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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01C
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01C
管理番号 1120439
審判番号 審判1999-9932  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-02-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-06-21 
確定日 2005-07-26 
事件の表示 平成 2年特許願第513433号「導電性ポリマー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 3年 3月21日国際公開、WO91/03822、平成 5年 2月18日国内公表、特表平 5-500884〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯・本願発明
(1)本願は、平成2年9月10日(優先権主張1989年9月8日、米国)を国際出願日とする出願(特願平2-513433号、特表平5-500884号)であって、以下の手続等がなされたものである。
平成9年9月1日付け手続補正書
平成10年4月28日付け拒絶理由通知
平成10年11月25日付け意見書及び手続補正書
平成11年3月11日付け拒絶査定
平成11年6月21日付け審判請求
平成11年7月21日付け手続補正書
平成13年1月26日付け拒絶理由通知
平成13年8月6日付け意見書及び手続補正書
(2)本願発明
本願発明は、平成13年8月6日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであって、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
(A)(i)ポリエチレンポリマーを有するポリマー成分、
(ii)カーボンブラックからなる粒状導電性充填剤、および
(iii)三酸化アンチモンからなる粒状非導電性充填剤
を含んでなる溶融押出可能な第一導電性ポリマー組成物から形成された抵抗体、
並びに
(B)該抵抗体に電流を流すように電源に接続できる2本の電極
を有してなるストリップヒーターであって、
(1)UL試験VW-1の方法にしたがって試験した場合、(a)試験に合格しないか、(b)10個のサンプルを試験に付した場合、その内の8個は、粒状非導電性充填剤を含有しない以外は第一導電性ポリマー組成物と同じである第二導電性ポリマー組成物から製造された第二ヒーターの10個のサンプルと同じ結果を示し、
該UL試験VW-1は、
(i)ホルダ内に垂直に保持された長さ400mmのストリップヒーターサンプルを提供すること、
(ii)ストリップヒーターサンプルに、15秒間ずつ5回火炎を適用し、火炎の適用間の待機時間は、サンプルの燃焼が15秒以内であれば15秒とし、15秒を超えて燃焼するならば燃焼時間とすること、および
(iii)ストリップヒーターサンプルの領域にある可燃性物質が着火されないこと、および各火炎適用の後にストリップヒーターサンプルが60秒以上燃焼しないこと確認するために、ストリップヒーターサンプルを観察すること、
を含み、
(2)標準的アーク放電障害試験で試験した場合、(a)標準的アーク放電障害試験用ヒューズを切断するのに必要な時間は、第二ヒーターに必要であるより短く、(b)30秒未満でヒューズを切断し、
該標準的アーク放電障害試験は、
(i)上記第一導電性ポリマー組成物から形成された抵抗体を有する長さ60cmのジャケット付きストリップヒーターのサンプルを提供すること、
(ii)ストリップヒーターの第一末端から長さ2.5cmにわたってジャケットおよび第一導電性ポリマー組成物を剥離して、2本の電極を露出させること、
(iii)ストリップヒーターの第二末端から長さ2.5cmのところに、ストリップヒーターの厚さの途中まで横V字型ノッチを切り込むこと、
(iv)ノッチ部分のヒーター上半分からジャケットおよび第一導電性ポリマー組成物を除去して2本の電極の一部を露出させること、
(v)回路内で直列になるように、ストリップヒーターの第一末端の2本の電極を、120V/100Aの電源、コンタクターリレー、10A125/250V超高速作用ヒューズおよび0.1オーム/100ワット分路レジスタを電気的に接続すること、
(vi)該コンタクターリレーを閉じてストリップヒーターに電力を供給すること、
