• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01L
管理番号 1115141
審判番号 訂正2004-39293  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-10 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-12-24 
確定日 2005-02-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3323074号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3323074号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第3323074号に係る発明についての出願は、平成8年8月28日に特許出願され、平成14年6月28日にその請求項1〜4に係る発明について特許の設定登録がなされ、その後、平成15年3月7日付で雨山範子より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、平成16年8月11日付で「特許第3323074号の請求項1、3に係る特許を取り消す。同請求項2、4に係る特許を維持する。」との異議決定がなされた。
本件請求人は、これを不服として平成16年9月28日に東京高等裁判所に当該請求項1、3に係る決定の取り消しを求める訴(平成16年(行ケ)第428号)を提起し、現在同裁判所にて係属中であるところ、平成16年10月19日に訂正審判(訂正2004-39236号)を請求した。
その後、訂正拒絶理由通知がなされ、本件請求人は、先の訂正審判(訂正2004-39236号)を取り下げ、上記取消決定に対する訴えの提起があった日(平成16年9月28日)から起算して90日の期間内である平成16年12月24日に再度本件訂正審判を請求したものである。

[2]請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3323074号の明細書を本件審判請求書に添付された全文訂正明細書のとおりに、即ち、次の訂正事項a〜dのとおりに訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項a
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に「接続パッドを具備した配線基板において」とあるのを、「接続パッドを具備し、半導体素子が搭載される配線基板において」に訂正する。
(2)訂正事項b
同請求項1に「熱膨張係数が6ppm/℃以上の金属酸化物」とあるのを、「熱膨張係数が6ppm/℃以上のフォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、クリストバライト、アルミナ、ワラストナイトの群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物」に訂正する。
(3)訂正事項c
同請求項1に「熱膨張係数が8〜18ppm/℃の焼結体」とあるのを、「熱膨張係数が10.5〜18ppm/℃の焼結体」に訂正する。
(4)訂正事項d
本件特許明細書の段落【0014】に「即ち、本発明は、絶縁基板と、メタライズ配線層と、外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッドを具備した配線基板、あるいはメタライズ配線層と、外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッドが配設された絶縁基板と、蓋体と、半導体素子を収納するためのキャビティを具備する半導体素子収納用パッケージにおいて、前記絶縁基板を、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末を20〜80体積%と、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上の金属酸化物を含むフィラーを80〜20体積%の割合で含む成形体を焼成して得られた40〜400℃における熱膨張係数が8〜18ppm/℃の焼結体によって構成したものである。」とあるのを、「即ち、本発明は、絶縁基板と、メタライズ配線層と、外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッドを具備し、半導体素子が搭載される配線基板において、前記絶縁基板を、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末を20〜80体積%と、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上のフォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、ウリストバライト、アルミナ、ワラストナイトの群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含むフィラーを80〜20体積%の割合で含む成形体を焼成して得られた40〜400℃における熱膨張係数が10.5〜18ppm/℃の焼結体によって構成したものである。
また、メタライズ配線層と、外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッドが配設された絶縁基板と、蓋体と、半導体素子を収納するためのキャビティを具備する半導体素子収納用パッケージにおいて、前記絶縁基板を、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末を20〜80体積%と、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上の金属酸化物を含むフィラーを80〜20体積%の割合で含む成形体を焼成して得られた40〜400℃における熱膨張係数が8〜18ppm/℃の焼結体によって構成したものである。」に訂正する。
なお、訂正事項dについて、審判請求書第3頁12〜22行では「本件特許明細書の段落番号【0014】に・・・を具備し、半導体素子が搭載される配線基板、・・・とある」と述べているが、本件特許明細書の実際の段落【0014】には「・・・を具備した配線基板、・・・」と記載されており、審判請求書の当該箇所の「・・・を具備し、半導体素子が搭載される配線基板、・・・とある」は誤記と認められるので、上記のとおりのものとして認定した。

[3]当審の判断
[3-1]特許法第126条第1項ただし書き、同条第3項、及び同条第4項の要件について
(1)訂正事項aは、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載され、同請求項3にも引用される「配線基板」について、「半導体素子が搭載される」という限定事項を付加して「半導体素子が搭載される配線基板」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正は、本件特許明細書の段落【0007】の「配線基板や半導体素子収納用パッケージに半導体素子を収容し、しかる後、プリント基板などに実装」、及び同段落【0016】、【0017】の「図1及び図2は、本発明におけるBGA型の半導体素子収納用パッケージとその実装構造の一実施例を示す図であり、このパッケージは、絶縁基板の表面あるいは内部にメタライズ配線層が配設された、いわゆる配線基板を基礎的構造とするものであり、・・・・・半導体素子収納用パッケージAは、絶縁基板1と蓋体2とメタライズ配線層3と接続端子4により構成され、絶縁基板1及び蓋体2は半導体素子5を内部に気密に収容するためのキャビティ6を形成する。そして、キャビティ6内にて半導体素子5はガラス、樹脂等の接着剤を介して絶縁基板1に接着固定される。」との記載に基づくものである。
訂正事項bは、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている「熱膨張係数が6ppm/℃以上の金属酸化物」について、「フォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、クリストバライト、アルミナ、ワラストナイトの群から選ばれる少なくとも1種」という限定事項を付加して「熱膨張係数が6ppm/℃以上のフォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、クリストバライト、アルミナ、ワラストナイトの群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正は、本件特許明細書の段落【0040】に「このような熱膨張係数が6ppm/℃以上の結晶相としては、クリストバライト(SiO2)、クォーツ(SiO2)、トリジマイト(SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、スピネル(MgO・Al2O3)、ウォラストナイト(CaO・SiO2)、モンティセラナイト(CaO・MgO・SiO2)、ネフェリン(Na2O・Al2O3・SiO2)、リチウムシリケート(Li2O・SiO2)、ジオプサイド(CaO・MgO・2SiO2)、メルビナイト(3CaO・MgO・2SiO2)、アケルマイト(2CaO・MgO・2SiO2)、マグネシア(MgO)、アルミナ(Al2O3)、ネフェリン(Na2O・Al2O3・2SiO2)、ひすい(Na2O・Al2O3・4SiO2)、カーネギアイト(Na2O・Al2O3・2SiO2)、エンスタタイト(MgO・SiO2)、ホウ酸マグネシウム(2MgO・B2O3)、セルシアン(BaO・Al2O3・2SiO2)、B2O3・2MgO・2SiO2、ガーナイト(ZnO・Al2O3)、ペタライト(LiAlSi4O10)の群から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。」と記載され、また同段落【0050】の表1に、フィラーとして、フォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、クリストバライト、アルミナ、ワラストナイトを用いた例が開示されていることに基づくものである。
訂正事項cは、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている「熱膨張係数が8〜18ppm/℃の焼結体」の「8〜18ppm/℃」を「10.5〜18ppm/℃」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正は、本件特許明細書の段落【0050】の表1に、資料No.13の熱膨張係数が10.5ppm/℃の焼結体からなる配線基板を用いた例が開示され、そして、該資料No.13を含め、フォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、クリストバライト、アルミナ、又はワラストナイトの少なくとも1種をフィラーとする、熱膨張係数が10.5〜18ppm/℃の焼結体からなる種々の配線基板を用いた例が開示されていることに基づくものである。
したがって、訂正事項a、b、cはいずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項dは、上記訂正事項a、b、cに基づく訂正後の特許請求の範囲の記載と整合するように、発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

