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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1120994
審判番号 不服2002-24741  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-24 
確定日 2005-08-10 
事件の表示 平成 9年特許願第 51147号「ラップトップパーソナルコンピュータの使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月22日出願公開、特開平 9-330161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年12月16日(優先権主張1990年(平成2年)12月18日、米国)を国際出願日として特許出願した特願平4ー503190号の一部を新たな特許出願(平成9年2月20日出願、特願平9-51147号)としたものであって、その請求項1〜4に係る発明は、平成14年4月30日付け及び平成15年1月23日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみてその特許請求の範囲に記載された「ラップトップパーソナルコンピュータの使用方法」にあるものと認められるところ、当該請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 ユーザによって使用されるラップトップパーソナルコンピュータの使用方法であって、上記ラップトップパーソナルコンピュータには、上面を有する主ハウジング及び移動自在なカーソルを表示する表示画面を有する表示装置ハウジングが備えられ、この表示装置ハウジングは、上記主ハウジングの後部近くに位置する結合器によって上記主ハウジングに回転自在に結合されており、更に、上記ラップトップパーソナルコンピュータには、それにデータを入力するため、最上列キーと、最下列キーと、ホームポジションキーを含む1列のキーとを有し、上記最上列キーを上記表示画面に近づけて上記主ハウジング上に配置されたキーボードが備えられ、更に、上記ラップトップパーソナルコンピュータには、それと構造的に一体的に上記主ハウジングに一体に配置され、上記キーボードの上記最下列キーに隣接して位置し、通常のキーボード操作においてユーザの指が上記キーボードの上記ホームポジションキーにあるとき、ユーザの手のひらを支えるように配置された手のひら支え部分が備えられ、更に、上記手のひら支え部分上には、上記移動自在なカーソルを上記表示画面上で移動させる、上記ラップトップパーソナルコンピュータと一体になったカーソル位置決め装置と、
ユーザによって操作される、第1ボタンに結合された第1スイッチおよび第2ボタンに結合された第2スイッチを含んでいて、上記表示画面上の上記移動自在なカーソルの位置に基づくとともに第1ボタンおよび第2ボタンの何れの使用がされたかに基づいて1つの特定の機能を実行する信号の発生をするスイッチ手段とが備えられており、
カーソル操作を、上記ユーザの両手で行うか、上記ユーザの片手で行うかを選択し、
カーソル操作を両手で行う場合には:
親指以外のユーザの両手の指を上記キーボードの上記ホームポジションキー上に置いておくステップ、
上記キーボードの上記ホームポジションキー上にユーザの指を置いたままで、一方の親指を使って、上記カーソル位置決め装置を制御し、上記表示画面上に表示された画像上で上記移動自在なカーソルを位置づけるステップ、
上記一方の親指で上記移動自在なカーソルを上記画像上で位置づけつつ、他方の親指を使って上記第1スイッチを操作することにより、上記画像によって上記第1スイッチの使用結果として示される機能を実行する上記信号を発生させるステップ
を含んでいて、親指以外のユーザの両手の指を上記キーボードの上記ホームポジションキー上に置いたまま、一方の親指で上記カーソルを位置づけ、上記第1スイッチに触れるている他方の親指を使って上記カーソルで指定された画像の選択を行い;
カーソル操作を片手で行う場合には:
上記片手の指を上記キーボードの上記ホームポジションキーに置かずに、上記片手を上記カーソル位置決め装置の付近に置くステップ、
上記片手の第1の指を使って上記カーソル位置決め装置を制御し、上記表示画面上に表示された画像上で上記移動自在なカーソルを位置づけるステップ、
上記第1の指で上記移動自在なカーソルを上記画像上で位置づけつつ、上記片手の第2の指を使って上記第2スイッチを操作することにより、上記画像によって上記第2スイッチの使用結果として示される機能を実行する上記信号を発生させるステップ
を含んでいて、上記片手を上記キーボードの上記ホームポジションキーから離したまま、上記第1の指で上記カーソルを位置づけ、上記第2スイッチに触れるている上記第2の指を使って上記カーソルで指定された画像の選択を行う
ことを特徴とする、ラップトップパーソナルコンピュータの使用方法。」