(vii)露出されたV字型ノッチに10〜20%濃度の食塩水を適用して、アーク放電障害を発生させること、
(viii)ヒューズが切断されるまで回路を観察することを含む、
ストリップヒーター。」

【2】当審の判断
本願発明(請求項1に係る発明)は、前記記載のとおりであるが、本願明細書は、下記(1)のとおりその特許請求の範囲等の記載(すなわち、請求項1記載の(1)(2)で規定する事項)が不明りょうであり、特許を受けようとする発明が明確であるものとはいえないので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものである。

また、仮に、前記した請求項1の不明りょうな記載(請求項1記載の(1)(2)で規定する事項)が技術的事項を規定するものではなく、単に前記請求項1の前段に記載された構成の「ストリップヒーター」を製品として合格とするための希望条件を記載したものである(すなわち、特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものであって、請求項1に係る発明の要旨は、前記請求項1の前段に記載された「ストリップヒーター」の構成である)としても、本願発明(請求項1に係る発明)は、下記(2)のとおり引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(1)特許法第36条第4項について
(原査定の拒絶の理由A及び当審通知の拒絶の理由)
(1-1)原査定の拒絶の理由Aの内容
原査定の拒絶の理由Aは、
・「(i)請求の範囲1,6の記載中における(1),(2)の構成は不明瞭であり、不備と認められる[(1)の構成についていえば、「標準的ヒータを …UL試験VW-1の手法にしたがって試験した場合に、その性能が第2ヒーターと類似する、…標準的アーク放電障害試験で試験した場合、‥‥ヒューズをトリップさせるのに要する時間(2箇所有り)…ヒューズを30秒未満でトリップさせる」なる表現記載は、特に、不明瞭である。また、(2)の構成についても、同様の箇所が、特に、不明瞭]。
(ii)[上記(i)とも関連する箇所であるが、]請求の範囲7,10の記載中における、それぞれ、(B)[請求の範囲7について],(C)[請求の範囲10について]の構成は不明瞭であり、不備と認められる[いずれの構成についても、「 …標準的ストリップヒータを製造し、該標準的ヒータを標準的アーク放電障害試験で試験した場合、30秒未満でヒューズをトリップさせる」なる表現記載は、特に、不明瞭である]。」
・「請求の範囲1記載中における(1),(2)の構成は、依然として不明瞭であり、不備と認められる[すなわち、「UL試験VW-1の方法にしたがって試験した場合、(a)試験に合格しないか、(b)10個のサンプルを試験に付した場合、そのうちの8個は、‥‥」などの表現記載では、発明の内包、外延とも不明であり、不備である]。」
(1-2)当審通知の拒絶の理由の内容
「1.特許請求の範囲の記載について
1-1.請求項1について
ヒューズと他の構成要素との関係が記載されておらず、不明瞭である。
さらに、ヒューズとのみ記載されているが、どのようなヒューズでも良いのかあるいは、一定の定格が必要であるのか、また、ストリップヒーター及び電源との関係(ストリップヒーターの定格、サイズ、付加電源及び回路構成等。)は、必要ではないのか。30秒未満との関係において必要な構成は存在しないのか説明されたい。
UL試験VW-1の方法とは、どんな方法であるのか記載されていない。
アメリカ合衆国の国内基準であるのであれば、その内容を説明したものを提出し、説明されたい。
この試験を行うに際して、本願発明においてとくに付加すべき要素(例えば、電極の間隔、ストリップヒーターの長さ等)が存在しないことを説明されたい。
また、(a)試験に合格しないとは、どのようなことか理解できない。詳細な説明に記載した内容に照らして説明されたい。
(1)の記載は、要するにこの試験においては、本願発明によって構成されたストリップヒーターは、比較例となる第二のストリップヒーターよりも性能が悪いという理解でよいのか。
第一組成物を定義されたい。
標準的アーク放電障害試験とは、どんな試験であるのか記載されていない。
アメリカ合衆国の国内基準であるのであれば、その内容を説明したものを提出し、説明されたい。
この試験を行うに際して、本願発明においてとくに付加すべき要素(例えば、電極の間隔、ストリップヒーターの幅、長さ等)が存在しないことを説明されたい。
また、アーク障害という語からは、例えば、付加電圧値、電流値及び試験環境等必要と推測されるが定義する必要がないのであればその説明もされたい。
