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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H03B
管理番号 1121060
異議申立番号 異議2003-72762  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-12 
確定日 2005-05-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3405330号「圧電発振器」の請求項1、2、4、6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3405330号の請求項1、3、5に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3405330号「圧電発振器 」の発明は、平成12年8月16日に特許出願され、平成15年3月7日にその特許(請求項の数6)の設定登録がなされ、平成15年5月12日に特許公報が発行され、その請求項1,2,4,6について平成15年11月12日に雨山範子より特許異議の申立がなされ、その請求項1,2,4,6について取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成16年10月29日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成17年2月10日に手続補正書が提出されたものである。

2.訂正の適否
訂正の内容は、平成17年2月10日に補正された平成16年10月29日付けの訂正請求書及びそれに添付された訂正明細書の記載からみて、以下のとおりである。
(1)訂正の要旨
本件訂正の要旨は、平成17年2月10日に補正された平成16年10月29日付けの訂正請求書に記載された請求の趣旨のとおり、特許第3405330号発明の明細書を平成17年2月10日に補正された訂正請求書に添付した全文訂正明細書の通り訂正するものであって、その訂正事項は以下のa〜hである。
a.訂正前の請求項1を削除する。
b.訂正前の請求項2「パッケージ外底面に前記圧電振動素子」を「パッケージ外底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられており、前記圧電振動素子」と訂正すると共に、訂正前の請求項2「前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該柱部材の底部を前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定するとともに、該柱部材の上部を圧電振動子の底面電極と電気的に固定する」を「前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、前記配線基板と前記電子部品とを固定すると同時に該柱部材の底部が前記配線基板上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定されており、該柱部材の上部は圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものである」と訂正し、これを訂正後の請求項1とする。
c.(訂正事項 c.は補正により削除)
d.訂正前の請求項3を独立項として訂正し、これを訂正後の請求項2とする。
e.訂正前の請求項2の従属項であった訂正前の請求項4に於ける「金属ボール」に関する内容であって、訂正前の請求項2「柱部材」を「金属ボール」に訂正し、訂正前の請求項2「パッケージ外底面に前記圧電振動素子」を「パッケージ外底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられており、前記圧電振動素子」と訂正し、訂正前の請求項2「該柱部材の底部を前記配線基板上面に形成」を「該金属ボールの底部が前記配線基板上面に形成」と訂正し、訂正前の請求項2「柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定するとともに」を「金属ボール固定用パターンに電気的機械的に固定されており」と訂正し、訂正前の請求項2「該柱部材を圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定する」を「該金属ボールは圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものである」と訂正し、これを訂正後の請求項3とする。
f.訂正前の請求項5を独立項として訂正し、これを訂正後の請求項4とする。
g.訂正事項a〜fの訂正との整合をとる為、訂正前の請求項6「請求項2、3、4又は5記載」を「請求項1、2、3又は4」と訂正し、これを訂正後の請求項5とする。
h.訂正事項a〜fの訂正との整合をとる為、特許明細書の【課題を解決する為の手段】を、「上記課題を解決するため、請求項1の発明は、上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した柱部材を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられており、前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、前記配線基板と前記電子部品とを固定すると同時に該柱部材の底部が前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定されており、該柱部材の上部は圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものであることを特徴とする。請求項2の発明は、上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した柱部材を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面に前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該柱部材の底部を前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定するとともに、該柱部材の上部を圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定するものであり、前記柱部材は、セラミックブロックと、該セラミックブロックの上部及び底部に夫々形成されて互いに導通し合う上部電極及び底部電極と、を備えていることを特徴とする。請求項3の発明は、上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した金属ボールを介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられており、前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記金属ボ一ルは、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該金属ボールの底部が前記配線基板の上面に形成した金属ボール固定用パターンに電気的機械的に固定されており、該金属ボールの上部は圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものであることを特徴とする。請求項4の発明は、上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した柱部材を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面に前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該柱部材の底部を前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定するとともに、該柱部材の上部を圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定するものであり、前記柱部材として、前記電子部品のうち最も背の高い電子部品を使用したことを特徴とする。請求項5の発明は、前記柱部材は、その横断面形状が円形、楕円形、或は長円形であることを特徴とする。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項aは、訂正前の請求項1の削除を行うものである。
訂正事項bは、訂正前の請求項2において、発明特定事項である「底面電極」について、「底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられる」とし、また、「柱部材の底部が前記配線基板上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定され」について、「前記配線基板と前記電子部品とを固定すると同時に」との事項を付加し、請求項の削除に伴い項番号を繰り上げて請求項1とするものである。
訂正事項dは、異議の申立てられていない訂正前の請求項3の記載形式を従属形式から独立形式に改めるとともに、項番号を繰り上げて請求項2とするものである。
訂正事項eは、訂正前の請求項4において択一的に記載された発明特定事項「金属ブロック或は金属ボール」を「金属ボール」とするとともに、引用する訂正前の請求項2の発明特定事項である「底面電極」について、「底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられる」とし、また、記載形式を従属形式から独立形式に改め、項番号を繰り上げて請求項3とするものである。
訂正事項fは、異議の申立てられていない訂正前の請求項5の記載形式を従属形式から独立形式に改め、また、項番号を繰り上げて請求項4とするものである。
訂正事項gは、訂正前の請求項6において引用する訂正前の請求項2、3、4又は5の発明特定事項である「柱部材」についての「横断面形状が円形、楕円形、或は長円形である」との限定を、訂正後の請求項1、2、3又は4に対して行うとともに、項番号を繰り上げて請求項5とするものである。

