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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1116156
異議申立番号 異議2003-73586  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-07-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-03-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3476638号「CVD成膜方法」の請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3476638号の訂正後の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3476638号の請求項1〜11に係る発明についての出願は、平成8年12月20日に特許出願され、平成15年9月26日にその特許の設定登録がなされたところ、佐藤正(以下、「申立人」という)より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成16年11月1日に訂正請求がなされ、その後、当審より申立人に審尋がなされたが、何ら応答がなかったものである。
2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲を、
「【請求項1】チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDにより薄膜を形成するCVD成膜方法であって、成膜終了後のチャンバー内をクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングする工程と、次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程と、その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入してその上にCVDにより薄膜を成膜する工程と、を具備し、前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法。
【請求項2】チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDにより薄膜を形成するCVD成膜方法であって、成膜終了後のチャンバー内をクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングする工程と、次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程と、その後、チャンバー内の被処理基板支持用のサセプターに成膜に用いる薄膜をプリコートする工程と、その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入してその上にCVDにより薄膜を成膜する工程と、を具備し、前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法。
【請求項3】前記ドライクリーニング工程の間にチャンバー内にパージガスを供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCVD成膜方法。
【請求項4】前記ドライクリーニング工程において、前記パージガスは、前記クリーニングガスが吐出していないガス吐出孔から吐出されることを特徴とする請求項3に記載のCVD成膜方法。
【請求項5】前記クリーニング工程は、クリーニングガスとしてClF3ガスを用いることによって行われることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のCVD成膜方法。
【請求項6】チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDによりTi膜またはTiN膜を形成するCVD成膜方法であって、成膜終了後のチャンバー内にClF3ガスを供給してチャンバー内をクリーニングする工程と、次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、成膜温度になるまで昇温しながらガス配管およびチャンバー内を不活性ガスによりパージする工程と、その後、チャンバー内の被処理基板支持用のサセプターにTi膜またはTiN膜をプリコートする工程と、その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入し、チャンバー内に反応ガスを供給して基板上にCVDによりTi膜またはTiN膜を成膜する工程と、を具備し、前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法。
【請求項7】前記ドライクリーニング工程において、シャワーヘッドのガス吐出孔の一部からClF3ガスをチャンバー内に供給するとともに、ClF3が吐出していないガス吐出孔から不活性ガスをチャンバー内へ供給することを特徴とする請求項6に記載のCVD成膜方法。
【請求項8】前記ドライクリーニングする工程は、クリーニングガスとしてNF3ガス、C2F2ガス、SF6ガスのうちの一つを用いてプラズマを形成することによって行われることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のCVD成膜方法。」と訂正する。
(2)訂正事項b
明細書の段落【0008】の記載を、「上記課題を解決するために、第1発明は、チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDにより薄膜を形成するCVD成膜方法であって、成膜終了後のチャンバー内をクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングする工程と、次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程と,その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入してその上にCVDにより薄膜を成膜する工程と、を具備し、前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書の段落【0009】の記載を、「第2発明は、チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDにより薄膜を形成するCVD成膜方法であって、成膜終了後のチャンバー内をクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングする工程と、次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程と、その後、チャンバー内の被処理基板支持用のサセプターに成膜に用いる薄膜をプリコートする工程と、その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入してその上にCVDにより薄膜を成膜する工程と、を具備し、前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書の段落【0010】の記載を、「第3発明は、上記第1発明または第2発明において、前記ドライクリーニング工程の間にチャンバー内にパージガスを供給することを特徴とするCVD成膜方法を提供する。」と訂正する。
(5)訂正事項e
明細書の段落【0011】の記載を、「第4発明は、第3発明において、前記ドライクリーニング工程において、前記パージガスは、前記クリーニングガスが吐出していないガス吐出孔から吐出されることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。第5発明は、第1発明ないし第4発明のいずれかにおいて、前記クリーニング工程は、クリーニングガスとしてCIF3ガスを用いることによって行われることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。」と訂正する。
(6)訂正事項f
明細書の段落【0012】の記載を、「第6発明は、チャンバー内をグリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDによりTi膜またはTiN膜を形成するCVD成膜方法であって、成膜終了後のチャンバー内にClF3ガスを供給してチャンバー内をクリーニングする工程と、次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、成膜温度になるまで昇温しながらガス配管およびチャンバー内を不活性ガスによりパージする工程と、その後、チャンバー内の被処理基板支持用のサセプターにTi膜またはTiN膜をプリコートする工程と、その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入し、チャンバー内に反応ガスを供給して基板上にCVDによりTi膜またはTiN膜を成膜する工程と、を具備し、前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。」と訂正する。
(7)訂正事項g
明細書の段落【0013】の記載を、「第7発明は、第6発明において、前記ドライクリーニング工程において、シャワーヘッドのガス吐出孔の一部からClF3ガスをチャンバー内に供給するとともに、ClF3が吐出していないガス吐出孔から不活性ガスをチャンバー内へ供給することを特徴とするCVD成膜方法を提供する。第8発明は、前記第1発明ないし第4発明のいずれか一つにおいて、前記ドライクリーニングする工程は、クリーニングガスとしてNF3ガス、C2F2ガス、SF6ガスのうちの一つを用いてプラズマを形成することによって行われることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。」と訂正する。
(8)訂正事項h
