティング膜をコーティングした高速度鋼製のホブ16で、切削速度が80m/minをこえて400m/minの範囲でドライカットすると、高能率で低コストの歯車創成が実現できる。
【0020】
本発明の歯車加工方法の第2実施形態例を説明する。ホブ16として、(Ti0.5Al0.5)(NyC(1-y))の組成からなる材料を膜厚1.7μmで一層コーティングした高速度鋼(SKH55)製のホブ16を用い、切削油剤を供給せずに切削を行なう(ドライカット)。
【0021】
図4には(Ti0.5Al0.5)(NyC(1-y))の組成からなる材料のyの値と逃げ面摩耗との関係、図5には(Ti0.5Al0.5)Nの膜厚の合計と膜厚1.7μmを基準とした時の逃げ摩耗量の比との関係を示してある。図4におけるホブ16は、(Ti0.5Al0.5)(NyC(1-y))の組成からなる材料をコーティングした高速度鋼であり、図5におけるホブ16は、(Ti0.5Al0.5)Nの組成からなる材料をコーティングした高速度鋼であり、口数3、刃長90mmである。また、ワーク13は、材質がSCM435、モジュールmが2.5、歯数が45、歯幅が30mm、ねじれ角が20度である。そして、加工条件は、アキシャル送り2mm/rev、ワーク13の加工数は350個である。
【0022】
図4に示すように、切削速度が80m/minで、yの値が0.25≦y≦1.0の範囲にある組成の(Ti0.5Al0.5)(NyC(1-y))をコーティングしたホブ16が実用限界(0.2mm)を下回り、切削速度を180m/minで逃げ面摩耗が最も少なくなる。更に、切削速度を高めていくと逃げ面摩耗は増していくが、切削速度が400m/minに至ってもyの値が0.25≦y≦1.0の範囲にある組成の(Ti0.5Al0.5)(NyC(1-y))をコーティングしたホブ16であれば逃げ摩耗は許容範囲内に収まる。yの値が小さくなると摩耗が増加するのは、どの切削速度でも同じである。yの値が小さくなるにつれて耐摩耗性が下がるのは、コーティングする材料の組成の中で、Nに代わってCが増えることにより耐酸化性が低下するからであると考えられる。
【0023】
図5は(Ti0.5Al0.5)Nのコーティングで、膜厚の適正値を求めたもので、図5の横軸は膜厚の合計を表したものである。即ち、(Ti0.5Al0.5)Nが単層であればその膜厚を表し、多層であれば全ての膜の厚さの合計を表したものである。縦軸は単層の(Ti0.5Al0.5)Nのコーティングを膜厚1.7μmで行なったホブ16の逃げ面摩耗を1とした時の逃げ面摩耗の比を表したものである。
【0024】
(Ti0.5Al0.5)Nを一層コーティングした場合の逃げ面摩耗と膜厚との関係をみると、膜厚が0.5μmでは膜厚が1.7μmの場合に比べて約30%逃げ面摩耗が多く、膜厚が厚くなるにつれて徐々に摩耗が少なくなり、膜厚が10μmでは膜厚が1.7μmの半分になる。しかし、膜厚が0.3μmまで薄くなると逃げ面摩耗は膜厚が1.7μmの場合に比べて2.2倍に増加する。一方、膜厚が11μmになると膜の剥離が生じて摩耗が急増する。
【0025】
(Ti0.5Al0.5)Nのコーティングを多層化した場合には、例えば、0.05μmのTiNを(Ti0.5Al0.5)Nの間に挟んで5層あるいは10層コーティングした場合には、図5に示した通り単層の場合より少し高い性能が得られる。膜厚は0.5μm以上で10μm以下が好ましく、単層でも多層でもよい。
【0026】
以上により、yの値が0.25≦y≦1.0の範囲にある組成の(Ti0.5Al0.5)(NyC(1-y))のコーティング膜をコーティングした高速度鋼製のホブ16で、切削速度が80m/minをこえて400m/minの範囲でドライカットすると、高能率で低コストの歯車創成が実現できる。
【0027】
次に、図6乃至図10に基づいて各種加工条件と切削速度との関係を詳細に説明する。
【0028】
図6にはアキシャル送り、ホブの口数とドライカットで実用可能な逃げ面摩耗に収まる切削速度との関係を示してある。即ち、ホブ16の口数別に逃げ面摩耗が実用可能な範囲に収まるアキシャル送りと切削速度との関係を示してある。