訂正事項hは、発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるものである。
以上から、
訂正事項a、b、e、gは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
訂正事項d、fは、単に独立形式に変更するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。
訂正事項hは、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載に整合させるためのものであって、明りょうでない記載の釈明に該当する。
これら上記訂正事項は、いずれも願書に添付した明細書または図面に記載された事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項に規定する訂正の目的を満たすものであり、かつ同条第3項で準用する第126条第2、3項の規定に適合する。
よって、本件訂正請求のとおりの訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記2.に示したとおり、上記訂正が認められるから、本件特許の請求項1、3、5に係る発明(以下、「本件発明1、3、5」という。)は、上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、3、5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した柱部材を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられており、前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、前記配線基板と前記電子部品とを固定すると同時に該柱部材の底部が前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定されており、該柱部材の上部は圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものであることを特徴とする圧電発振器。

【請求項3】上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した金属ボールを介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられており、前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記金属ボ一ルは、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該金属ボールの底部が前記配線基板の上面に形成した金属ボール固定用パターンに電気的機械的に固定されており、該金属ボールの上部は圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものであることを特徴とする圧電発振器。

【請求項5】前記柱部材は、その横断面形状が円形、楕円形、或は長円形であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の圧電発振器。

(2)引用刊行物
ア.当審が通知した取消しの理由に引用した刊行物1(特開平11-274855号公報)には、以下の事項が記載されている。
「図1および図2および図3および図4を用いて、本発明の第1の実施形態における温度補償型発振器の構造について説明する。
図1において半導体チップ19、45と、受動素子21、47とは、回路基板13の凸部17、31、33、35を除く部分18に配置する。
・・・途中略・・・
図2および図3および図4に示すように、半導体チップ19、45と受動素子21とは、表面実装型水晶振動子11と凸部17、31、33により作られた間隙である回路基板13の凸部17、31、33、35を除く部分18に配置されているので、回路部品の配置ためには温度補償型発振器の厚さを増やす必要はなく、表面実装型水晶振動子11は、従来の温度補償型発振器に付けられていた金属キャップの作用も兼ねている。
【0013】回路基板13の下面には温度補償型発振器の電源供給、発振出力、外部制御電圧入力のための電極37、39、41、43を配置する。」(段落番号[0012]〜[0013]、図1〜図4)
「【0024】図10に示すように、第3の実施形態では回路基板13の代わりに表面実装型水晶振動子11に凸部22、34を設ける。
【0025】本発明の第3の実施形態の上述以外の説明は、本発明の第1の実施形態の説明と全く同じなので省略する。」(段落番号[0024]〜[0025]、図10)

