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審決分類 |
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 H01L 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 H01L |
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管理番号 | 1114574 |
異議申立番号 | 異議2003-72706 |
総通号数 | 65 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-07-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-11-06 |
確定日 | 2005-02-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3403781号「半導体製造方法及び半導体製造装置」の請求項1〜5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、 次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3403781号の請求項1,2に係る特許を維持する。 |
理由 |
【1】手続の経緯 特許第3403781号に係る発明は、平成5年11月9日(パリ条約による優先権主張、1992年11月9日、大韓民国)に特許出願され、平成15年2月28日にその特許権の設定登録がなされ、その後、小滝俊より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その延長された指定期間内である平成16年12月22日に訂正請求がなされたものである。 【2】訂正の適否についての判断 【2-1】訂正の内容 訂正事項1.;【特許請求の範囲】の【請求項1】を、 「大気圧下において基板(12)上にRF電源でコロナ放電を発生させることができる少なくとも1個以上の電極(14)に、反応ガスを供給する工程と、前記コロナ放電により前記反応ガスをイオンまたはラジカルに分解して前記基板に照射させる工程と、イオンまたはラジカルに分解された前記反応ガスが前記基板表面で化学的な反応を起し、または、前記基板内で拡散されるようにする工程と、前記電極(14)間に供給される反応ガスの外側に、反応ガスの流出防止および空気を汚染防止のために、窒素(N2)ガスを基板(12)の外側に供給する工程と、を備えることを特徴とするコロナ放電を利用した半導体製造方法。」と訂正する。 訂正事項2.;【特許請求の範囲】の【請求項2】を、 「大気圧下において印加されるRF電源(13)によりコロナ放電を起す、基板台(11)上部に設けられた少なくとも1個以上の電極(14)と、前記電極の上方へ反応ガスを供給するガス供給システム(15)と、前記基板台(11)および電極(14)の周囲に設けられて、外部空気によって基板(12)が汚染されるのを防止する排気システム(21)と、前記基板台(11)の上部に設けられ、その移送により前記基板(12)を連続して前記基板台上に移送するタイミングベルト(18)とを備え、前記電極(12)が第1電極(14a)と第2電極(14b)とを有し、この第1電極(14a)および第2電極(14b)が放電室を構成することを特徴とする半導体製造装置。」と訂正する。 訂正事項3.;段落【0002】,【0007】,【0018】,【0019】,【0023】,【0040】,【0041】および【符号の説明】における「基板保持台」を、 「基板台」と訂正する。 訂正事項4.;段落【0012】の【課題を解決するための手段】を、 「上記目的を達成するため、本発明にかかる半導体製造方法は、大気圧下において基板(12)上にRF電源でコロナ放電を発生させることができる少なくとも1個以上の電極(14)に、反応ガスを供給する工程と、前記コロナ放電により前記反応ガスをイオンまたはラジカルに分解して前記基板に照射させる工程と、イオンまたはラジカルに分解された前記反応ガスが前記基板表面で化学的な反応を起し、または、前記基板内で拡散されるようにする工程と、前記電極(14)間に供給される反応ガスの外側に、反応ガスの流出防止および空気を汚染防止のために、窒素(N2)ガスを基板(12)の外側に供給する工程と、を備えることを特徴とする。」と訂正する。 訂正事項5.;段落【0013】を、 「本発明にかかる半導体製造装置は、大気圧下において印加されるRF電源(13)によりコロナ放電を起す、基板台(11)上部に設けられた少なくとも1個以上の電極(14)と、前記電極の上方へ反応ガスを供給するガス供給システム(15)と、前記基板台(11)および電極(14)の周囲に設けられて、外部空気によって基板(12)が汚染されるのを防止する排気システム(21)と、前記基板台(11)の上部に設けられ、その移送により前記基板(12)を連続して前記基板台上に移送するタイミングベルト(18)とを備え、前記電極(12)が第1電極(14a)と第2電極(14b)とを有し、この第1電極(14a)および第2電極(14b)が放電室を構成することを特徴とするものである。」