【0029】
図に白印で示される切削速度は逃げ面摩耗が実用域を下回り始める切削速度であり、図に黒印で示される切削速度は逃げ面摩耗が実用域を上回り始める切削速度である。つまり、白印で示される切削速度以上で黒印で示される切削速度以下の範囲の切削速度で実用可能となる。全体的には、口数とアキシャル送りとはドライカットが有効な切削速度域にあまり影響を与えないことが判る。
【0030】
まず、逃げ面摩耗が実用域を下回り始める切削速度に対しては、アキシャル送りが高くなるほど切削速度は低下するが、その程度は小さくどのアキシャル送りでも切削速度が略80m/minで逃げ面摩耗が実用域を下回ると考えられる。口数が変化しても同様である。アキシャル送りが高くなると切削速度が少し低下するのは、アキシャル送りを高めることにより刃先の温度が上がり、低い切削速度でも切削が効率的に行なわれる刃先温度に達するためであると考えられる。ただし、刃先温度に対するアキシャル送りの影響は、切削速度と比べてかなり小さいため切削速度に対する影響は小さいと考えられる。
【0031】
一方、逃げ面摩耗が実用域を上回り始める切削速度は、アキシャル送りが高くなるほど切削速度は低下するが、その程度は小さくどのアキシャル送りでも切削速度が略400m/minで逃げ面摩耗が実用域を上回ると考えられる。口数が変化しても同様である。アキシャル送りが高くなると切削速度が少し低下するのは、アキシャル送りを高めることにより刃先の温度が上がり、低い切削速度でも高速度鋼(ハイス材)が大きく軟化してしまう温度に達するためであると考えられる。
【0032】
尚、図示例でのホブ16は、(Ti0.5Al0.5)Nをコーティングしたもので、モジュールmが2.5、外径90mm、刃長90mm、溝数12である。ワーク13は、材質がSCM435、モジュールmが2.5、歯数が45、歯幅が30mm、ねじれ角が20度である。また、ホブ16のコーティングが、(Ti(1-x)Alx)(NyC(1-y))、0.2≦x≦0.85、0.25≦y≦1.0の範囲で、図6と同様の結果となることを確認している。
【0033】
図7にはワークの材質、硬度と実用可能な逃げ面摩耗に収まる切削速度との関係を示してある。即ち、ワーク13として、歯車材の代表的な各種の浸炭及び肌焼鋼(例えばSCM415,SCM435,SCr420等)について硬度を変えてドライカットが有効な切削速度域を調べたものである。
【0034】
図に示すように、逃げ面摩耗が実用域を下回り始める切削速度は、鋼種及び硬度が変わっても74m/minから85m/minの間に入ることが判る。また、逃げ面摩耗が実用域を上回り始める切削速度は、鋼種及び硬度が変わっても379m/minから418m/minの間に入ることが判る。よって、ドライカットが有効な切削速度域は、略80m/minから400m/minとなる。また、硬度の異なる各種炭素鋼及び硬度の異なる各種鋳鉄についても、図から判るように、切削速度が略80m/minから400m/minの間でドライカットが有効になる。
【0035】
尚、図示例でのホブ16は、(Ti0.5Al0.5)Nをコーティングしたもので、モジュールmが2.5、口数3、外径90mm、刃長90mm、溝数12である。ワーク13は、モジュールmが2.5、歯数が45、歯幅が30mm、ねじれ角が20度である。また、ホブ16のコーティングが、(Ti(1-x)Alx)(NyC(1-y))、0.2≦x≦0.85、0.25≦y≦1.0の範囲で、図7と同様の結果となることを確認している。
【0036】
図8にはホブ切り方法と実用可能な逃げ面摩耗に収まる切削速度との関係を示してある。即ち、ホブ切り方法には、逆巻及び同巻コンベンショナル歯切り方法と逆巻及び同巻クライム歯切り方法があり、各歯切り方法に対してドライカットが有効な切削速度域を調べたものである。
【0037】
図に白印で示される切削速度は逃げ面摩耗が実用域を下回り始める切削速度であり、図に黒印で示される切削速度は逃げ面摩耗が実用域を上回り始める切削速度である。図に示すように、ドライカットが有効となる切削速度域は、4種類の歯切り方法によって若干異なるものの、略80m/minから400m/minの間となっていることが判る。