イ.取消理由で引用した刊行物2(実願平4-10294号(実開平5-74013号)のCD-ROM)には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】クロックオシレータはコンピュータ等に使用される発振器である。図3に従来のクロックオシレータの断面図を示す。1はベースで、ベースを基部としその上部にハイブリッドIC基板2を搭載している。8は半導体で、9は電子部品でありハイブリッドICの回路を構成している。10は接続端子である。ハイブリッドIC基板2の両側部にクリスタルサポート5が載置され、ハイブリッドIC基板2のパターン3と接続される。接続は導電性接着剤4でなされる。2つのクリスタルサポート5の上には水晶振動子7が搭載され、両者は銀を主成分にした導電性接着剤6で接続する。クリスタルサポート5は高さが約0・7ミリ、直径が約0・8ミリの小さな部品で、これをハイブリッドIC基板2の両側部に搭載する」(段落番号[0002]、図2)
「図2において、保持片11の他端はベース1の側部(両側部)に接着し、その際、金属クリスタルサポート5とベース1の間にハイブリッドIC基板2が挿入されるだけの隙間を設ける。図2の破線で示したように保持片11を外側に折り曲げてベース1の上にハイブリッドIC基板2を載置する。ハイブリッドIC基板2のパターン3の上面に導電性接着剤4を塗布した後、保持片11を真っ直ぐにすることによりクリスタルサポート5をパターン3の上部に設置する。そして水晶振動子7をクリスタルサポート5の上に搭載し接着する。このようにして組み立てることでクリスタルサポート5をハイブリッドIC基板2と垂直に取り付けることができる。」(段落番号[0006]、図2)

(3)対比・判断
(3-1)本件発明1
本件発明1と刊行物1に記載されたものとを比較すると、刊行物1に記載された「回路基板」、「(凸部を有する)表面実装型水晶振動子」は、本件発明1の「配線基板」、「圧電振動子」に相当する。また、刊行物1に記載された、「半導体チップ」、「受動素子」、等の「回路部品」は温度補償型発振器の回路を構成しているから、本件発明1の「発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品」に相当する。そして、刊行物1に記載された「凸部」は、配線基板の上面に所定のギャップを隔てて圧電振動子を固定するためのものである点で、本件発明1の「柱部材」に相当する。
したがって両者は、
「上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に柱部材を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子パッケージ底面4隅で、それぞれ底面電極が設けられた柱部材は、該柱部材の底部が前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定されたものである圧電発振器。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件発明1の「圧電振動子」は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備えているのに対し、刊行物1に記載される「表面実装型水晶振動子」はそのような構成については不明である点。

(相違点2)
本件発明1の圧電振動子を固定する柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該柱部材の上部は圧電振動子の外底面に設けられた電極と電気的機械的に固定されたものであるのに対し、刊行物1に記載される表面実装型水晶振動子を固定する柱部材は表面実装型水晶振動子と一体的な部材である点。

(相違点3)
本件発明1においては、配線基板と前記電子部品とを固定すると同時に該柱部材の底部が前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定されるのに対し、刊行物1の表面実装型水晶振動子の柱部材の固定が、回路基板と回路部品とを固定すると同時であるか否かは不明である点。

前記相違点について検討する。
(相違点1について)
表面実装型の水晶振動子において、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すること、また、圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備えることは、通常用いられる構成にすぎず(例えば、特開平7-131279号公報、特開平11-214948号公報を参照。)、刊行物1に記載された「表面実装型水晶振動子」がそのような構成を有することは周知のことであるから、相違点1は実質的に相違するものではないと認められる。

(相違点2について)
刊行物2に、振動子を基板上面に固定した柱部材(クリスタルサポート)を介して所定のギャップを隔てて固定することが記載されているように、基板上面に搭載する部品をギャップを隔てて固定する手段として、基板及び搭載する部品とは別体の柱部材を用いることは通常行われていることと認められる。
刊行物1に記載される表面実装型水晶振動子の柱部材を別体とすることにより、該柱部材の上部と前記振動子との間の接続構成を、前記振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものとし、本件発明1のごとく構成することは当業者が容易に想到し得たものと認められる。

(相違点3について)
本件発明1のごとく、配線基板と前記電子部品とを固定すると同時に該柱部材の底部が前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定されることは、本件特許明細書の発明の詳細な説明を参照すれば、「大面積の配線基板母材上に区画形成されたランド群及び柱部材固定用パターン群に対して、夫々スクリーン印刷によってクリームハンダを塗布した後で、各ランド35及び柱部材固定用パターン36上に夫々電子部品33及び柱部材50の底部電極52を載置し、その後一括してリフロー炉内にて加熱することにより接続を完了することができる。」(本件特許明細書の段落番号[0008])との記載のとおり、平板状の基板を採用したことにより可能となる構成であるものと認められるが、このようなことは、本件発明1と同様に平板状の回路基板を用いる刊行物1においても可能であることは明らかであり、また、刊行物1において、表面実装型水晶振動子の固定が、回路部品を固定すると同時であることを妨げる要因はないので、当該相違点3は当業者が容易に採用できる設計事項と認められる。