[3-2]特許法第126条第5項の要件(独立特許要件)について
(1)本件訂正明細書の請求項1〜4に係る発明
本件訂正明細書の請求項1〜4に係る発明(以下、「訂正発明1」〜「訂正発明4」という。)は、審判請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】絶縁基板と、メタライズ配線層と、外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッドを具備し、半導体素子が搭載される配線基板において、前記絶縁基板が、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末を20〜80体積%と、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上のフォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、クリストバライト、アルミナ、ワラストナイトの群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含むフィラーを80〜20体積%の割合で含む成形体を焼成して得られた40〜400℃における熱膨張係数が10.5〜18ppm/℃の焼結体からなることを特徴とする配線基板。
【請求項2】メタライズ配線層と、外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッドが配設された絶縁基板と、蓋体と、半導体素子を収納するためのキャビティを具備する半導体素子収納用パッケージにおいて、前記絶縁基板が、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末を20〜80体積%と、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上の金属酸化物を含むフィラーを80〜20体積%の割合で含む成形体を焼成して得られた40〜400℃における熱膨張係数が8〜18ppm/℃の焼結体からなることを特徴とする半導体素子収納用パッケージ。
【請求項3】少なくとも有機樹脂を含む絶縁体の表面に配線導体が被着形成された外部電気回路基板上に、請求項1記載の配線基板の前記接続パッドを前記配線導体にロウ材を介して実装してなることを特徴とする実装構造。
【請求項4】少なくとも有機樹脂を含む絶縁体の表面に配線導体が被着形成された外部電気回路基板上に、請求項2記載の半導体素子収納用パッケージの前記接続パッドを前記配線導体にロウ材を介して実装してなることを特徴とする実装構造。」

(2)引用刊行物に記載された発明
先の特許異議の決定においては、本件請求項1、3に係る発明は、本件出願前に頒布された下記の引用刊行物2に記載された発明、及び同じく頒布された下記の引用刊行物4〜7に記載された本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとされ、また、先の訂正審判(訂正2004-39236号)の訂正取消理由通知においては、本件請求項1、3に係る発明は、同じく頒布された下記の引用刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとされたものである。
そして、下記の引用刊行物1〜7には、それぞれ以下の事項が記載されている。
引用刊行物1;特開昭62-136865号公報
引用刊行物2;特公平4-12639号公報(特許異議申立書の甲第1号証)
引用刊行物3;特開昭59-162169号公報
引用刊行物4:特開平8-97331号公報(同上甲第2号証)
引用刊行物5:特開平6-169026号公報
引用刊行物6:特開平2-83963号公報
引用刊行物7:特開平8-125050号公報

(2-1)引用刊行物1(特開昭62-136865号公報)には、第1〜8図が示されるとともに、
「1.フリップチップ接続方式によりSiチップをセラミックのキャリヤ基板にはんだ付されており、チップとキャリヤ基板間隙が樹脂で充填され、該キャリヤ基板のスルーホール導体を通して設けられたキャリヤ基板裏側の端子を多層基板にはんだ付してなる構造で、該チップ裏面を熱伝導媒体である金属又はセラミックスを通して空冷・液冷してなるモジュール実装構造。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.特許請求の範囲第1項又は第2項において、キャリヤ基板は多層板に近い熱膨張係数を有するモジュール実装構造。」(特許請求の範囲第1項、同第3項)、
「キャリヤ基板は多層板の熱膨張係数の±30%以下が好ましい。」(第2頁左下欄4〜5行)、
「多層基板と熱膨張係数を一致させた曲げ剛性の大なるキャリヤ基板を用いることにより、多層板とキャリヤ基板間のはんだ接続部に問題になるような熱応力が生じないようにした。」(第2頁左下欄17〜20行)、
「第3図は、・・・(a)はAl2O37基板に10mm□チップ1をはんだ付3した構造(裸チップ)で、(b)はAl2O3キャリヤ基板2上にチップをはんだ付した後、チップとキャリヤ基板間隙に樹脂4を充填後、該キャリヤ基板をAl2O3多層基板7上に低温はんだ6で搭載した構造である。」(第2頁右下欄9〜16行)、
「(b)構造において、キャリヤ用基板と多層基板は共にAl2O3を用いたが、多層基板の熱膨張係数に合ったもの、もしくは近いものをキャリヤ基板として用いることにより、キャリヤ基板と多層基板とのはんだ接合部6には熱疲労が生じない構造とした。」(第3頁左上欄2〜7行)、
「[発明の効果]本発明によれば、熱膨張係数の大きい多層基板(α=10〜15×10-6/℃)に対しても大型チップの高信頼搭載を可能にする。従って、低誘電率の有機多層基板(例えばテフロン系)に対しても搭載が可能である。」(第5頁左下欄15〜20行)が記載されている。

(2-2)引用刊行物2(特公平4-12639号公報)には、
「1.セラミック絶縁板と、銅、銀、金又はこれらの合金の導体パターンが交互に積層されたセラミック多層配線回路板において、前記セラミック絶縁板は、石英ガラス、石英、クリストバライト及びトリジマイトのうちの少なくとも2種の熱膨張係数の異なる物質を10〜70重量%含み、残部がガラスからなり、かつ比誘電率が4.0〜6.0で、熱膨張係数が3.2×10-6〜10.3×10-6/℃であることを特徴とするセラミック多層配線回路板。」(特許請求の範囲)、
「セラミックス絶縁板はその組成が決まると熱膨張係数もほぼ決るのが一般的である。本発明では結晶形の異なる酸化ケイ素を2種類以上混合し、低融点のガラスで焼結したセラミックスであるため、セラミックスの熱膨張係数を室温から400℃の範囲をとると1×10-6/℃〜20×10-6/℃まで任意に制御することが可能である。これは酸化ケイ素の結晶形により熱膨張係数が異なることによるためである。例えば、石英ガラスの熱膨張係数は0.5×10-6/℃、石英のそれは12〜15×10-6/℃、クリストバライトのそれは200℃までは10×10-6/℃であるが、200℃付近でα-クリストバライトがβ-クリストバライトに相転移する際の異常熱膨張を加えると室温から400℃までの熱膨張係数は23×10-6/℃になる。トリジマイトもαとβの転移を加えると23×10-6/℃の熱膨張係数をもつ。・・・このため、結晶形の異なる酸化ケイ素を2種類以上混合することによってセラミックス絶縁板の熱膨張係数を任意に調整することができる。」(第2頁第4欄5〜35行)、
「次に本発明の最終目的であるセラミック多層配線回路板を作製する工程を説明する。まず、酸化ケイ素の2種類以上の粉末とガラス粉末を所定の混合割合で秤取し、結合剤、可塑剤及び溶剤とを混合してスラリを作製する。・・・スラリはポリエステル樹脂フィルムの上にドクターブレード法により0.1〜1.0mmの厚さに流し出される。溶剤を乾燥除去することにより所定の厚さのグリーンセラミックシートが得られる。グリーンシートはパンチ法、ドリル法などにより所定の位置に所定の径の穴があけられ、さらに、穴の部分に銀、銅、金又はそれらの合金の導体ペーストが印刷され、配線導体の層間接線用のスルーホール導体部(第1図中2で示す)になる。グリーンシートの表面には所定の配線による導体(第1図中1で示す)パターンが印刷される。スルーホールと導体パターンが形成されたグリーンシートは(セラミックス、第1図中3で示す)多層の積層された後、焼成される。・・・・・以上のような工程を通して、スルーホール導体と層間に導体配線をもつセラミック多層配線回路板が製造される。」(第5欄第24行〜第6欄第26行、第1図)が記載されており、
また、第4頁の第2表には、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有する組成の低融点ガラス(No.4〜7)が示されるとともに、第4〜6頁の第3表には、該低融点ガラス粉末を20〜80体積%と、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上の金属酸化物を含むフィラーを80〜20体積%の割合で含む成形体を焼成して得られた、40〜400℃における熱膨張係数が8〜10.3×10-6/℃のセラミック絶縁板(No.20、22、46、47、51〜53)が、発明の実施例として示されている。