明細書の段落【0016】の記載を、「第1発明および第2発明においては、チャンバー内へクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングがなされるので簡便であり、また、第3発明では、ドライクリーニング工程においてクリーニングガスを供給しながら、不活性ガスでパージするのでクリーンニングの際にも配管やチャンバーに付着したクリーニング残渣を排除することができる。」と訂正する。
(9)訂正事項i
明細書の段落【0017】の記載を、「第4発明および第7発明においては、ドライクリーニング工程において、前記パージガスは、前記クリーニングガスが吐出していないガス吐出孔から吐出されるので、ガス吐出孔内にクリーニング残渣が付着することが回避される。第5発明においては、クリーニングガスとしてプラズマレスクリーニングが可能なClF3ガスを用いることによってクリーニングが行われるので、クリーニングの際にClF3ガスを導入した際に、チャンバー壁およびサセプターを加熱するのみでクリーニングが行えるので極めて簡便である。」と訂正する。
(10)訂正事項j
明細書の段落【0018】の記載を、「第6発明においては、Ti膜またはTiN膜を成膜後に、チャンバー内をClF3でドライクリーニングし、その後次の成膜に至るまでの昇温の間、ガス配管およびチャンバー内を不活性ガスでパージし、さらにサセプターにTi膜またはTiN膜をプリコートした後に、Ti膜またはTiN膜を成膜するので、プラズマレスクリーニングにより効率良くクリーニングを行うことができるとともに、チャンバー内のクリーニング残渣を速やかにチャンバー外に排除することができることでダミーが不要となり、さらにプリコートにより安定した成膜処理およびさらなるパーティクル低減を実現することができる。」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
(1)上記訂正事項aについて
上記訂正事項aは、詳細にみると、
a-1.請求項1の「ドライクリーニングする工程」の前に「クリーニングガスを供給することにより」を挿入する、
a-2.請求項1の「次の成膜に至るまでの間ガス配管およびチャンバー内を昇温しながら不活性ガスによりパージする工程」を「次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残港をチャンバー外に排除するために、ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程」と訂正する、
a-3.請求項1の「具備する」を「具備し、前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされる」と訂正する、
a-4.請求項2の「ドライクリーニングする工程」の前に「クリーニングガスを供給することにより」を挿入する、
a-5.請求項2の「次の成膜に至るまでの間ガス配管およびチャンバー内を不活性ガスによりパージする工程」を「次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程」と訂正する、
a-6.請求項2の「具備する」を「具備し、前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされる」と訂正する、
a-7.請求項3を削除する。
a-8.請求項4を請求項3に繰り上げ、それに伴い引用項番を訂正する、
a-9.請求項5を請求項4に繰り上げ、それに伴い引用項番を訂正し、「前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされ」を削除する、
a-10.請求項6を請求項5に繰り上げ、それに伴い引用項番を訂正する、
a-11.請求項7を請求項6に繰り上げ、「次の成膜に至るまでの間ガス配管およびチャンバー内を不活性ガスによりパージする工程」を「次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、成膜温度になるまで昇温しながらガス配管およびチャンバー内を不活性ガスによりパージする工程」と訂正し、「具備する」を「具備し、前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされる」と訂正する、
a-12.請求項8を請求項7に繰り上げ、それに伴い引用項番を訂正し、「前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされ」を削除する、
a-13.請求項9、10を削除する、
a-14.請求項11を請求項8に繰り上げ、それに伴い引用項番を訂正する、というものである。
上記a-1.、a-4.は、ドライクリーニングする工程を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、上記訂正事項は、訂正前の請求項3の記載からみて願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項a-2.、a-5.は、パージする工程を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。上記訂正事項のうち「チャンバー内のクリーニング残港をチャンバー外に排除するために」は本件明細書の段落【0014】、【0026】の記載、また「成膜温度になるまで」は訂正前の請求項10の記載からみて願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項a-3.、a-6.は、「チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされる」とさらに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。上記訂正事項は訂正前の請求項5の記載からみて願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項a-6.、a-12.は請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項a-7.、a-8.、a-9.、a-11.は項番の繰り上げと、上記訂正事項a-3.、a-6.により生じた特許請求の範囲の記載の重複を整理するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項a-10.は、項番の繰り上げであるから特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)上記訂正事項b〜jについて
上記訂正事項b〜jは、上記訂正事項aの訂正に伴って、訂正された特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるためになされた訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
2-3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項、第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件訂正発明
特許権者が請求した上記訂正は、上述したとおり、認容することができるから、訂正後の本件請求項1〜8に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される上記1-1.(1)のとおりのものである(以下、「本件訂正発明1〜8」という)。

4.特許異議申立てについて
4-1.取消理由通知の概要
当審の取消理由通知の概要は、請求項1〜11に係る発明は、刊行物1〜14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜11に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである、というものである。

4-2.刊行物の記載内容
(1)刊行物1:特開平7-94488号公報:申立人の提出した甲第1号証
(a)「被処理体を処理するための複数の真空処理室と、前記各真空処理室に設けられた真空排気系と、前記真空処理室に対して前記被処理体を搬入・搬出するために必要とされる移載室と、複数枚の前記被処理体を収容可能なカセットを収容するカセット室とを少なくとも有し、前記各室間が開閉可能になされた真空処理装置集合体のクリーニング方法において、前記真空処理室、前記移載室及び前記カセット室内をClF系ガスを含むクリーニングガスでクリーニングし、その後、前記クリーニングガスの供給を停止した後、前記各室内を真空引きしつつ不活性ガスの供給と停止を複数回繰り返すことにより前記各室内の残存クリーニングガスを排気することを特徴とする真空処理装置集合体のクリーニング方法。」(請求項2)
(b)「前述のようにこの第1の真空処理装置2Aは、金属膜として例えばタングステン膜をCVDにより成膜するものであり・・・」(第4頁右欄第32〜34行)
(c)「この処理容器22内にはウエハWをその上に載置するための例えばアルミニウム等よりなるウエハ載置台26が容器底部より起立した例えば石英からなる透明な支持筒28により支持されて設置されている。」(第4頁右欄第39〜42行)
(d)「この供給ヘッダ40の上部には処理ガスを供給するための処理ガス供給系54と、ClF、ClF3、ClF5等のClF系のガスをクリーニングガスとして供給するためのクリーニングガス供給系56がそれぞれ別個独立させて接続されている。この供給ヘッダ40内には、図示例にあっては水平に配置させてその上方より仕切板46、拡散板48及び整流板50が順次設けられて3つの部屋52A、52B、52Cに区画されている。」(第5頁左欄第33〜41行)