と訂正する。 訂正事項6.;段落【0014】を、 「【実施例】 以下、本発明の一実施例を図3乃至図6に基づいて詳述する。」と訂正する。 訂正事項7.;段落【0015】,【0016】の記載を削除する。 【2-2】訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 この段落内で、特許明細書の特許請求の範囲の請求項を「旧請求項」といい、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項を「新請求項」という。 [1]上記訂正事項1.は、 旧請求項1を削除し、旧請求項1を実体的により限定した旧請求項2を新請求項1とするものである。 したがって、当該訂正事項1.は、特許明細書に記載された事項に基づくものであり、特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明を目的とし、かつ、新規事項の追加にはあたらず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 [2]上記訂正事項2.は、 旧請求項5の記載内容における、明りょうでない記載の釈明を図るとともに、当該旧請求項5の内容に、さらに旧請求項4の記載内容を付加し、新請求項2としたものであって、旧請求項3,4を削除するものである。 したがって、当該訂正事項2.は、特許明細書に記載された事項に基づくものであり、明りょうでない記載の釈明および特許請求の範囲の減縮を目的とし、かつ、新規事項の追加にはあたらず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 [3]上記訂正事項3.〜7.は、 特許明細書に記載された事項に基づくものであり、明りょうでない記載の釈明に該当し、かつ、新規事項の追加にはあたらず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 【2-3】まとめ 上述のとおりであるから、上記【2-1】段落に記載した訂正事項1.〜7.からなる訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第1項ただし書,第2項の規定に適合するので、その訂正を認める。 【3】特許異議申立て理由の概要 特許異議申立人 小滝俊は、次の甲第1〜5号証を提示し、 本件の請求項1〜5に係る発明は、新規性または進歩性を有さず、特許法第29条第1項または同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、また、本件特許明細書の記載は、不明瞭であり、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない。 したがって、本件の請求項1〜5に係る特許は、取り消されるべきものであるとしている。 甲第1号証;特開昭62-235339号公報 甲第2号証;特開昭60-37718号公報 甲第3号証;特開平3-219082号公報 甲第4号証;「コロナ現象」室岡 著,コロナ社刊,1989年12月25日発行 甲第5号証;特開平1-132769号公報 【4】本件特許発明 本件については、上記【2】段落で示したようにその訂正が認められるから、本件の請求項1,2に係る発明(以下、「本件発明1,2」という)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたとおりの、 「【請求項1】 大気圧下において基板(12)上にRF電源でコロナ放電を発生させることができる少なくとも1個以上の電極(14)に、反応ガスを供給する工程と、 前記コロナ放電により前記反応ガスをイオンまたはラジカルに分解して前記基板に照射させる工程と、 イオンまたはラジカルに分解された前記反応ガスが前記基板表面で化学的な反応を起し、または、前記基板内で拡散されるようにする工程と、 前記電極(14)間に供給される反応ガスの外側に、反応ガスの流出防止および空気を汚染防止のために、窒素(N2)ガスを基板(12)の外側に供給する工程と、を備えることを特徴とするコロナ放電を利用した半導体製造方法。 【請求項2】 大気圧下において印加されるRF電源(13)によりコロナ放電を起す、基板台(11)上部に設けられた少なくとも1個以上の電極(14)と、 前記電極の上方へ反応ガスを供給するガス供給システム(15)と、 前記基板台(11)および電極(14)の周囲に設けられて、外部空気によって基板(12)が汚染されるのを防止する排気システム(21)と、 前記基板台(11)の上部に設けられ、その移送により前記基板(12)を連続して前記基板台上に移送するタイミングベルト(18)とを備え、 前記電極(12)が第1電極(14a)と第2電極(14b)とを有し、この第1電極(14a)および第2電極(14b)が放電室を構成することを特徴とする半導体製造装置。」