(2-3)引用刊行物3(特開昭59-162169号公報 )には、
「4.セラミック層と、導体パターンとが交互に積層され、該導体パターンはセラミック層にあけられたスルーホール内に埋込まれた導体で接続しているセラミック多層配線板において、該セラミック層材料として、無機材料フィラーと低融点ガラスとを焼結したものからなり、その焼結温度は1000℃以下であり、かつその熱膨張係数が40〜120×10-7/℃の範囲内のものであるセラミックスを使用したことを特徴とする多層配線板。」(特許請求の範囲第4項)、
「本発明の目的は、低温すなわち750〜1000℃のオーダーの温度において焼成可能であり、また、比抵抗率の小さい銀、銅、金及び同種のものとの熱膨張係数の差が少なく、同時焼成が可能なセラミックス及びそれを使用した多層配線板を提供することにある。」(第2頁右上欄5〜10行)、
「実施例4
低融点ガラス組成:SiO2を15〜30%、Al2O3を10〜20%、B2O3を30〜50%、BaOを20〜25%・・・
クリストバライト:低融点ガラス=40部:60部の組成において、・・・焼成できた。このセラミックスの熱膨張係数は、75〜100×10-7/℃で、・・・クリストバライト:低融点ガラス=50部:50部の組成においては、・・・焼成できた。このセラミックスの熱膨張係数は、70〜100×10-7/℃で・・・これらのセラミックスは、熱膨張係数が比較的大きく、比誘電率が5.0以下で良好であるため、配線回路板用セラミックスとして有効である。」(第5頁右下欄6行〜第6頁左上欄10行)、
「実施例8
フィラーとして用いる無機材料として、熱膨張係数の大きいベリリヤ、コランダム、マグネシア、安定化ジルコニア、トリア、ステアタイト、フォルステライト、スピネル及びジルコン磁器等がある。これらの無機材料をフィラーとして用い、上記実施例1〜7と同様な方法でセラミック材料及び積層板を作成した。上記実施例中の3種類の低融点ガラスを用いてセラミックスを作成し、熱膨張係数を測定したが、大きな差がないため、ここでは、低融点ガラス材料の代表として、SiO2を35〜50%、Al2O3を5〜15%、B2O3を25〜40%、BaOを7.5〜15%、Na2O+K2Oを0.1%以下について得られた代表データを表1に示す。‥‥‥‥‥ここでフィラーとして使用した無機材料の熱膨張係数が大きいために、クリストバライトを使用したのと同等若しくはそれ以上の熱膨張係数を示しており、銀及び銅との適合性もよいことから、配線回路用セラミック基板材料として有効である。」(第6頁右下欄3行〜第7頁右上欄6行)が記載されており、
また、第7頁の表1には、上記低融点ガラス材料に対してマグネシア、安定化ジルコニアをフィラー材料として使用した際に、熱膨張係数が80〜120×10-7/℃(No.3)、70〜110×10-7/℃(No.4)であったことが示されている。

(2-4)引用刊行物4(特開平8-97331号公報)には、
「図1は、本発明をBGA構造に適用した一実施例の半導体パッケージの構成を示す断面図である。同図に示す半導体パッケージ1は、セラミックス基板2の上面2aに、LSIやパワーIC等の半導体素子3が搭載されていると共に、表面配線層4が形成されており、かつセラミックス基板2の下面2bには、入出力端子として半田バンプ5が接合形成されている。」(段落【0021】、図1)、
「なお、セラミックス基板2の半導体素子3が搭載されている上面2aは、放熱部材を兼ねる断面コ字状の封止部材10、例えば窒化アルミニウム製封止部材によって覆われており、搭載された半導体素子3は、封止部材10によって気密封止されている。封止部材10は、コ字状断面の凸状外縁部10aの端面がセラミックス基板2の半導体素子搭載面2aに当接され、かつ凹状部10b内に半導体素子3が収容されるように接合されており、この凹状部10bが半導体パッケージのキャビティの役割を果たしている。セラミックス基板2と封止部材10との接合は、Au-Sn半田、Pb-Sn半田、封止ガラス11等により行われる。」(段落【0029】)が記載されている。

(2-5)引用刊行物5(特開平6-169026号公報)には、
「本実施例のチップキャリヤ1は、ムライトなどのセラミック材料からなるパッケージ基板2の主面の電極3上に半田バンプ4を介してフェイスダウンボンディングした半導体チップ5をキャップ6で気密封止したパッケージ構造を有している。」(段落【0015】、図1)、
「また、パッケージ基板2の下面側の電極3には、チップキャリヤ1をモジュール基板などに実装する際の外部端子となる半田バンプ11が接合される。」(段落【0021】)が記載されている。

(2-6)引用刊行物6(特開平2-83963号公報 )には、
「低誘電率有機多層基板上のチップ、もしくは、チップキャリア搭載域に形成された多端子と、表裏面を導通させた低膨張低誘電率の複数個に分離された各々のセラミックス基板の多端子とをはんだ付けし、前記低誘電率有機多層基板および前記セラミックス基板の間隙を樹脂で充填接着して、一体化し、前記セラミックス基板上に前記チップもしくは前記チップキャリアを搭載することを特徴とする有機無機複合多層基板。」(特許請求の範囲第1項)が記載されている。

(2-7)引用刊行物7(特開平8-125050号公報)には、
「【従来の技術】従来の中空キャビティを有する半導体装置の例を図9及び図10に示す。図9は従来例の断面図、図10は中空キャビティをキャップにより封止した状態を示す平面図である。図において、1は半導体素子、2は半導体素子1を搭載するパッケージ本体、3は半導体素子1をパッケージ本体2に固定するための接着剤、4は配線パターン、5は半導体素子1の電極と配線パターン4とを電気的に接続する金属細線、6は金属細線5及び配線パターン4を通して半導体素子1と電気的に接続された外部電極である。また図において、7は半導体素子1を搭載するためにパッケージ本体に形成されたキャビティ、8はキャップ9を載置するための段差を有する掘込部、9は掘込部8の段差に載置されキャビティ7を封止するためのキャップ、10は掘込部8とキャップ9の間に充填されキャビティ7を密閉するための封止樹脂である。」(段落【0002】、図9、図10)が記載されている。

