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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B21B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B21B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B21B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B21B
管理番号 1114598
異議申立番号 異議2003-70502  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-26 
確定日 2005-01-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3317164号「熱延鋼帯の製造方法およびその方法に使用する熱間圧延設備列」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3317164号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3317164号の発明についての出願は、平成8年11月12日に特許出願され、平成14年6月14日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、新日本製鐵株式会社及び恒本昌美より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年11月4日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否について
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
請求項1の「備えたことを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。」を、「備えたことを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。ただし、粗バー先端部とは、被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部をいう。」と訂正する。
(2)訂正事項b
請求項2の「具備したことを特徴とする熱間圧延設備列。」を、「具備したことを特徴とする熱間圧延設備列。ただし、粗バー先端部とは、被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部をいう。」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書段落【0013】の「具備している。なお加熱手段としては、」を、「具備している。ただし、粗バー先端部とは、被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部をいう。なお加熱手段としては、」と訂正する。
なお、訂正請求書の「(3)訂正の要旨 3訂正事項(3数字は丸数字)」欄と、添付された訂正明細書では訂正挿入する箇所が異なっているが、訂正請求書に添付された訂正明細書の記載に基づき上記のとおり訂正事項cを認定した。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)上記訂正事項a、bは、請求項1、2に記載された「粗バー先端部」についての定義規定、即ち「粗バー先端部とは、被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部をいう。」を挿入し、粗バー先端部について、仕上加速圧延との関係において明確にしようとするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
そして、粗バー先端部が、被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部であることは、特許明細書段落【0024】の記載に裏付けられている。
(2)上記訂正事項cは、特許請求の範囲の訂正に基づき訂正後の請求項と整合するよう、発明の詳細な説明の記載を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明に該当する。
そして、該訂正は、いずれも願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立てについて
1.特許異議申立ての概要
(1)特許異議申立人新日本製鐵株式会社は、証拠として下記甲第1、2号証を提出し、訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、又甲第1、2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該特許は特許法第29条第1項第3号、又第2項の規定に違反してされたものであって、更に本件特許明細書には記載不備があり、該特許は特許法第36条第4、6項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、これらを取り消すべき旨主張する。

甲第1号証:特開昭61-119328号公報(以下、「刊行物1」という)
甲第2号証:特開平6-320202号公報(以下、「刊行物2」という)

(2)特許異議申立人恒本昌美は、証拠として下記甲第1〜6号証を提出し、訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、該特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、これらを取り消すべき旨主張する。

甲第1号証:特開平8-150401号公報(以下、「刊行物3」という)
甲第2号証:特開平7-241602号公報(以下、「刊行物4」という)
甲第3号証:特開平6-246307号公報(以下、「刊行物5」という)
甲第4号証:特開平7-185605号公報(以下、「刊行物6」という)
甲第5号証:特開平6-320202号公報(「刊行物2」に同じ)
甲第6号証:特開平6-277754号公報(以下、「刊行物7」という)

2.本件発明
本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という)は、平成15年11月4日付け訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】スラブを粗圧延機で粗圧延して粗バーとする工程と、粗バーをコイルボックスで巻き取る工程と、コイルボックスから払い出された粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱する加熱工程と、加熱された粗バーを仕上加速圧延する工程とを備えたことを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。ただし、粗バー先端部とは、被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部をいう。
【請求項2】スラブを粗圧延して粗バーとする粗圧延機と、セラミックファイバーを固めた断熱材で内壁を覆って構成され、粗バーを巻き取るコイルボックスと、コイルボックスから払い出された粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱する加熱手段と、加熱された粗バーを仕上加速圧延する仕上圧延機とを具備したことを特徴とする熱間圧延設備列。ただし、粗バー先端部とは、被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部をいう。」

3.各刊行物の記載事項
(1)刊行物1(特開昭61-119328号公報)
(1a)「1)粗圧延機と仕上圧延機間に、粗圧延した圧延材を一旦コイル状に巻取りその後巻戻して仕上圧延機に導くコイルボックスを備え、さらに前記コイルボックスの入側または出側に圧延材を減速させて加熱する装置を設けたことを特徴とする熱間圧延設備。」(特許請求の範囲1))
(1b)従来技術として、「上記欠点を改良し、・・・、粗圧延機と仕上圧延機間の間隔を短縮し、その間にコイルボックスと称する圧延バー巻取り装置を配置する方法が提案されている・・・」(2頁左上欄5〜10行)、
「しかし、第2図に示すとおり、巻戻し時の圧延バー先端部分gはコイルdの最外層を形成しており、コイル内層部に較べて巻取られた直後に巻戻されるので保温効果がないため粗圧延機を出た時の温度差をそのまま有しておりその結果仕上圧延機入側温度は20〜30℃低くなる。このためストリップ先端部分の仕上圧延機f出側温度は最も低い温度を示す。元来、仕上圧延機出側温度は、製品の冶金的な品質を確保するために重要であり、加熱炉出側温度は、ストリップの仕上出側温度の最も低い点、この場合の先端部gの温度を補償するための圧延バーb全体を加熱しなければならず、コイルボックスを用い熱降下を防止しようとしてもまだこの点に熱経済上無駄な点が含まれている。
従来ストリップの温度を圧延中に上昇させるために仕上げ圧延機を加速させるいわゆるズームアップミルが用いられているがズームアップする迄の先端部の温度が問題であり、先端部はズームアップ前にミルを通過してしまうため昇温効果が無かった。」(2頁右上欄9行〜左下欄9行)
(1c)作用として、「本発明の設備は、コイルを形成した際に、コイル最外層およびその近傍に相当する圧延材部分を加熱するだけで、仕上圧延機出側温度を均一化できるので、加熱出口温度を低減させることができ、僅かな追加入熱で大量の熱エネルギ一を節約することができる。特にコイルボックスの近傍で加熱するということは、加熱の間バー速度を大幅に減速することにより小容量の加熱装置で済み、また他の部分はコイル状に保持されているので熱降下の問題が発生しないという利点がある。」(2頁左下欄19行〜右下欄9行)
(1d)実施例として、「次に、コイルボックス6の作業を説明する。粗圧延側テーブルローラ4上を矢印方向に搬送されてきた圧延バー3は、・・・コイル状に巻取られ(矢印c)、圧延材先端部が或る巻数だけ巻取られると・・・自重によって巻取りが進行する。巻取りが完了すると・・・コイル1を巻戻し位置に移動し(矢印l)、巻取り時の尾端部gが巻戻し時の先端部になって仕上圧延機(図示せず)に向って矢印方向に搬送される。上述の巻取り工程末期に、圧延バー尾端部g側の所要区間、すなわちコイルを形成した際のコイル最外層およびその近傍に相当する区間をバーナ18を用いて加熱し、20〜30℃昇温させる。この際、加熱効率を高めるため巻取り速度を適宜減少させる。この結果、図示しない仕上圧延機入側温度は第2図に太い実線mで示したように上昇し、入側の温度がほぼ均一になる。」(3頁右上欄3行〜左下欄3行)
(1e)「さらにバーナ設置場所は、コイルボックスの入側、出側の一方、または両方に設置してもよいこと、・・・またさらに、バーナの替わりに電気誘導加熱装置を用いてもよいことなど、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加え得ることは勿論である。」(3頁左下欄12〜20行)
(1f)発明の効果として、「本発明の熱間圧延設備は、コイルボックスの入側、出側または内部に加熱装置を設け、コイル巻取り時の圧延材尾端部またはコイル巻戻し時の圧延材先端側の或る区間を加熱することにより加熱炉加熱温度を低減することができ、省エネルギに大いに貢献する、という優れた効果を発揮する。」(3頁右下欄2〜8行)が記載されている。

