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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
管理番号 1120082
審判番号 不服2002-10489  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-12 
確定日 2005-07-15 
事件の表示 平成8年特許願第259573号「使い捨ておむつ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年4月21日出願公開、特開平10-99375〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年9月30日の出願であって、その請求項1に係る発明は、当審によってなされた拒絶理由通知に対して、平成17年2月14日付け手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸液性コアが介在し、前後の長手方向において前胴周り域と後胴周り域とこれら両域間に位置する股下域とが構成され、前記前後胴周り域のうちの一方の左右各側縁部に互いに係脱するシート状の雄部材と雌部材とからなるメカニカルファスナの前記雄部材が配設され、前記前後胴周り域のうちのもう一方における前記裏面シートの外面に前記雌部材が配設された使い捨ておむつにおいて、
前記雌部材が、おむつの幅方向に伸縮可能な支持シートに、前記長手方向へ延び、かつ、前記幅方向に所要の間隔で配置された複数条の第1ホットメルト接着剤塗布ラインを介して固着し、
前記支持シートが、前記裏面シートの外面に、前記長手方向へ延び、かつ、前記幅方向に所要の間隔で配置された複数条の第2ホットメルト接着剤塗布ラインを介して固着し、
前記雌部材が、前記支持シートの収縮に伴い、前記裏面シートとともに前記幅方向に起伏を繰り返していることを特徴とする前記使い捨ておむつ。」(以下、「本願発明」という)

2.当審の拒絶理由の概要
「本願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された国際公開第96/25133号パンフレット(1996年8月22日)(以下、「引用例1」という)、特開平5-192368号公報(以下、「引用例2」という)の各引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。

3.引用例の記載事項
(1)引用例1には、概略、以下(イ)〜(チ)の事項が記載されている。
(イ)「図面の簡単な説明
本発明は、図面を参照して詳細に説明する。図において:
図1は、本発明による弾性的に延在した接合部材を有する使い捨ておむつの一部を切り欠いた斜視図を示す。…中略…
図3〜7は、前部横断端部に平行な断面の線に沿い前部腰部弾性要素を通った、図1のおむつの前部腰部領域の他の実施例の断面図を示す。」(第6頁16〜28行)
(ロ)「図面を参照すると、図1は、おむつがおむつの着用者に使用される前の状態の、本発明の一部を切除したおむつ20の斜視図である。図1から分かるように、好ましいおむつ20は、本体部22と固定装置24とを有している。好ましい本体部22は、液体透過性トップシート26と、吸収性芯28と、液体不透過性バックシート30と、側部フラップ34と1つまたはそれ以上の弾性部材36を有した弾性的に収縮可能なレッグカフス(leg cuffs)32とを備えている。」(第8頁22〜29行)
(ハ)「図1は、本体部22の好ましい実施例を示しており、トップシート26とバックシート30とは、同一の拡がりを有していて、一般に吸収性芯28より大きい長さと幅を有している。トップシート26はバックシート30に重ねられていて、本体部22の周面38を形成する。周面38は、本体部22の外周部即ち言い換えれば外延部を規定している。周面38は、長手方向側部40と終端部即ち横断端部42、42’とを有している。本体部22は、使用者に面した側44と衣服に面した側46とを有している。」(第9頁1〜9行)
(ニ)「吸収性芯28はバックシート30上に重ねられ、好ましくは、例えば、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、または他の超音波接合或いは熱/圧力シールのような、当業者に良く知られている芯取着手段55によって互いに一体にされる。吸収性芯28は、接着剤の一様な連続した層、接着剤の模様化された層、または、接着剤の離れた線状或いは点状の配列によってバックシート30に固定される。」(第11頁4〜10行)
(ホ)「おむつ20は、前部腰部弾性要素89を有していて、弾性要素は、図1において弾性的な接合部材64で形成されている。前部腰部弾性要素89は、好ましくは、30〜280g/インチの力で5%〜60%、好ましくは、150g/インチの力で30%伸び、着用者の腰部に対して前部腰部領域94の弾性的な適合がされるように、前部腰部領域94を収縮させる」(13頁28〜末行)
(ヘ)「図1に示した本発明の好ましい実施例において、固定装置24は、固定部材58を有していて、好ましくは、第1の終端領域48の後部腰部領域98の本体部22の各長手方向側部40に隣接して設けられたテープ状のタブ60とフック型固定要素62と;フック型固定要素62と接合可能で、前部腰部領域94の本体部22の外表面46に設けられた接合部材64とを備えている。…中略…各固定部材58は、おむつ20の側面閉鎖を確実にするための接合部材64を係合する機械式固定部材を供給することを意図している。…中略…各固定部材58のフック型固定要素62は、本体部と結合され、好ましくは、本体部22のパネル51において、25mmの幅(即ち、一般的に長手方向の中心線29に対して垂直に)の領域を62.5mmの長さ(即ち、一般的に長手方向の中心線29に対して平行に)に亘って覆う。」(第14頁10〜29行)
(ト)「図4は、接合部材64が弾力性のフィルム96とループ型材料97との積層から成る実施例を示している。ループ型材料97は、フイルム96に、例えば、接着剤による接合か超音波による接合によって、接合されている。適切なフイルムは、エクソン社から型第500として入手可能であり、適切なループ型材料はアモコ社から繊維型第P8として入手可能である。積層96、97は、フイルム96が予め伸ばされた状態でループ型材料97を弾力性のフイルム96に取着して形成されるので、ループ型材料はフイルム96によってひだ(gathers)を形成される。」(第22頁6〜14行)
(チ)「図7の実施例において、弾性要素96はそのゆるんだ状態を示されていて、バックシート30と接合部材64とは収縮した弾性要素96によってひだをつけられている。」(第23頁4〜6行)
(リ)図1には、前部腰部領域94と、後部腰部領域98との間に股下領域が示されている。
記載事項「(イ)〜(リ)」を総合すると、
引用例1には、
「液体透過性トップシート(26)と液体不透過性バックシート(30)との間に吸収性芯(28)が介在し、前後の長手方向において前部腰部領域(94)と後部腰部領域(98)とこれら両域間に位置する股下域とが構成され、後部腰部領域(98)の長手方向側部(40)に隣接して設けられたテープ状のタブに機械式固定部材のフック型固定要素が配設され、前部腰部領域(94)における前記バックシート(30)の外面にループ型材料(97)が配設された使い捨ておむつにおいて、ループ型材料(97)が、収縮した弾性要素(96)によって、前記バックシート(30)とともに幅方向にひだをつけられている使い捨ておむつ」(以下、「引用例1に記載の発明」という)が記載されていると認められる。
(2)引用例2には、
「前部(4)に設けたループ面(40)、(42)と係合するフック面(32)が、後部(8)と一体になった一組の耳部(14)、(16)に配設された使い捨ておしめ」が記載されていると認められる。