(3)対比・判断
(3-1)訂正発明1、3について
上記(2-1)の摘記事項を総合すると、引用刊行物1には、「セラミックのキャリヤ基板を貫通するスルーホール導体と、多層基板にはんだ付するための端子が該基板裏側の該スルーホール導体下端に設けられ、Siチップがはんだ付されて搭載されるセラミックのキャリヤ基板、及び同キャリヤ基板の多層基板への実装構造において、該キャリヤ基板は、多層基板に近い熱膨張係数を有するセラミック、好ましくは多層基板の熱膨張係数の±30%以下のセラミックで構成し、熱膨張係数を多層基板のそれと一致させることにより、熱膨張係数の大きい多層基板(α=10〜15×10-6/℃)に対しても、従って、低誘電率の有機多層基板(例えばテフロン系)に対しても搭載を可能とし、多層基板とキャリヤ基板間のはんだ接続部に問題になるような熱応力、熱疲労が生じないようにしたもの」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
そこで、訂正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「セラミックのキャリヤ基板」、「スルーホール導体」、「多層基板にはんだ付するための端子」、「Siチップがはんだ付されて搭載される」はそれぞれ、訂正発明1の「絶縁基板」、「メタライズ配線層」、「外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッド」、「半導体素子が搭載される」に相当し、また、引用発明の「セラミックのキャリヤ基板」と「スルーホール導体」と「多層基板にはんだ付するための端子」を合わせて、訂正発明1の「配線基板」に相当する。更にまた、引用発明の「キャリヤ基板は、多層基板に近い熱膨張係数を有するセラミック、好ましくは多層基板の熱膨張係数の±30%以下のセラミックで構成し、熱膨張係数を多層基板のそれと一致させることにより、熱膨張係数の大きい多層基板(α=10〜15×10-6/℃)に対しても、従って、低誘電率の有機多層基板(例えばテフロン系)に対しても搭載を可能とし、多層基板とキャリヤ基板間のはんだ接続部に問題になるような熱応力、熱疲労が生じないようにした」は、絶縁基板であるセラミックのキャリヤ基板の熱膨張係数を、その実装された状態で加熱又は冷却されて変動する温度範囲において、多層基板の熱膨張係数(α=10〜15×10-6/℃)に±30%以下の差で一致させることを意味しており、セラミックのキャリヤ基板が、成形体を焼成して得られることは自明の事項であり、40〜400℃は、セラミックのキャリヤ基板の実装された状態において、加熱又は冷却されて頻繁に変動する温度範囲であるといえるから、訂正発明1の「絶縁基板が・・・成形体を焼成して得られた40〜400℃における熱膨張係数が10.5〜18ppm/℃の焼結体からなる」に相当する。
そうすると、両者は、「絶縁基板と、メタライズ配線層と、外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッドを具備し、半導体素子が搭載される配線基板において、前記絶縁基板が、成形体を焼成して得られた40〜400℃における熱膨張係数が10.5〜18ppm/℃の焼結体からなる配線基板」で一致し、下記(イ)の点で相違する。
(イ)訂正発明1では、絶縁基板が、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末を20〜80体積%と、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上のフォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、クリストバライト、アルミナ、ワラストナイトの群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を含むフィラーを80〜20体積%の割合で含む成形体を焼成して得られる焼結体であるのに対して、引用発明では、絶縁基板を焼成する材料の組成が示されていない点。
そこで、相違点(イ)について以下検討するに、引用刊行物2、4〜7には、熱膨張係数が10.5〜18ppm/℃の配線基板の絶縁体を焼成する材料組成については記載されておらず、また、引用刊行物3には、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末と金属酸化物のフィラーとを含む材料を焼成して、熱膨張係数が10.5〜12ppm/℃の多層配線板の絶縁体とすることが記載されているものの、該材料組成中に、フォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、クリストバライト、アルミナ、ワラストナイトをフィラーとして用いるものは記載されていない。
してみると、引用刊行物1〜7に記載された発明をいかに組み合わせても、上記相違点(イ)に係る訂正発明1の発明特定事項である、40〜400℃における熱膨張係数が10.5〜12ppm/℃の絶縁基板を焼成する材料として、フォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、クリストバライト、アルミナ、ワラストナイトを含む組成のものを用いることを導き出すことはできない。
また、訂正発明3は、訂正発明1を引用することにより、訂正発明1と同じく、その配線基板についての上記相違点(イ)に係る発明特定事項を具備するものであるが、同発明特定事項が、引用刊行物1〜7に記載された発明をいかに組み合わせても導き出すことができないことは、上述したとおりである。
そして、訂正発明1、3は、上記相違点(イ)に係る発明特定事項である、40〜400℃における熱膨張係数が10.5〜12ppm/℃の絶縁基板を焼成する上記組成を具備することにより、外部電気回路基板との熱膨張係数の差に起因する応力発生を抑制し、パッケージと外部電気回路とを長期間にわたり正確、かつ強固に電気的接続させることが可能となり、半導体回路素子の大型化による多ピン化に十分対応できる信頼性の高いパッケージの実装構造を実現でき、銅などのメタライズとの同時焼成が可能であるため、高品質で且つ安価な配線基板及び半導体素子収納用パッケージを提供できるという、本件訂正明細書に記載された効果を奏したものと認められる。
したがって、訂正発明1、3は、引用刊行物1〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明とすることはできない。

(3-2)訂正発明2、4について
訂正発明2は、絶縁基板と、蓋体と、半導体素子を収納するためのキャビティを具備する半導体素子収納用パッケージにおいて、該絶縁基板が8〜18ppm/℃の焼結体からなる点を発明特定事項とするものであり、また、訂正発明2を引用する訂正発明4も、訂正発明2と同じく上記発明特定事項を具備するものである。
これに対して、引用刊行物1には、上記(3-1)で述べたとおりの引用発明が記載されている。
しかしながら、上記(2-1)に摘記した事項によれば、引用発明におけるキャリヤ基板、及び同キャリヤ基板の多層基板への実装構造において、同キャリヤ基板は、半導体素子収納用パッケージの半導体素子を収納するためのキャビティを蓋体とともに形成するものではなく、かかるキャビティを形成する構造にできることを示唆する記載も見当たらない。
一方、引用刊行物2、3には、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末と金属酸化物のフィラーとを含む材料を焼成して、熱膨張係数が8〜12ppm/℃の多層配線板の絶縁体とすることが記載されているものの、該多層配線板を、半導体素子収納用パッケージの半導体素子を収納するためのキャビティを形成する基板に用いることは、記載も示唆もされていない。また、引用刊行物4〜7には、基板と蓋体により半導体素子を収納するキャビティを形成した半導体素子収納用パッケージが記載されているものの、該基板に熱膨張係数が8〜18ppm/℃の焼結体を用いることは、記載も示唆もされていない。
してみると、訂正発明2、4の上記発明特定事項は、引用刊行物1〜7のいずれにも記載されていない。また、引用発明におけるキャリヤ基板、又は引用刊行物2、3に記載される多層配線板を、引用刊行物4〜7に記載されるような半導体素子を収納するためのキャビティを形成する基板に構成することを動機付ける記載も見当たらないので、引用刊行物1〜7の記載から、上記発明特定事項を導き出すことはできない。
そして、訂正発明2、4は、上記発明特定事項を具備することにより、外部電気回路基板との熱膨張係数の差に起因する応力発生を抑制し、パッケージと外部電気回路とを長期間にわたり正確、かつ強固に電気的接続させることが可能となり、半導体回路素子の大型化による多ピン化に十分対応できる信頼性の高いパッケージの実装構造を実現でき、銅などのメタライズとの同時焼成が可能であるため、高品質で且つ安価な半導体素子収納用パッケージを提供できるという、本件訂正明細書に記載された効果を奏したものと認められる。
したがって、訂正発明2、4は、引用刊行物1〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明とすることはできない。

(4)また、訂正発明1〜4を、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとすべき他の理由も発見できない。
したがって、訂正発明1〜4は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明とすることはできない。