(3-2)本件発明3
本件発明3は、本件発明1における「柱部材」を、「金属ボール」として限定し、配線基板の上面に形成した「柱部材固定用パターン」を「金属ボール固定用パターン」と限定する一方、本件発明1における発明特定事項である「前記配線基板と前記電子部品とを固定すると同時に」との事項(前記相違点3)について、本件発明3は有していない点で本件発明1と異なっている。
したがって、本件発明3と刊行物1に記載されたものとを比較すると、前記(3-1)で検討した一致する点、および、相違点1については同様であり、相違点3に相当する事項は存在しないから、前記相違点2において「柱部材」を、「金属ボール」とし、配線基板の上面に形成した「柱部材固定用パターン」を「金属ボール固定用パターン」とした、次のような相違点4を有する。

(相違点4)
本件発明3の圧電振動子を固定する金属ボールは、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該金属ボールの底部が前記配線基板の上面に形成した金属ボール固定用パターンに電気的機械的に固定されており、該金属ボールの上部は圧電振動子の外底面に設けられた電極と電気的機械的に固定されたものであるのに対し、刊行物1に記載される表面実装型水晶振動子を固定する柱部材は表面実装型水晶振動子と一体的な部材である点。

相違点について検討する
(相違点1について)
相違点1については、前記(3-1)で検討したとおり、相違点1は実質的に相違するものではないと認められる。

(相違点4について)
基板上面に搭載する部品をギャップを隔てて固定する手段として、基板及び搭載する部品とは別体の柱部材を用いることは通常行われていることであり、このような柱部材として金属ボールを用い、その電気的機械的接続を接続対象となる基板などに形成した金属ボール固定用パターンで行うことは、例えば、特開平8-236911号公報、特開平8-17972号公報に記載されるよう周知の構成である。
したがって、刊行物1に記載の表面実装型水晶振動子の柱部材をを金属ボールとすることにより、該金属ボールの底部が配線基板の上面に形成した金属ボール固定用パターンに電気的機械的に固定されており、該金属ボールの上部と前記振動子との間の接続構成を、前記振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものとし、本件発明3のごとく構成することは当業者が容易に想到し得たものと認められる。

(3-3)本件発明5
本件発明5は、請求項1、2、3又は4に係る発明を引用するものであって、柱部材について、その横断面形状が円形、楕円形、或は長円形であることを限定するものであるが、本件発明3に記載される「金属ボール」は断面形状が円形の柱部材と認められるため、前記(3-2)本件発明3に対する対比・判断と同様、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

(4)まとめ
以上のとおり、本件請求項1、3、5に係る発明は、取消理由で引用した前記刊行物1に記載された発明および周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