【0038】
尚、図示例でのホブ16は、(Ti0.5Al0.5)Nをコーティングしたもので、モジュールmが2.5、口数3、外径90mm、刃長90mm、溝数12である。ワーク13は、材質がSCM435、モジュールmが2.5、歯数が45、歯幅が30mm、ねじれ角が20度である。また、ホブ16のコーティングが、(Ti(1-x)Alx)(NyC(1-y))、0.2≦x≦0.85、0.25≦y≦1.0の範囲で、図8と同様の結果となることを確認している。
【0039】
図9にはホブ母材と実用可能な逃げ面摩耗に収まる切削速度との関係を示してある。即ち、例えばホブ16の母材の材質として、SKH51,SKH55,粉末ハイス(1.6%C,8%W,8%Mo,その他),粉末ハイス(2.2%C,12%W,2.5%Mo,その他),粉末ハイス(1.3%C,6%W,5%Mo,その他)を適用し、各種母材材質に対してドライカットが有効な切削速度域を調べたものである。
【0040】
図に白印で示される切削速度は逃げ面摩耗が実用域を下回り始める切削速度であり、図に黒印で示される切削速度は逃げ面摩耗が実用域を上回り始める切削速度である。図に示すように、ドライカットが有効となる切削速度域は、各種母材材質に拘らず略80m/minから400m/minの間となっていることが判る。
【0041】
逃げ面摩耗が実用域を下回り始める切削速度を決めるのは、コーティング膜の材質であり、母材の材質にはよらないため、ホブ16の母材の材質が異なってもドライカットが有効な切削速度に大きな差が生じないと考えられる。また、逃げ面摩耗が実用域を上回り始める切削速度は、母材の軟化温度に関係するため、ハイス材では成分が異なっていても軟化温度にはそれほど大きな違いがないので、ホブ16の母材の材質が異なってもドライカットが有効な切削速度に大きな差が生じないと考えられる。
【0042】
尚、図示例でのホブ16は、(Ti0.5Al0.5)Nをコーティングしたもので、モジュールmが2.5、口数3、外径90mm、刃長90mm、溝数12である。ワーク13は、モジュールmが2.5、歯数が45、歯幅が30mm、ねじれ角が20度である。また、ホブ16のコーティングが、(Ti(1-x)Alx)(NyC(1-y))、0.2≦x≦0.85、0.25≦y≦1.0の範囲で、図9と同様の結果となることを確認している。
【0043】
図10にはホブのモジュールと実用可能な逃げ面摩耗に収まる切削速度との関係を示してある。即ち、図10には、ホブ16のモジュールが変化することによるドライカットが有効な切削速度域を示してある。
【0044】
図に白印で示される切削速度は逃げ面摩耗が実用域を下回り始める切削速度であり、図に黒印で示される切削速度は逃げ面摩耗が実用域を上回り始める切削速度である。逃げ面摩耗が実用域を下回り始める切削速度はモジュールが大きくなるにつれて若干下がるが、略80m/minとなっていることが判る。一方、逃げ面摩耗が実用域を上回り始める切削速度はモジュールが大きくなるにつれて若干下がるが、略400m/minである。よって、ホブ16のモジュールが変化してもドライカットが有効な切削速度域は、80m/minをこえて400m/minとなる。
【0045】
尚、図示例でのホブ16は、(Ti0.5Al0.5)Nをコーティングしたものであり、モジュール2.5の時は、口数3、外径90mm、刃長90mm、溝数12である。その他のモジュールの時は、外径及び歯形形状を、モジュール2.5の時の値に(モジュール/2.5)倍した値にし、刃長は切削に十分な長さとし、口数3、溝数12である。ワーク13は、材質がSCM435、歯数が45、歯幅が30mm、ねじれ角が20度である。また、ホブ16のコーティングが、(Ti(1-x)Alx)(NyC(1-y))、0.2≦x≦0.85、0.25≦y≦1.0の範囲で、図10と同様の結果となることを確認している。
【0046】