(e)「そして、このように所定の時間だけクリーニング操作を行って完了したならば、引き続いて行われる成膜処理のために各室内に残留しているClF3ガスを確実に排出しなければならない。そこで、本実施例では、不活性ガスとして例えば窒素(N2)ガスの供給・停止を複数回繰り返して行う。すなわち、各室の真空排気系43、112、116をその能力一杯で駆動して真空引きしながら、図6に示すようにN2ガスの供給及び停止を約10回繰り返して行う。例えばN2ガス供給期間T1は約10〜30秒程度に設定し、供給停止期間T2は約30〜60秒程度に設定し、これを10回程度繰り返して行う。尚、この間は、真空引きは継続して行われている。N2ガスの供給は、各真空処理装置においてはクリーニングガス供給系の希釈用の窒素源74Bや処理ガス供給系の希釈用の窒素源74Aから開閉弁全開で窒素ガスを供給し、また、その他の室ではクリーニングガス供給系114の希釈用の窒素源から窒素ガスを供給する。このように真空引きを連続的に行っている状態で、N2ガスの供給及び停止を繰り返して行うようにしたので、N2ガス供給時の衝撃により各室等の内壁に付着していたClF3ガスの離脱が促進され、各処理容器内壁や供給ヘッダの内外壁面に付着していたClF3ガスを略完全に離脱させて排除させることができる。従って、このクリーニング操作完了後に引き続いて行われる成膜処理時に、成膜中に欠陥の原因となるClF3ガスが取り込まれることを略完全に防止することができる。」(第9頁右欄第27行第10頁左欄第4行)
(f)「また、上記実施例にあっては、金属タングステン膜のクリーニングについて説明したが、クリーニングすべき膜はこれに限定されず、MoSi2、WSi2、TiN、TiW、Mo、SiO2、Poly-Si等にも適用することができ、処理ガスとしてはこの成膜に対応したものが使用される。例えば、タングステン膜の場合には、WF6+SiH4の組み合わせの外に、WF6+H2、WF6+Si2H6の組み合わせ等が使用され、WSixの成膜の場合には、WF6+SiH4の組み合わせ、WF6+Si2H6の組み合わせ、WF6+SiH2Cl2の組み合わせ等が使用できる。」(第10頁第26〜46行)
(2)刊行物2:特開平5-331630号公報:申立人の提出した甲第2号証
(a)「容器内の三フッ化塩素ガスを除去するに際し、1mmHg以上の分圧の水蒸気を含んだ空気またはガスを用いることを特徴とする三フッ化塩素ガスの除去方法。」(請求項1)
(b)「【従来の技術および解決すべき問題点】半導体製造、超硬工具製造等の分野を中心に薄膜製造プロセスが普及し、CVD装置、真空蒸着装置、スパッタリング装置が多数稼働している。しかし、これら種々の装置においては基板に堆積すべき膜物質の一部が炉壁、反応器壁、治具等に付着してスケールとなり工程に支障を来たすため定期的にこれらのスケールをクリーニングすることを必要としている。従来、炉や反応器を解体して酸による湿式洗浄方法で対応していたスケールのクリーニングに対して、本発明者らは三フッ化塩素等のガスによっておこなう乾式クリーニング法を提案し(特開昭64-17857号)、これにより炉や反応器を解体することなくスケールの除去を行うことが可能となった。また、クリーニング剤、クリーニング生成物ともガス状であるためクリーニング作業が大幅に省力化されるところとなった。該乾式クリーニングによって例えばアモルファスシリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコン、シリコン窒化物等をクリーニングする場合、排ガス中には四フッ化珪素(SiF4)、フッ化水素(HF)、塩化水素(HCl)、一塩化フッ素(ClF)等が生成しさらに未反応の三フッ化塩素(ClF3)も含まれており、該排ガスはバッチ方式または連続方式で系外に排出して除害処理される。さらにクリーニング終了後は反応器・ガス配管内部の排ガスは完全に除去される必要がある。クリーニング終了後の容器内部のガスを除去する方法としては、真空ポンプによる減圧と窒素あるいはヘリウム等の追出しガスの導入を交互に実施するのが一般的である。ところが該排ガス成分のうち特に未反応の三フッ化塩素についてはかかる方法によっては速やかに系内から除去することが困難である。三フッ化塩素が一般的な置換方法で除去されにくいのは、このガスが反応器や治具の表面に吸着され易く、また減圧によって容易に表面から脱着しないためである。三フッ化塩素が反応器器壁等に残留したままであると、特にクリーニング終了後、被クリーニング物を取り出す必要のある治具のオフラインクリーニングの場合などでは徐々に脱着してゆく三フッ化塩素が作業環境に放出されるので都合が悪い。このような脱着困難なガスを固体表面から追い出す一方法としては該固体表面を加熱する方法が有効である。これは加熱により固体表面から吸着ガスの脱離を促進し、減圧や追出しガス流通などにより系外に排除するというものである。この方法は容器を加熱する手段を有しているCVD装置等では実際に適用されており有効な方法であるとはいうものの、もともとこうした加熱設備を備えていない場合については、別途ヒーターを付設しなければならないので経済的に不利であり、加熱によらない効率的な乾式クリーニングの残留排ガスの除去方法が望まれていた。」(第2頁左欄第12行〜右欄第12行)
(3)刊行物3:特開平5-102187号公報:申立人の提出した甲第3号証
(a)「少なくとも表面が絶縁性物質で有る基板の一方面上にシリコン膜半導体層を形成し、この半導体層をトランジスタの能動層とする薄膜半導体装置の製造方法に於いて、該シリコン膜を減圧化学気相堆積法(LPCVD法)にて堆積する際、該シリコン膜堆積後、該基板を包容する環境を還元性雰囲気下に維持したまま該基板温度を500℃以下迄下げる工程を含む事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。」(請求項1)
(b)「基板挿入後、真空引き、漏洩検査を施し、異常が無ければ挿入温度の400℃から堆積温度迄反応室内温度を上げる。本実施例1では堆積温度は600℃で二時間費やして昇温した。通常この昇温期間中には純度99.99%程度以上の窒素・ヘリウム等の不活性ガスが流されるが、本実施例1では水素3%アルゴン97%のアルゴン・水素混合ガスを700SCCM流し続けて昇温した。この時反応室内平衡圧力は138mtorrで有った。本実施例1では安全上の理由より水素濃度を3%として昇温期間中反応室内を還元性雰囲気に維持したが、水素濃度は無論問われない。又、反応室内を400℃から堆積温度に昇温する丈の目的で有るならば昇温時間は一時間で十分だが、昇温期間中還元性雰囲気を維持して反応室側壁からの酸素や水分の脱ガスを除去し、清浄な堆積環境を現出する為には二時間程度以上の昇温期間が好ましい。」(第3頁右欄第17〜32行)
(4)刊行物4:特開平1-231936号公報:申立人の提出した甲第4号証
(a)「三フッ化塩素ガス(ClF3)をプロセスチューブ内に供給し、上記ガスを用いてプロセスチューブ内をドライエッチングして洗浄することを特徴とする反応炉システムの洗浄方法。」(請求項1)
(b)「シリコン気相エピタキシャル成長プロセスは、第4図に示すオペレーションタイム(T)に実行される各種プロセスにより実施され、このプロセスについては公知であるので詳述しないが、本発明の洗浄方法は、このプロセスが終了後、例えば200℃〜500℃程度に降温された後にドライエッチングタイム(D)として実行される。」(第4頁右下欄第2〜8行)
(c)「そして、このような洗浄を実施する場合には、ウエハを搭載しない状態のポート4をプロセスチューブ1内に搬入し、プロセスチューブ1のほか、石英ポート4,保温筒5等も一緒に洗浄することができる。また、本実施例の場合、洗浄ガスを通常のガス供給系を用いてプロセスチューブ1内に導入し、ガス排気系を介して排出しているので、このガス供給系特にノズル2a及びガス排出系をも同時に洗浄することができる。」(第5頁左上欄第6〜14行)
(d)「この後、排気側バルブを閉とし、供給側バルブを開として、(ClF3+Ar)の混合ガスをプロセスチューブ1内に導入する。そして、供給圧力と同圧力となるまでバルブを開のままとし、ガス流入が途絶えたときにバルブを閉とする。その後、ヒータ3の昇温によって200℃〜500℃としてエッチングを開始する。エッチング終了後は、排出側バルブを開とし、ポンプ駆動によって排気し、その後、ガス置換を行うために、真空引きとN2パージとを2回程度繰り返すことで洗浄工程が終了することになる。」(第5頁右上欄第15行〜左下欄第6行)
(e)「本発明の適用される反応炉としては、上記実施例のような二重管方式のプロセスチューブでなく、単一のプロセスチューブを使用したもの、あるいは横型炉(拡散,CVD等を問わず)、バレル型等各種の反応炉の洗浄に適用可能である。」(第7頁左上欄第11〜15行)
(5)刊行物5:特開平1-173723号公報:申立人の提出した甲第5号証
(a)「ハロゲン元素を含む成膜用ガス又はエッチング用ガスが導入された反応室の構成部材を100℃以上の温度で加熱処理し、残留ハロゲンを除去することを特徴とする反応室構成部材の残留ハロゲン除去方法。」(特許請求の範囲第1項)
(b)「アモルファスシリコン膜をグロー放電分解法により形成した場合には、その成膜用原料であるシランガスの分解に伴って放電用電極板やその他の反応室内部が粉体等により汚染される。このような粉体は、同じグロー放電分解装置を用いて次のアモルファスシリコン(以下、a-Siと称す)膜を形成しようとすると成膜中に取り込まれて成膜欠陥を引き起こし、その欠陥部で特性劣化が生じる。かかる問題を解決するために、a-Si膜を形成したグロー放電分解装置の反応室内部へ,例えばCF4ガス、SF6ガス及びNF3ガスなどのフッ素系エッチングガスを導入してグロー放電を発生させ、これに伴うエッチングにより上記粉体をガス化して除去している。」(第1頁左下欄第18行〜右下欄第12行)
(c)「本発明によれば、ハロゲン元素を含む成膜用ガス又はエッチング用ガスが導入された反応室の構成部材を100℃以上の温度で加熱処理し、残留ハロゲンを除去することを特徴とする反応室内部の残留ハロゲン除去方法が提供される。」(第2頁左上欄第13〜17行)
(6)刊行物6:特開平2-256234号公報:申立人の提出した甲第6号証
(a)「ハロゲン元素を含む成膜用ガス又はエッチング用ガスが導入された反応室に、該反応室に接続された排気用ポンプにより空気又は不活性ガスを通過させて残留ハロゲンを除去し、然る後、次の成膜を行うまでの間該ポンプを用いて空気又は不活性ガスを反応室内部に通過させることを特徴とする反応室内部の残留ハロゲンの除去方法。」(特許請求の範囲第1項)