[4]むすび
以上のとおり、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き各号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項から第5項までの規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
配線基板、半導体素子収納用パッケージおよびその実装構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】絶縁基板と、メタライズ配線層と、外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッドを具備し、半導体素子が搭載される配線基板において、前記絶縁基板が、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末を20〜80体積%と、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上のフォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、クリストバライト、アルミナ、ワラストナイトの群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含むフィラーを80〜20体積%の割合で含む成形体を焼成して得られた40〜400℃における熱膨張係数が10.5〜18ppm/℃の焼結体からなることを特徴とする配線基板。
【請求項2】メタライズ配線層と、外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッドが配設された絶縁基板と、蓋体と、半導体素子を収納するためのキャビティを具備する半導体素子収納用パッケージにおいて、前記絶縁基板が、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末を20〜80体積%と、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上の金属酸化物を含むフィラーを80〜20体積%の割合で含む成形体を焼成して得られた40〜400℃における熱膨張係数が8〜18ppm/℃の焼結体からなることを特徴とする半導体素子収納用パッケージ。
【請求項3】少なくとも有機樹脂を含む絶縁体の表面に配線導体が被着形成された外部電気回路基板上に、請求項1記載の配線基板の前記接続パッドを前記配線導体にロウ材を介して実装してなることを特徴とする実装構造。
【請求項4】少なくとも有機樹脂を含む絶縁体の表面に配線導体が被着形成された外部電気回路基板上に、請求項2記載の半導体素子収納用パッケージの前記接続パッドを前記配線導体にロウ材を介して実装してなることを特徴とする実装構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メタライズ配線層を具備する配線基板、その配線基板を具備する半導体素子収納用パッケージおよびその実装構造に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来、配線基板は、絶縁基板の表面あるいは内部にメタライズ配線層が配設された構造からなる。また、この配線基板を用いた代表的な例として、半導体素子、特にLSI等の半導体素子を収容するための半導体素子収納用パッケージは、その表面および内部にWやMo等のメタライズ配線層が、またその底面に接続端子が配設された、アルミナセラミックス等からなる絶縁基板と、絶縁基板の上面中央部に半導体素子を収容するためのキャビティが形成され、キャビティは蓋体によって気密に封止される。
【0003】一般に、半導体素子の集積度が高まるほど、半導体素子に形成される電極数も増大するが、これに伴いこれを収納する半導体収納用パッケージにおける端子数も増大することになる。ところが、電極数が増大するに伴いパッケージ自体の寸法を大きくするにも限界があり、より小型化を要求される以上、パッケージにおける接続端子の形成密度を高くすることが必要となる。
【0004】これまでのパッケージにおける端子の密度を高めるための構造としては、パッケージの下面にコバールなどの金属ピンを接続したピングリッドアレイ(PGA)が最も一般的であるが、最近では、パッケージの4つの側面に導出されたメタライズ配線層にガルウイング状(L字状)の金属ピンが接続されたタイプのクワッドフラットパッケージ(QFP)、パッケージの4つの側面に電極パッドを備え、リードピンがないリードレスチップキャリア(LCC)、Siチップをフリップチップ実装したチップサイズパッケージ(CSP)、さらに絶縁基板の下面に半田からなる球状端子を多数配置したボールグリッドアレイ(BGA)等があり、これらの中でもBGAが最も高密度化が可能であると言われている。
【0005】このボールグリッドアレイ(BGA)では、接続パッドに半田などのロウ材からなる球状端子をロウ付けした端子により構成し、この球状端子を外部電気回路基板の配線導体上に載置当接させ、しかる後、前記端子を約250〜400℃の温度で加熱溶融し、球状端子を配線導体に接合させることによって外部電気回路基板上に実装することが行われている。このような実装構造により、半導体素子収納用パッケージの内部に収容されている半導体素子はその各電極がメタライズ配線層及び接続端子を介して外部電気回路に電気的に接続される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】これらのパッケージにおける絶縁基板として使用されているアルミナ、ムライトなどのセラミックスは、200MPa以上の高強度を有し、しかもメタライズ配線層などとの多層化技術として信頼性の高いことで有用ではあるが、その熱膨張係数は約4〜7ppm/℃程度であるのに対して、パッケージが実装される外部電気回路基板として最も多用されているガラス-エポキシ絶縁層にCu配線層が形成されたプリント基板の熱膨張係数は11〜18ppm/℃と非常に大きい。
【0007】そのため、配線基板や半導体素子収納用パッケージに半導体素子を収容し、しかる後、プリント基板などに実装した場合、半導体素子の作動時に発する熱が絶縁基板とプリント基板の両方に繰り返し印加されると前記絶縁基板とプリント基板との熱膨張差に起因する大きな熱応力が発生する。この熱応力は、パッケージにおける端子数が300以下の場合には影響はないが、端子数が300を超えたり、パッケージのサイズが大型化するに従い、その熱応力が大きくなる。
【0008】そのために、半導体素子の作動および停止の繰り返しにより熱応力が絶縁基板下面の接続パッドの外周部、及び外部電気回路基板の配線導体と端子との接合界面に作用し、接続パッドが絶縁基板より剥離したり、端子が配線導体より剥離したりし、配線基板やパッケージをプリント基板に長期にわたり安定に電気的接続させることができないという欠点を有していた。
【0009】そこで、絶縁基板の熱膨張係数をプリント基板の熱膨張係数に整合させることが考えられるが、従来のアルミナやムライトでは、そもそも熱膨張係数が大きく異なるために、組成等を変えてもプリント基板の熱膨張係数に整合させるのは非常に難しい。
【0010】これに対して、ガラスセラミックスからなる絶縁基板は、誘電率が低く、CuやAg等の低抵抗体からなるメタライズ配線層が形成できることからアルミナ等に代わる優れた基板材料として注目されている。このガラスセラミックスについて、特開昭63-117929号公報にはZnO-Al2O3-SiO2系ガラスを用いて、熱処理条件の制御によって、珪酸亜鉛とコージェライトまたは亜鉛尖小石の結晶を生成させて熱膨張係数を制御することが提案されている。しかし、かかるガラスセラミックスでは、同一の組成でもわずかな熱処理条件の相違により析出結晶相が変化しやすく熱膨張係数を安定して制御することが難しく、量産性に欠けるものであった。
【0011】また、特開昭62ー226855号においては、BaO-Al2O3-SiO2系ガラスを用いた多層基板用低温焼成磁器組成物が提案されている。ところがこの公報において用いられる組成物はガラスのみから構成されるために抗折強度が低く、熱膨張係数は7×10-6/℃以下と低いために、プリント基板への実装時に発生する応力に耐えられず、実装不良を生じてしまうものである。
【0012】従って、本発明は、高熱膨張特性を有する絶縁基板の表面あるいは内部にメタライズ配線層を具備する配線基板や、高熱膨張特性を有し且つ半導体素子が収納された半導体素子収納用パッケージをガラス-エポキシ樹脂等を絶縁体とする外部電気回路に対して、強固に且つ長期にわたり安定した接続状態を維持できる高信頼性の半導体素子収納用パッケージ、ならびにその実装構造を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題点に対して検討を重ねた結果、絶縁基板として、BaOを10重量%以上含有するガラスが焼結過程において結晶化すると、高熱膨張係数を有することから、かかるガラスに対して、さらにフィラー成分として高熱膨張係数の金属酸化物を添加して焼成温度を銅メタライズ配線層との焼成温度に整合させることにより、銅メタライズ配線層を具備する高熱膨張の絶縁基板からなる配線基板を製造できることを見出し本発明に至った。
【0014】即ち、本発明は、絶縁基板と、メタライズ配線層と、外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッドを具備し、半導体素子が搭載される配線基板において、前記絶縁基板を、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末を20〜80体積%と、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上のフォルステライト、ペタライト、ネフェリン、クォーツ、クリストバライト、アルミナ、ワラストナイトの群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含むフィラーを80〜20体積%の割合で含む成形体を焼成して得られた40〜400℃における熱膨張係数が10.5〜18ppm/℃の焼結体によって構成したものである。