【2】原査定の拒絶の理由
これに対して、原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
『この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。

請求項1〜5に係る発明は、「ラップトップパーソナルコンピュータ」の操作方法に関するから、これらは情報の単なる提示にすぎず、技術的思想であるとは認められない。
また、請求項1〜5に係る発明は、「一人のユーザ」により個人的にのみ利用される発明であり、したがって、これらの発明は業として利用できない発明である。』
『出願人は意見書において、「かかる新規なラップトップコンピュータの開発を前提として、その新規なラップトップコンピュータの特徴を最大限に引き出す使用方法を発明したのが本願発明であり、新規なラップトップコンピュータの特徴は技術的の思想であるから、その技術思想たる特徴を最大限に引き出す使用方法は、やはり技術的の思想である。」と主張している。
しかしながら、請求項1乃至5に係る発明を特定するための事項に、ラップトップパーソナルコンピュータの構成という自然法則を利用している部分があるとしても、該請求項1乃至5に係る発明は、全体としてみると、該ラップトップパーソナルコンピュータの入力手段各部の操作の方法と手順からなる使用方法に関する。そして、これらの発明は、1の入力結果を得るために、人間である操作者がどのように該ラップトップパーソナルコンピュータを操作するか、という人間の精神活動に当たるものである。
したがって、本願請求項1乃至5に係る発明は、依然として、自然法則を利用した技術的思想の創作であるとは認められない。(以下、省略)』

【3】当審の判断
そこで、原査定の拒絶の理由である、特許請求の範囲の請求項1に係る発明が特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かについて、以下に検討する。