4.むすび
以上のとおりであって、本件特許請求の範囲の請求項1、3、5に係る発明は、何れもその出願日前に頒布された刊行物1に記載された発明および周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項1、3、5に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
圧電発振器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した柱部材を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられており、前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、前記配線基板と前記電子部品とを固定すると同時に該柱部材の底部が前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定されており、該柱部材の上部は圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものであることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した柱部材を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面に前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該柱部材の底部を前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定するとともに、該柱部材の上部を圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定するものであり、前記柱部材は、セラミックブロックと、該セラミックブロックの上部及び底部に夫々形成されて互いに導通し合う上部電極及び底部電極と、を備えていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項3】上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した金属ボールを介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられており、前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記金属ボールは、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該金属ボールの底部が前記配線基板の上面に形成した金属ボール固定用パターンに電気的機械的に固定されており、該金属ボールの上部は圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものであることを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した柱部材を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面に前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該柱部材の底部を前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定するとともに、該柱部材の上部を圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定するものであり、前記柱部材として、前記電子部品のうち最も背の高い電子部品を使用したことを特徴とする圧電発振器。
【請求項5】前記柱部材は、その横断面形状が円形、楕円形、或は長円形であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電発振器の改良に関し、特に発振回路や温度補償回路を構成する電子部品を搭載するパッケージ部分の上部にパッケージ化された圧電振動子を固定した構成を備えた圧電発振器の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話機等の移動体通信機器の普及に伴う低価格化及び小型化の急激な進展により、これらの通信機器に使用される水晶発振器等の圧電発振器に対しても低価格化、小型化及び薄型化の要請が高まっている。このような要請に対しては、水晶振動子をパッケージ化するのみならず、周波数調整回路、周波数温度補償回路等を含む発振回路を集積化、IC化して部品点数を削減している。図6(a)は従来の圧電発振器の一例としての水晶発振器の外観構造を示す分解斜視図、(b)はその縦断面図である。この水晶発振器1は、セラミック積層体から成る下部パッケージ2の上面(外枠上面)に水晶振動子11を搭載して一体化した構成を備えている。下部パッケージ2はその外周に沿って外枠3を立設しており、外枠3内の凹陥部4の内底面上にはICパッケージ6を半田等のバインダ5により固定し、ICパッケージ6の上面に設けた電極6aと凹陥部内底面上のボンディングパッド7との間はボンディングワイヤ8により接続する。なお、ICパッケージの底面に電極を設ける場合には、このICパッケージ側電極とボンディングパッド7との間をボールボンディングによって接続してフリップチップ実装することもある。下部パッケージ2の外底面には表面実装用の外部電極9を形成し、外部電極9は図示しない導体によりボンディングパッド7等と導通するように接続されている。外枠3の上面にはボンディングパッド7を介して外部電極9と導通した上面電極10を配置する。なお、凹陥部4内には必要に応じて絶縁樹脂をポッティングしてこれを満たすことにより、IC6を樹脂内に埋設することもある。水晶振動子11は、セラミック積層体から成るパッケージ本体12の凹陥部13内に水晶振動素子14を搭載した上で、凹陥部13を金属蓋15により気密封止した構成を備えている。パッケージ本体12の外底面には外部電極16を設け、この外部電極16を導電性接着剤等のバインダによって下部パッケージ2の上面電極10と接続固定する。このことによって、下部電極2の凹陥部4が水晶振動子11によって閉止される。この水晶発振器1は、水晶振動子11を除く、発振回路、温度補償回路を構成する回路素子を全て1チップのIC6に集積化したことによって実現することができたものである。