図11に基づいて本発明の歯車加工方法を実施する他のホブ盤を説明する。図11には本発明の歯車加工方法を実施する他のホブ盤における切削部の概略を示してある。図に示したホブ盤では、ワーク13とホブ16との切削部へ向けてエアを吹き付けるためのエアノズル22を備えたものであり、他の構成は図1、図2に示したホブ盤と同一である。
【0047】
図に示したホブ盤は、エアノズル22から切削部にエアを吹き付けながら切削を実施するものである。切削部にエアを吹き付けながらホブ16による切削を行なうことにより、切削に伴って生じた切屑を切削部から吹き飛ばして除去することが可能になる。尚、エアの中に少量の切削油剤を混入してミスト状に吹き付けることも可能である。エアノズル22からエアを吹き付けて前述した方法で歯車の加工を行なうことで、切屑の噛み込が生じることなく高能率、低コストで歯形の創成が実現できる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の歯車加工方法は、高速度工具鋼製の刃部を備えたホブを用いて歯形を創成する歯車加工方法において、
前記ホブとして、
(Ti(1-x)Alx)(NyC(1-y))
0.2≦x≦0.85
0.25≦y≦1.0
なる組成の膜を少なくとも一層コーティングしたホブを用い、切削速度を180m/min以上400m/min以下の範囲とし、切削油剤を用いずに切削を行なうドライカットで歯車を創成するようにしたので、超硬等の高価な工具を用いることなく切削速度を大幅に向上させて歯形を創成することができる。この結果、高能率、低コストで歯車加工が実現可能となる。
【0049】
また、切削部にエアを吹き付けて歯形を創成するようにしたので、切屑の噛み込が生じることなく高能率で低コストの歯車創成が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の歯車加工方法を実施するホブ盤の切削部の概略構成図。
【図2】
逃げ面摩耗の状況を表すグラフ。
【図3】
クレータ摩耗の状況を表すグラフ。
【図4】
逃げ面摩耗の状況を表すグラフ。
【図5】
膜厚と逃げ面摩耗との関係を表すグラフ。
【図6】
アキシャル送り及び口数と切削速度との関係を表すグラフ。
【図7】
ワーク材と切削速度との関係を表すグラフ。
【図8】
歯切り方法と切削速度との関係を表すグラフ。
【図9】
ホブ母材と切削速度との関係を表すグラフ。
【図10】
モジュールと切削速度との関係を表すグラフ。
【図11】
本発明の歯車加工方法を実施する他のホブ盤における切削部の概略構成図。
【図12】
一般的なホブ盤の全体構成図。
【図13】
切削部の詳細状況図。
【符号の説明】
11 テーブル
12 取付具
13 ワーク
14 ホブヘッド
15 ホブ軸
16 ホブ
20 エアノズル
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-10-23 
結審通知日 2003-10-28 
審決日 2003-11-13 
出願番号 特願平9-148997
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (B23F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 間中 耕治  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 三原 彰英
宮崎 侑久
登録日 2001-03-02 
登録番号 特許第3165658号(P3165658)
発明の名称 歯車加工方法  
代理人 辻居 幸一  
代理人 恩田 誠  
代理人 相良 由里子  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 弟子丸 健  
代理人 中村 守  
代理人 岡 潔  
代理人 辻居 幸一  
代理人 相良 由里子  
代理人 中村 守  
代理人 弟子丸 健  
代理人 岡 潔  
代理人 恩田 博宣  

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