(b)「アモルファスシリコン膜をグロー放電分解法により形成した場合には、その成膜用原料であるシランガスの分解に伴って放電用電極板やその他の反応室内部が粉体等により汚染される。このような粉体は、同じグロー放電分解装置を用いて次のアモルファスシリコン(以下、a-Siと称す)膜を形成しようとすると成膜中に取り込まれて成膜欠陥を引き起こし、その欠陥部で特性劣化が生じる。かかる問題を解決するために、a-Si膜を形成したグロー放電分解装置の反応室内部へ、例えばCF4ガス、SF6ガス及びNF3ガスなどのフッ素系エッチングガスを導入してグロー放電を発生させ、これに伴うエッチングにより上記粉体をガス化して除去している。」(第1頁左下欄第20行〜右下欄第14行)
(c)「本発明によれば、ハロゲン元素を含む成膜用ガス又はエッチング用ガスが導入された反応室に、該反応室に接続された排気用ポンプにより空気又は不活性ガスを通過させて残留ハロゲンを除去し、然る後、次の成膜を行うまでの間、該ポンプを用いて空気又は不活性ガスを反応室内部に通過させることを特徴とする反応室内部の残留ハロゲン除去方法が提供される。」(第2頁右上欄第4〜11行)
(7)刊行物7:特開平8-199361号公報:申立人の提出した甲第7号証
(a)「チャンバ内に堆積した堆積物上に皮膜を形成した後、エッチングガスを導入し該堆積物を除去することを特徴とする成膜装置のクリーニング方法。」(請求項1)
(b)「以下に本発明の成膜装置のクリーニング方法の手順について説明する。(1):本実施例においては、基板ホルダ部5に予め石英ウエハー6をセットした後、先ずガス導入用のノズル1よりジシランを導入し減圧CVD法により、またはモノシランと空気の混合ガスを導入し常圧CVD法により、厚みが50〜100μmのW等の堆積物3上に基板(石英ウエハー)部分で500〜2000Åの厚みのポリシリコン皮膜、またはパウダー状SiO皮膜4を形成する。〔図1〕なお、ジシランを導入し、減圧CVD法により,ポリシリコン皮膜4を形成する場合、皮膜形成時のチャンバ内雰囲気温度は400〜500℃であることが好ましい。(2):次に、5〜20vol%/N2balanceのClF3ガスを、該エッチングガス導入開始時のチャンバ内雰囲気温度が50℃〜100℃の条件下で、100〜500Torrの圧力でガス導入用のノズル1より導入する。〔図2〕ガスの導入はスルー式とする。この過程でまずポリシリコン皮膜、またはパウダー状SiO皮膜4がエッチングされて発熱する。(3):ポリシリコン皮膜、またはパウダー状SiO皮膜4のエッチングが終了し、除去したいW等の堆積物3のエッチングが開始する。〔図3〕この時点で、エッチングした箇所のボリシリコン.またはパウダー状SiOの量に応じて堆積物3の表面温度が上昇しており、表面温度に対応したエッチングレートで除去したい堆積物3のエッチングが進行する。〔図4〕なお、図3(b)において、CIF3ガス導入開始後10秒後のW等の堆積物3の表面温度t1およびt2は各々200℃、150℃である。(4):エッチングはどの箇所もほぼ同じ時間で完全に終了する。従って、オーバーエッチングによるチャンバ材料の損傷は少なく、またその損傷も均等である。〔図5、図6〕(5):エッチング終了後、エッチングガスの導入を止め、窒素を導入し、またエッチングガスが残留しないように注意する。〔図6〕以上でチャンバ内のクリーニングは終了し、またすでにチャンバ内壁等チャンバ内の装置表面の温度は300℃程度に高くなっており、チャンバへの吸着が懸念される塩素もチャンバ外へ放出されているため、チャンバーベークは不要である。」(第4頁右欄第10行〜第5頁左欄第2行)
(8)刊行物8:特開平4-155827号公報:申立人の提出した甲第8号証
(a)「被処理物を収容し、該被処理物に処理を施す処理容器の内部に付着したSi3N4系皮膜を除去クリーニングするに際し、前記処理容器内を前記Si3N4系皮膜を形成する温度よりも若干低い温度でかつ450℃以上に保った状態で、該処理容器内に希釈されたClF3を含むクリーニングガスを供給して、該反応容器内に付着したSi3N4系皮膜を除去することを特徴とするクリーニング方法」(請求項1)
(b)「従来から、半導体デバイスの製造工程において、半導体ウエハ等の被処理基板へのシリコンナイトライド被膜を減圧CVDや常圧CVD等によって成膜することが行われている。このようなSi3N4系被膜の成膜工程では、石英等からなる反応容器の周囲に加熱用ヒータを配置して構成された熱処理装置が一般的に用いられており、例えば所定温度に保持された反応容器内にウエハポートに収納された多数枚の半導体ウエハをローデイングした後、SiH4やSiH2Cl2、NH3等の反応性ガスを反応容器内に導入することによって、Si3N4系被膜の成膜処理が行われる。なお、半導体ウエハのロード・アンロードは、通常、処理温度近傍の温度に保持された反応容器に対して行われる。」(第1頁左下欄第19行〜右下欄第13行)
(9)刊行物9:特開平8-291385号公報:申立人の提出した甲第9号証
(a)「複数種類の処理ガスにより被処理体の表面に成膜を行なう処理装置に設けられ、前記処理ガスを供給すべく処理空間に臨ませた多数のガス噴射孔を形成したシャワーヘッド本体を有するシャワーヘッド構造において、前記シャワーヘッド本体には、前記複数種類の処理ガスの流れるガス流路を、前記ガス噴射孔に至るまで別個独立させて形成してあることを特徴とする処理装置のシャワーヘッド構造。」(請求項1)
(b)「【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を解決するために、複数種類の処理ガスにより被処理体の表面に成膜を行なう処理装置に設けられ、前記処理ガスを供給すべく処理空間に臨ませた多数のガス噴射孔を形成したシャワーヘッド本体を有するシャワーヘッド構造において、前記シャワーヘッド本体には、前記複数種類の処理ガスの流れるガス流路を、前記ガス噴射孔に至るまで別個独立させて形成するように構成したものである。【作用】本発明は、以上のように構成したので、複数種類の処理ガスはシャワーヘッド本体内に導入されても混合されずにこの中に別個独立させて設けたガス流路を流れ、ガス噴射孔から処理空間に放出された時に初めてこれらのガスは混合されることになる。従って、シャワーヘッド本体内では処理ガス同士が反応することがないのでこの内部で成膜が形成されることがなく、目的とする被処理体の表面に成膜を形成することが可能となる。」(第3頁左欄第8〜25行)
(10)刊行物10:特開平5-144747号公報:申立人の提出した甲第10号証
(a)「反応室及び該反応室内に配設されたシャワーヘッド部を備え、高融点金属化合物から成るガスを基に、かかる高融点金属を含有する薄膜を半導体基板表面に形成するCVD装置であって、該高融点金属化合物から成るガスを分解するガス分解手段を、シャワーヘッド部あるいはシャワーヘッド部より上流に設けたことを特徴とするCVD装置。」(請求項1)
(b)「【発明が解決しようとする課題】半導体基板表面における反応を利用して薄膜を形成するCVD法においては、薄膜成長の初期段階における結晶の核発生及び核成長状態が、薄膜の膜厚分布や薄膜の結晶性を決定する上で非常に重要である。一般に、例えばWF6を還元して半導体基板表面上にタングステン薄膜を成長させる場合、薄膜成長の初期段階においてタングステンの核は基板表面上で不均一に分布し、非常に粗の状態となる。この原因は、酸化膜や窒化膜等(SiO2、TiN、TiON等)の電気を通し難い膜の上ではWF6が反応し難いことにある。薄膜成長の初期段階においてタングステンの核を半導体基板表面上に均一に密に分布させことを目指した方法として、形成する薄膜と同種の薄膜、即ちタングステン薄膜24をサセプター22表面に予めCVD法にて形成する方法が知られている(図9の(B)参照)(化学工学会「CVD特別研究会シンポジウム」1991年7月18日開催、「ブランケットW成長」参照)。この方法の原理は以下のとおりである。即ち、CVD法にて形成されたタングステン薄膜24とWF6ガスとが吸着、解離反応を起こし、WFY(例えばWF3)が生成する。W(サセプター上) + WF6→ 2WF3↑ このWFYが半導体基板表面に付着して、核発生の元となる。次いで、WF6ガス及び例えばSiH4から成る還元ガスを半導体基板表面に供給すると、WF6が還元されて、タングステンの核が半導体基板表面に発生し成長する。」(第2頁右欄第31行〜第3頁左欄第8行)
(11)刊行物11:特開平7-14790号公報:申立人の提出した甲第11号証
(a)「【従来の技術】多結晶シリコン等を形成するシリコン成膜装置は、従来、炉芯管やボートや保温筒が石英により形成されていた。そして、石英炉芯管等は使用によりそれに多結晶シリコンが付着すると累積膜厚の変化により炉内の温度分布が著しく変化し、それに伴って多結晶シリコン膜の成長速度や膜厚均一性が大きく変動するという問題を有していた。そこで、炉芯管等を石英で形成した従来のシリコン成膜装置を使用する場合には、予め多結晶シリコンを炉芯管内表面に例えば5000程度気相成長させるプリコートをすることが必要であった。このプリコートには少なくとも4〜5時間もの時間がかかった。」(第2頁左欄第18〜29行)
(12)刊行物12:特開昭63-215037号公報:申立人の提出した甲第12号証
(a)「(1)反応室内で三フッ化窒素プラズマ処理と水素プラズマ処理を順次施した後、基板上にケイ素系薄膜を形成することを特徴とするケイ素系薄膜の製造方法。(2)前記水素プラズマ処理の後、前記ケイ素系薄膜を形成する前に前記反応室内を前記ケイ素系薄膜でオーバーコートすることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のケイ素系薄膜の製造方法。」(請求項1、2)
(13)刊行物13:特開平8-55804号公報:申立人の提出した甲第13号証
(a)「シリコン(Si)を含む活性化された原料ガスに基づいて反応炉内で基板上に半導体薄膜を堆積させる半導体薄膜の製造方法において、前記半導体薄膜を堆積させる前に、前記反応炉内をフッ素(F)を含むクリーニング・ガスで清浄する清浄工程と、前記反応炉内に少なくとも前記シリコン(Si)を含む半導体被膜と,前記半導体被膜上に窒化被膜もしくは窒素含有酸化被膜を積層して堆積させる堆積工程とを具備したことを特徴とした半導体薄膜の製造方法。」(請求項1)