である。 【5】上記甲各号証の記載内容 [1]甲第1号証には、 「コロナ放電処理」を行なうコロナ放電装置が記載されている(第3頁左下欄第16行〜同頁右下欄第13行、第10図)。 (1)コロナ放電処理は、「大気圧下」にて行なわれる(第2頁左下欄第20行)。 (2)コロナ放電装置は、間の空間にコロナ放電を起こすための「電極7および電極7’」を有している(第3頁右下欄第10行)。 (3)第3頁左上欄第7行〜第9行には「コロナ処理は・・・高周波放電・・・でもよい」と記載されている。 (4)コロナ放電装置には、含フッ素化合物と不活性ガスの混合ガス(すなわち反応ガス)のための「ガス供給路5」が設けられている(第3頁右下欄第8行)。 (5)下側の電極7’の上面に被処理物8がセットされている(第3頁右下欄第11行〜第12行)。したがって、電極7’は、基板保持台の機能を有している。この基板保持台としての電極7’の上方に電極7が配置されている。 (6)コロナ放電装置には、「ガス排気路6」が設けられている(第3頁右下欄第9行)。 [2]甲第2号証には、 直流コロナ放電により半導体を製造する方法が記載されている(第1頁右欄第8行〜第2頁左欄第8行、第1図)。この方法に用いる装置は、コロナ放電を起こす電極としてグリッド7と極板6を有している。 コロナ放電によりグリッド7からイオン5が放出され(第1頁右欄第18行〜第2頁左欄第1行)、この放出イオン5が、基板1の裏面に堆積し、レーザー光9の走査によりアモルファスSi膜3を結晶化してSi結晶4を形成する(第2頁左欄第1行〜第3行)。 [3]甲第3号証には、 大気圧グロー放電による表面処理装置が記載されている(第1頁右欄第2行〜第10行、第4頁左上欄第7行〜右下欄第6行)。 構成2(第4頁右上欄第7行〜左下欄第10行、第2図)の表面処理装置10について、 (1)表面処理装置10は、放電を起こすための高圧電極12と接地電極13を有している(第4頁右上欄第12行)。 (2)電極12,13間が、放電空間14になっている(第4頁右上欄第14行)。 (3)放電空間14は、大気圧に保たれている(第4頁右上欄第19行)。 (4)放電用の電源は、RF電源でもよい(第2頁左下欄第19行)。 (5)第2図によれば、反応ガスが、ガス供給管15によって電極12,13の上方から電極12,13間の放電空間14に供給されるようになっている。 (6)電極12,13間に電圧を印加することにより、グロー放電し反応ガスのプラズマ励起が発生し(第4頁右上欄第20行〜左下欄第2行)、気体プラズマとなって放電空間14より噴出される(第4頁右上欄第2行、同頁左下欄第6行)。 (7)この噴出ガスが、被処理シート材20の表面に吹付けられ、シート材20の表面に薄膜が形成される(第4頁左下欄第3行〜第4行)。 (8)被処理シート材20は、水平に配置され、その上方に電極12,13が配置されている(第2図b)。 (9)放電空間14より噴出した反応後の排ガスは、放電部11開放下端に設けたスカート19で反転し放電部11内壁とBガス用ダクト17間を上昇し、放電部11上部端の排気管18より導出されて、回収、不活性ガスが再生される(第4頁左下欄第6行〜第10行)。 (10)シート材20表面にスカート33が接触するように配置した箱型の排ガスダクト34が付設され、各トーチ型成膜装置31からシート材20表面に噴射されて反応した後の排ガスが回収される構成からなる(第4頁左下欄第18行〜右下欄第2行、第4図の構成3)。 (11)表面処理は、「成膜あるいは表面改質」に適用される(第2頁左下欄第13行)。成膜の一例として、シリコンウェハ表面へのSiNx膜形成を行なう半導体の製造に用いられる(第4頁右下欄第11行)。 [4]甲第4号証には、 「コロナ放電」の語義に関して、同号証の97ページ第7行〜第8行に、「電極間がアーク状態になる以外の放電現象はコロナ放電に属するということもできる。」と記載されている。また、同号証の98ページ第9行〜第10行には、下記の「分類ではグロー放電をコロナの一種であるとしている」と記載されている。そして、同ページの図28の分類表によれば、自続放電が、部分破壊(コロナ)と全路破壊等に分類され、部分破壊(コロナ)が、正極性コロナと負極性コロナに分類され、全路破壊が、グロー放電(コロナ)と電弧放電(アーク)に分類されている。 [5]甲第5号証には、 (1)常圧(第1頁左欄第19行)すなわち大気圧下で、熱CVDによってウェハへの成膜を行なう装置が記載されている。常圧CVD装置には、不活性ガス導入室5cが設けられている(第2頁左下欄第8行)。不活性ガスとして窒素(N2)が用いられている(第1図)。不活性ガス導入室5cは、反応ガス噴出口6の外周を取り囲んでいる(第2頁左下欄第7行)。不活性ガス導入室5cの下部に不活性ガス噴出口9が開口されている(同欄第9行〜第10行)。これにより、反応領域を取り囲む不活性ガス流を形成している(第2頁右上欄第3行〜第7行)。 (2)常圧CVD装置のヘッド5の外周には、反応ガス噴出口6からのガスを吸引排気する排気口7が形成されている(第2頁左下欄第11行〜第15行)。第1図によれば、排気口7は、処理中の半導体ウェハの周りを取り囲むようになっている。 (3)常圧CVD装置では、半導体ウェハをサセプタ1に搭載し、ベルトにより動かすようになっている(第2頁左下欄第17,18行)。 【6】特許異議申立てに対する当審の判断 【6-1】本件明細書の記載不備(法36条)による取消理由 上記【2】段落の訂正によって、「基板保持台」は「基板台」となり、基板はタイミングベルト上に載置されて移送され連続的に処理されることが明確になった。 また、基板は、あくまで、タイミングベルト上に載置された状態で所定の処理が施されるのであって、基板台へ移し変えられるものではない点も明らかとなった。すなわち、「移送」はタイミングベルト上に載置された基板が基板台の位置に持ちきたされることを意味する。 さらに、基板は、タイミングベルトの上に載置されたままであるから、連続移送できることも明らかである。 したがって、訂正明細書の記載において、明細書の記載不備はなくなり、それを根拠とする取消理由は解消した。 【6-2】特許された発明に新規性がない(法29条1項)とする取消理由 新規性がないとの異議申立がされたものは、訂正前の請求項1,3に係る発明であるが、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された発明は、訂正前の請求項2,5に係る発明に対応するものであるから、新規性がないことを根拠とする取消理由に該当する発明はなくなった。 【6-3】本件発明1,2の容易性(法29条2項)を根拠とする取消理由 [1]本件発明1の容易性 甲第1〜5号証のどこをみても、本件発明1の「大気圧下において基板上にRF電源でコロナ放電を発生させ、供給される反応ガスの外側に窒素ガスを基板の外側に供給する」という構成要件(要件1)は、記載も示唆もされていない。 つまり、本件発明1は、被処理物が反応ガスによって処理される領域と、その外側の大気とを遮蔽して、反応ガスの流出防止および空気による汚染防止をするというものであるところ、甲第1号証にはそのような発想はまったくない。 また、甲第3号証には、反応後の排ガスを回収し、その中の不活性ガスを再生利用する排気システムが開示されてはいる。しかし、このシステムは、被処理シート材表面に接触・密接するスカートと排気系とで構成された、いわば閉ループ系である。 すなわち、この甲第3号証は、被処理物が連続シート材であり、前記閉ループ系により排ガスを回収して不活性ガスを再生することが開示されているのみであり、被処理物が反応ガスによって処理される領域と、その外側の大気とを遮蔽するという発想を示唆するものではない。 したがって、甲第5号証に、常圧熱CVDにおいて、窒素ガス流で処理領域と外気(大気)とを遮蔽することが開示されているからといっても、このことを前記甲第1,3号証の開示内容に結び付ける必然性がない。 そして、本件発明1は、前記(要件1)により訂正明細書記載の「大気圧状態で処理される各種工程に連結する場合には、これらの工程を連続して行なうことができるので、半導体を一括して大量生産することができる」という作用効果を奏することになる。 よって、本件発明1は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 [2]本件発明2の容易性 甲第1〜5号証のどこをみても、本件発明2の「大気圧下において印加されるRF電源によりコロナ放電を起す少なくとも1個以上の電極と、基板台および電極の周囲に設けられて、外部空気によって基板が汚染されるのを防止する排気システムと、前記基板台の上部に設けられ、その移送により前記基板を連続して前記基板台上に移送するタイミングベルトとを備え」る構成(要件2)は、記載も示唆もされていない。 そして、本件発明2は、前記(要件2)により、訂正明細書記載の「大面積の基板に対する処理能力を向上させることができ、この装置を大気圧状態で処理される各種工程に連結する場合には、これらの工程を連続して行なうことができるので、半導体を一括して大量生産することができる」という作用効果を奏する。 したがって、本件発明2は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 【7】むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件発明1,2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1,2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 半導体製造方法及び半導体製造装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 大気圧下において基板(12)上にRF電源でコロナ放電を発生させることができる少なくとも1個以上の電極(14)に、反応ガスを供給する工程と、 前記コロナ放電により前記反応ガスをイオンまたはラジカルに分解して前記基板に照射させる工程と、 イオンまたはラジカルに分解された前記反応ガスが前記基板表面で化学的な反応を起し、または、前記基板内で拡散されるようにする工程と、 前記電極(14)間に供給される反応ガスの外側に、反応ガスの流出防止および空気を汚染防止のために、窒素(N2)ガスを基板(12)の外側に供給する工程と、を備えることを特徴とするコロナ放電を利用した半導体製造方法。 