(2)刊行物2(特開平6-320202号公報)
(2a)「【請求項1】粗圧延機及び仕上圧延機列を備え、該圧延機で熱間材を圧延する熱間圧延設備において、前記熱間仕上圧延機列の前段に、大径作業ロールを備え、かつ、作業ロールを直接駆動する圧延機を配置し、前記熱間仕上圧延機列の少なくとも後段に、小径作業ロールを備え、かつ、補強ロール或いは中間ロールにより該作業ロールを間接的に駆動する圧延機を配置したことを特徴とする熱間圧延設備。
【請求項21】請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱間圧延設備において、前記熱間仕上圧延機列の入側に、保熱カバーを備えた巻取・巻出コイラーを設け、前記粗圧延機で圧延されたバー材を一旦巻取るようにしたことを特徴とする熱間圧延設備。
【請求項26】請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱間圧延設備において、前記熱間仕上圧延機入側に巻取・巻出装置とデスケーラを配置し、更に該巻取・巻出装置と該デスケーラの間に誘導式バーヒータ或いはエッジヒータを配置したことを特徴とする熱間圧延設備。」
(2b)「【0025】また、仕上圧延を低速で行うと、熱間材は熱間仕上圧延機列入側にて仕上圧延されるまでに長い時間外気と接触したまま放置されることになる。・・・
【0026】本発明では、これを防ぐために熱間仕上圧延機列の入側に粗圧延機で圧延されたバー材を巻取り、巻出すコイラーを設けている。このように、バー材を巻取ることによって外気との接触表面積は小さくなり放熱量もスケール発生量も抑制することができる。しかも、前記コイラーには、放熱を防止するためのカバーが設けられておりその効果を最大限に発揮出来る構造としている。」
(2c)「【0029】また、熱間材のエッジ部の温度は中央部に比べて30乃至40℃程度低くなりがちである。また、粗圧延機で圧延されたバー材をコイル材に形成した場合、コイル最外層の温度は内部に較べて30乃至40℃程度低い。
【0030】本発明では、エッジヒータ或いはバーヒータを巻取・巻出装置とデスケーラの間に設置し、熱間材の温度状態を均一にするものである。」
(2d)「【0163】・・・各実施例におけるコイルボックス及びデスケーリング装置の概略図であり、コイルボックス9にて圧延材87を巻き取った後、コイル巻出し位置10より圧延材103を仕上圧延機14に供給している間に、圧延材の温度特にエッジ部からの放熱によるエッジ部の温度低下を防ぐための断熱カバー128を設けたものである。この断熱カバーは、例えばグラスウール等の断熱機を内張りしたカバーによりコイルを覆い、コイルよりの放熱を防止するものである。・・・」が記載されている。

(3)刊行物3(特開平8-150401号公報)
(3a)「【請求項1】薄スラブキャスタの下流に,コイリング用加熱装置,コイルボックス,熱間圧延用加熱装置,熱間仕上圧延機を順次連接したことを特徴とする薄スラブキャスタ圧延設備。」
(3b)「【0007】【作用】薄スラブキャスタによって連結鋳造した薄スラブは,コイリング用加熱装置によって,コイルボックスでの巻取りに必要な最低限の温度に維持できる。コイルボックスは,この薄スラブをコイル状に巻取り,薄スラブキャスタの低速の鋳造速度と熱間仕上圧延機の高速の圧延速度との速度差を調整する。次に,この薄スラブコイルをコイルボックス内で巻戻し,熱間圧延用加熱装置によって熱間圧延に必要な温度に昇温し,熱間仕上圧延機によって熱延帯材に仕上圧延することができる。」
(3c)「【0009】次に,本装置の作用について説明する。図1に示すように,ツインベルト式の薄スラブキャスタ30によって連結鋳造した薄スラブ37を粗圧延機40によって粗圧延し,・・・この粗圧延薄スラブ38をコイリング用加熱装置10の誘導加熱器1内を通過させ,コイルボックス70内でのコイリングに必要な最低限の温度である800〜900℃に維持し,ピンチロール19または駆動モータ付き搬送ロール68によってコイルボックス70へ搬送する。
【0010】コイルボックス70は,粗圧延薄スラブ38を・・・巻取り,・・出側クレードルロール74に移載し,薄スラブキャスタ30の低速の鋳造速度と熱間仕上圧延機群80の高速の圧延速度との速度差を調整する。」が記載されている。