1-2.〜1-4.(省略)
2.詳細な説明の項の記載について
特許請求の範囲の項において指摘した点は、詳細な説明の項においても説明されたい。…(省略)…
3.特許請求の範囲の記載と詳細な説明の項の記載の関連について
詳細な説明の項の記載によれば、本願実施例は、前述したように特定の成分のものに限られるようであるが、該限定ではなくアメリカ合衆国において用いられている2つの実験結果によらなければ、特許請求の範囲の記載において発明の構成を特定できない理由が明瞭でない。」
(1-3)検討
請求人は、平成13年8月6日付け手続補正書により、少なくとも特許請求の範囲の請求項1について、前記【1】(2)のとおり補正するものである。
しかしながら、この補正によっても(原査定の拒絶の理由のとおり)、請求項1記載における(1)(2)の構成は、依然として不明りょうであり、不備と認められる[すなわち、「UL試験VW-1の方法にしたがって試験した場合、(a)試験に合格しないか、(b)10個のサンプルを試験に付した場合、そのうちの8個は、‥‥」などの表現記載では、発明の内包、外延とも不明であり、不備である]。
すなわち、この補正された請求項1は、(1)に関し「(1)UL試験VW-1の方法にしたがって試験した場合、(a)試験に合格しないか、(b)10個のサンプルを試験に付した場合、その内の8個は、粒状非導電性充填剤を含有しない以外は第一導電性ポリマー組成物と同じである第二導電性ポリマー組成物から製造された第二ヒーターの10個のサンプルと同じ結果を示し、」と規定すると共に、このUL試験VW-1の方法と結果を(i)〜(iii)で規定し、また、(2)に関し「(2)標準的アーク放電障害試験で試験した場合、(a)標準的アーク放電障害試験用ヒューズを切断するのに必要な時間は、第二ヒーターに必要であるより短く、(b)30秒未満でヒューズを切断し、」と規定すると共に、この標準的アーク放電障害試験と結果を(i)〜(viii)で規定している。
しかしながら、このように規定された構成においても、請求項1の前段として記載された「(A)(i)ポリエチレンポリマーを有するポリマー成分、(ii)カーボンブラックからなる粒状導電性充填剤、および(iii)三酸化アンチモンからなる粒状非導電性充填剤、を含んでなる溶融押出可能な第一導電性ポリマー組成物から形成された抵抗体、並びに(B)該抵抗体に電流を流すように電源に接続できる2本の電極、を有してなるストリップヒーター」の構成について、これをさらにどのように限定あるいはどのような技術的意義として規定しているのか依然として不明であり、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。すなわち、請求項1の前段に記載した前記「ストリップヒーター」の構成と「粒状非導電性充填剤を含有しない以外は第一導電性ポリマー組成物と同じである第二導電性ポリマー組成物から製造された第二ヒーター」の構成とを、「UL試験VW-1の方法にしたがって試験した場合」及び「標準的アーク放電障害試験で試験した場合」の結果等として請求項1の(1)(2)に記載するが、この記載が本願請求項1の前段に記載した前記「ストリップヒーター」の何を、またどのような機能を有する構成として規定するのか不明である。
したがって、本願は、特許を受けようとする発明が明確であるものとはいえず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(2)特許法第29条第2項について(原審の拒絶の理由B)
(2-1)引用例
原審の拒絶の理由に引用された特開昭55-78406号公報(以下「引用例」という。)には、その実施例及び図面の記載を参酌すると、以下のような記載が認められる。
(i)「本発明で用いられるポリマー成分は、単一ポリマーまたは二種もしくはそれ以上の異種ポリマーの混合物であって、結晶化度が好ましくは20%以上、特に40%以上のものである。好ましいポリマーとしては、ポリオレフイン類、特に1種またはそれ以上のα-オレフインのポリマー、たとえばポリエチレン、」(3頁右下欄16行〜4頁左上欄2行)
(ii)「比較的結晶化度の低いポリマーを用いた場合、強いPTC効果を得るには比較的粒径が大きく、比較的S/D値が低いカーボンブラックを用いるのが好ましい。けれども、多くのポリマーでは、粒径20〜75ミリミクロンのカーボンブラックで満足すベき結果が得られる。」(4頁右上欄9〜14行)