(b)「【課題を解決するための手段】請求項1に記載される発明は、シリコン(Si)を含む活性化された原料ガスに基づいて反応炉内で基板上に半導体薄膜を堆積させる半導体薄膜の製造方法において、前記半導体薄膜を堆積させる前に、前記反応炉内をフッ素(F)を含むクリーニング・ガスで清浄する清浄工程と、前記反応炉内に少なくとも前記シリコン(Si)を含む半導体被膜と,前記半導体被膜上に窒化被膜もしくは窒素含有酸化被膜を積層して堆積させる堆積工程とを具備したことを特徴としたものである。」(第2頁右欄第25〜34行)
(c)「【作用】フッ素(F)を含むクリーニング・ガスで清浄する清浄工程によれば、反応炉内の反応炉内壁、電極あるいはサセプタ等に付着するフッ素(F)が、特に半導体薄膜の特性に影響を及ぼしてしまう。そこで、反応炉内に残存するフッ素(F)の影響を効率よく吸収除去し、しかもクリーニング・ガスで清浄が容易な被膜、即ちシリコン(Si)を含む半導体被膜と半導体被膜上に窒化被膜もしくは窒素含有酸化被膜を反応炉内に堆積させた後、実際の成膜を行うことにより、洗浄直後であっても、特性に優れた半導体薄膜の製造が可能になることを見い出し、本発明に至った。」(第2頁右欄第47行〜第3頁左欄第7行)
(d)「また、この発明にあっては、上記した半導体被膜上に窒化被膜もしくは窒素含有酸化被膜が積層されることを必須の要件としている。半導体被膜上に窒化被膜もしくは窒素含有酸化被膜を積層配置するのは、シリコン(Si)を含む半導体被膜が露出していると、真空中ではあっても半導体被膜表面が不所望な状態に酸化され、膜剥離し易くなるといった問題点を招くためであり、半導体被膜表面の酸化を防止する理由から窒化被膜もしくは窒素含有酸化被膜を積層する必要がある。」(第3頁左欄第21〜29行)
(e)「以上のように、この実施例によれば、清浄工程直後であっても、安定した膜特性が得られ、しかも従来に比べて製造途中でのパーティクル発生量の低い、液晶表示装置に適した絶縁膜と非晶質シリコンの積層膜を得ることができた。」(第5頁右欄第2〜6行)
(14)刊行物14:特開平8-97157号公報:申立人の提出した甲第14号証
(a)「このCVD装置1で半導体ウエハの表面に薄膜を生成する場合には、先ず、チャンバリッド3とチャンバ本体2がOリング9を介して密閉し、前記ゲート7もシャッタ8で密閉し、真空引きできる状態にする。そして図示していない真空ポンプで真空引きし、例えば、5Torr程度の気圧の半導体ウエハに成膜する場合の真空にし、半導体ウエハの成膜処理前に、そのチャンバ4内をクリーニングガス(NF3+N2O)でクリーニングし、次に、窒素ガスN2でチャンバ4内をパージする。そしてそのチャンバ4内をCVD膜で被覆し、チャンバ4内のダストをこのCVD膜で封止する。このCVD膜の被覆を通常「クリーニングプリコート」と称していて、以下、単に「プリコート」」と略記する。このプリコート時、プロセスガスは前記上部電極10からチャンバ4内に供給、拡散される。」(第2頁左欄第50行〜右欄第14行)

4-3.対比・判断
(1)本件訂正発明1について
刊行物1の上記(1)(a)には、「被処理体を処理するための真空処理室と、真空処理室に設けられた真空排気系とを有し、室間が開閉可能になされた真空処理装置集合体のクリーニング方法において、真空処理室をClF系ガスを含むクリーニングガスでクリーニングし、その後、クリーニングガスの供給を停止した後、室内を真空引きしつつ不活性ガスの供給と停止を複数回繰り返すことにより室内の残存クリーニングガスを排気する真空処理装置集合体のクリーニング方法」が記載されていると云える。
そして、上記(1)(b)から、上記「真空処理装置集合体」はCVD装置と云え、上記(1)(c)から、上記被処理体はウエハと云える。また上記(1)(d)には、クリーニングガス供給系として整流板が設けられた供給ヘッダが設けられている。また、上記(1)(e)には、「クリーニング操作完了後に成膜処理が引き続いて行われる」ことが記載されている。加えて「室内を真空引きしつつ不活性ガスの供給と停止を複数回繰り返すこと」により「内壁や供給ヘッダの内外壁面に付着していたClF3ガスを略完全に離脱させて排除させることができる」(上記(1)(e))とされている。
これら記載を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には「真空処理室内をクリーニングしてから、真空処理室にウエハを導入してウエハ上にCVDにより薄膜を形成するCVD成膜方法であって、成膜終了後の真空処理室内をクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングする工程と、次の成膜に至るまでの間、真空処理室内のクリーニングガスを真空処理室外に排除するために、室内を真空引きしつつ不活性ガスの供給と停止を複数回繰り返すことによりパージする工程と、その後、真空処理室内に次のウエハを装入してその上にCVDにより薄膜を成膜する工程と、を具備し、真空処理室内へのガスの供給は整流板が設けられた供給ヘッダによってなされるCVD成膜方法」という発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると云える。
そこで本件訂正発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「真空処理室」、「ウエハ」は、本件訂正発明1の「チャンバー」、「被処理基板」にそれぞれ相当するから、両者は「チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDにより薄膜を形成するCVD成膜方法であって、成膜終了後のチャンバー内をクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングする工程と、次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、パージする工程と、その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入してその上にCVDにより薄膜を成膜する工程と、を具備するCVD成膜方法」という点で一致し、次の点で相違している。
相違点(イ):本件訂正発明1では、パージする工程が「ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程」であるのに対して、刊行物1発明では、「室内を真空引きしつつ不活性ガスの供給と停止を複数回繰り返すことによりパージする工程」である点
相違点(ロ):本件訂正発明1では、チャンバー内へのガスの供給は「多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッド」によってなされるのに対して、刊行物1発明では、「整流板が設けられた供給ヘッダ」によってなされる点
これら相違点のうち相違点(イ)について検討する。
刊行物1には、「室内を真空引きしつつ不活性ガスの供給と停止を複数回繰り返すことによりパージする工程」の際の、温度条件については記載も示唆もされていない。
刊行物2には、従来技術として「このような脱着困難なガスを固体表面から追い出す一方法としては該固体表面を加熱する方法が有効である。これは加熱により固体表面から吸着ガスの脱離を促進し、減圧や追出しガス流通などにより系外に排除するというものである。」(上記(2)(b))と、「加熱」と「追出しガス流通」とを併用することが記載されている。
しかしながら、ここで記載された従来技術では、特に具体的な加熱温度について言及されておらず、ましてや「成膜温度になるまで昇温」することについて記載も示唆もされていない。
刊行物3には、「400℃から600℃の堆積温度まで不活性ガスを流しながら昇温する」工程は記載されているが、刊行物3には、肝心のクリーニング工程が記載されておらず、上記昇温する工程は「基板挿入後、真空引き、漏洩検査を施し、異常がなければ」(上記(3)(b))行われるものであり、単にCVDのために基板を昇温しているにすぎないものと云える。
刊行物4には、パージする工程については「その後、ガス置換を行うために、真空引きとN2パージとを2回程度繰り返すことで洗浄工程が終了することになる」(上記(4)(d))と刊行物1発明と同じ工程が記載されているだけである。なお、刊行物4の第4図におけるオペレーションパターンの昇温工程は、その直前にボートローディング工程が設けられ、ここでウエハを装入していることは明らかであるから、「パージする工程」後に被処理基板を装入する本件訂正発明1の「ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程」には対応していない。
刊行物5には、「ハロゲン元素を含むエッチング用ガスが導入された反応室の構成部材を100℃以上の温度で加熱処理し、残留ハロゲンを除去する」ことが記載されているだけであり、「不活性ガスによるパージ」についても、また「成膜温度になるまで昇温」することについても記載も示唆もされていない。
刊行物6には、「ハロゲン元素を含むエッチング用ガスが導入された反応室に、不活性ガスを通過させて残留ハロゲンを除去し、然る後、次の成膜を行うまでの間、不活性ガスを反応室内部に通過させる」ことは記載されているが、加熱について記載されていないし、ましてや「成膜温度になるまで昇温」することについて記載も示唆もされていない。
刊行物7には、「エッチング終了後、エッチングガスの導入を止め、窒素を導入」することは記載されているが、加熱について記載されていないし、ましてや「成膜温度になるまで昇温」することについて記載も示唆もされていない。
刊行物8には、「クリーニング方法」については記載されているが、「不活性ガスによるパージ」について記載されていないし、ましてや「成膜温度になるまで昇温」することについて記載も示唆もされていない。
刊行物9には、シャワーヘッドについて、刊行物10、11、12には、プリコートについて、それぞれ記載されているだけである。
刊行物13には、「クリーニング・ガスで清浄する清浄工程」は記載されているが、「不活性ガスによるパージ」についても、また「成膜温度になるまで昇温」することについても記載も示唆もされていない。
刊行物14には、「クリーニングガスでクリーニングし、次に、窒素ガスでチャンバ内をパージする」ことは記載されているが、「成膜温度になるまで昇温」することは記載も示唆もされていない。
そして、本件訂正発明1は上記相違点(イ)の構成を具備することにより明細書記載の効果を奏すると云える。