(4)刊行物4(特開平7-241602号公報)
(4a)「【請求項1】スラブを所定の温度に加熱する加熱炉または直接連続鋳造機と、当該加熱炉または直接連続鋳造機の下流に設置される1基または2基以上のリバース式の仕上圧延機と、前記リバース式の仕上圧延機と前記加熱炉または直接連続鋳造機との間に設置されて、リバース圧延の際の逆走時の被圧延材の搬送方向変更機能を備えるピンチロールと、当該ピンチロールにより搬送方向を変更されて逆走する被圧延材の巻取り・払出しを行う中間巻取り機とを備える熱間圧延装置で、前記リバース式の仕上圧延機と前記ピンチロールとの間に、前記被圧延材を全巾にわたって加熱する全巾加熱装置、および/または前記被圧延材の両端部を加熱する縁部加熱装置を備えることを特徴とする熱間圧延装置。」
(4b)従来技術として、「【0008】この熱間圧延装置は、複数回のリバース圧延を行うリバース式の仕上圧延機と、逆走時のストリップを一旦コイルに巻取りその後に払い出す中間巻取り機とを設置して、リバース式の仕上圧延機により連鋳スラブの圧下をリバースして行い、巻取り可能な板厚まで圧下が進行したら中間巻取り機により被圧延材を一旦コイルに巻取って被圧延材の長手方向の温度分布の均一化を図り、再度払い出してリバース式の仕上圧延機により所定の板厚に仕上圧延を行うものである。すなわち、リバース式の仕上圧延機は、従来の熱間圧延装置が有する粗圧延および仕上圧延の両方の機能を有する。」
「【0010】・・・板厚が30mm以下の被圧延材は、リバース圧延に伴うランナウトテーブルでの放冷のために、圧延方向の各部の温度分布の不均一、および特に、前述の中間巻取り機によりコイルに巻き取られた被圧延材の外周に位置する被圧延材の前端部側の温度降下量と、中間巻取り機を構成するマンドレルに接触する被圧延材の後端部側の温度降下量はともに大きくなって被圧延材に圧延方向の温度分布の不均一が発生し、被圧延材の圧延方向の各部、特に仕上圧延によりストリップの前端部側および後端部側に板厚不均一が発生してしまう。・・・」
(4c)「【0016】本発明は、上記の従来の技術の有する問題に鑑みてなされたものであり、中間巻取り機を有する熱間圧延装置で被圧延材たるストリップのリバース圧延を行う際に、熱間圧延時の被圧延材の圧延方向、さらには幅方向の温度分布の均一化を図ること、具体的には被圧延材の圧延方向についての温度差、および特に前端部側および後端部側それぞれの温度差を10〜30℃の範囲に抑制することができる熱間圧延装置を提供しようとするものである。」が記載されている。

(5)刊行物5(特開平6-246307号公報)
(5a)「【請求項1】粗圧延を施した板材を一たん巻き取り、これを巻戻して仕上げ圧延を行う板材の熱間圧延において、粗圧延した板材の巻き取り巻戻しを行う装置の入側および出側の少なくとも一方で該板材の表面に冷媒を噴射して冷却することを特徴とする板材の熱間圧延方法。
【請求項2】・・略・・
【請求項3】板材の速度を徐々に高めていく加速圧延を行う請求項1記載の方法。」
(5b)従来技術として、「【0008】しかしながら、板の巻き取り巻戻し装置を適用した圧延ラインにおいて発生する表面きずのうちでもスケールの噛み込みに起因したきず ・・・については未だ解決されていないのが現状であった。また、ホットストリップミルにおいては、通常、板の先端がコイラーに達するまでは低速で圧延を行い(板材の先端がコイラーに達するまではホットテーブル上の板は無張力状態なので不安定であり高速圧延を行うことができないから)、板の先端がコイラーに達してから昇速して最終圧延速度とするのが一般的である。ところが、このような低速度圧延ではミルの圧延能率が上がらないばかりでなく、仕上げ出側温度 (以下, FDTという) の均一性が確保できないという問題があり、従来はズームアップ圧延 (加速圧延) を行うことによってFDTの均一性を保つようにしていた。しかしながら、このような圧延において板材の巻き取り巻戻し装置を適用すると、該装置での保熱作用により仕上げ入側温度(以下,FETという)が板材の後端にいくに従い上昇する、いわゆる温度勾配を生じ、目標とするFDTの許容範囲に収めることが困難となり均質なストリップが得難いという問題もあった。」
(5c)「【0009】この発明の目的は、板材の巻き取り巻戻しを伴う圧延ラインで生じていた上述したような問題を解決すべくなされたものであり、スケールの噛み込みに起因した表面きずの発生を回避して高い品質を確保し、あわせて生産性の改善するのに有利な方法を提案するところにある。」
(5d)「【0014】次に、板材の巻き取り巻戻しを行う装置(以下,C/Bで記す)の使用、不使用、ズームアップ圧延、非ズームアップ圧延によるFET, FDT, F1 (第1段ミル) 通過速度の変化、およびそれに伴うスケール剥離性の変化状況を図6a〜cに示す。・・・C/Bを使用しないかまたは使用してもズームアップ圧延を行わなければ、FDTの変動幅は小さくなり、また噛み込みスケールきずの発生しない安全域に収めることができるが、C/Bを使用しかつ生産性の改善を図るべくズームアップ圧延を行うとC/Bの保熱作用によりFETが板材の後端に近づくにつれ上昇し、その結果、FDTが先端部分の温度は尾端部分よりも高くなり目標とするFDTの許容範囲から大きく外れ材質の均一化が困難となり、しかも板材の尾端からその全長の約1/3 (全長の) 程度の範囲においてスケールが剥離しにくく、噛み込みスケールが発生しやすい領域に入ってしまうのが明らかである。・・・」
(5e)「【0015】この発明は、種々の実験の結果明らかになった知見に基づき板材の巻き取り巻戻し装置の入側および出側の少なくとも一方でスケールの剥離性に悪影響を与えない温度域に保持すべく該板材の表面に冷媒を噴射して冷却するようにしたものであり、これによれば仕上げ圧延の入側で行うFSBの後においては板材の表面に残存するスケールは極めて少なく、従来不可避であった噛み込みスケールきずは有利に軽減される。・・・」が記載されている。

(6)刊行物6(特開平7-185605号公報)
(6a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は連続鋳造機により得られた扁平状のスラブを圧延して熱間薄板材を製造する熱間薄板材製造設備および熱間薄板材の製造方法に関する。」
(6b)「【0018】・・・本願発明では、連続鋳造機により得られた扁平状のスラブを圧延して熱間薄板材を製造する熱間薄板材製造設備において、その熱間薄板材製造設備の構成を、厚み60〜120mmのスラブを鋳造する連続鋳造機と、該連続鋳造機で製造されたスラブを所定の長さに切断するスラブ切断機と、該スラブ切断機で切断されたスラブの全断面を加熱するスラブ加熱装置と、該スラブ加熱装置で加熱されたスラブを所定時間保定する保定炉と、該保定炉で保定されたスラブを圧延する2台或いは2台以上の圧延機から成る圧延機群とから構成し、しかも、該圧延機群の入出側にそれぞれ巻戻し兼用の巻取機を配置して、前記スラブを該巻戻し兼用の巻取機で繰返し巻取り巻戻しながら複数パス圧延して熱間薄板を製造するようにしたものである。」
(6c)「【0047】第1回目の圧延が終了した後、コイル23を逆回転して、ノズル19でデスケーリングを行った後、逆パス圧延を行う。そして、2つの圧延機18、第1の圧延機17の順に逆パス圧延されて圧延材14は・・・に減厚され、ピンチローラ15により導かれ巻取胴13を有する巻取機によりコイル12に巻取られる。この入側巻取機も巻取機能の他に巻出機能を有し、しかもコイル12を防熱するために防熱カバー10が設けられている。・・・」が記載されている。