【0003】しかし、上記回路素子を1チップIC化した高価なIC6を使用して水晶発振器を製造するためには、水晶発振器1自体の量産個数をある程度見込めることが前提となり、量産を見込めない限り、低コスト化を図ることは困難である。従って、例えば多品種少量生産される発振器においてこの種の高価なIC6を使用することにはコスト的な理由から無理があるため、IC6に代えて上記各回路を構成するトランジスタ、抵抗、コンデンサ等の回路素子を個々のチップ部品として下部パッケージ2の凹陥部4内に搭載する必要がある。仮に、このようにチップ部品化された回路素子を、図6に示した下部パッケージ2の凹陥部4内に搭載するとすれば、凹陥部内底面に設けた複数のランド(ボンディングパッド7に代えて形成される)上に各チップ部品をクリームハンダを用いたリフロー方式によって実装する必要がある。通常、クリームハンダをランド上に塗布する作業は、シルクスクリーン(マスク)を用いたスクリーン印刷によって実施されるが、下部パッケージ2のようにランド形成面の外周に外枠3から成る段差が存在する場合には、スクリーン印刷技法を使用することが不可能である。このため、スクリーン印刷技法を併用したバッチ処理によって生産性を高めることが困難となり、クリームハンダを各ランド毎にディスペンサにより塗布する作業を実施せざるを得ず、チップ部品を使用した場合であっても高コストとならざるを得なかった。このため、チップ部品を使用して水晶発振器を構成する場合には、図7に示した如く、上面にランドを備えた広面積の配線基板20上の各ランド上にチップ部品21と、水晶振動子22とをリフロー方式によって実装する構成を採用せざるを得なかった。即ち、このタイプの水晶発振器にあっては、段差を有しないフラットな配線基板20上のランドに対してスクリーン印刷を行うことが可能である為、複数の配線基板を縦横に連結した大面積の配線基板母材を利用したバッチ処理が可能である。しかし、この水晶発振器は、全ての部品21、22を平坦な配線基板20上に搭載しているため、水晶発振器を図示しないプリント基板上に実装する際の占有面積が広くならざるを得ず、プリント基板上の搭載部品の高密度実装化という要請に反する結果をもたらす。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、発振回路や温度補償回路を構成する電子部品を搭載するパッケージ部分の上部にパッケージ化された圧電振動子を固定した構成を備えた圧電発振器において、電子部品を搭載する配線基板として平板状の基板を採用することによって配線基板上のランド上にクリームハンダをスクリーン印刷することを可能にしてバッチ処理による量産化に対応しつつ、パッケージ化された水晶振動子を配線基板の上方に立体的に配置することによって占有面積の低減を図った圧電発振器を提供することにある。また、配線基板と水晶振動子とを電気的、機械的に接続する手段として、格別の柱部材を使用することにより、バッチ処理による製造を可能にすることを他の課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1の発明は、上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した柱部材を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられており、前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、前記配線基板と前記電子部品とを固定すると同時に該柱部材の底部が前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定されており、該柱部材の上部は圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものであることを特徴とする。請求項2の発明は、上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した柱部材を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面に前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該柱部材の底部を前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定するとともに、該柱部材の上部を圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定するものであり、前記柱部材は、セラミックブロックと、該セラミックブロックの上部及び底部に夫々形成されて互いに導通し合う上部電極及び底部電極と、を備えていることを特徴とする。請求項3の発明は、上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した金属ボールを介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面4隅にそれぞれ底面電極が設けられており、前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記金属ボールは、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該金属ボールの底部が前記配線基板の上面に形成した金属ボール固定用パターンに電気的機械的に固定されており、該金属ボールの上部は圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定されたものであることを特徴とする。請求項4の発明は、上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備えた平板状の配線基板と、該配線基板上面に固定した柱部材を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子と、を備えた圧電発振器であって、前記圧電振動子は、パッケージ内の気密空所内に圧電振動素子を封止すると共に、パッケージ外底面に前記圧電振動素子の励振電極と導通した底面電極を備え、前記柱部材は、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材であり、該柱部材の底部を前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに電気的機械的に固定するとともに、該柱部材の上部を圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定するものであり、前記柱部材として、前記電子部品のうち最も背の高い電子部品を使用したことを特徴とする。請求項5の発明は、前記柱部材は、その横断面形状が円形、楕円形、或は長円形であることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係る圧電発振器としての水晶発振器の縦断面図、及び分解斜視図である。