(検討)
本願の請求項1は、「ユーザによって使用されるラップトップパーソナルコンピュータの使用方法であって」とし、これにかかる構成として前記【1】に記載のとおり規定するものである。
この記載によれば、前段に、「(ユーザによって使用されるラップトップパーソナルコンピュータの使用方法であって、)上記ラップトップパーソナルコンピュータには、上面を有する主ハウジング及び移動自在なカーソルを表示する表示画面を有する表示装置ハウジングが備えられ、この表示装置ハウジングは、上記主ハウジングの後部近くに位置する結合器によって上記主ハウジングに回転自在に結合されており、更に、上記ラップトップパーソナルコンピュータには、それにデータを入力するため、最上列キーと、最下列キーと、ホームポジションキーを含む1列のキーとを有し、上記最上列キーを上記表示画面に近づけて上記主ハウジング上に配置されたキーボードが備えられ、更に、上記ラップトップパーソナルコンピュータには、それと構造的に一体的に上記主ハウジングに一体に配置され、上記キーボードの上記最下列キーに隣接して位置し、通常のキーボード操作においてユーザの指が上記キーボードの上記ホームポジションキーにあるとき、ユーザの手のひらを支えるように配置された手のひら支え部分が備えられ、更に、上記手のひら支え部分上には、上記移動自在なカーソルを上記表示画面上で移動させる、上記ラップトップパーソナルコンピュータと一体になったカーソル位置決め装置と、ユーザによって操作される、第1ボタンに結合された第1スイッチおよび第2ボタンに結合された第2スイッチを含んでいて、上記表示画面上の上記移動自在なカーソルの位置に基づくとともに第1ボタンおよび第2ボタンの何れの使用がされたかに基づいて1つの特定の機能を実行する信号の発生をするスイッチ手段とが備えられ」とした「ラップトップパーソナルコンピュータ」の構成を規定している。
そして、この後段に、その使用方法として「カーソル操作を、上記ユーザの両手で行うか、上記ユーザの片手で行うかを選択」することにより、
「カーソル操作を両手で行う場合には:
親指以外のユーザの両手の指を上記キーボードの上記ホームポジションキー上に置いておくステップ、
上記キーボードの上記ホームポジションキー上にユーザの指を置いたままで、一方の親指を使って、上記カーソル位置決め装置を制御し、上記表示画面上に表示された画像上で上記移動自在なカーソルを位置づけるステップ、
上記一方の親指で上記移動自在なカーソルを上記画像上で位置づけつつ、他方の親指を使って上記第1スイッチを操作することにより、上記画像によって上記第1スイッチの使用結果として示される機能を実行する上記信号を発生させるステップ
を含んでいて、親指以外のユーザの両手の指を上記キーボードの上記ホームポジションキー上に置いたまま、一方の親指で上記カーソルを位置づけ、上記第1スイッチに触れるている他方の親指を使って上記カーソルで指定された画像の選択を行い;
カーソル操作を片手で行う場合には:
上記片手の指を上記キーボードの上記ホームポジションキーに置かずに、上記片手を上記カーソル位置決め装置の付近に置くステップ、
上記片手の第1の指を使って上記カーソル位置決め装置を制御し、上記表示画面上に表示された画像上で上記移動自在なカーソルを位置づけるステップ、
上記第1の指で上記移動自在なカーソルを上記画像上で位置づけつつ、上記片手の第2の指を使って上記第2スイッチを操作することにより、上記画像によって上記第2スイッチの使用結果として示される機能を実行する上記信号を発生させるステップ
を含んでいて、上記片手を上記キーボードの上記ホームポジションキーから離したまま、上記第1の指で上記カーソルを位置づけ、上記第2スイッチに触れるている上記第2の指を使って上記カーソルで指定された画像の選択を行う 」
と規定するものである。
しかしながら、この後段の使用方法は、専ら、ユーザ(使用者)が自己の都合により取り決めて適宜に操作する方法の一態様であり、ユーザ(使用者)の自由な意思に基づく動作であって、(技能としてはともかく)技術的思想としての意義は認められず、前段に「ラップトップパーソナルコンピュータ」の構成を規定したとしても、全体としてみればこれらのステップは「ラップトップパーソナルコンピュータ」を道具とする操作者自身の人為的取り決めそのものであって、自然法則を利用したものではない。
したがって、本願請求項1に係る発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作であるとは認められない。
なお、この前段の構成である「ラップトップパーソナルコンピュータ」自体は自然法則を利用したものといえるものの、この前段の構成に係る発明には進歩性が認められず、したがってこのコンピュータ構成に本願発明の特徴を有するものとすることはできない。すなわち、本願発明における「ラップトップパーソナルコンピュータ」自体の構成に関する発明は、本願の親出願である特願平4-503190号として特許出願され、審査の結果、進歩性がない(特許法29条2項に違反する)ものとして拒絶の査定がなされ、これに対して不服の審判請求(平成10年審判第1353号)がなされたものの、審理の結果、同様に理由により「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされ、さらにこれに不服の審決取消訴訟(平成14年(行ケ)第401号)の訴えが東京高等裁判所に提起され、審理された結果、「原告の請求を棄却する。」旨の判決言渡(平成15年6月19日)があり、確定(平成15年8月8日)したものである。