(7)刊行物7(特開平6-277754号公報)
(7a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、主として熱間圧延鋼帯の巻き取り方法において、巻き取り時の鋼帯の長手方向における鋼帯温度を均一一定に保つ巻き取り方法に係わる。」
(7b)「【0009】断熱特性を有する材料としては種々のものがあるが、高速で移送される熱間圧延鋼帯を巻き取る場合、セラミックス等の硬度の高い材料では鋼帯に疵をつける、鋼帯巻き取り途中で破損する等の弊害がある。従って、材料としては断熱特性とともに弾力性を有する材料が望ましく、この観点からシリカ系の断熱ボードが適切である。」が記載されている。

4.対比・判断
(4-1)本件発明1と刊行物1との対比
刊行物1には、従来、粗圧延機と仕上圧延機間の間隔を短縮し、その間にコイルボックス装置を配置する方法が提案されているが、巻戻し時の圧延バー先端部分gはコイルdの最外層を形成しており、コイル内層部に較べて巻取られた直後に巻戻されるので保温効果がないため粗圧延機を出た時の温度差をそのまま有しており、その結果仕上圧延機入側温度は20〜30℃低くなる。このためストリップ先端部分は最も低い温度を示す。仕上圧延機出側温度は、製品の冶金的な品質を確保するために重要であり、加熱炉出側温度は、ストリップの仕上出側温度の最も低い点、この場合の先端部gの温度を補償するための圧延バーb全体を加熱しなければならず、コイルボックスを用い熱降下を防止しようとしてもまだこの点に熱経済上無駄な点が含まれている。又従来ストリップの温度を圧延中に上昇させるために仕上げ圧延機を加速させるいわゆるズームアップミルが用いられているがズームアップする迄の先端部の温度が問題であり、先端部はズームアップ前にミルを通過してしまうため昇温効果が無かったという(摘記事項(1b))問題認識の下、本発明の設備は、コイルを形成した際に、コイル最外層およびその近傍に相当する圧延材部分を加熱するだけで、仕上圧延機出側温度を均一化できるので、加熱出口温度を低減させることができ、僅かな追加入熱で大量の熱エネルギ一を節約することができ、特にコイルボックスの近傍で加熱するということは、加熱の間バー速度を大幅に減速することにより小容量の加熱装置で済み、また他の部分はコイル状に保持されているので熱降下の問題が発生しないという利点があるとしている(摘記事項(1c))
そして、刊行物1には摘記事項(1a)〜(g)を総合すると、「スラブを粗圧延機で粗圧延して圧延材とする工程、粗圧延した圧延材を一旦コイルボックスで巻取る工程、その後コイルボックスから巻戻し圧延材を減速させてコイル巻戻し時の圧延材先端側の或る区間(コイル最外層およびその近傍)を加熱する加熱工程と、加熱された圧延材を仕上圧延する工程とを備えた熱間鋼帯の製造方法。」の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていることになる。
そこで、本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「圧延材」は、本件発明1の「粗バー」に相当するから、両者は、「スラブを粗圧延機で粗圧延して粗バーとする工程と、粗バーをコイルボックスで巻き取る工程と、コイルボックスから払い出された粗バーを加熱する加熱工程と、加熱された粗バーを仕上圧延する工程とを備えた熱延鋼帯の製造方法。」で一致しているが、次の点で相違している。
相違点a:コイルボックスから払い出された粗バーを加熱する加熱工程が、本件発明1では、粗バー先端部(被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部)を幅方向全体にわたって加熱するのに対して、刊行物1発明では、コイル巻戻し時の圧延材先端側の或る区間(コイル最外層およびその近傍)を加熱するとしている点。
相違点b:加熱された粗バーを仕上圧延する工程が、本件発明1では、仕上加速圧延するのに対して、刊行物1発明では、仕上圧延するものの仕上加速圧延しているかが記載されていない点。

次に、相違点a、bについて検討する。
本件発明1は、粗圧延機と仕上圧延機の間で、粗バーの失う熱量をできるだけ小さく抑え、粗バーを効率よく加熱して、圧延制約を回避し、かつ、熱延鋼板において良好な表面性状を維持することを目的としたもので(特許明細書段落【0012】)、コイルボックスによる保温と仕上加速圧延により仕上げ温度を確保するという温度効果を利用し、それでも加熱が必要となる仕上加速圧延における粗バー先端部、即ち仕上圧延された先端がコイラーに巻き付くまでの領域を幅方向全体にわたって加熱することを特徴とするものであって、上記相違点a、bは、実質的に、本件発明1が、コイルボックスと仕上加速圧延とを組み合わせ、その際仕上加速圧延における被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部である粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱するのに対して、刊行物1発明は、この点を備えていないこと、と言い換えることができる。
そして、このコイルボックスと仕上加速圧延とを組み合わせた際の課題解決手段が、自明な事項であって実質的な相違点でないとすることは到底できないから、本件発明1は刊行物1に記載された発明ではない。

なお、特許異議申立人新日本製鐵株式会社は、特許異議申立書で「そして、さらに、甲第1号証に、従来技術の問題点について、・・・と記載されているように、甲第1号証熱延設備においては、仕上圧延機で仕上加速圧延を行なう際における圧延バー先端部分の温度を問題の一つとして認識していることから、甲第1号証熱延設備は、仕上圧延機において仕上加速圧延を行う場合に対しても対処し得るものである。」(12頁1〜9行)としているが、甲第1号証(刊行物1)が出願された当時、熱間圧延設備においてコイルボックスを設け圧延バーを巻取ることによって、温度低下を改善しほぼ一定の圧延速度で先端から後端まで仕上圧延できるから、加速圧延が不要であるとすることが当業者における通常の認識であるから(必要ならば、特開平6-269805号公報の段落【0006】【0007】、特公昭50-30028号公報の10欄15〜39行参照)、刊行物1に仕上加速圧延を行なう際の問題が記載されているからと云って、刊行物1発明の仕上圧延が、仕上加速圧延にも対処できるとも、仕上加速圧延を意図しているとも解することはできない。

