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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1115445 |
審判番号 | 不服2002-13318 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-04-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-17 |
確定日 | 2005-04-14 |
事件の表示 | 平成11年特許願第280858号「情報提示方法及びシステム、記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月13日出願公開、特開2001-101120〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年9月30日に特許出願されたものであって、平成14年6月13日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成14年7月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年8月9日付で手続補正がなされたものである。 2.平成14年8月9日付の手続補正について 平成14年8月9日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)について、以下のとおり決定する。 [結論] 平成14年8月9日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の発明 本件補正により、少なくとも特許請求の範囲の請求項1について、以下のとおり補正するものである。 「【請求項1】 不特定のユーザが通信手段によってアクセス可能な論理空間を有するコンピュータにおいて実行される方法であって、 所定のシナリオにより提示された情報によってその空間名が特定され、当該シナリオに関わる仮想現実社会を表現したものであり、且つ案内画面を窓口として形成される、ランクの付けられた複数階層のページ空間からなる仮想現実空間を前記論理空間に構築する過程と、 現実社会を表現した現実空間と前記構築された仮想現実空間とを通信手段を通じてリンクさせ、前記現実空間に存する情報と前記仮想現実空間に存する情報とをシームレスに切り替えながらユーザに提示する過程と、を含み、 前記仮想現実空間では現実社会で生じた事象を前記シナリオに登場する登場体との関連において発生させるとともに、 ユーザが取得可能な許可情報と同一の情報を予めコンピュータ側で保持しておき、いずれかのユーザからの申し出があったときにその申し出が前記許可情報を伴うものかどうかを判定する過程、を含み、 判定結果が肯定的である場合にその許可情報で許可されるランクの階層のページ空間を当該ユーザに提示する、 情報提示方法。」 本件補正についてその内容をみると、この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「仮想現実空間」を「案内画面を窓口として形成される、ランクの付けられた複数階層のページ空間からなる仮想現実空間」との限定を付加するとともに、ユーザに提示する過程として「ユーザが取得可能な許可情報と同一の情報を予めコンピュータ側で保持しておき、いずれかのユーザからの申し出があったときにその申し出が前記許可情報を伴うものかどうかを判定する過程、を含み、判定結果が肯定的である場合にその許可情報で許可されるランクの階層のページ空間を当該ユーザに提示する」過程をさらに付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に適合するか否か)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された「murmur’s GROUP,『探偵 神宮寺三郎 夢の終わりに』全記録,日本,株式会社リクルート,1998年 5月15日,第1版,p.139」(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下のとおりの技術的事項が記載されている。 (2-1)「データイーストの企業ページ内に開設されている神宮寺シリーズの専用サイト。シリーズの各タイトルの紹介や、イラストの掲載、ミニ推理ゲームなどがある。ページの更新比率は1月数回程度。フレーム/プラグイン対応で、BGMが鳴るようになっている。」(第139頁上段左欄) (2-2)第139頁上段の左図には、フレーム構成でトップ・スタッフ・事務所概要・映像ファイル・事件簿等の複数のリンクとイラストがあるサイト(ホームページ)が示されており、右側の図とその説明によると、神宮司の事務所やその室内の写真(架空)を掲載したページ、イラスト、簡単な推理ゲームが楽しめるページが盛り込まれている。 (なお、インターネットアーカイブのウエブhttp://web.archive.org/web/19980505113340/http://dataeast-corp.co.jp/jinguji/index.htmを参照されたい。) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された「伊藤保幸,OFFICIAL HOMEPAGE,Windows版 ルナティックドーンIII オフィシャルガイド,日本,ソフトバンクパブリッシング株式会社,1999年 5月25日,第1版,p.64」(以下、「引用刊行物2」という。)には、以下のとおりの技術的事項が記載されている。 (2-3)「『LUNATIC DAWNIII〜Into the linkgate〜』は、アートディンクの公式ホームページだ。最新情報やデータがアップされることがあるので必ずチェックしよう! http://lunatic.artdink.co.jp/ オフィシャルホームページを活用しよう! 公式ホームページでは、ユーザー登録やオフィシャルアナウンスのほか、アップデートやQ&A、ユーザー同士の情報交換なども頻繁に行われている。」 (2-4)第10頁には、「ゲームを始めて、プレイヤーがまずすることは、自分の分shんと鳴るプレイキャラクターと、自分の家などがあるホームワールドの作成だ。ゲームを立ち上げ、タイトル画面に表示された[START]を選ぶことでゲームスタートできる。」および「ホームワールドはSYSTEMメニューの中から[ニューワールド]を選択すれば作成できる。」と記載され、その左図にはメニューとして[ニューワールド]ともに[ネットワーク設定],[ホームページ]の記載がある。そして、第56頁には「ネットワークプレイは、インターネットやLAN回線を経由してプレイヤー同士が互いの世界を行き来する。そのためには[ネットワーク設定]と[リンクゲート設定]をマスターしよう。」および「LD3のページは[SYSTEM]-[ホームページ]で表示できる」と記載されており、ここで「LD3」とは「LUNATIC DAWNIII」の省略であることは明かである。 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された「まぼろし月夜,電撃Dreamcast Vol.19付録,日本,メディアワークス,1999年 9月24日,第4巻 第17号,p.1〜p.4」(以下、「引用刊行物3」という。)には、以下のとおりの技術的事項が記載されている。 (2-5)第3頁中段右欄において「このゲームには、本編以外にもお楽しみ要素が満載。ゲーム中に表示されるパスワードを入力して、インターネットのホームページで隠しグラフィックが見られたり、・・・(以下略)」と記載されている。 (3)対比 (対比) 本願補正発明と引用刊行物1記載の発明を対比する。 引用刊行物1における「サイト」は不特定のユーザが通信手段によってアクセス可能な論理空間を有するコンピュータ(インターネットサーバ)により提供されていることは明かであり、該サイトはゲームシナリオに関わる仮想現実社会を表現したものであり、且つトップページである案内画面を窓口として、リンク付けられた複数階層のページ空間からなる仮想現実空間をサーバ内の論理空間に構築していることは明かである。また、現実にあるゲームシリーズの各タイトルの商品紹介を仮想現実空間とリンクさせ、現実空間に存する情報と仮想現実空間に存する情報とをシームレスに切り替えながらユーザに提示する構成である。 したがって、引用刊行物1記載の発明の「ゲーム」,「サイト」は、それぞれ本願補正発明の「シナリオ」,「論理空間」に相当し、両者は、以下のとおりの一致点及び相違点を有するものと認められる。 (一致点) 「不特定のユーザが通信手段によってアクセス可能な論理空間を有するコンピュータにおいて実行される方法であって、 提示された情報によってその空間名が特定され、当該シナリオに関わる仮想現実社会を表現したものであり、且つ案内画面を窓口として形成される、ランクの付けられた複数階層のページ空間からなる仮想現実空間を前記論理空間に構築する過程と、 現実社会を表現した現実空間と前記構築された仮想現実空間とを通信手段を通じてリンクさせ、前記現実空間に存する情報と前記仮想現実空間に存する情報とをシームレスに切り替えながらユーザに提示する過程と、を含む 情報提示方法。」 (相違点) (3-1)(論理空間の)空間名が特定される情報に関して、本願補正発明においては、所定のシナリオにより提示されるのに対して、引用刊行物1記載の発明では、ゲーム中に提示されるかどうかは不明な点。 (3-2)本願補正発明においては、仮想現実空間で現実社会で生じた事象を前記シナリオに登場する登場体との関連において発生させるのに対して、引用刊行物1記載の発明においては、そのような記載がない点。 (3-3)本願補正発明においては、ユーザが取得可能な許可情報と同一の情報を予めコンピュータ側で保持しておき、いずれかのユーザからの申し出があったときにその申し出が前記許可情報を伴うものかどうかを判定する過程、を含み、判定結果が肯定的である場合にその許可情報で許可されるランクの階層のページ空間を当該ユーザに提示するのに対して、引用刊行物1記載の発明においては、そのような構成がない点。 (4)検討 上記相違点(3-1)〜(3-3)について検討する。 相違点(3-1)について 引用刊行物2には、ゲーム画面のメニューによりホームページへアクセスすることが記載されており、このようにゲームプログラムにおいてホームページへアクセスするアドレスが提供されることは、周知技術である。 また、引用刊行物3には、ゲーム中に表示されるパスワードをインターネットのホームページに入力すると隠しグラフィックが見られることが記載されており、インターネットのホームページに接続する際に、ホームページのアドレスが必要であることは明かであるから、パスワードと同時にホームページのアドレスを提示することは当業者が当然発想する程度のものと認められる。 さらに、引用刊行物1および引用刊行物2にホームページのアドレスが記載されており、このように、雑誌やテレビなど種種の媒体を介してホームページのアドレスを提示することは周知慣用手段である。 