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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H |
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管理番号 | 1120746 |
審判番号 | 不服2002-21978 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-11-07 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-11-14 |
確定日 | 2005-08-04 |
事件の表示 | 特願2000-110497「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月 7日出願公開、特開2000-309435〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明の特定 本願は、平成5年2月15日(優先権主張平成4年8月17日)に出願した特願平5-48675号の一部を平成12年4月12日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、平成14年12月13日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「画像を用紙に転写する画像転写部と、 上下方向に複数重ねられる状態で配置される、用紙を収容する給紙トレイと、 複数の給紙トレイのそれぞれに対応する位置に設けられ、前記給紙トレイ内の用紙を送り出す給紙手段と、 前記各給紙トレイの給紙手段によって給紙された用紙を案内して、画像転写部に向けて用紙を通過させる用紙路の一部とを備えた複数の給紙ユニットと、 前記複数の給紙ユニットに対して各々設けられ、前記給紙手段を駆動する正逆方向に駆動可能な駆動用モータと、 前記複数の駆動用モータの駆動を各々制御する制御手段と、を備え、 前記駆動モータを正転方向に駆動することにより給紙ローラとピックアップローラとを給紙方向に回転させ、逆転方向に駆動することにより搬送ローラ装置を駆動するよう構成し、 前記給紙トレイから用紙路に向けて用紙を送り出して、用紙の先端部が用紙路に設けた搬送ローラ装置に突入した状態で、前記駆動用モータを逆転方向に駆動するとともに、 前記搬送ローラ装置を最初に低速で駆動し、次第に高速で搬送を行うように、搬送速度を制御するよう、構成されており、 さらに、前記モータに直結する前記駆動ギヤから前記ピックアップローラへの動力伝達はギヤ伝達によって構成されていることを特徴とする画像形成装置。」 2 引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平3-232633号公報(以下、「第1引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。 (a)「用紙を収納する収納器と、この収納器から順次用紙を1枚ずつ分離して給送する分離給送手段と、この分離給送手段によって分離・給送された用紙を搬送路を介して搬送する搬送手段とを有する給紙ユニットを複数個積層し、…多段給紙装置」(特許請求の範囲第1項) (b)「上記搬送手段は直流モータによって駆動され、…請求項1記載の多段給紙装置。」(特許請求の範囲第2項) (c)「本発明は複数の給紙ユニットを積層して共通の搬送路を形成して用紙を搬送する多段給紙装置に関する。」(公報第1頁右欄第5〜7行) (d)「実施例に係る複写機1は給紙ユニット3Aと複写機本体2とからなり、さらに、給紙ユニット3Aの下にこの給紙ユニット3Aと同一構成の給紙ユニット3B,3Cが積層され、専用テーブル4上に載置されている。また、複写機本体2は公知の光学系2a及び画像形成部2bを有し」(公報第3頁上左欄第17行〜同頁上右欄第3行) (e)「各給紙ユニット3A,3B,3Cに形成された搬送路10A,10B,10Cが各給紙ユニット3A,3B,3Cの上下面で通過し、1本の共通搬送路10が形成されている。」(公報第3頁上右欄第18行〜同頁下左欄第1行) (f)「給紙ユニット3Bの上端部には、搬送手段として中間(搬送)ローラ12a,12bが、搬送路10Bを挟んで設けられている。…この転写紙14bの最上層に位置する転写紙に対向して、分離給送手段として半月給紙ローラ15が配されている。」(公報第3頁下左欄第6〜16行) (g)「給紙ユニット3Bの筺体内にブラケット50を介して直流モータ37が取り付けられ、直流モータ37の回転軸にギヤ18が軸着され、このギヤ18とアイドルギヤ19とが噛合している。中間ローラ軸21aにはワンウエイクラッチを備えたギヤ20aと給紙クラッチ伝達ギヤ20bとが備えられ、ギヤ20aがアイドルギヤ10と噛合している。給紙クラッチ伝達ギヤ20bはさらにアイドルギヤ22と噛合し、このアイドルギヤ22はさらに半月給紙ローラ軸23に軸着されたギヤ23aに噛合して半月給紙ローラ15を回転駆動できるようになっている。」(公報第3頁下右欄第5〜17行) (h)「一方、スタート釦のONによって給紙ユニット3A,3B,3Cの各直流モータ37に、それぞれ電圧…が印可され、…給紙ユニット3Cの直流モータ37が回転すると、半月給紙ローラ15の平坦面の端部が最上層の転写紙と接触し、半月給紙ローラ15の回転によって、最上層の転写紙が一枚分離されて、搬送路10Cに送り出される。搬送路10Cに送り出された転写紙の先端は、直流モータ37の回転により回転を開始している給紙ユニット3Cの中間ローラ12a,12bに挟持され、中間ローラの回転によって搬送路10に搬送される。」(公報第5頁上左欄第17行〜同頁上右欄第14行) (i)第4図より、直流モータ37が制御手段で制御されている点が認められる。また、上記(e)の摘示より、給紙ユニットが搬送路の一部を備えている点、上記(g)の摘示及び第3図より、直流モータ37に直結のギヤ18から半月給紙ローラ15への動力伝達はギヤ伝達によって構成されている点が認められる。 