(4-2)本件発明1の刊行物1に基づく容易性について
上記(4-1)で示したとおり、実質的に本件発明1と刊行物1発明とは、本件発明1が、コイルボックスと仕上加速圧延とを組み合わせ、その際仕上加速圧延における被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部である粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱するのに対して、刊行物1発明は、この点を備えていないことで相違している。
そこで、検討すると、刊行物5には、熱間圧延設備においてコイルボックスと仕上加速圧延とを組み合わせること(摘記事項(5a))、及びC/B(コイルボックス)を使用しかつ生産性の改善を図るべくズームアップ圧延を行うとC/Bの保熱作用によりFET(仕上げ入側温度)が板材の後端に近づくにつれ上昇し、その結果、FDT(仕上げ出側温度)が先端部分の温度は尾端部分よりも高くなり目標とするFDTの許容範囲から大きく外れ材質の均一化が困難となり、しかも板材の尾端からその全長の約1/3 (全長の) 程度の範囲においてスケールが剥離しにくく、噛み込みスケールが発生しやすい領域に入ってしまうので、板材の巻き取り巻戻し装置の入側および出側の少なくとも一方でスケールの剥離性に悪影響を与えない温度域に保持すべく該板材の表面に冷媒を噴射して冷却するようにしたこと(摘記事項(5b)〜(5e))が記載されている。このことは、熱間圧延設備においてコイルボックスと仕上加速圧延とを組み合わせると、ズームアップにより温度上昇してしまう板材の後端、即ち尾端からその全長の約1/3 程度の範囲を冷媒を噴射して冷却するようにしたものであって、本件発明1の技術思想とは異なるものである。
更に、これ以外の各刊行物には、熱間圧延設備においてコイルボックスと仕上加速圧延とを組み合わせることも開示されていない。
そうすると、上記各刊行物の記載には、コイルボックスによる保温と仕上加速圧延により仕上げ温度を確保するという温度効果を利用し、それでも加熱が必要となる仕上加速圧延における粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱するという技術思想の開示ないし示唆はなく、そのための上記相違点なる構成を当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、本件発明1は、上記相違点なる構成により、明細書に記載された粗圧延機と仕上圧延機の間で、粗バーの失う熱量をできるだけ小さく抑え、粗バーを効率よく加熱して、従來の圧延制約を回避することができ、かつ熱延鋼板の良好な表面性状が維持できる熱間圧延設備列を提供することができ、仕上圧延荷重、負荷の軽減や、圧延仕上温度の確保が容易となり、かつ、加熱手段によるエネルギー原単位も小さく抑えることができるという刊行物1〜7の記載からは予測することのできない格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1〜7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4-3)本件発明1と刊行物3との対比
刊行物3には、薄スラブキャスタによって連続鋳造した薄スラブをコイリング用加熱装置によって、コイルボックスでの巻取りに必要な最低限の温度に維持してコイル状に巻取り、薄スラブキャスタの低速の鋳造速度と熱間仕上圧延機の高速の圧延速度との速度差を調整し、次いでこの薄スラブコイルをコイルボックス内で巻戻し、熱間圧延用加熱装置によって熱間圧延に必要な温度に昇温して、熱間仕上圧延機によって熱延帯材に仕上圧延することが記載されている。
そこで、本件発明1とを対比すると、上記(4-1)で示したと同様の相違点a、bが存在し、実質的に両者は、本件発明1が、コイルボックスと仕上加速圧延とを組み合わせ、その際仕上加速圧延における粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱するのに対して、刊行物3では、この点を備えていないことで相違していることになる。
そして、この点は上記(4-2)で述べたと同様、刊行物5には、熱間圧延設備においてコイルボックスと仕上加速圧延とを組み合わせることは記載されてはいるが、他の各刊行物の記載を参酌しても、コイルボックスによる保温と仕上加速圧延による仕上げ温度を確保するという温度効果を利用し、それでも加熱が必要となる仕上加速圧延における粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱するという技術思想の開示ないし示唆はなく、そのための上記相違点なる構成を当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、本件発明1は、上記相違点なる構成により、明細書に記載された刊行物1〜7の記載からは予測することのできない格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1〜7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4-4)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の熱延鋼帯の製造方法に使用する熱間圧延設備列の発明であって、「セラミックファイバーを固めた断熱材で内壁を覆って構成され、粗バーを巻き取るコイルボックスと、コイルボックスから払い出された粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱する加熱手段と、加熱された粗バーを仕上加速圧延する仕上圧延機とを具備したこと」を特定するものであるが、実質的には上記(4-1)で述べたと同様、コイルボックスと加速圧延する仕上加速圧延機とを組み合わせ、その際粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱する加熱手段を備えるものである。
しかしながら、上述したとおり刊行物1〜7の記載からは、この構成を容易に構成することはできず、本件発明2は、刊行物1〜7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4-5)特許法第36条違反について
特許異議申立人新日本製鐵株式会社は、本件明細書には以下の記載不備があるから、本件特許は、特許法第36条第4項、6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張している。
a.本件明細書には「コイルボックスから払い出された粗バーの先端部を幅方向全体にわたって加熱する」ことの技術的意義、及び「加熱された粗バーの仕上圧延として“仕上加速圧延”」を採用することの技術的意義が、相互に関連付けられて明確に記載されておらず、発明の詳細な説明の欄には当業者が本件各発明を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されておらず、又特許請求の範囲の記載は、本件各発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとも、明確であるとも認められない。
b.本件明細書には仕上圧延として“仕上加速圧延”を採用する実施例が記載されておらず、また、実施例に替わり得る技術事項も記載されていないから、発明の詳細な説明の欄には当業者が本件各発明を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されておらず、又特許請求の範囲の記載は、本件各発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとも、明確であるとも認められない。