【請求項2】 大気圧下において印加されるRF電源(13)によりコロナ放電を起す、基板台(11)上部に設けられた少なくとも1個以上の電極(14)と、 前記電極の上方へ反応ガスを供給するガス供給システム(15)と、 前記基板台(11)および電極(14)の周囲に設けられて、外部空気によって基板(12)が汚染されるのを防止する排気システム(21)と、 前記基板台(11)の上部に設けられ、その移送により前記基板(12)を連続して前記基板台上に移送するタイミングベルト(18)とを備え、 前記電極(12)が第1電極(14a)と第2電極(14b)とを有し、この第1電極(14a)および第2電極(14b)が放電室を構成することを特徴とする半導体製造装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、半導体製造方法および半導体製造装置の関し、特に大気圧においてコロナ放電を利用して注入ガスの種類に応じて諸工程を低コスト装備によってなされるようにした半導体製造方法およびその装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 図1は従来の水素のプラズマ処理のための一例を示す概略図で、供給電源2により真空チャンバ内に高周波(Radio Friquency)を発生させる一対の陰極(Cathode)3が真空チャンバ1内の上部に設けられ、その下部に、基板4を支持するとともに、一定温度で前記基板4を加熱する基板台5を備えた陽極(Anode)が設けられている。また真空チャンバ1内には一対の陰極3間に水素(H2)を供給するガス供給システム6が設けられ、真空チャンバ1の側面には工程中に前記真空チャンバ1内の圧力を適正に維持させる排気システム7が設けられている。 【0003】 このように構成された従来の半導体水素化処理用装置による工程を説明する。 【0004】 水素(H2)を、基板4の大きさおよび真空チャンバ1の大きさに比例して10〜500sccmで流し、基板4温度を250〜350℃以内に維持させるとともに、排気システム7を調節して反応圧力0.1〜1Torrの真空度に維持させる。 【0005】 このような条件で、RF電源2から0.05〜1W/cm2の電力を供給すると、水素(H2)はプラズマ状態に分離されて基板4上の半導体膜に拡散され、半導体膜は水素化された。 【0006】 この時、前記装置の制御は、基板4表面における水素ラジカル(プラズマ分離)の濃度と基板温度の水素拡散速度に応じて決定される。 【0007】 一方、図2は従来の半導体水素化処理用装置の他の例を示す縦断面図で、光を用いて水素化処理を行なう装置である。この装置は、真空チャンバ1内の下方に設けられて基板4を支持するとともに一定の温度に保持する基板台5と、前記真空チャンバ1の上方に設けられた石英窓8を通じて基板上部へ光を照射する低圧水銀灯9と、真空ポンプの駆動により真空チャンバ1内を一定の真空度で維持させる排気システム7と、前記真空チャンバ1内にガス(H2、Hg)が一定流量で供給されるように、これを調節するガス供給システム6とからなっている。 【0008】 上述した装置における製造工程では、ガス供給システム6から水素(H2)と水銀(Hg)とを同時に一定流量で真空チャンバ1内に供給する。そして、低圧水銀灯9から波長184.9nmおよび254nmの紫外線(Ultraviolet rays)光を照射することによって、水銀(Hg)が励起された水銀(Hg*)状態となり、これにより水素(H2)がラジカル(Radical)に分解される。この水素ラジカルは、半導体膜に拡散されて、半導体膜を水素化する。 【0009】 ここで、前記装置は半導体の表面の水素(H2)ラジカル濃度と、薄膜内部へ水素(H2)が拡散される速度を決める基板温度とに応じて制御され、基板表面における水素(H2)濃度は真空チャンバ1内の水素(H2)および水銀(Hg)の分圧により決められる。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、このような従来の水素化処理用装置および方法は次のような問題点がある。 1. 共に真空チャンバ1内で工程が進行されるので、かならず排気システム7が必要である。 2. これにより、設備が高価である真空チャンバ1および排気システム7を設置しなければならないので、施設のコストが高い。 3. 真空状態において工程が進行されるので、基板の処理時間が長くなる。 4. 