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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C23C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C23C
管理番号 1112641
審判番号 不服2003-1884  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-06 
確定日 2005-03-04 
事件の表示 平成11年特許願第108942号「無電解めっき方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月31日出願公開、特開2000-303186〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成11年4月16日の出願であって、平成14年12月5日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月5日付で手続補正がなされ、平成16年4月26日付で拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月26日付で手続補正書が提出され、さらに、同年8月10日付で最後の拒絶理由が通知され、同年11月1日付で手続補正書が提出されたものである。

II.平成16年11月1日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年11月1日付の手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「電極の表面にめっき膜を形成するための無電解めっき方法において、
導電成分以外に、焼き付け後に無電解Niめっきを施す際に触媒として機能するパラジウム粉末を予め含有させた、厚膜電極形成用の導電ペーストを塗布して焼き付けることにより厚膜電極を形成する工程と、
還元処理を行うことなく該厚膜電極上に無電解Niめっきを施してNiめっき膜を形成する工程と、
該Niめっき膜上に無電解Auめっきを施してAuめっき膜を形成する工程とを具備することを特徴とする無電解めっき方法。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「導電ペースト」について「厚膜電極形成用の」との限定を付加し、同じく「電極を形成する工程」及び「電極上に」について「厚膜」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.刊行物
これに対して、当審における、平成16年8月10日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願の出願日前に頒布された
特開昭58-161761号公報(以下「刊行物1」という。)
特開平7-183327号公報(以下「刊行物2」という。)
特開平3-101139号公報(以下「刊行物3」という。)
には、図面とともに、以下の記載がある。

(1)刊行物1
(1a)「(1)アルミニウム基板の必要箇所に0.1〜5重量%のパラジウム成分を含むペーストを塗布して乾燥し、これを400〜600℃の温度で熱処理した後、その上に無電解ニッケルめっきによりニッケル皮膜層を形成することを特徴とするアルミニウム基板のめっき方法。
(2)ペースト中にAg成分を1〜30重量%含ませたことを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載のアルミニウム基板のめっき方法。」(特許請求の範囲)
(1b)「混成集積回路は、以前はセラミックスなどの絶縁基板上に抵抗体,コンデンサ,トランジスタなどの素子を取付けたものであったが、放熱性が悪いために、発熱し易い電力用トランジスターや大電流の流れる抵抗体を用いた場合には、その熱によって抵抗体やトランジスター、更には周辺部品を劣化させる原因となっていた。そこで、基板にAlなどに用い、その上に絶縁物層を介して混成集積回路を形成して熱放散を良好にする方法がとられている。しかしながら、このような構成にした場合には、絶縁層を介して、トランジスターや抵抗体の各々の電極とAl基板との間に浮遊容量が発生し、電気回路に悪影響を及ぼす問題が発生する。この問題を解消するためには、Al基板と各々の電極とを接続する必要がある、その接続法の最も簡単で確実な方法としてはんだ付が好ましい。このようなことからAl基板へのはんだ漬け方法が切望されている。
本発明はこのような点に鑑みて成されたもので、Al基板の必要箇所にPd成分を含むペーストを塗布乾燥し、これを熱処理後、その上に無電解NiめっきによりNi層を形成することによって、Al基板への密着性のよいはんだ付を可能にしたものである。
すなわち、本発明はAl基板へのめっき形成法として、従来のZn置換法などに代り、Pd成分を含むペーストを塗布乾燥し、熱処理することにより、Al基板に無電解Niめっきの触媒であるPd金属を密着させ、その上に無電解Niめっきを施こすものであり、密着性の良好なNi層が得られるものである。さらに、本発明は印刷とか吹付などの手法で所要箇所に精度よく簡単にペーストを塗布することができるため、必要なパターン部分のみ簡単にNi層が形成できる利点を有している。」(第1頁右下欄16行〜第2頁右上欄10行)
(1c)「(実施例)・・・無電解ニッケルめっき液中に30分間浸漬し、Al基板のパターン上にNiめっき皮膜を約7μ析出した。なお、Pd成分としては2μ以下のPd微粉末もしくは塩化パラジウム粉末を用いた。また、このペースト中に2μ以下の粒径のAg粉末を0.1〜50重量%添加した場合についても、上記と同様な方法でNiめっきを施した。」(第2頁右下欄20行〜第3頁左上欄15行)

(2)刊行物2
(2a)「【請求項1】入出力端子が、基材金属層とその上に順次積層されたニッケル薄層及び貴金属薄層とからなることを特徴とする半導体チップ。
【請求項2】基材金属層がアルミニウム系金属からなる請求項1記載の半導体チップ。」
(【請求項1】,【請求項2】)
(2b)「【産業上の利用分野】本発明は、ボンディング性、耐蝕性を向上させた入出力端子を有する半導体チップに関する。また、本発明は、そのような半導体チップの端子の形成方法及び配線基板の電極パッドとの接合に関する。」(【0001】)
(2c)「【0015】このようなニッケル薄層3は、無電解メッキ法により好ましく形成することができる。」(【0015】1〜2行)
(2d)「【0021】ニッケル薄層3の上に形成する貴金属薄層4としては、金、パラジウム、白金などから形成された薄層を使用することができる。特に耐蝕性などの点からは金薄層が好ましく、・・・【0023】このような貴金属薄層4は、無電解メッキ法により好ましく形成することができ」(【0021】〜【0023】2行)