そこで、上記主張について検討する。
主張aについて
本件各発明は、上で述べたとおりコイルボックスと仕上加速圧延とを組み合わせたことを前提とし、その際加熱が必要となる、被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部である粗バーの先端部、即ち熱延鋼帯の先端がコイラーに巻き付くまでの領域を幅方向全体にわたって加熱するものであるところ、本件特許明細書段落【0022】〜【0028】、【0037】〜【0039】の記載によれば、特に段落【0024】「圧延仕上温度確保の手段として普通に用いられる仕上加速圧延(被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく)を用いれば、仕上圧延速度の最も遅い熱延鋼帯の先端部以外は、圧延仕上温度の確保が容易だからである。」、段落【0028】「かくして、仕上加速圧延と本発明の熱間圧延設備列を組み合わせれば、容量の小さな加熱手段5でも十分な効果を得ることができる。」と記載されており、コイルボックスと仕上加速圧延との技術的意義およびその関連性について当業者ならば容易に理解できる。そうすると、発明の詳細な説明には当業者が本件各発明を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されているものであって、上記主張は採用することができない。
主張bについて
本件明細書には、仕上圧延として仕上加速圧延を採用する実施例は記載されていない。しかしながら、仕上加速圧延を前提とするものであること及び仕上加速圧延については、本件特許明細書段落【0024】【0028】【0032】に記載されており、実施例の記載がなくともこれらの記載に基づいて当業者ならば本件各発明を実施することができるものであるから、上記主張は採用することができない
よって、本件発明の特許は、特許法第36条に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとすることはできない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1、2に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
熱延鋼帯の製造方法およびその方法に使用する熱間圧延設備列
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】スラブを粗圧延機で粗圧延して粗バーとする工程と、粗バーをコイルボックスで巻き取る工程と、コイルボックスから払い出された粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱する加熱工程と、加熱された粗バーを仕上加速圧延する工程とを備えたことを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。ただし、粗バ-先端部とは、被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部をいう。
【請求項2】スラブを粗圧延して粗バーとする粗圧延機と、セラミックファイバーを固めた断熱材で内壁を覆って構成され、粗バーを巻き取るコイルボックスと、コイルボックスから払い出された粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱する加熱手段と、加熱された粗バーを仕上加速圧延する仕上圧延機とを具備したことを特徴とする熱間圧延設備列。ただし、粗バ-先端部とは、被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部をいう。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スラブを粗圧延機と仕上圧延機で圧延して熱延鋼帯を製造するための熱間圧延設備列に関する。
【0002】
【従来の技術】現状の熱延鋼帯の圧延は、以下の二つの制約のもとに行われている。
(1)良好な材質の熱延鋼帯を得るためには、圧延仕上温度をフェライト変態開始温度以上にする必要がある。
(2)圧延負荷が圧延機の能力の範囲内でなければならない。
【0003】近年、需要が増大している薄物材や硬質材、あるいはスラブ加熱温度を低温にしなければならない特殊材などの製造においては、これらの制約がますます厳しいものとなっている。
【0004】粗圧延機と仕上圧延機の間に加熱手段を設置して、粗バーを加熱することは、圧延仕上温度の確保と圧延負荷の低減に有効である。代表的な従来技術としては、特開平7ー155822がある。これは、粗圧延機と仕上圧延機の間に、電極を粗バーに接触させて粗バーに直接通電して加熱する直接通電加熱装置を設置して、仕上圧延機の入側で粗バーの長手方向に所定の温度分布を付与するものである。
【0005】しかしながら、特開平7-155822の方法では、粗バーの後方ほど仕上圧延の待ち時間が長くなり温度が低下する。このため、粗バーの後方部に必要な加熱量が大きくなり、粗バー全体で必要とする加熱量も当然のことながら大きくなる。直接通電加熱はコストの高い電力を使用するため、エネルギー原単位の悪化は深刻な問題である。さらに、直接通電加熱は電極を直接粗バーに接触させるため電極の消耗が激しく、メンテナンス性に難があるといえる。また、電極と粗バーの間にスパークが発生して、粗バーの表面に疵をつける恐れがある。
【0006】また、本発明に類似の熱間圧延設備列としては、特開平1-309704が知られている。これは、従来粗圧延機と仕上げ圧延機との間における熱間シートバーの長手方向及び幅方向の温度分布不均一の発生を防止するために、巻取り・巻戻しコイラー及びエッジヒーターを使用することが提案されているが、この場合でも、エッジ部の温度低下は防止できるが、長手方向の温度分布は均一にならない、即ちコイル最内径部の温度が低下する問題があるので、それを解決するためになされた提案である。
【0007】特開平1-309704に開示されているのは、粗バー(熱間シートバー)をコイル状に巻き取る巻取装置、巻き取られたコイルを巻き戻す巻戻装置、誘導加熱装置、粗バー貯蔵装置及び仕上圧延機を順次設置してなる熱間圧延設備列である。
【0008】そして、その作用の項で説明されているように、熱間シートバーのコイル最内径部が誘導加熱装置を通過する間は、この部分の温度降下を回復するに必要な遅い速度で通過させる。一方、熱間シートバーをシートバー貯蔵装置に蓄えるものである。
【0009】特開平1-309704は粗バーの均熱化を主眼としており、積極的に粗バー全体を加熱するものではないため、上記の制約が厳しい圧延条件には対応できない。誘導加熱装置によって、積極的に粗バー全体を加熱することも可能ではあるが、仕上圧延機前でルーパーを用いて粗バーを貯蔵する間に失われる熱量は大きく、その分だけ誘導加熱装置の出力を大きくしなければならない。この方法でもエネルギー原単位増大の問題を回避することはできない。
【0010】また、粗バーを貯蔵する間に、長手方向の温度分布の均一化も十分でなくなる。また、シートバー搬送の低速化による生産性の低下が不可避である。