図1のような装置を用いた工程が大気圧下での処理工程の間で行われる場合、真空チャンバ内をその都度真空にする必要が生じるので生産性はさらに低下する。 5. 図2のような装置は、水銀(Hg)を使用するので、公害の発生原因となる。 6. 大形の基板を製造する場合、低圧水銀灯9の光を透過する石英窓8の大きさも大型化しなければならない。 7. 低圧水銀灯9は広い面積を均一に照射することができないので、良質の半導体製造が難しい。 【0011】 本発明の目的は、上記問題点を解消するためのもので、大気圧下においてコロナ放電を利用して注入ガスを放電により分解させて高エネルギーのイオンおよびラジカル状態とした後、これを基板へ照射することにより、工程が行われる方法および装置を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、本発明にかかる半導体製造方法は、大気圧下において基板(12)上にRF電源でコロナ放電を発生させることができる少なくとも1個以上の電極(14)に、反応ガスを供給する工程と、前記コロナ放電により前記反応ガスをイオンまたはラジカルに分解して前記基板に照射させる工程と、 イオンまたはラジカルに分解された前記反応ガスが前記基板表面で化学的な反応を起し、または、前記基板内で拡散されるようにする工程と、前記電極(14)間に供給される反応ガスの外側に、反応ガスの流出防止および空気を汚染防止のために、窒素(N2)ガスを基板(12)の外側に供給する工程と、を備えることを特徴とする。 【0013】 本発明にかかる半導体製造装置は、大気圧下において印加されるRF電源(13)によりコロナ放電を起す、基板台(11)上部に設けられた少なくとも1個以上の電極(14)と、前記電極の上方へ反応ガスを供給するガス供給システム(15)と、前記基板台(11)および電極(14)の周囲に設けられて、外部空気によって基板(12)が汚染されるのを防止する排気システム(21)と、前記基板台(11)の上部に設けられ、その移送により前記基板(12)を連続して前記基板台上に移送するタイミングベルト(18)とを備え、前記電極(12)が第1電極(14a)と第2電極(14b)とを有し、この第1電極(14a)および第2電極(14b)が放電室を構成することを特徴とするものである。 【0014】 【実施例】 以下、本発明の一実施例を図3乃至図6に基づいて詳述する。 【0015】【0016】 【0017】 図3は本発明の半導体処理装置を説明するための概略図であり、図4は本発明の電極間距離と放電開始圧との関係を示すグラフであり、図6は本発明の半導体処理装置の一実施例を示す縦断面図および横断面図である。 【0018】 本発明は、大気圧下の基板台11上に載置されたRF電源13でコロナ放電を起す電極14を、図3(a)に示すように、一対設けて一方の電極14を接地させ、他方の電極14はRF電源13と連結する。 【0019】 または図3(b)に示すように、基板12上方に1個の電極14を設けて前記電極14をRF電源13と連結し、基板12が載置される基板台11は接地される。したがってRF電源13を印加すれば、電極14間または電極14と基板台11間にコロナ放電が発生する。 【0020】 コロナ放電が起った状態で、ガス供給システム15により反応ガス、例えばH2、O2、H2、SiH4、SiF4、Si2H6、GeH4、GeF4、Ge2H6、He、Ar、O、CF4、SF6、CH2F2、NF3、CCl2F2、Cl2、CCl4、WF6、2MoCl5、Cr〔C6H5CH(CH3)2〕2、Al(C4H9)3のいずれかのガスを、電極14上部に供給することにより、電極14間に励起された電子が反応ガスの分子を高エネルギーのイオンとラジカル状態にする。 【0021】 このようにコロナ放電により生成された高エネルギーのイオンおよびラジカルは、基板に照射されて半導体表面において化学的反応を起しまたは半導体内に拡散される。 【0022】 上述の工程は大気圧下において行われるが、前記工程進行時に基板12が反応ガス以外の他のガス(空気)から汚染されることを防止するために、前記電極14の周囲を覆うための別の窒素(N2)ガスを供給するのが望ましい。 【0023】 上記工程および装置の基本原理は、図3に示すように、単一の種類の上述の反応ガスを一定流量で供給するガス供給システム15と、コロナ放電を起すRF電力を印加する電源13と、これに連結された少なくとも1個以上の電極14と、基板12を支持しながら、一定温度で加熱する基板台11とから構成される。この時使用電極14はW、Taのような高融点金属であり、コロナ放電時に前記電極の流出により汚染を防止するために、電極表面をMgOまたはSiO2等のような金属酸化膜で表面処理する。また、印加される電源は、アーク放電を防止し、コロナ放電が持続して発生するように、100KHz以上の高周波電源を使用する。 【0024】 各電極間の距離(d1)、電極と基板間の距離(d2)により決められる電界(field)は1KV/mm以上、例えばd1、d2=5mmである場合、5KV以上印加の可能な電源を使用する。 