したがって、上記(a)〜(i)の記載を総合すると、第1引用例には、 「画像を転写紙に転写する画像転写部と、 上下方向に複数重ねられる状態で配置される、転写紙を収容する収納器と、 複数の収納器のそれぞれに対応する位置に設けられ、前記収納器内の転写紙を送り出す半月給紙ローラと、 搬送路の一部とを備えた複数の給紙ユニットと、 前記複数の給紙ユニットに対して各々設けられ、前記半月ローラを駆動する直流モータと、 前記複数の直流モータの駆動を各々制御する制御手段と、を備え、 前記モータに直結するギヤから前記半月ローラへの動力伝達はギヤ伝達によって構成されている画像形成装置。」の発明が記載されているものと認める。 3 対比 本願発明と第1引用例に記載された発明とを対比すると、後者の「収納器」、「転写紙」、「ギヤ」及び「直流モータ」は、前者の「給紙トレイ」、「用紙」、「駆動ギヤ」及び「駆動用モータ」に相当する。また、後者の「半月給紙ローラ」は、上記(h)の摘示によれば、「半月給紙ローラ15の平坦面の端部が最上層の転写紙と接触し、半月給紙ローラ15の回転によって、最上層の転写紙が一枚分離されて、搬送路10Cに送り出される。」との機能を有するものであるから、前者の「給紙手段」及び「ピックアップローラ」に相当する。さらに、後者の「搬送路」は、収納器の半月給紙ローラによって給紙された転写紙を案内して、画像転写部に向けて転写紙を通過させる機能を有することは明らかであるから、前者の「用紙路」に相当する。 してみると、両者は、本願発明の表記にならえば、 「画像を用紙に転写する画像転写部と、 上下方向に複数重ねられる状態で配置される、用紙を収容する給紙トレイと、 複数の給紙トレイのそれぞれに対応する位置に設けられ、前記給紙トレイ内の用紙を送り出す給紙手段と、 前記各給紙トレイの給紙手段によって給紙された用紙を案内して、画像転写部に向けて用紙を通過させる用紙路の一部とを備えた複数の給紙ユニットと、 前記複数の給紙ユニットに対して各々設けられ、前記給紙手段を駆動する駆動用モータと、 前記複数の駆動用モータの駆動を各々制御する制御手段と、を備え、 前記モータに直結する駆動ギヤから前記ピックアップローラへの動力伝達はギヤ伝達によって構成されている画像形成装置。」である点で一致し、次の点で相違している。 〈相違点1〉 本願発明では、「駆動用モータ」が「正逆方向に駆動可能」であって、「前記駆動モータを正転方向に駆動することにより給紙ローラとピックアップローラとを給紙方向に回転させ、逆転方向に駆動することにより搬送ローラ装置を駆動するよう構成し、前記給紙トレイから用紙路に向けて用紙を送り出して、用紙の先端部が用紙路に設けた搬送ローラ装置に突入した状態で、前記駆動用モータを逆転方向に駆動する」としているのに対し、第1引用例に記載された発明では、「駆動用モータ」は正逆方向に駆動可能なものではなく、ピックアップローラ(半月給紙ローラ)と本願発明の「搬送ローラ装置」に相当する中間ローラとの駆動関係が本願発明のような構成を具備していない点。 〈相違点2〉 本願発明では、「前記搬送ローラ装置を最初に低速で駆動し、次第に高速で搬送を行うように、搬送速度を制御するよう、構成されて」いるのに対し、第1引用例に記載の発明では、搬送ローラ装置(中間ローラ)が本願発明のような構成を具備していない点。 4 相違点の判断 〈相違点1〉について 拒絶査定の備考欄でも指摘した如く、「複写機などの画像処理装置のプラテンに原稿を給装する装置において、構造及び制御を簡素化するために、給紙手段を駆動する正逆方向に駆動可能な駆動用モータを設け、前記駆動モータを正転方向に駆動することにより給紙ローラとピックアップローラとを給紙方向に回転させ、逆転方向に駆動することにより搬送ローラ装置を駆動するよう構成し、給紙トレイから用紙路に向けて用紙を送り出して、用紙の先端部が用紙路に設けた搬送ローラ装置に突入した状態で、前記駆動用モータを逆転方向に駆動する」ことは周知技術(一例として、実願昭63-14719号(実開平1-118934号)のマイクロフィルム参照)である。 してみると、第1引用例に記載された発明において、上記周知技術を適用することを妨げる特段の事情も窺えない以上、第1引用例に記載された発明に上記周知技術を適用して、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 〈相違点2〉について 同様に、拒絶査定の備考欄でも指摘した如く、「電子複写装置などの画像形成装置において、用紙の打撃音の発生を防止するために、搬送ローラ装置を最初に低速で駆動し、次第に高速で搬送する」ことは周知技術(一例として、実願平2-74500号(実開平4-31750号)のマイクロフィルム参照)である。 してみると、第1引用例に記載された発明において、上記周知技術を適用することを妨げる特段の事情も窺えない以上、第1引用例に記載された発明に上記周知技術を適用して、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本願発明の効果は、第1引用例に記載された発明及び上記各周知技術から、当業者であれば予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。 5 むすび したがって、本願発明は、第1引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-05-31 |
結審通知日 | 2005-06-07 |
審決日 | 2005-06-20 |
出願番号 | 特願2000-110497(P2000-110497) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 則夫 |
特許庁審判長 |
鈴木 公子 |
特許庁審判官 |
中西 一友 溝渕 良一 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 高橋 紘 |