してみると、上記相違点(イ)の構成は、刊行物1〜14から当業者が容易に想到し得るものであると云うことはできない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件訂正発明1は、刊行物1〜14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2と刊行物1発明とを対比すると次の点が相違している。
相違点(イ):本件訂正発明2では、パージする工程が「ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程」であるのに対して、刊行物1発明では、「室内を真空引きしつつ不活性ガスの供給と停止を複数回繰り返すことによりパージする工程」である点
相違点(ロ):本件訂正発明2では、パージする工程の後に「チャンバー内の被処理基板支持用のサセプターに成膜に用いる薄膜をプリコートする工程」を具備するのに対して、刊行物1発明では具備していない点
相違点(ハ):本件訂正発明2では、チャンバー内へのガスの供給は「多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッド」によってなされるのに対して、刊行物1発明では、「整流板が設けられた供給ヘッダ」によってなされる点
そこで、これら相違点のうち相違点(イ)について検討すると、上記(1)と同じことが云えるから、本件訂正発明2は、刊行物1〜14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(3)本件訂正発明3〜5について
本件訂正発明3〜5は、直接間接に請求項1または2を引用しさらに限定したものであるから、上記(1)と同じ理由で、本件訂正発明3〜5は、刊行物1〜14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(4)本件訂正発明6について
刊行物1の記載を本件訂正発明6の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には「真空処理室内をクリーニングしてから、真空処理室にウエハを導入してウエハ上にCVDによりTiN膜を形成するCVD成膜方法であって、成膜終了後の真空処理室内をClF3ガスを供給することによりクリーニングする工程と、次の成膜に至るまでの間、真空処理室内のクリーニングガスを真空処理室外に排除するために、室内を真空引きしつつ不活性ガスの供給と停止を複数回繰り返すことによりパージする工程と、その後、真空処理室内に次のウエハを装入してその上にCVDによりTiN膜を成膜する工程と、を具備し、真空処理室内へのガスの供給は整流板が設けられた供給ヘッダによってなされるCVD成膜方法」という発明(以下、「刊行物1’発明」という)が記載されていると云える。
本件訂正発明6と刊行物1’発明とを対比すると次の点が相違している。
相違点(イ):本件訂正発明6では、パージする工程が「成膜温度になるまで昇温しながらガス配管およびチャンバー内を不活性ガスによりパージする工程」であるのに対して、刊行物1’発明では、「室内を真空引きしつつ不活性ガスの供給と停止を複数回繰り返すことによりパージする工程」である点
相違点(ロ):本件訂正発明6では、パージする工程の後に「チャンバー内の被処理基板支持用のサセプターにTiN膜をプリコートする工程」を具備するのに対して、刊行物1’発明では具備していない点
相違点(ハ):本件訂正発明6では、チャンバー内へのガスの供給は「多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッド」によってなされるのに対して、刊行物1’発明では、「整流板が設けられた供給ヘッダ」によってなされる点
そこで、これら相違点のうち相違点(イ)について検討すると、上記(1)と同じことが云えるから、本件訂正発明6は、刊行物1〜14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(5)本件訂正発明7について
本件訂正発明7は、請求項6を引用しさらに限定したものであるから、上記(1)と同じ理由で、本件訂正発明7は、刊行物1〜14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(6)本件訂正発明8について
本件訂正発明8は、請求項1または2を引用しさらに限定したものであるから、上記(1)と同じ理由で、本件訂正発明8は、刊行物1〜14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

5.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、訂正後の本件請求項1〜8に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件請求項1〜8に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
CVD成膜方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDにより薄膜を形成するCVD成膜方法であって、
成膜終了後のチャンバー内をクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングする工程と、
次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程と、
その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入してその上にCVDにより薄膜を成膜する工程と、
を具備し、
前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法。
【請求項2】 チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDにより薄膜を形成するCVD成膜方法であって、
成膜終了後のチャンバー内をクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングする工程と、
次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程と、
その後、チャンバー内の被処理基板支持用のサセプターに成膜に用いる薄膜をプリコートする工程と、
その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入してその上にCVDにより薄膜を成膜する工程と、
を具備し、
前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法。
【請求項3】 前記ドライクリーニング工程の間にチャンバー内にパージガスを供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCVD成膜方法。
【請求項4】 前記ドライクリーニング工程において、前記パージガスは、前記クリーニングガスが吐出していないガス吐出孔から吐出されることを特徴とする請求項3に記載のCVD成膜方法。
【請求項5】 前記クリーニング工程は、クリーニングガスとしてClF3ガスを用いることによって行われることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のCVD成膜方法。
【請求項6】 チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDによりTi膜またはTiN膜を形成するCVD成膜方法であって、
成膜終了後のチャンバー内にClF3ガスを供給してチャンバー内をクリーニングする工程と、
次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、成膜温度になるまで昇温しながらガス配管およびチャンバー内を不活性ガスによりパージする工程と、
その後、チャンバー内の被処理基板支持用のサセプターにTi膜またはTiN膜をプリコートする工程と、
その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入し、チャンバー内に反応ガスを供給して基板上にCVDによりTi膜またはTiN膜を成膜する工程と、
を具備し、
前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法。
【請求項7】
前記ドライクリーニング工程において、シャワーヘッドのガス吐出孔の一部からClF3ガスをチャンバー内に供給するとともに、ClF3が吐出していないガス吐出孔から不活性ガスをチャンバー内へ供給することを特徴とする請求項6に記載のCVD成膜方法。
【請求項8】 前記ドライクリーニングする工程は、クリーニングガスとしてNF3ガス、C2F2ガス、SF6ガスのうちの一つを用いてプラズマを形成することによって行われることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のCVD成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、例えばTi膜またはTiN膜などの薄膜をCVDで成膜するCVD成膜方法に関し、特にチャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDにより薄膜を形成するCVD成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスにおいては、金属配線層や、下層のデバイスと上層の配線層との接続部であるコンタクトホール、上下の配線層同士の接続部であるビアホールなどの層間の電気的接続のための埋め込み層、さらには埋め込み層形成に先立って拡散防止のために形成される、Ti(チタン)膜およびTiN(窒化チタン)膜の2層構造のバリア層など金属系の薄膜が用いられる。
【0003】
このような金属系の薄膜は物理的蒸着(PVD)を用いて成膜されていたが、最近のようにデバイスの微細化および高集積化が特に要求され、デザインルールが特に厳しくなって、それにともなって線幅やホールの開口径が一層小さくなり、しかも高アスペクト比化されるにつれ、特に、バリア層を構成するTi膜やTiN膜においてはPVD膜ではホール底に成膜することが困難となってきた。