【0025】 図4は、図3(b)である場合の、電極間距離(d2)に対する放電開始電圧(Vi)の依存性を示す。ここで、電極の径φ1、φ2、φ3が1mm、2mm、4mmである場合、前記グラフのように、放電開始電圧(Vi)はd2のLog函数と比例関係にあることがわかる。また電極の径が減少するにしたがって放電開始電圧が減少することがわかる。 【0026】 図3(a)に示すような装置において、溶融されたSiO2で封止したタングステン(W)線を電極材として用い、電極間距離(d1)が2mmとなるようにして水素(H2)雰囲気で水素をガス供給システム15により200sccm供給した。この時、電源13としては周波数80KHzの高周波電源を使用し、電圧を印加すると約6KVの電圧において放電が開始された。 【0027】 図5は、LPCVDによりシリコンウェーハ(基板)上に非晶質シリコン膜を3000Aで形成した後本発明により基板12を350℃で加熱し、8KV電圧で30分間処理することにより、非晶質シリコン膜内に水素(H2)を分布させた状態を分析した結果を示すグラフである。 【0028】 このグラフから、表面の水素(H2)濃度が初期の水素濃度に比べて8倍以上にまで増加したことがわかる。 【0029】 また、非晶質シリコン膜の深さに対して水素濃度はエラー函数(crror function)を示すので、水素の高基板温度に応じた拡散により水素化される。 【0030】 以下、本発明の一実施例を図6を参照してさらに詳述する。 【0031】 本発明は大面積の絶縁基板上に形成された半導体薄膜を大気圧下において連続処理ができるように構成されている。 【0032】 コロナ放電を起す電極14は第1電極(14a)と第2電極(14b)とからなり、第1電極(14a)はW、Nb、Ta、Moのいずれかの金属である。 【0033】 前記第1電極(14a)の表面にはTa2O5、Nb2O5、SiO2、NgOのいずれかの金属酸化膜が塗布されている。第2電極(14b)は表面を金属酸化膜で処理されている。 【0034】 第1電極(14a)の外側には空間部を有する第2電極(14b)が設けられて、少なくとも1個以上の放電室16を備えている。 【0035】 前記放電室16はチューブ状をなし、X軸方向に長く形成されている。この時第1電極(14a)の形状は線または棒状となり、その径は1mm以上になっている。 【0036】 また、前記第1電極(14a)と第2電極(14b)間、すなわち、放電室16の内部への反応ガスの注入はガス供給システム15により一定流量を供給するようになっている。 【0037】 前記放電室16の上部には拡散器17が設けられている。前記放電質16の上部に拡散器17を設ける理由は、放電室16に反応ガスをより均一に供給するためである。 【0038】 また、RF電源13としては交流電源を使用するが、80KHzで最大20KVまで印加することができるようになっており、前記RF電源13は第1電極(14a)および第2電極(14b)の両端に連結されている。 【0039】 前記放電室16で分解された高エネルギーのイオンおよびラジカルが、放電室16下部に拡管されたスリット状のノズルを通過することができるようになっている。 【0040】 基板台11の上部に設けられたタイミングベルト18に基板12が載置されて基板台11に移送された後、一定温度で加熱された状態で、工程が行われるようになっている。 【0041】 この時、各工程の進行は、反応ガスの流量、放電電圧、ベルト移送速度、基板台の加熱温度により制御される。 【0042】 また、装置において反応ガスが流出されることを防止し、外部の空気によって装置が汚染されることを防止するために、窒素(N2)ガスが基板12の外側に供給されるようになっている。 【0043】 前記窒素ガスは、第2電極(14b)に形成された窒素供給口19を通じて窒素供給システム20から供給されるので、反応ガスの流出および基板の汚染を防止することが可能となる。 【0044】 また、反応ガスを外部へ排出する排気システム21は、タイミングベルト18の外側と上部とに設けられている。未反応ガスを大気に強制排出する前に酸素を利用して酸化させて排気することにより、大気を汚染させないようにしている。 【0045】 以下、反応ガスの種類に応じて基板の製造工程が相異することを、実施例を参照して説明する。 実施例1 ウェーハ不純物のドーピング方法 本発明で用いた水素(H2)ガスの代わりに、半導体不純物ドーピング用ガスである3価または5価の元素を含むフォスフィン(PH3)、ジボラン(B2H5)、アルシン(AsH3)ガス等を、ガス供給システム15と拡散器17を通過させて放電室16に供給し、前記反応ガスをコロナ放電を利用して分解して基板12表面の半導体薄膜に拡散させることにより、n型またはp型の半導体を製作する。 【0046】 大気圧下において、高エネルギーで分解された3価または5価の元素を基板12に照射することにより、高温で拡散させてイオン注入を行なう従来の半導体ドーピング方法と比べて、半導体膜を含む大面積の基板の不純物のドーピング処理を大量に行なうことができる。 