(iii)「組成物中のカーボンブラックの量は、組成物が7ohm・cm以下、好ましくは5ohm・cm以下、より好ましくは2ohm・cm以下、特に2ohm・cm以下の比抵抗を-40℃〜T3の温度、好ましくは20℃で有する範囲でなければならない。この様な比抵抗を所望のPTC挙動と共に得る為に必要な量は、ポリマー成分、カーボンブラックならびに存在する他の粒状充填材および組成物の調製ならびに成形方法に依存する。カーボンブラックのポリマー成分に対する体積比は、一般に少くとも0.15好ましくは少くとも0.25であるが、実質的により多く、たとえば少くとも0.40または0.50にすることができる。
組成物にはカーボンブラックに加えて他の粒状充填材、たとえば非電導性無機または有機充填材(たとえば、酸化亜鉛、三酸化アンチモンまたは粘土)などを含有させることができる。本明細書では「充填材成分」とは、組成物中のすべての粒状充填材をいう。充填材成分は好ましくは酸化防止剤または組成物を劣化(たとえば熱‐酸化劣化)に対して安定化する他の添加物を含有する。この様な添加物の量は、ポリマー重量を基準にして一般に0.005〜10、好ましくは0.5〜4重量%である。」(4頁左下欄3行〜4頁右下欄6行)
(iv)「ポリマー成分に充填材成分を分散させる方法および得られた分散物を成形する方法としては、いずれの方法も採用することができる。現在最も実際に有用な方法は、固体ポリマーおよび充填材成分を機械的な剪断工程(および要すれば外部加熱)にかけることによりポリマーを溶融して溶融ポリマー中に充填材を分散させる方法である。分散は、たとえばバンバリーミキサー、ロールミルまたは単葉もしくは複葉押出機により行うことができる。分散物は、直接所望の形状に押出成形することができ、またミキサーから通常の方法で取り出し、小片に切断した後、たとえば押出成形、モールディング、シンタリングなどにより溶融成形することができる。この分散および成形工程における総計の仕事消費は、前述の制限の範囲内でなければならない。カーボンブラックは、実質的に均一な電気的性質を有する組成物を与える様に充分分散されなければならないし、また、ある程度までは仕事消費が増加することによりさらに強いPTC挙動を示す組成物が得られる。けれども、仕事消費が大きすぎると、高温で劣化させた場合電気的に不安定な組成物かつ/またはT5以下の温度で高すぎる比抵抗を有する組成物しか得られない。
本発明は、本発明の組成物を成形して得られるPTC要素からなる電気装置、特に回路制御装置を包含するものである。」(5頁左下欄5行〜5頁右下欄11行)
(2-2)対比・判断
(対比)
本願発明と上記引用例に記載された発明とを対比すると、引用例には「たとえば押出成形、モールディング、シンタリングなどにより溶融成形することができる」及び「組成物を成形して得られるPTC要素からなる電気装置、特に回路制御装置を包含する」と記載(前摘(iv)参照)されており、本願発明における「溶融押出可能な第一導電性ポリマー組成物から形成された抵抗体」が開示されている。そして、引用例における前記「PTC要素からなる電気装置、特に回路制御装置」は、本願発明における「ストリップヒーター」に対比させることができ、両者は「電源に接続できる電気装置」で共通するものと認められる。
したがって、両者は、以下のとおりの一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
「(A)(i)ポリエチレンポリマーを有するポリマー成分、
(ii)カーボンブラックからなる粒状導電性充填剤、および
(iii)三酸化アンチモンからなる粒状非導電性充填剤
を含んでなる溶融押出可能な第一導電性ポリマー組成物から形成された抵抗体、
並びに
(B)電源に接続できる、
電気装置。」
(相違点)
(i)電気装置が、本願発明にあっては、「抵抗体に電流を流すように電源に接続できる2本の電極を有してなるストリップヒーター」であるのに対して、引用例にあっては、この点が記載されていない点、
(ii)本願発明にあっては、さらに特定の試験を行うもので、
「(1)UL試験VW-1の方法にしたがって試験した場合、(a)試験に合格しないか、(b)10個のサンプルを試験に付した場合、その内の8個は、粒状非導電性充填剤を含有しない以外は第一導電性ポリマー組成物と同じである第二導電性ポリマー組成物から製造された第二ヒーターの10個のサンプルと同じ結果を示し、
該UL試験VW-1は、
(i)ホルダ内に垂直に保持された長さ400mmのストリップヒーターサンプルを提供すること、
(ii)ストリップヒーターサンプルに、15秒間ずつ5回火炎を適用し、火炎の適用間の待機時間は、サンプルの燃焼が15秒以内であれば15秒とし、15秒を超えて燃焼するならば燃焼時間とすること、および