【0011】その上、シートバー貯蔵装置に、特別な、大きなスペースが必要になる。さらに、貯蔵装置内のシートバーは仕上げ圧延前でなお高温のため、貯蔵中も表面酸化が進む。ここで、生成する二次スケールは長手方向の位置による貯蔵装置内滞留時間の差異により、スケール厚さが異なり不均一となる。さらに貯蔵中の曲げなど、加えられる変形によってスケールが部分的に剥離する恐れがある。これらの点から、製造される熱延鋼板においてはスケール疵の発生など表面性状の劣化が避けられない問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、粗圧延機と仕上圧延機の間で、粗バーの失う熱量をできるだけ小さく抑え、粗バーを効率よく加熱して、[従來の技術]で述べた圧延制約を回避することができ、かつ熱延鋼板の良好な表面性状が維持できる熱間圧延設備列を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】従来技術にあった課題を解決するために、本発明の熱延鋼帯の製造方法は、スラブを粗圧延機で粗圧延して粗バーとする工程と、粗バーをコイルボックスで巻き取る工程と、コイルボックスから払い出された粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱する加熱工程と、加熱された粗バーを仕上加速圧延する工程とを備えている。また、本発明の熱間圧延設備列は、スラブを粗圧延して粗バーとする粗圧延機と、セラミックファイバーを固めた断熱材で内壁を覆って構成され、粗バーを巻き取るコイルボックスと、コイルボックスから払い出された粗バー先端部を幅方向全体にわたって加熱する加熱手段と、加熱された粗バーを仕上加速圧延する仕上圧延機とを具備している。ただし、粗バ-先端部とは、被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく仕上加速圧延における先端部をいう。なお加熱手段としては、誘導加熱装置、特にソレノイド型の誘導加熱装置が望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の熱間圧延設備列の概略説明図を図1に示す。本発明は、スラブを粗圧延機1で粗圧延して粗バ-2となし、粗バ-2を仕上圧延機6で仕上圧延して所定厚さの熱延鋼帯を製造する熱間圧延設備列において、粗圧延機1と仕上圧延機6の間に、粗バ-2の巻き取りと払い出しの可能なコイルボックス3と、粗バ-2を幅方向全体にわたって加熱することのできる加熱手段4を備えたことを特徴とする。
【0015】仕上圧延機入側温度計5で検出される粗バ-2の温度は、ある所定の温度以上でなければならない。その理由は、(1)良好な材質を得るために、仕上圧延機出側温度計7で検出される圧延仕上温度は、フェライト変態開始温度以上にする必要があること、(2)被圧延材の変形抵抗は温度が下がるにつれて大きくなり、温度が下がりすぎると圧延荷重や圧延負荷が仕上圧延機の能力以上になって圧延できなくなる恐れがあることである。
【0016】圧延温度の低下は、板クラウンの増大や表面疵といった、形状不良を招きやすいことなども問題である。近年需要が増加している極薄材や硬質材、あるいはスラブ加熱温度を低温にしなければならない特殊材においては、この仕上圧延機入側温度の制約が特に厳しくなっている。
【0017】この問題を回避する方法として、仕上圧延機6の入側で粗バ-2を加熱すること、および、粗圧延機1から仕上圧延機6に搬送される間の放熱をなるべく小さくすることが考えられる。本発明の熱間圧延設備列が加熱手段4を備えることは前者に相当し、コイルボックス3を備えることは後者に相当する。
【0018】加熱手段4の効果は自明であるので、コイルボックス3の効果について説明する。コイルボックス3には粗バ-2を保熱して熱の散逸を減らす効果がある。粗バ-2はコイルボックス3の中でコイル状に保持されるため、(表面積)/(体積)の比が、搬送テーブル上にあるときと比較して小さくなり、熱の損失も小さくなる。コイルボックス3の内壁を断熱材で覆い、コイルボックス3から外部への熱の散逸を防止すれば、保熱効果はさらに大きくなる。断熱材としては、アルミナやシリカなどのセラミックスファイバーを固めて作ったものが、熱容量も大きく有利である。
【0019】さらに、特開昭61-269905のように、コイルボックス3の内部に加熱手段を備えて粗バーコイルを加熱すれば、粗バ-2のエッジ部や粗バーコイル最外層など、粗バーコイル表面付近の温度上昇も期待できる。この保熱効果により、粗バ-2はコイルボックス3に巻かれているときにはほとんど熱を失わない。
【0020】粗圧延と仕上圧延の間に粗バ-2が失う熱を小さくするには、搬送速度を上げればよいが、粗バ-2の先端が仕上圧延機6に噛み込んだ後の搬送速度は、仕上圧延速度に律速されて遅くなってしまう。
【0021】本発明においては、コイルボックス3で粗バ-2を巻き取っている間は、粗バ-2は仕上圧延機6に噛み込まない。コイルボックス3の巻き取り速度は、仕上圧延速度により律速された搬送速度よりもはるかに大きい。仕上圧延中の搬送速度が20〜60mpmに対して、コイルボックスの巻き取り速度は200mpm以上に達する。コイルボックス3で粗バ-2を巻き取ることによって、粗圧延が終了してからコイルボックス3に巻き取られるまでの搬送中に失われる熱が小さくなる。ここで、コイルボックス3に先に巻き取られた部分は、巻き取りが終了するまでの間、待っていなければならないが、コイルボックス3内での待ち時間中の熱の散逸は、コイルボックス3の保熱効果により微々たるものである。
【0022】コイルボックス3から払い出された粗バ-2は、加熱手段4で幅方向全体にわたって加熱された後、仕上圧延機6で仕上圧延される。粗バ-2の前方部分(コイルボックス3による巻き取り前とは前後が入れ替わっている)が仕上圧延されている間、粗バーの後方部分は仕上圧延を待っていなければならないが、待ち時間のほとんどはコイルボックス3の中で保熱されているために、この間の粗バ-2後方部分の温度低下は防止される。
【0023】これらの結果、コイルボックス3によって、粗圧延機1と仕上圧延機6の間の搬送中に失われる熱量が小さくなる。その分、加熱手段5による必要昇温量は少なくて済み、エネルギー原単位を下げることができる。
【0024】通常の熱延鋼帯の圧延で問題が起こりやすいのは、最初に仕上圧延される粗バ-2の先端部においてである。圧延荷重や圧延負荷は、被圧延材が圧延ロールに噛み込まれるときに最大になる。仕上圧延温度をフェライト変態開始温度以上に確保するという点でも問題は先端部である。圧延仕上温度確保の手段として普通に用いられる仕上加速圧延(被圧延材の先端から後端に向かって仕上圧延速度を上げていく)を用いれば、仕上圧延速度の最も遅い熱延鋼帯の先端部以外は、圧延仕上温度の確保が容易だからである。
【0025】粗バ-2の昇温量を上げる方法は二つある。ひとつは加熱手段4の出力を大きくすること、もうひとつは粗バ-2が加熱手段4を通過するときの搬送速度を遅くして加熱時間を稼ぐことである。
【0026】前者は、加熱手段4を設置することのできるスペースが限られることから装置の大きさが制約されることや、加熱手段4として誘導加熱装置のような高価な装置を採用する場合には設備投資額が大きくなりやすいという問題がある。後者の方法には、粗バ-2の先端部を加熱している間に、後方部の温度が下がってしまうという難点がある。
【0027】しかし、本発明のように、コイルボックス3によって粗バ-2を保熱しながら加熱すれば、粗バー後方の温度低下は問題となるほどではなく、先端部をゆっくりと集中的に加熱することができる。
【0028】かくして、仕上加速圧延と本発明の熱間圧延設備列を組み合わせれば、容量の小さな加熱手段5でも十分な効果を得ることができる。加熱手段5としては、加熱効率や制御応答性に優れた誘導加熱装置を採用することが望ましい。誘導加熱は非接触で加熱できるため、粗バーの表面に疵をつける心配がないという利点もある。