また、メタライズ配線層と、外部電気回路基板にロウ材によって接続するための接続パッドが配設された絶縁基板と、蓋体と、半導体素子を収納するためのキャビティを具備する半導体素子収納用パッケージにおいて、前記絶縁基板を、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス粉末を20〜80体積%と、40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上の金属酸化物を含むフィラーを80〜20体積%の割合で含む成形体を焼成して得られた40〜400℃における熱膨張係数が8〜18ppm/℃の焼結体によって構成したものである。
【0015】また、本発明によれば、少なくとも有機樹脂を含む絶縁体の表面に配線導体が被着形成された外部電気回路基板上に、上記配線基板や半導体素子収納用パッケージの前記接続パッドを前記配線導体にロウ材を介して実装されるものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を一実施例を示す添付図面に基づき詳細に説明する。図1及び図2は、本発明におけるBGA型の半導体素子収納用パッケージとその実装構造の一実施例を示す図であり、このパッケージは、絶縁基板の表面あるいは内部にメタライズ配線層が配設された、いわゆる配線基板を基礎的構造とするものであり、Aは半導体素子収納用パッケージ、Bは外部電気回路基板をそれぞれ示す。
【0017】半導体素子収納用パッケージAは、絶縁基板1と蓋体2とメタライズ配線層3と接続端子4により構成され、絶縁基板1及び蓋体2は半導体素子5を内部に気密に収容するためのキャビティ6を形成する。そして、キャビティ6内にて半導体素子5はガラス、樹脂等の接着剤を介して絶縁基板1に接着固定される。
【0018】また、絶縁基板1の表面および内部にはメタライズ配線層3が配設されており、半導体素子5と絶縁基板1の下面に形成された接続端子4と電気的に接続するように配設されている。図1のパッケージによれば、接続端子4は、接続パッド4aを介して半田(錫-鉛合金)などのロウ材から成る突起状端子4bが取着されている。この突起状端子4bは、球状もしくは柱状のロウ材を接続パッド4aに並べるか、またはスクリーン印刷法によりロウ材を接続パッド4a上に印刷することにより形成される。
【0019】一方、外部電気回路基板Bは、絶縁体7と配線導体8により構成されており、絶縁体7は、少なくとも有機樹脂を含む材料からなり、具体的には、ガラス-エポキシ系複合材料などのように40〜400℃における熱膨張係数が12〜16ppm/℃の絶縁材料からなり、一般にはプリント基板等が用いられる。また、この基板Bの表面に形成される配線導体8は、絶縁体7との熱膨張係数の整合性と、良電気伝導性の点で、通常、Cu、Au、Al、Ni、Pb-Snなどの金属導体からなる。
【0020】半導体素子収納用パッケージAを外部電気回路基板Bに実装するには、パッケージAの絶縁基板1下面の突起状端子4bを外部電気回路基板Bの配線導体8上に載置当接させ、しかる後、約250〜400℃の温度で加熱することにより、半田などのロウ材からなる突起状端子4b自体が溶融して配線導体8と接合することにより外部電気回路基板B上に実装される。この時、配線導体8の表面には突起状端子4bとのロウ材による接続を容易に行うためにロウ材が被着形成されていることが望ましい。
【0021】また、他の例として、図3に示すように前記接続端子として、接続パッド4aに対して高融点材料からなる球状端子9を低融点ロウ材10によりロウ付けしたものが適用できる。この高融点材料は、ロウ付けに使用される低融点ロウ材よりも高融点であることが必要で、ロウ付け用ロウ材が例えばPb40重量%-Sn60重量%の低融点の半田からなる場合、球状端子は例えばPb90重量%-Sn10重量%の高融点半田や、Ag、Cu、Ni、Al、Au、Pt、Feなどの金属により構成される。
【0022】かかる構成においてはパッケージAの絶縁基板1下面の球状端子9を外部電気回路基板Bの配線導体8上に載置当接させ、しかる後、球状端子9を半田などのロウ材11により配線導体8に接着させて外部電気回路基板B上に実装することができる。また、低融点のロウ材としてAu-Sn合金を用いて接続端子を外部電気回路基板に接続してもよく、さらに上記球状端子に代わりに柱状の端子を用いてもよい。
【0023】次に、図4にリードレスチップキャリア(LCC)型パッケージCの外部電気回路基板Bへの実装構造について説明する。なお、図4において、図1と同一部材については同一の符号を付与した。図4におけるパッケージCでは、半導体素子の電極と個々に接続されたメタライズ配線層3が絶縁基板1の4つの側面に導出され、側面に導出されたメタライズ配線層が接続端子4を構成している。また、このパッケージCによれば、電磁波障害を防止するために、半導体素子5を収納するキャビティ6内にエポキシ樹脂等が充填され、またキャビティは導電性樹脂からなる蓋体12により密閉されている。また、パッケージCの底面にはアースのための導電層13が形成されている。
【0024】このパッケージCをプリント基板などの外部電気回路基板Bに実装するには、パッケージCの絶縁基板1側面の接続端子4を外部電気回路基板Bの配線導体8上に載置当接させてロウ材等により電気的に接続する。この時、接続端子4は配線導体8の表面にはロウ材による接続を容易に行うためでそれぞれロウ材が被着されていることが望ましい。
【0025】(絶縁基板の材質)本発明によれば、このような外部電気回路基板Bの表面に実装される半導体素子収納用パッケージとして、その絶縁基板1が40〜400℃の温度範囲における熱膨張係数が8〜18ppm/℃、特に9〜14ppm/℃の焼結体からなることが重要である。これは、前述した外部電気回路基板Bとの熱膨張差により熱応力の発生を緩和し、外部電気回路基板BとパッケージAとの電気的接続状態を長期にわたり良好な状態に維持するために重要であり、この熱膨張係数が8ppm/℃より小さいか、あるいは18ppm/℃より大きいと、いずれも熱膨張差に起因する熱応力が大きくなり、外部電気回路基板BとパッケージAとの電気的接続状態が悪化することを防止することができない。
【0026】なお、絶縁基板の熱膨張係数が8〜18ppm/℃と大きくなるに伴い、Siを基板とする半導体素子との熱膨張差が逆に大きくなってしまう。そのため、接着材としては、半導体素子が熱膨張差により剥離しないように半導体素子の絶縁基板への接着材を適宜選択することが必要である。望ましくは、その熱膨張差を緩衝可能な可撓性の材料により接着することが望ましく、例えば、エポキシ系、ポリイミド系などの有機系接着材や、場合によってはこれにAgなどの金属を配合したものが好適に使用される。
【0027】本発明によれば、このような高熱膨張係数を有する絶縁基板を構成する焼結体として、BaOを10重量%以上と、B2O3、SiO2のうちの少なくとも1種を含有するガラス(以下、BaO系ガラスという場合もある。)を20〜80体積%と、フィラー成分を80〜20体積%含む成形体を焼成してなる焼結体により構成するものである。なお、BaO系ガラスとしては、結晶性ガラスであることが好ましい。結晶性ガラスとは、焼結過程において、ガラス単独でも結晶相を析出する性質、あるいはガラスとフィラーと反応して結晶相を生成することのできる性質を具備するものである。
【0028】このBaO系ガラスとフィラー成分の量を上記の範囲に限定したのは、上記ガラス成分量が20体積%より少ない、言い換えればフィラー成分が80体積%より多いと液相焼結することができずに高温で焼成する必要があり、その場合、メタライズ同時焼成においてメタライズが溶融してしまう。また、結晶性ガラスが80体積%より多い、言い換えるとフィラー成分が20体積%より少ないと焼結体の特性が結晶性ガラスの特性に大きく依存してしまい、材料特性の制御が困難となるとともに、焼結開始温度が低くなるために配線導体と同時焼成できないといった問題が生じる。また、原料のコストも高くなる。
【0029】また、絶縁基板のBaO系ガラスにおいて、BaOは、ガラス中に10重量%以上含有されるもので、このBaO量が上記の範囲より少ないと、熱膨張係数が8ppm/℃より低くなり、SiO2が置換して焼成温度も高くなるためである。また、BaO系ガラス中には、B2O3およびSiO2のうちの少なくとも1種を含む。これらはガラスとしての低温焼結性を促進し、BaOと反応して結晶化を促進させる成分である。その他ガラスの構成成分としては、ZnO、Al2O3等が10重量%以下の割合で含有される。また、このBaO系ガラスは焼結過程で、結晶化してBaAl2Si2O8あるいはBaSi2O5、BaB2Si2O8等の少なくともBa、Siを含む結晶相が析出するものであることが望ましい。
【0030】さらに、上記BaO系ガラスの屈伏点は400℃〜800℃、特に400〜650℃であることが望ましい。これは、ガラスおよびフィラーからなる混合物を成形する場合、有機樹脂等の成形用バインダーを添加するが、このバインダーを効率的に除去するとともに、絶縁基体と同時に焼成されるメタライズとの焼成条件のマッチングを図るために必要であり、屈伏点が400℃より低いと結晶性ガラスが低い温度で焼結が開始されるために、例えばAg、Cu等の焼結開始温度が600〜800℃のメタライズとの同時焼成ができず、また成形体の緻密化が低温で開始するためにバインダーは分解揮散できなくなりバインダー成分が残留し特性に影響を及ぼす結果になるためである。一方、屈伏点が800℃より高いと結晶性ガラス量を多くしないと焼結しにくくなるため、高価な結晶性ガラスを大量に必要とするために焼結体のコストを高めることになる。
【0031】このフィラー成分は、結晶性ガラスの屈伏点に応じ、その量を適宜調整することが望ましい。即ち、結晶性ガラスの屈伏点が400℃〜650℃と低い場合、低温での焼結性が高まるためフィラーの含有量は50〜80体積%の比較的多く配合できる。これに対して、結晶性ガラスの屈伏点が650℃〜800℃と高い場合、焼結性が低下するためフィラーの含有量は20〜50体積%の比較的少なく配合することが望ましい。
【0032】本発明において用いられる上記BaO系ガラスは、フィラー無添加では収縮開始温度は700℃以下で、850℃以上では溶融してしまい、銅等のメタライズ配線層等とともに同時焼成することができない。しかし、フィラーを20〜80体積%の割合で混合することにより焼成温度において、結晶の析出とフィラー成分を液相焼結させるための液相を形成させることができる。また、成形体全体の収縮開始温度を上昇させることができるため、このフィラーの含有量の調整により用いる銅等のメタライズ配線層との同時焼成条件のマッチングを図ることができる。また、原料コストを下げるためには高価な結晶性ガラスの含有量を減少させることが好ましい。