(審判請求人の主張について)
審判請求人は、請求の理由において、概要、以下のとおり主張している。
(i)「かかる構成のラップトップパーソナルコンピュータは、拒絶査定がなされた時点においては良く知られたものであるが、本願の優先権主張日(1990年12月18日)の時点においては『新規』なものである。
このような新規なラップトップコンピュータの構成は、平成13年10月30日付発送の拒絶理由通知書における引用文献(特開昭62-165232号(引用文献1),特開昭62-165233号(引用文献2),特開平02-228724号(引用文献3))の何れにも何ら開示も示唆もされていないことは明白であり、且つ、請求項1に明確に記載されている。加えて、このような新規なラップトップコンピュータの構成が、自然法則を利用したものであることは明らかである。
そして、かかる新規なラップトップコンピュータの開発をするとともに、その新規な構成のラップトップコンピュータの特徴を最大限に引き出す使用方法を発明したのが本願請求項1に係る発明であり」(審判請求書手続補正書第2頁第21行〜同第3頁第4行)
(ii)「前提となる新規なラップトップコンピュータの構成は自然法則を利用した技術的の思想であるから、そのような特徴を最大限に引き出す使用方法は自然法則を利用したものに他ならず、本願請求項1に係る発明はやはり自然法則を利用した技術的の思想である。
換言すれば、上記のような新規な構成のラップトップコンピュータを利用することは、自然法則を利用した構成を利用すると言うことであるから、自然法則の利用に他ならず、学問等の知識を伝授するような人間の精神活動に属するものではなく、人為的な取り決めである遊戯規則の利用をすることや人間の記憶力・推理力・精神力の利用をすることから成っているものでもない。」(審判請求書手続補正書第3頁第19行〜末行)
(iii)「審査官は拒絶査定の理由において、『これらの発明は、1の入力結果を得るために、人間である操作者がどのように該ラップトップパーソナルコンピュータを操作するか、という人間の精神活動に当たるものである。したがって、自然法則を利用した技術的思想の創作であるとは認められない。』と断定している。しかし、この認定には誤りがある。
「人間の精神活動」については、基本的には平成7年7月1日以降の出願について適用されるとされる最新の審査基準に至っても、何ら定義されていない(第II部特許要件第1章の『1.1「発明」に該当しないものの類型』)。「人間の精神活動」の意味については、「教授とは・・・人間の精神活動に属するものである」,「遊戯方法は、人為的な取り決めである遊戯規則を利用すること・・・・人間の推理力・・・精神力などを利用することから成っている」という関連する記述から判断するしかない。
しかし、本願請求項1に係る発明が上記の関連する記述の何れにも該当しないことは、前叙の通りである。
してみれば、本願請求項1に係る発明は、ラップトップパーソナルコンピュータの自然法則を利用した構成の使用方法であり、且つ、知識の伝授や遊戯方法には該当せず、推理力・記憶力・精神力といった人間の精神活動に該当するものでもないから、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当するものであると確信する。」(審判請求書手続補正書第4頁第1〜19行)
しかしながら、本願請求項1記載の発明として「ラップトップパーソナルコンピュータの使用方法」と規定され、これに使用される装置であり本願の親出願に係る「ラップトップパーソナルコンピュータ」自体の構成は、自然法則を利用するものではあるものの、前記したとおり進歩性がない装置であることから、この発明の「使用方法」として規定された請求項1記載の前段の装置構成にこの発明の特徴が有るものと認めることはできない。そして、「ラップトップパーソナルコンピュータ」自体の構成が自然法則を利用するものであることのみをもって、その「使用方法」が自然法則を利用するものということはできない。すなわち、本願請求項1記載の発明は、その後段に記載のように、「カーソル操作を両手で行う場合には:……一方の親指を使って……他方の親指を使って……操作する…、…他方の親指を使って……選択を行い;」、「カーソル操作を片手で行う場合には:……片手の第1の指を使って……片手の第2の指を使って……操作する…、…上記第2の指を使って……選択を行う」と規定するとおり、この記載は「人為的な取り決めである規則を利用する」ものであって人間である操作者がどのように該ラップトップパーソナルコンピュータを操作するか、という人間の精神活動に当たるものを記載したにすぎないものである。
したがって、これと同旨である原査定の拒絶の理由は妥当であって、請求人のこれらの主張は採用することができない。

【4】むすび
以上のとおりであるから、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は特許法第29条第1項柱書きに規定する発明に該当しないので、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-23 
結審通知日 2005-03-29 
審決日 2005-03-30 
出願番号 特願平9-51147
審決分類 P 1 8・ 14- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 匡明  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 治田 義孝
内田 正和
発明の名称 ラップトップパーソナルコンピュータの使用方法  
代理人 山川 茂樹  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 山川 政樹  
代理人 紺野 正幸  
代理人 西山 修  

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