【0029】粗バーの加熱に用いることのできる誘導加熱装置には、磁束が粗バーの板厚方向に発生するトランスバース型と、磁束が粗バーの横断面を貫くように発生するソレノイド型の2種類がある。
【0030】トランスバース型とソレノイド型を比較すると、(1)トランスバース型は粗バーのエッジ部が過加熱されやすく、幅方向の温度分布制御が難しいこと、(2)粗バーの板厚30〜40mmで効率を比較すると、トランスバース型の0.65に対し、ソレノイド型は0.75でソレノイド型の方が効率が良い、といったことから、加熱装置5としてはソレノイド型誘導加熱装置が最も優れている。
【0031】以上の説明では、コイルボックス3、加熱手段4、仕上圧延機6の順に設備を配置した例を取り上げたが、図2に示すような加熱手段4、コイルボックス3、及び仕上圧延機6の順に配置した設備列や、図3のように、2台のコイルボックス3a、3bで加熱手段4をはさんだ配列でもコイルボックス3の保熱効果は有効に活用される。
【0032】図2の配列では、コイルボックス3による巻き取り速度を速くして、搬送中の熱の散逸を減らそうとすると、粗バ-2が加熱装置4を通過する時間が短くなり、加熱装置4による昇温量は小さくなる。しかし、仕上加速圧延を併用する場合には、大きな昇温量が必要なのは、最初に仕上圧延される粗バ-2の先端部だけである。この部分は、最後にコイルボックス3に巻き取られる部分であるが、既に巻き取られた部分はコイルボックス3の中で保熱されており、巻き取り速度を遅くして加熱時間を長くすることができる。このため、仕上加速圧延により、図2の配列でも十分な温度確保が可能である。
【0033】図3の配列は、粗バ-2の全体にわたって大きな昇温量が必要なときに有効である。すなわち、加熱中に粗バ-2が外気に直接接触するのは、加熱手段4の前後のわずかな部分だけであり、加熱時間をいかようにも長くとれるからである。
【0034】
【実施例】本発明の実施例として一定速度仕上圧延をとりあげて説明する。設備配置は図1のようになっている。仕上圧延を圧延速度一定で行えば、長手方向に材質のばらつきの小さい熱延鋼帯を製造することができる。熱延鋼帯の材質は、仕上圧延が終了してからコイラーに巻き取られるまでのランアウトテーブル上での冷却速度に依存する。フェライト変態後の変態生成物の種類や粒径が冷却速度によって変化するからである。
【0035】冷却速度は、ランアウトテ一ブルの途中に設けられた冷却スタンドで熱延鋼帯に向かって吹き付けられる冷却水の量を調節することによって制御される。仕上加速圧延を行っている場合には、熱延鋼帯の長手方向に圧延速度が変化するために、冷却速度の制御は極めて困難である。そこで、仕上圧延速度を一定にし、加熱手段4を制御して圧延仕上温度も熱延鋼帯の長手方向について均一にしておけば、冷却水量を調整することなく冷却速度を一定にすることが容易である。
【0036】1260℃に加熱した、厚さ226mm、幅1200mmの鋼スラブを粗圧延して、厚さ30mmの粗バーとしてから、仕上圧延で厚さ1.6mm、幅1250mmの熱延鋼帯とした。仕上圧延速度は、ランアウトテーブル上の熱延鋼帯の搬送速度が700mpmで一定になるように制御されている。ここでは、本発明の効果をわかりやすく示すために、ソレノイド型誘導加熱装置による粗バーの加熱は行っていない。
【0037】図4に仕上圧延機入側温度の変化を示す。実線はコイルボックスを使用した場合、破線は使用しない場合である。コイルボックスなしの場合は、仕上圧延の待ち時間によって粗バー先端部の温度が1040℃近くであるのに対し、後端部の温度は950℃と前後端で約90℃もの差がある。一方、本発明の方法にのっとり、コイルボックスで粗バーをいったん巻き取った場合は、コイルボックスの保熱効果により、仕上圧延機入側温度は約1020℃とほぼ一定している。
【0038】図5に仕上圧延機出側温度計で測定した、圧延仕上温度の変化を示す。点線で表されているコイルポックスを使用しない場合には、最先端部こそ目標温度の820℃を越えているが、圧延が進むにつれて圧延仕上温度は下がり続け、後端部では790℃近くまで低下している。これは図4で見たように、圧延待ち時間によって、仕上圧延入側温度が後端に近いほど下がっていることを反映している。これに対し、実線で示した、コイルボックスを使用した場合には、熱延鋼帯先端の圧延仕上温度は815℃で目標を若干下回っているものの、熱延鋼帯の後半部では目標温度以上を確保できている。
【0039】圧延仕上温度を下回っている部分については、ソレノイド型誘導加熱装置による粗バ一の加熱が必要である。粗バーに投入されるべき全エネルギーの量は、目標温度と圧延仕上温度の差を積分した値にほぼ比例する。図5から明らかなように、コイルボックスの使用によって、粗バーに投入すべきエネルギーが著しく減少し、ソレノイド型誘導加熱装置で消費されるエネルギー原単位も小さくなることがわかる。
【0040】
【発明の効果】本発明では、スラブを粗圧延機で粗圧延して粗バーとし、粗バーを仕上圧延機で仕上圧延して所定厚さの熱延鋼帯とする熱間圧延設備において、粗圧延機と仕上圧延機の間に、粗バーの巻き取りと払い出しのできるコイルボックスと、粗バーを幅方向全体にわたって加熱することの可能な加熱手段を備える。
【0041】粗圧延と仕上圧延の間に、コイルボックスを用いて粗バーの巻き取りと払い出しを行い、加熱手段によって粗バーを加熱すれば、仕上圧延荷重、負荷の軽減や、圧延仕上温度の確保が容易となり、かつ、加熱手段によるエネルギー原単位も小さく抑えることができる。上記の加熱手段をソレノイド型誘導加熱装置とすれば、さらに制御性と効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の設備配置の一例を示す説明図。
【図2】本発明の設備配置の他の例を示す説明図。
【図3】本発明の設備配置の他の例を示す説明図。
【図4】仕上圧延機入側温度の粗バー長手方向温度分布を示す説明図。
【図5】圧延仕上温度の熱延鋼帯長手方向温度分布を示す説明図。
【符号の説明】
1…粗圧延機、2…粗バー、3、3a,3b…コイルボックス、4…加熱手段、5…仕上圧延機入側温度計、6…仕上圧延機、7…仕上圧延機出側温度計。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-12-17 
出願番号 特願平8-300405
審決分類 P 1 651・ 537- YA (B21B)
P 1 651・ 121- YA (B21B)
P 1 651・ 536- YA (B21B)
P 1 651・ 113- YA (B21B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 市川 裕司
影山 秀一
登録日 2002-06-14 
登録番号 特許第3317164号(P3317164)
権利者 JFEスチール株式会社
発明の名称 熱延鋼帯の製造方法およびその方法に使用する熱間圧延設備列  
代理人 河野 哲  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河野 哲  
代理人 亀松 宏  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 中村 誠  
代理人 鶴田 準一  
代理人 中村 誠  

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