【0033】例えば、メタライズ配線層をAg、Cu、Auのうちの1種を主として構成する場合、これらのメタライズの焼成は600〜1000℃で生じるため、同時焼成を行うには、結晶性ガラスの屈伏点は400℃〜650℃であり、フィラーの含有量は50〜80体積%であるのが好ましい。また、このように高価な結晶性ガラスの配合量を低減することにより焼結体のコストも低減できる。
【0034】また、BaO系ガラスの焼成後の40℃〜400℃における熱膨張係数が6〜18ppm/℃、特に、7〜13ppm/℃であることも必要である。これは、熱膨張係数が上記範囲を逸脱するとフィラーとの熱膨張差が生じ、焼結体の強度の低下の原因になる。また、フィラーの熱膨張係数が6ppm/℃未満では、焼結体の熱膨張係数を8〜18ppm/℃にすることも困難となる。
【0035】上記の特性を満足するBaO系ガラスとしては、BaO-Al2O3-SiO2系、BaO-SrO-Al2O3-SiO2系、BaO-Al2O3-B2O3-SiO2系、BaO-CaO-Al2O3-SiO2系、BaO-CaO-Al2O3-B2O3-SiO2系、BaO-MgO-ZnO-B2O3-SiO2系、BaO-CaO-ZnO-MgO-Al2O3-SiO2系、BaO-Na2O-K2O-SiO2系のガラス等が挙げられる。
【0036】この結晶性ガラスとフィラーとの混合物は、適当な有機樹脂バインダーを添加した後、所望の成形手段、例えば、ドクターブレード、圧延法、金型プレス等によりシート状に任意の形状に成形後、焼成する。
【0037】焼成にあたっては、まず、成形のために配合したバインダー成分を除去する。バインダーの除去は、700℃前後の大気雰囲気中で行われるが、配線導体としてCuを用いる場合には、水蒸気を含有する100〜700℃の窒素雰囲気中で行われる。この時、成形体の収縮開始温度は700〜850℃程度であることが望ましく、かかる収縮開始温度がこれより低いとバインダーの除去が困難となるため、成形体中の結晶性ガラスの特性、特に屈伏点を前述したように制御することが必要となる。
【0038】焼成は、850℃〜1300℃の酸化性雰囲気中で行われ、これにより相対密度90%以上まで緻密化される。この時の焼成温度が850℃より低いと緻密化することができず、1300℃を越えるとメタライズ配線層との同時焼成でメタライズ層が溶融してしまう。但し、配線導体としてCuを用いる場合には、850〜1050℃の窒素などの非酸化性雰囲気中で行われる。
【0039】このようにして作製されたガラスセラミック焼結体中には、結晶性ガラスから生成した結晶相、結晶性ガラスとフィラーとの反応により生成した結晶相、あるいはフィラー成分が分解して生成した結晶相等が存在し、これらの結晶相の粒界にはガラス相が存在する。析出する結晶相としては、焼結体全体の熱膨張係数を高める上で、少なくとも40〜400℃における熱膨張係数が6ppm/℃以上の結晶相が析出することが望ましい。
【0040】このような熱膨張係数が6ppm/℃以上の結晶相としては、クリストバライト(SiO2)、クォーツ(SiO2)、トリジマイト(SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、スピネル(MgO・Al2O3)、ウォラストナイト(CaO・SiO2)、モンティセラナイト(CaO・MgO・SiO2)、ネフェリン(Na2O・Al2O3・SiO2)、リチウムシリケート(Li2O・SiO2)、ジオプサイド(CaO・MgO・2SiO2)、メルビナイト(3CaO・MgO・2SiO2)、アケルマイト(2CaO・MgO・2SiO2)、マグネシア(MgO)、アルミナ(Al2O3)、ネフェリン(Na2O・Al2O3・2SiO2)、ひすい(Na2O・Al2O3・4SiO2)、カーネギアイト(Na2O・Al2O3・2SiO2)、エンスタタイト(MgO・SiO2)、ホウ酸マグネシウム(2MgO・B2O3)、セルシアン(BaO・Al2O3・2SiO2)、B2O3・2MgO・2SiO2、ガーナイト(ZnO・Al2O3)、ペタライト(LiAlSi4O10)の群から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。これらの中でも特に8ppm/℃以上の結晶相が良い。また、上記フィラー中には、その添加により最終焼結体の熱膨張係数が18ppm/℃を越える場合がある。その場合には、熱膨張係数が小さいフィラーと混合して熱膨張係数を適宜制御することが必要である。
【0041】また、上記焼結体を絶縁基板として、Ag、Cu、Ni、Pd、Auのうちの1種以上からなるメタライズ配線層を配設した配線基板やパッケージを製造するには、絶縁基板を構成するための前述したような結晶性ガラスとフィラーからなる原料粉末に適当な有機バインダー、可塑剤、溶剤を添加混合して泥漿物を作るとともに該泥漿物をドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってグリーンシート(生シート)と作製する。そして、メタライズ配線層3及び接続パッドとして、適当な金属粉末に有機バインダー、可塑剤、溶剤を添加混合して得た金属ペーストを前記グリーンシートに周知のスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布する。また、場合によっては、前記グリーンシートに適当な打ち抜き加工してスルーホールを形成し、このホール内にもメタライズペーストを充填する。そしてこれらのグリーンシートを複数枚積層し、グリーンシートとメタライズとを同時焼成することにより多層構造のパッケージを得ることができる。
【0042】
【実施例】以下、本発明をさらに具体的な例で説明する。
実施例1
結晶性ガラスとして、
(1)重量比率で15%BaO-25%ZnO-45%P2O5-10%Al2O3-5%SiO2(熱膨張係数10ppm/℃、屈伏点500℃)
(2)重量比率で20%BaO-5%Al2O3-10%Na2O-10%K2O-55%SiO2(熱膨張係数10ppm/℃、屈伏点650℃)
(3)重量比率で25%BaO-10%Al2O3-5%B2O3-60%SiO2(熱膨張係数8ppm/℃、屈伏点800℃)
(4)重量比率で25%BaO-2%Al2O3-1%B2O3-72%SiO2(熱膨張係数8ppm/℃、屈伏点850℃)
の3種のガラスを準備し、このガラスに対して表1に示すようにフィラー成分として、
フォルステライト(2MgO・SiO2、熱膨張係数10ppm/℃)
クォーツ(SiO2、熱膨張係数15ppm/℃)
クリストバライト(SiO2、熱膨張係数20ppm/℃)
ペタライト(LiAlSi4O10、熱膨張係数8ppm/℃)
MgO(熱膨張係数9ppm/℃)
ネフェリン(Na2O・Al2O3・2SiO2、熱膨張係数10ppm/℃)
ムライト(3Al2O3・2SiO2、熱膨張係数4ppm/℃)
アルミナ(Al2O3、熱膨張係数7ppm/℃)
を用いて表1に示す調合組成になるように秤量混合した。この混合物を粉砕後、有機バインダーを添加して十分に混合した後、1軸プレス法により3.5×3.5×15mmの形状の成形体を作製し、この成形体を700℃の大気中で脱バインダ処理した後、大気中で650〜1200℃で焼成して焼結体を作製した。
【0043】次に、上記のようにして得られた焼結体に対して40〜400℃の熱膨張係数を測定し表1に示した。また、焼結体を直径60mm、厚さ2mmに加工し、JISC2141の手法で比誘電率と誘電損失を求めた。測定はLCRメータ(Y.H.P4284A)を用いて行い、1MHz、1.0Vrsmの条件で25℃における静電容量を測定し、この静電容量から25℃における比誘電率を測定した。
【0044】次に、表1における各原料組成物を用いて、溶媒としてトルエンとイソプロピルアルコール、バインダーとしてアクリル樹脂、可塑剤としてDBP(ジブチルフタレート)を用いてドクターブレード法により厚み500μmのグリーンシートを作製した。
【0045】このグリーンシートの表面にAg-Ptメタライズペーストをスクリーン印刷法に基づきメタライズ配線層を塗布した。また、グリーンシートの所定箇所にスルーホールを形成しスルーホール内が最終的に基板の下面に露出するように形成し、そのスルーホール内にもAg-Ptメタライズペーストを充填した。そして、メタライズペーストが塗布されたグリーンシートをスルーホールの位置合わせを行いながら6枚積層し圧着した。
【0046】この積層体を700℃で大気中で脱バインダ後、各焼成温度で大気中でメタライズ配線層と絶縁基板とを同時に焼成しパッケージ用の配線基板を作製した。この時、同時焼成によるAgメタライズ層に対して、メタライズ層の溶融、焼結不良についての評価を行った。
【0047】次に、配線基板の下面にスルーホールに接続する箇所に凹部を形成しAg-Ptメタライズからなる接続パッドを作製した。そして、その接続パッドに図1に示すように半田(錫60〜10%-鉛40〜90%)からなる接続端子を取着した。なお、接続端子は、1cm2当たり30端子の密度で配線基板の下面全体に形成した。
【0048】一方、ガラス-エポキシ基板からなる40〜800℃における熱膨張係数が13ppm/℃の絶縁体の表面に銅箔からなる配線導体が形成されたプリント基板を準備し、上記のパッケージ用配線基板をプリント基板の上の配線導体とパッケージ用絶縁基板の接続端子が接続されるように位置合わせし、これをN2の雰囲気中で260℃で3分間熱処理しパッケージ用配線基板をプリント基板表面に実装した。この熱処理によりパッケージ用配線基板の半田からなる接続端子が溶けてプリント基板の配線導体と電気的に接続されたことを確認した。
【0049】(実装時の熱サイクル試験)上記のようにしてパッケージ用配線基板をプリント基板表面に実装したものを大気の雰囲気にて-40℃と125℃の各温度に制御した恒温槽に試験サンプルを15分/15分の保持を1サイクルとして最高1000サイクル繰り返した。そして、各サイクル毎にプリント基板の配線導体とパッケージ用配線基板との電気抵抗を測定し電気抵抗に変化が現れるまでのサイクル数を表1に示した。
【0050】
【表1】