実施例2 表面洗浄および高分子膜除去工程 本発明で用いた水素(H2)ガスの代わりに酸素ガスを用いれば、放電により分解された高エネルギーの酸素イオンおよび酸素ラジカルが基板12の表面に照射される。これにより、高エネルギーの酸素イオンおよび酸素ラジカルは基板12の表面に残っている有機物と反応して酸化され、除去される。 【0047】 特に、このような方法は、フォトレジスト膜を除去するためのアッシング(Ashing)工程において大気圧下で高エネルギーの酸素イオンおよび酸素ラジカルを用いることより、従来技術であるドライ-エッチ(Dry-Etoh)または紫外線-アッシング(UV-Ashing)処理に比べて量産が可能である。 実施例3 半導体膜の形成方法 本発明で用いた水素(H2)ガスの代わりにシラン系ガス(SiH4、Si2H6、SiF4)を用いてコロナ放電を利用して分解させた後、これを加熱基板12上に照射することにより、基板温度に応じて非晶質シリコンまたは結晶質シリコン膜を形成する。 【0048】 従来、半導体膜の形成装置は高価の真空設備であるが、本発明は大気圧下における連続形成工程が可能であるので生産性が向上する。 実施例4 絶縁膜の形成方法 本発明で用いた水素(H2)ガスの代わりにシラン系ガスおよび酸化性ガス(O2、N2O等)または窒化膜用ガス(NH3等)を混合して使用することにより、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜の形成が可能である。 【0049】 またシラン系ガスの代わりに、各種金属が含まれた反応ガス、例えばWF6、2MoCl5、Cr〔C6H5CH(CH3)2〕2、Al(C4H9)3のいずれかのガスを、酸化性ガスまたは窒化膜用ガスと混合して反応させることにより、基板表面に金属酸化膜や金属窒化膜が形成される。 実施例5 乾式触刻方法 本発明で用いた水素(H2)ガスの代わりに、CF4、NF3、CH2F2、SF6、CCl2F2等、乾式触刻時に使用される反応ガスをコロナ放電を利用して分解させた後に基板に照射することにより、基板表面の金属膜、半導体膜、絶縁膜の乾式触刻が可能である。 【0050】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、1個の装置で大気圧下において多種の反応ガスを選択的に供給し、これをコロナ放電を利用して分解させた後、基板表面に照射して化学的な反応または拡散が起るようにしたので、大面積の基板に対する処理能力を向上させることができる。さらに、前記装置を大気圧状態で処理される各種工程に連結する場合には、これらの工程を連続して行なうことができるので、半導体を一括して大量生産することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 従来の半導体水素化処理用装置の一例を示す縦断面図である。 【図2】 従来の半導体水素化処理用装置の他の例を示す縦断面図である。 【図3】 本発明の半導体処理装置を説明するための概略図である。 【図4】 本発明による電極間の距離と放電の開始電圧との関係を示すグラフである。 【図5】 本発明により非晶質シリコン膜が形成されたシリコンウェーハを水素化処理して水素分布を分析したグラフである。 【図6】 本発明の半導体処理装置の一実施例を示す断面図で、(a)は縦断面図であり、(b)は横断面図である。 【符号の説明】 11 基板台 12 基板 13 電源 14 電源 14a 第1電極 14b 第2電極 15 ガス供給システム 16 放電室 17 拡散器 18 タイミングベルト 19 窒素供給口 20 窒素供給システム 21 排気システム |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-01-21 |
出願番号 | 特願平5-303426 |
審決分類 |
P
1
651・
531-
YA
(H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L) P 1 651・ 113- YA (H01L) P 1 651・ 534- YA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
影山 秀一 |
特許庁審判官 |
瀬良 聡機 川真田 秀男 |
登録日 | 2003-02-28 |
登録番号 | 特許第3403781号(P3403781) |
権利者 | エルジー フィリップス エルシーディー カンパニー リミテッド |
発明の名称 | 半導体製造方法及び半導体製造装置 |
代理人 | 橘谷 英俊 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 園田 吉隆 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 佐藤 一雄 |
代理人 | 橘谷 英俊 |
代理人 | ▲吉▼元 弘 |
代理人 | 吉元 弘 |
代理人 | 園田 吉隆 |
代理人 | 佐藤 一雄 |