【0004】
そこで、バリア層を構成するTi膜およびTiN膜を、より良質の膜を形成することが期待できる化学的蒸着(CVD)で成膜することが行われている。そして、CVDによりTi膜を成膜する場合には、反応ガスとしてTiCl4(四塩化チタン)およびH2(水素)が用いられ、TiN膜を成膜する場合には、反応ガスとしてTiCl4とNH3(アンモニア)またはMMH(モノメチルヒドラジン)とが用いられる。
【0005】
ところで、CVDによって上記のような薄膜を成膜する場合には、被成膜基板である半導体ウエハに膜が堆積するとともに、チャンバー壁にも堆積物が付着する。このため、成膜終了後、次の成膜に先だってチャンバー内をクリーニングする。この際のクリーニング方法としては、チャンバー壁およびサセプターを加熱するとともにClF3ガスをチャンバー内に導入して堆積物を分解する方法、NF3ガス、SF6ガス、C2F6ガス等をチャンバー内に導入し、これらのガスのプラズマを形成して堆積物を分解する方法、および機械的に堆積物を除去する方法等、ドライクリーニング方法が採用されている。
【0006】
このようにしてドライクリーニングした後には、クリーニング残渣があるため、チャンバー内においてパーティクルが増加する。したがって、クリーニング後にサセプタを成膜温度まで昇温させても、その直後はパーティクルが付着するため製品ウエハを用いて成膜処理することができない。このため、従来は、実際の成膜に先立って、ダミーウエハへの成膜を5枚程度行っている。すなわち、クリーニング残渣によるパーティクルの影響をダミーウエハーを用いることにより回避している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法では、ダミーウエハーを用いるため、その分コストが上昇するとともに、ダミーウエハを流す時間が必要であるためスループットが低下してしまう。本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、チャンバー内のクリーニング後ダミーウエハ等のダミーを用いることなく成膜を行うことができるCVD成膜方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第1発明は、チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDにより薄膜を形成するCVD成膜方法であって、
成膜終了後のチャンバー内をクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングする工程と、
次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程と、
その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入してその上にCVDにより薄膜を成膜する工程と、
を具備し、
前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。
【0009】
第2発明は、チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDにより薄膜を形成するCVD成膜方法であって、
成膜終了後のチャンバー内をクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングする工程と、
次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、ガス配管およびチャンバー内を成膜温度になるまで昇温しながら不活性ガスによりパージする工程と、
その後、チャンバー内の被処理基板支持用のサセプターに成膜に用いる薄膜をプリコートする工程と、
その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入してその上にCVDにより薄膜を成膜する工程と、
を具備し、
前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。
【0010】
第3発明は、上記第1発明または第2発明において、前記ドライクリーニング工程の間にチャンバー内にパージガスを供給することを特徴とするCVD成膜方法を提供する。
【0011】
第4発明は、第3発明において、前記ドライクリーニング工程において、前記パージガスは、前記クリーニングガスが吐出していないガス吐出孔から吐出されることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。
第5発明は、第1発明ないし第4発明のいずれかにおいて、前記クリーニング工程は、クリーニングガスとしてClF3ガスを用いることによって行われることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。
【0012】
第6発明は、チャンバー内をクリーニングしてから、チャンバー内に被処理基板を導入して基板上にCVDによりTi膜またはTiN膜を形成するCVD成膜方法であって、
成膜終了後のチャンバー内にClF3ガスを供給してチャンバー内をクリーニングする工程と、
次の成膜に至るまでの間、チャンバー内のクリーニング残渣をチャンバー外に排除するために、成膜温度になるまで昇温しながらガス配管およびチャンバー内を不活性ガスによりパージする工程と、
その後、チャンバー内の被処理基板支持用のサセプターにTi膜またはTiN膜をプリコートする工程と、
その後、チャンバー内に次の被処理基板を装入し、チャンバー内に反応ガスを供給して基板上にCVDによりTi膜またはTiN膜を成膜する工程と、
を具備し、
前記チャンバー内へのガスの供給は多数のガス吐出孔が形成されたシャワーヘッドによってなされることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。
【0013】
第7発明は、第6発明において、前記ドライクリーニング工程において、シャワーヘッドのガス吐出孔の一部からClF3ガスをチャンバー内に供給するとともに、ClF3が吐出していないガス吐出孔から不活性ガスをチャンバー内へ供給することを特徴とするCVD成膜方法を提供する。
第8発明は、前記第1発明ないし第4発明のいずれか一つにおいて、前記ドライクリーニングする工程は、クリーニングガスとしてNF3ガス、C2F2ガス、SF6ガスのうちの一つを用いてプラズマを形成することによって行われることを特徴とするCVD成膜方法を提供する。
【0014】
第1発明においては、成膜後にチャンバー内をドライクリーニングし、その後、次の成膜に至るまでの昇温の間、ガス配管およびチャンバー内を不活性ガスでパージするので、チャンバー内のクリーニング残渣を速やかにチャンバー外に排除することができ、パーティクルの影響を排除することができる。したがって、ダミーウエハ等のダミーを用いずに、成膜のための昇温終了後即座に製品の成膜を行うことができるので、ダミーの分のコストを削減することができるとともに、ダミーを流す時間を省略することができ、スループットが向上する。
【0015】
また、第2発明においては、ガス配管およびチャンバー内を不活性ガスでパージした後、チャンバー内の被処理基板支持用のサセプターに成膜に用いる薄膜をプリコートし、その後製品の成膜を行うので、一枚目の被処理基板と二枚目以降の被処理基板の成膜条件を略同一にすることができ、安定した成膜処理を行うことができるとともに、パーティクルを一層低減することができるといった効果が付加される。
【0016】
第1発明および第2発明においては、チャンバー内へクリーニングガスを供給することによりドライクリーニングがなされるので簡便であり、また、第3発明では、ドライクリーニング工程においてクリーニングガスを供給しながら、不活性ガスでパージするのでクリーンニングの際にも配管やチャンバーに付着したクリーニング残渣を排除することができる。
【0017】
第4発明および第7発明においては、ドライクリーニング工程において、前記パージガスは、前記クリーニングガスが吐出していないガス吐出孔から吐出されるので、ガス吐出孔内にクリーニング残渣が付着することが回避される。第5発明においては、クリーニングガスとしてプラズマレスクリーニングが可能なClF3ガスを用いることによってクリーニングが行われるので、クリーニングの際にClF3ガスを導入した際に、チャンバー壁およびサセプターを加熱するのみでクリーニングが行えるので極めて簡便である。
【0018】
第6発明においては、Ti膜またはTiN膜を成膜後に、チャンバー内をClF3でドライクリーニングし、その後次の成膜に至るまでの昇温の間、ガス配管およびチャンバー内を不活性ガスでパージし、さらにサセプターにTi膜またはTiN膜をプリコートした後に、Ti膜またはTiN膜を成膜するので、プラズマレスクリーニングにより効率良くクリーニングを行うことができるとともに、チャンバー内のクリーニング残渣を速やかにチャンバー外に排除することができることでダミーが不要となり、さらにプリコートにより安定した成膜処理およびさらなるパーティクル低減を実現することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係るCVD成膜方法を実施するためのTiN成膜装置を示す断面図である。この成膜装置は、気密に構成された略円筒状のチャンバー1を有しており、その中には被処理体である半導体ウエハWを水平に支持するためのサセプター2が円筒状の支持部材3により支持された状態で配置されている。サセプター2の外縁部には半導体ウエハWをガイドするためのガイドリング4が設けられている。また、サセプター2にはヒーター5が埋め込まれており、このヒーター5は電源6から給電されることにより被処理体である半導体ウエハWを所定の温度に加熱する。電源6にはコントローラー7が接続されており、これにより図示しない温度センサーの信号に応じてヒーター5の出力が制御される。
【0020】