4.対比・判断
(1)本願発明と引用例1に記載の発明とを対比すると、
引用例1に記載の発明の
「液体透過性トップシート(26)」、「液体不透過性バックシート(30)」、「吸収性芯(28)」、「前部腰部領域(94)」、「後部腰部領域(98)」、「機械式固定部材」、「フック型固定要素(62)」、「ループ型材料(97)」、「弾性要素(96)」、「ひだ」は、
本願発明の「透液性表面シート」、「不透液性裏面シート」、「吸液性コア」、「前胴周り域」、「後胴周り域」、「メカニカルファスナ」、「雄部材」、「雌部材」、「支持シート」、「起伏」に相当する。
そして、引用例1の図7において、ループ型材料(97)が弾性要素(96)に、弾性要素(96)が液体不透過性バックシート(30)の外面に、それぞれ何らかの手段により固着していることは、当業者に明らかである。
そうすると、両者は、「透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸液性コアが介在し、前後の長手方向において前胴周り域と後胴周り域とこれら両域間に位置する股下域とが構成され、後胴周り域の左右に互いに係脱するシート状の雄部材と雌部材とからなるメカニカルファスナの前記雄部材が配設され、前記前胴周り域の前記裏面シートの外面に前記雌部材が配設された使い捨ておむつにおいて、
前記雌部材が、おむつの幅方向に伸縮可能な支持シートに固着し、
前記支持シートが、前記裏面シートの外面に固着し、
前記雌部材が、前記支持シートの収縮に伴い、前記裏面シートとともに前記幅方向に起伏を繰り返している前記使い捨ておむつ。」である点で一致しており、以下の点で相違している。
相違点1:本願発明では、雌部材が支持シートに前記長手方向へ延び、かつ、前記幅方向に所要の間隔で配置された複数条の第1ホットメルト接着剤塗布ラインを介して固着し、前記支持シートが裏面シートの外面に前記長手方向に延び、かつ、前記幅方向に所用の間隔で配置された第2ホットメルト接着剤塗布ラインを介して固着している」のに対し、引用例1に記載の発明では、雌部材が支持シートに固着し、かつ、該支持シートが裏面シートの外面に固着し、雌部材が、支持シートの収縮に伴い裏面シートとともに幅方向に起伏を繰り返しているものの、雌部材が支持シートに、支持シートが裏面シートの外面にそれぞれ固着する具体的態様が不明である点。
相違点2:本願発明では、後胴周り域の左右各側縁部に雄部材が配設されているのに対し、引用例1に記載の発明では、後胴周り域の左右各側縁部に隣接して設けられたテープ状のタブに雄部材が配設されている点。
以下、上記相違点について検討する
相違点1について、
使い捨ておむつの技術分野において、伸張した弾性部材とシート材とを長さ方向に不連続に、かつ、幅方向には連続して接着剤を接着した後、該弾性部材を緩和させて緩和方向にひだを設けることは本願の出願前に周知の技術(特開平6-号209966公報、特開平5-222601号公報参照)であり、また、ホットメルト接着剤は、使い捨ておむつの技術分野においておいて用いられる代表的な接着剤である(引用例1の記載事項(ニ)参照)から、引用例1に記載の発明において、起伏(ひだ)を形成するための固着の態様として上記周知技術を採用し、接着剤にホットメルト接着剤を使用して相違点1に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易に相当し得たことである。
相違点2について、
引用例2には、使い捨ておむつにおいて、後部と一体になった耳部にフック面を設けること、すなわち、本願発明でいう、後胴周り域の左右各側縁部に雄部材が配設されているという事項が記載されており、引用例2に記載の事項を引用例1に記載の発明に適用して相違点2を構成した点に格別な困難性は認められない。
しかも、本願発明が奏する効果も、引用例1、2に記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別のものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1、2に記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-20 
結審通知日 2005-05-24 
審決日 2005-06-06 
出願番号 特願平8-259573
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 和志関谷 一夫水野 治彦  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 中西 一友
西村 綾子
発明の名称 使い捨ておむつ  
代理人 白浜 吉治  

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