(iii)ストリップヒーターサンプルの領域にある可燃性物質が着火されないこと、および各火炎適用の後にストリップヒーターサンプルが60秒以上燃焼しないこと確認するために、ストリップヒーターサンプルを観察すること、
を含み、
(2)標準的アーク放電障害試験で試験した場合、(a)標準的アーク放電障害試験用ヒューズを切断するのに必要な時間は、第二ヒーターに必要であるより短く、(b)30秒未満でヒューズを切断し、
該標準的アーク放電障害試験は、
(i)上記第一導電性ポリマー組成物から形成された抵抗体を有する長さ60cmのジャケット付きストリップヒーターのサンプルを提供すること、
(ii)ストリップヒーターの第一末端から長さ2.5cmにわたってジャケットおよび第一導電性ポリマー組成物を剥離して、2本の電極を露出させること、
(iii)ストリップヒーターの第二末端から長さ2.5cmのところに、ストリップヒーターの厚さの途中まで横V字型ノッチを切り込むこと、
(iv)ノッチ部分のヒーター上半分からジャケットおよび第一導電性ポリマー組成物を除去して2本の電極の一部を露出させること、
(v)回路内で直列になるように、ストリップヒーターの第一末端の2本の電極を、120V/100Aの電源、コンタクターリレー、10A125/250V超高速作用ヒューズおよび0.1オーム/100ワット分路レジスタを電気的に接続すること、 (vi)該コンタクターリレーを閉じてストリップヒーターに電力を供給すること、
(vii)露出されたV字型ノッチに10〜20%濃度の食塩水を適用して、アーク放電障害を発生させること、
(viii)ヒューズが切断されるまで回路を観察することを含む、」ものであるのに対し、引用例にあっては、この点が記載されていない点、
(検討)
前記相違点について、以下に検討する。
相違点(i)について、溶融押出可能な第一導電性ポリマー組成物から形成された抵抗体を用いる電気装置として、「抵抗体に電流を流すように電源に接続できる2本の電極を有してなるストリップヒーター」は、本願出願前から周知の技術的事項(必要であれば、特開昭58-94785号公報[第2図]、特開昭63-160189号公報[第1図]参照)であり、引用例における電気装置として、このような周知の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得ることと認められる。
相違点(ii)について検討すると、本願発明の相違点(ii)に係る事項は、特定の試験を行う事項に関するものであるが、この記載事項は、前記したように請求項1の前段記載の「ストリップヒーター」の構成をさらに限定し、あるいは該「ストリップヒーター」の構成に格別な技術的意義を持たせるためのものではない(すなわち、この点は前記(1)で記載したとおり、本願発明の構成をどのように規定するものであるのか明りょうではないものの、この相違点(ii)に係る(1)(2)で規定する事項が技術的事項を規定するものではなく、単に、前記請求項1の前段に記載された構成の「ストリップヒーター」を製品として合格とするための希望条件を記載したものである、とした)から、この相違点(ii)は実質的なものではなく、本願発明のように構成することは当業者が容易になし得ることと認められる。
また、本願発明により奏する作用効果も、当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。
(2-3)まとめ
以上のとおりであって、本願発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおりであって、本願は、特許請求の範囲(請求項1)の記載が不明りょうであって、特許を受けようとする発明が明確であるものとはいえないので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものであり、また、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-14 
結審通知日 2005-02-22 
審決日 2005-03-07 
出願番号 特願平2-513433
審決分類 P 1 8・ 534- WZ (H01C)
P 1 8・ 121- WZ (H01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 朽名 一夫  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 大野 克人
内田 正和
発明の名称 導電性ポリマー装置  
代理人 柴田 康夫  
代理人 青山 葆  

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