チャンバー1の天壁1aには、シャワーヘッド10が設けられている。このシャワーヘッドには多数のガス吐出孔10aおよび10bが交互に形成されている。ガス吐出孔10aにはTiCl4源21が配管13およびそこから分岐した配管11を介して接続されており、ガス吐出孔10bにはNH3源19が配管14およびそこから分岐した配管12を介して接続されている。すなわち、シャワーヘッド10は、マトリックスタイプであり、反応ガスであるTiCl4ガスおよびNH3ガスが交互に形成された異なる吐出孔から吐出し、吐出後に混合されるポストミックス方式が採用されている。
【0021】
また、配管13には、クリーニングガスであるClF3源12に接続された配管15が接続されており、バルブ23を切り替えることにより、配管11および吐出孔10aを介してクリーニングガスであるClF3ガスがチャンバー1内に供給される。一方、配管14には、N2源20に接続された配管16が接続されており、バルブ24を切り替えることにより、配管12および吐出孔10bを介してN2ガスがチャンバー1内に供給される。また、N2ガスの配管16はバルブ25を介して配管13にも接続されている。また、配管14には、MMH源18から延びる配管17が接続されており、配管14,12を介してガス吐出孔10bからチャンバー1内にMMHガスも供給可能となっている。なお、各ガス源からの配管には、いずれもバルブ26およびマスフローコントローラー27が設けられている。
【0022】
チャンバー1の底壁1bには、排気管8が接続されており、この排気管には真空ポンプ9が接続されている。そしてこの真空ポンプ9を作動させることによりチャンバー1内を所定の真空度まで減圧することができる。
【0023】
このような装置によりTiN膜を成膜するには、まず、チャンバー1内に半導体ウエハWを装入し、ヒーター5によりウエハWを例えば450〜600℃の温度に加熱しながら、真空ポンプ9により真空引きして高真空状態にし、引き続き、N2ガスおよびNH3ガスを所定の流量比、例えばN2ガス:50〜500SCCM、NH3ガス:200〜400SCCMでチャンバー1内に導入してチャンバー1内を例えば1〜10Torrにし、プリアニールを行う。次に、チャンバー1内を例えば0.1〜1Torrにし、N2ガスおよびNH3ガスの流量を維持したまま、TiCl4を例えば5〜20SCCMの流量で5〜20秒間程度プリフローし、引き続き同じ条件でTiN膜の成膜を所定時間行う。その後、NH3ガス雰囲気でのアフターアニールを行い成膜を終了する。なお、半導体ウエハWをチャンバー1に装入してから成膜終了までの間、パージガスとして例えばN2ガスを所定量流しておくことが好ましい。また、成膜の際にNH3ガスとMMHガスを併用しても構わない。成膜終了後、半導体ウエハWをチャンバー1から搬出する。
【0024】
成膜後のチャンバー1およびサセプター2にはTiNが堆積しているため、チャンバー1内のクリーニングを行う。このクリーニングに際しては、成膜用のTiCl4ガスおよびNH3ガスの供給を停止し、バルブ23を開いてClF3源12から配管15および配管11を通ってガス吐出孔10aからチャンバー1内へClF3ガスを供給する。この際に、サセプター2のヒーター5およびチャンバーの壁部に設けられたヒーター(図示せず)によりサセプター2およびチャンバー壁を例えば300℃程度に加熱する。ClF3は反応性が高いため、このように加熱するのみでTiNと反応してガス成分であるフッ化チタンを生成し、チャンバー外へ排出することができる。すなわちクリーニングガスとしてClF3を用いることによりプラズマレスクリーニングが可能であり、極めて簡便にクリーニングを行うことができる。
【0025】
この場合に、ガス吐出孔10bからはClF3ガスが吐出しないため、このままでは図2に示すように、クリーニング残渣(TiF4など)30がガス吐出孔10bの内壁に付着することとなる。このようにクリーニング残渣が付着すると、次の成膜時にはがれてパーティクルとなる。したがって、バルブ24を開いて、図3に示すように、パージガスであるN2ガスをガス吐出孔10bから吐出させて、ガス吐出孔10bの内壁へクリーニング残渣30が付着することを防止することが好ましい。
【0026】
クリーニング終了後、成膜のための昇温を行うが、この際に、チャンバー1内にパージガスとしてN2ガスを供給する。この場合にはバルブ24および25を開いてガス吐出孔10a,10bの両方からN2ガスを供給することが好ましい。クリーニング後にはクリーニング残渣が存在しているが、このように配管およびチャンバー1内をパージすることにより、クリーニング残渣を排気管8から速やかに排出させることができる。したがって、その後の成膜の際に、クリーニング残渣に起因するパーティクルの発生を著しく減少させることができる。このようにクリーニング残渣に起因するパーティクルの発生が減少することから、従来用いられていたダミーウエハが不要となる。
【0027】
成膜温度に達すると、パージ工程を終了させ、次の半導体ウエハをチャンバー内に搬入して成膜処理を実施するのであるが、次に成膜すべき半導体ウエハWの搬入に先立って、サセプタ2をプリコートすることが好ましい。プリコートは、半導体ウエハを装入せずに成膜と同じ条件設定でサセプタに膜を形成することであり、このプリコートにより一枚目のウエハと二枚目以降のウエハの成膜条件を略同一にすることができ、安定した成膜処理ができるとともに、パーティクルを一層低減することが可能となる。
【0028】
以上のようなクリーニング工程および成膜工程を含む一連の工程のフローを図4に示す。また、比較のため、従来の工程のフローを図5に示す。これらの図に示すように、本発明にしたがって成膜に先立つ昇温の際に配管およびチャンバー内をパージすることによりダミーウエハが不要となり、その分従来よりも処理時間を短縮することができ、スループットが向上する。また、プリコートは短時間でよいため、従来ダミーウエハを流していた時間よりも十分に短く、プリコートを付加してもスループット向上効果は損なわれない。
【0029】
以上はTiN膜の成膜について説明したが、Ti膜を形成する場合もほぼ類似した工程で行われる。ただし、Ti膜の場合成膜ガスとしてTiCl4およびH2を用いる点が異なっている。
【0030】
次に、以上のようなパージ工程およびプリコートの効果を実際に把握した結果について説明する。図6は、実際に本発明の方法を実施した際の各工程におけるパーティクル数を測定した結果を示す図である。ここでは6インチウエハをモニターとして用い、その表面の0.2〜3.0μm径のパーティクルの数を測定した。この図に示すように、クリーニング後には684個ものパーティクルが存在していたのに対し、パージ後には14個と激減した。また、プリコートを行うことによりさらにパーティクル数が減少し、その個数はわずか4個であった。このように、本発明によりクリーニング残渣によるパーティクルを著しく減少させることができ、ダミーウエハを用いることなく成膜を行うことができる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく種々変形可能である。上記実施の形態では、クリーニングガスとしてClF3を用いてプラズマクリーニングを行った例を示したが、これに限らず、NF3ガス、C2F2ガス、SF6ガス等のプラズマを形成してプラズマクリーニングを行う場合にも適用可能である。また、ガスを用いず機械的なクリーニングを行う場合にも適用可能である。要するに、本発明はドライ環境でクリーニングを行うドライクリーニングであればよい。さらに、パージするための不活性ガスはN2ガスに限らず、HeやAr等、他の不活性ガスを用いてもよい。
【0032】
上記例ではTiN膜またはTi膜を成膜する場合について示したが、これに限らずCVDで薄膜を形成する場合すべてに適用可能である。さらに、被処理基板としては、半導体ウエハに限らず他のものであってもよく、また、基板上に他の層を形成したものであってもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、成膜後にチャンバー内をドライクリーニングし、その後、次の成膜に至るまでの昇温の間、ガス配管およびチャンバー内を不活性ガスでパージするので、チャンバー内のクリーニング残渣を速やかにチャンバー外に排除することができ、パーティクルの影響を排除することができる。したがって、ダミーウエハ等のダミーを用いずに、成膜のための昇温終了後即座に製品の成膜を行うことができるので、ダミーウエハの分のコストを削減することができるとともに、ダミーを流す時間を省略することができ、スループットが向上する。また、さらにパージ後、チャンバー内のサセプターに成膜に用いる薄膜をプリコートし、その後製品の成膜を行うことにより、一枚目の被処理基板と二枚目以降の被処理基板の成膜条件を略同一にすることができ、安定した成膜処理を行うことができるとともに、パーティクルを一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るCVD成膜方法を実施するためのTiN成膜装置を示す断面図。
【図2】
シャワーヘッドからクリーニングガスを吐出させた状態を示す断面図。
【図3】
シャワーヘッドからクリーニングガスおよびパージガスを吐出させた状態を示す断面図。
【図4】
本発明の一連の工程のフローを示す図。
【図5】
従来方法の一連の工程のフローを示す図。
【図6】
本発明の効果を示す図。
【符号の説明】
1……チャンバー
2……サセプター
5……ヒーター
8……排気管
9……真空ポンプ
10……シャワーヘッド
10a,10b……ガス吐出孔
19……NH3源
20……N2源
21……TiCl4源
22……ClF3源
30……クリーニング残渣
W……半導体ウエハ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-02-22 
出願番号 特願平8-354603
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮澤 尚之  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 西村 和美
野田 直人
登録日 2003-09-26 
登録番号 特許第3476638号(P3476638)
権利者 東京エレクトロン株式会社
発明の名称 CVD成膜方法  
代理人 高山 宏志  
代理人 高山 宏志  

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