そして、引用刊行物1に提示されているホームページはゲームを制作した会社の専用サイトであり、シリーズの各ゲームタイトルの商品紹介やイラストの紹介など所定のゲームに関連した情報であることから、所定のゲーム内においてホームページのアドレスを表示すること、すなわち、所定のシナリオにより空間名が特定される情報に関して提示される構成とすることは、当業者が容易になし得るものと認められる。 相違点(3-2)について 一般に、ゲームや小説などは、登場する登場体に現実味を持たせるために、現実社会で生じた事象を取り込みつつ作成されるものであり、例えば引用刊行物1で提示されたホームページでは、神宮寺探偵事務所が実際にあるようにホームページが組まれており、神宮寺の事務所やその室内の写真を掲載したページがあるように、ウエブ上でも同様である。 そして、仮想現実空間において現実社会の事象とシナリオに登場する登場体との関連において発生させることは、周知慣用技術である(例えば「特開平10-216359号公報」を参照のこと。)。 したがって、仮想現実空間で現実社会で生じた事象を前記シナリオに登場する登場体との関連において発生させるように構成することは、当業者が必要に応じて適宜設定する程度の設計的事項であると認められる。 また、これにより奏する作用効果も、当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。 相違点(3-3)について 引用刊行物3には、ゲーム中に表示されるパスワードをインターネットのホームページに入力すると隠しグラフィックが見られることが記載されており、パスワードは本願補正発明の「許可情報」に相当し、隠しグラフィックはパスワードにより見られることから本願補正発明の「許可情報で許可されるランクの階層のページ空間」に相当し、ホームページにおいてパスワードを入力することから、該ホームページのコンピュータ側で許可情報と同一の情報をあらかじめ保持しておき、ユーザからの申し出があったときに許可情報を伴うものかどうかを判定していることは明かである。 なお、このようにゲーム中に表示されるパスワードをインターネットのホームページに入力しておまけ要素を得ることは、例えば「アミューズメント書籍編集部(松本勝晴)編集「SEGA OFFICIAL BOOKSダイナマイト刑事2 オフィシャルガイド」株式会社セガ・エンタープライゼス 発行,1998年8月31日初版発行」の第105頁左欄に記載されているように周知慣用技術である。 したがって、相違点(3-3)にあげた本願補正発明の構成は周知慣用技術であり、引用刊行物1に記載された発明に適用することは当業者が容易になし得るものと認められる。 したがって、本願補正発明は、引用刊行物1〜3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第4項の規定に違反するものであり、特許法159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成14年8月9日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係わる発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年4月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 不特定のユーザが通信手段によってアクセス可能な論理空間を有するコンピュータにおいて実行される方法であって、 所定のシナリオにより提示された情報によってその空間名が特定され、当該シナリオに関わる仮想現実社会を表現した仮想現実空間を前記論理空間に構築する過程と、 現実社会を表現した現実空間と前記構築された仮想現実空間とを通信手段を通じてリンクさせ、前記現実空間に存する情報と前記仮想現実空間に存する情報とをシームレスに切り替えながらユーザに提示する過程と、 を含み、 且つ、前記仮想現実空間では現実社会で生じた事象を前記シナリオに登場する登場体との関連において発生させる、 情報提示方法。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物1〜3、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から、「仮想現実空間」の限定事項である「案内画面を窓口として形成される、ランクの付けられた複数階層のページ空間からなる」構成と「情報提示方法」の過程である「ユーザが取得可能な許可情報と同一の情報を予めコンピュータ側で保持しておき、いずれかのユーザからの申し出があったときにその申し出が前記許可情報を伴うものかどうかを判定する過程、を含み、判定結果が肯定的である場合にその許可情報で許可されるランクの階層のページ空間を当該ユーザに提示する」との構成を省くものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用刊行物1〜3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用刊行物1〜3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1〜3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-02-01 |
結審通知日 | 2005-02-08 |
審決日 | 2005-02-25 |
出願番号 | 特願平11-280858 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須藤 竜也、竹井 文雄、小林 義晴 |
特許庁審判長 |
吉村 宅衛 |
特許庁審判官 |
東森 秀朋 内田 正和 |
発明の名称 | 情報提示方法及びシステム、記録媒体 |
代理人 | 鈴木 正剛 |
代理人 | 鈴木 正剛 |