(3)刊行物3
(3a)「[産業上の利用分野]本発明は、半導体素子の電極構造に関するものである。」(第1頁左下欄下から2行〜右下欄1行)
(3b)「Au金属層を設けたことで接合がAu-Au接合となるので高温時の拡散がなく接合強度が低下することなく、高湿時にも電極表面がAuという腐食しない貴金属で覆われていることから・・・接合が外れることがない。」(第2頁左下欄2〜8行)
(3c)「半導体素子上のAlパッド上にPdCl2等の活性化液に浸漬しPdを吸着させて後、無電解Niメッキ処理を行い、Ni金属層を形成した後無電解AuメッキにてAu金属層を形成したもの。」(第2頁右下欄4〜7行)

上記刊行物1には、上記摘記事項(1a)から、基板の必要箇所に、パラジウム成分及びAg成分を含むペーストを塗布して乾燥し、熱処理した後、その上に無電解めっき層を形成することが記載されているといえ、上記摘記事項(1b)から、Niを選択的に無電解めっきして電気回路部品の電極とはんだ付け可能とするパターンを、無電解Niめっきの触媒であるPd金属成分を含むペーストを塗布乾燥し熱処理して形成することが示されており、上記摘記事項(1c)から、ペーストには、パラジウム粉末、Ag粉末が含まれていることも示されている。
したがって、上記摘記事項(1a)〜(1c)を総合的に勘案すると、刊行物1から、「電気回路部品の電極とはんだ付け可能なNi層を形成するためのパターン上に無電解めっきする方法において、Ag成分と、無電解Niめっきの触媒であるPd成分を含むペーストを塗布乾燥し、これを熱処理後、パターン上に無電解NiめっきによりNi層を形成する無電解めっき方法」(以下、「刊行物1発明」という。)が認定できる。

3.対比・判断
そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、Ag成分は導電成分であり、Ag成分を含むペースト及び形成されたパターンは、それぞれ導電ペースト及び導電パターンであることも明らかであり、電気回路部品の電極とはんだ付け可能なNi層を形成するための導電パターンとは、電極の概念に入ると言えるので、刊行物1発明の「電気回路部品の電極とはんだ付け可能なNi層を形成するためのパターン」、「Ag成分」、「無電解Niめっきの触媒であるPd成分」、「ペースト」、「塗布乾燥し」、「熱処理」、「Ni層」は、それぞれ、本願補正発明の「電極」、「導電成分」、「無電解Niめっきを施す際に触媒として機能するパラジウム粉末」、「導電ペースト」、「塗布して」、「焼き付ける」、「Niめっき膜」に相当しており、両者は、
「電極の表面への無電解めっき方法において、導電成分と無電解Niめっきを施す際に触媒として機能するパラジウム粉末を含有させた導電ペーストを塗布して焼き付けことにより電極を形成し、その電極上に無電解NiめっきでNiめっき膜を形成する無電解めっき方法」の点で一致し、以下の点で相違する。

イ.導電ペーストで形成される電極が、本願補正発明では、「厚膜電極」であると特定されているのに対して、刊行物1発明では、そのような記載のない点。
ロ.本願補正発明では、Niめっき膜上に無電解Auめっきを施してAuめっき膜を形成する工程を設けているのに対して、刊行物1発明では、そのような工程を設けていない点。

相違点イについて
本願明細書の【0025】6〜15行の「まず、・・・混練して導電ペーストを調整する。・・・所定の電極パターンとなるように塗布する。・・・熱処理して焼き付けることにより、・・・(厚膜電極)3を形成する。」という記載からみて、本願補正発明の「厚膜電極」とは、導電ペーストを塗布焼き付けしたものと認められ、刊行物1発明の電極も導電ペーストを塗布焼き付けしたものであるのだから、厚膜電極であるといえる。
したがって、相違点イは実質的な相違点とはいえない。

相違点ロについて
刊行物2の上記摘記事項(2a)(2b)(2c)(2d)、刊行物3の上記摘記事項(3a)(3b)(3c)に記載されるように、電極構造形成のための無電解めっき方法において、接合強度、耐蝕性向上のために無電解Niめっき膜を形成した後、無電解Auめっき膜を形成することは、周知の技術的事項である。
したがって、刊行物1発明において、刊行物2,3記載の周知技術を適用することで、無電解Auめっき工程を追加し、本願補正発明をなすことは、当業者にとって格別の困難性はない。
そして、本願補正発明の効果も、本願の明細書全体からみて、当業者の予測を越える顕著なものとはいえない。

したがって、上記相違点は、実質的な相違点でないか又は当業者が容易になし得たものであり、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び、刊行物2,3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.本願発明
平成16年11月1日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成16年7月26日付手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されたとおりのものと認められ、以下のとおりのものである。

「電極の表面にめっき膜を形成するための無電解めっき方法において、
導電成分以外に、焼き付け後に無電解Niめっきを施す際に触媒として機能するパラジウム粉末を予め含有させた導電ペーストを塗布して焼き付けることにより電極を形成する工程と、
還元処理を行うことなく該電極上に無電解Niめっきを施してNiめっき膜を形成する工程と、
該Niめっき膜上に無電解Auめっきを施してAuめっき膜を形成する工程とを具備することを特徴とする無電解めっき方法。」

(1)刊行物
平成16年8月10日付けで通知した最後の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「2.」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「1.」で検討した本願補正発明から「導電ペースト」の限定事項である「厚膜電極形成用の」との発明特定事項を省き、「電極」の限定事項である「厚膜」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「3.」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び、刊行物2,3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び、刊行物2,3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び、刊行物2,3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-19 
結審通知日 2004-12-14 
審決日 2004-12-27 
出願番号 特願平11-108942
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C23C)
P 1 8・ 575- WZ (C23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金 公彦  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 川真田 秀男
瀬良 聡機
発明の名称 無電解めっき方法  
代理人 西澤 均  

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