【0051】表1より明らかなように、ガラスの含有量が20体積%より少ない試料No.9では、緻密な焼結体を得ることができず、80体積%を越える試料No.2,7,15,18、26では低温で磁器が緻密化してしまいメタライズが焼結されず同時焼成できなかった。また、ガラス量が適当であっても、フィラーとの組み合わせによって焼結体の熱膨張係数が8〜18ppm/℃を逸脱する試料No.6、16および19では、熱サイクル試験において200〜300サイクルで抵抗変化が生じた。
【0052】これに対してガラス量が適量でその焼結体の熱膨張係数が8〜18ppm/℃の本発明品はAg-Ptメタライズの同時焼成も良好であり、これを用いて作製したパッケージ用配線基板では昇降温1000サイクル後もプリント基板の配線導体とパッケージ用配線基板との間に電気抵抗変化は全く見られず、極めて安定で良好な電気的接続状態を維持できた。
【0053】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の配線基板および半導体素子収納用パッケージによれば、熱膨張係数が大きいプリント基板などの外部電気回路基板に実装した場合に、両者の熱膨張係数の差に起因する応力発生を抑制し、パッケージと外部電気回路とを長期間にわたり正確、かつ強固に電気的接続させることが可能となる。しかも、半導体回路素子の大型化による多ピン化に十分対応できる信頼性の高いパッケージの実装構造を実現できる。
【0054】さらに、銅などのメタライズとの同時焼成が可能であるために、高品質で且つ安価な配線基板および半導体素子収納用パッケージを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のBGA型の半導体素子収納用パッケージの実装構造を説明するための断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】接続端子の他の実施例における要部拡大断面図である。
【図4】本発明のリードレスチップキャリア型のパッケージの実装構造を説明するための断面図である。
【符号の説明】
A 半導体素子収納用パッケージ
B 外部電気回路基板
C LCC型パッケージ
1 絶縁基板
2,12 蓋体
3 メタライズ配線層
4 接続端子
4a接続パッド
4b突起状端子
5 半導体素子
6 キャビティ
7 絶縁体
8 配線導体
9 球状端子
10,11 低融点ロウ材
13 導電層
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-02-15 
出願番号 特願平8-227014
審決分類 P 1 41・ 856- Y (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂本 薫昭  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 影山 秀一
市川 裕司
瀬良 聡機
池田 正人
登録日 2002-06-28 
登録番号 特許第3323074号(P3323074)
発明の名称 配線基板、半導体素子収納用パッケージおよびその実装構造  
代理人 多田 一彦  
代理人 竹口 幸宏  
代理人 竹口 幸宏  
代理人 多田 一彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