この水晶発振器31は、上面に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品33を搭載すると共に底面に外部電極34を備えた平板状の配線基板32と、パッケージ42の底面に一体化した柱部材(脚部材)43を配線基板32の上面に固定することにより配線基板32上に所定のギャップを隔てて固定一体化された水晶振動子41とを有する。配線基板32は、例えばセラミックから成り、その上面に電子部品搭載用のランド35と、柱部材43の底部電極44を導通状態で固定する柱部材固定用パターン36と、を有する。柱部材固定用パターン36は、各ランド35、外部電極34等と導通接続されている。水晶振動子41は、凹陥部を有したパッケージ本体42a及び該凹陥部を気密封止する金属蓋42bとから成るパッケージ42と、凹陥部内に支持された水晶振動素子45と、を有し、パッケージ本体42aの底面適所、この例では四隅に矩形の柱部材43を一体化している。柱部材43の底面には水晶振動素子43の励振電極と導通する底部電極44が形成されている。パッケージ42及び柱部材43は、例えばセラミックにより構成される。この実施形態によれば、平板状の配線基板32上のランド35や柱部材固定用パターン36上にスクリーン印刷によって一括してクリームハンダを塗布し、各ランド35と柱部材固定用パターン36上に夫々電子部品33及び柱部材の底部電極44を載置してから、リフロー炉内で加熱を行うことにより、各電子部品33と水晶振動子41を夫々配線基板32上に固定することができる。なお、電子部品33のみを各ランド35上にリフロー接続し、その後、柱部材43の底部電極44を導電性接着剤によって固定するような手順を採用してもよい。このように配線基板32上のランド35等に対して、スクリーン印刷によってクリームハンダを印刷できるので、バッチ処理が可能となり、生産性を高めることができる。しかも、水晶振動子41は配線基板32の上面との間に所定のギャップを隔てて平行に配置されるので、水晶発振器31の平面積を狭くすることができる。また、柱部材43の底面積を必要最小限に狭く設定することにより、配線基板32の上面の面積中、電子部品の搭載に利用できる有効面積を拡大することができる。
【0007】次に、図2乃至図4に基づいて、本発明の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態の圧電発振器(水晶発振器)が第1の実施形態と異なる点は、前記柱部材を水晶振動子のパッケージとは別個の部材として構成した点にある。即ち、第2の実施形態は、上面のランド35上に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品33を搭載すると共に底面に外部電極34を備えた平板状の配線基板32と、該配線基板32の上面に固定した柱部材50を介して所定のギャップを隔てて固定された圧電振動子41と、を備えた圧電発振器において、柱部材50を配線基板32及び圧電振動子41とは別体の部材とし、更に柱部材50の底部を配線基板32の上面に形成した柱部材固定用パターン36に電気的機械的に固定し、柱部材50の上部を圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定した構成が特徴的である。まず、図2の実施形態は、平板状のセラミック配線基板32上の柱部材固定用パターン36上に柱部材50を介して水晶振動子41を搭載した構成を有する。配線基板32は、その上面に形成したランド35上に電子部品33を搭載すると共に、底面には各ランド35と導通した外部電極34を有している。また、上面の適所には、柱部材固定用パターン36を有している。圧電振動子41の構成は、パッケージ本体42aの底面に柱部材を固定しない代わりに底面電極46を設けた点を除けば、図1に示した実施形態と同様である。この実施形態に係る柱部材50は、四角柱、その他の多角柱状のセラミックブロック51(厚さ0.3〜0.5mm程度)と、セラミックブロック51の底部に設けた底部電極(メタライズ部)52と、セラミックブロック51の上部に設けた上部電極(メタライズ部)53と、両電極52、53間を導通する接続導体54と、を有する。
【0008】この実施形態の柱部材50は、配線基板32及び水晶振動子41に対して、別体構造である為、この柱部材50を配線基板32上の柱部材固定用パターン36上に固定する場合には、スクリーン印刷により柱部材固定用パターン36上に塗布したクリームハンダを用いたリフロー接続が可能である。即ち、このスクリーン印刷においては、ランド35に対するクリームハンダの塗布作業も同時に実施し、クリームハンダを塗布したランド35及び柱部材固定用パターン36上に夫々電子部品33及び柱部材50を載置した上で、リフロー炉内で同時に加熱を行い、その後冷却することにより、電子部品33及び柱部材50を固定する。水晶振動子41については、柱部材50を配線基板32上に固定した後で、柱部材50の上部電極53上に導電性接着剤等を用いて底面電極46を固定してもよいし、上部電極53と底面電極46との接続を、電子部品33等をリフロー接続する際に同時に実施してもよい。この実施形態によれば、柱部材50を、配線基板32及び水晶振動子41とは別の部材として構成したので、配線基板32上に対する電子部品33及び柱部材50の搭載、及び固定をバッチ処理にて実施することが可能となる。即ち、大面積の配線基板母材上に区画形成されたランド群及び柱部材固定用パターン群に対して、夫々スクリーン印刷によってクリームハンダを塗布した後で、各ランド35及び柱部材固定用パターン36上に夫々電子部品33及び柱部材50の底部電極52を載置し、その後一括してリフロー炉内にて加熱することにより接続を完了することができる。このため、水晶発振器の生産性を高めることができる。
【0009】次に、本発明の第2の実施形態の他の例では、柱部材50として、セラミックブロック51に代えて、厚さ0.3〜0.5mm程度の四角柱、多角柱状の金属ブロックを用いる。即ち、導電性を有した金属材料から成る金属ブロックをセラミックブロック51の代わりに用い、柱部材固定用パターン36と、水晶振動子の底面電極46との間をハンダ等により接続することにより、図2の水晶発振器と同様の構成を実現することができる。導電性の金属ブロックを柱部材50として用いることにより、セラミックブロックの場合のように、電極52、53や接続導体54を設けるための手数が不要となる。或は、金属ブロックに代えて、柱部材50として、直径0.3〜0.5mm程度の金属ボールを用いてもよい。即ち、図3は金属ボールから成る柱部材50を用いて配線基板32上の柱部材固定用パターン36と、水晶振動子底面の底面電極46とを接続した例を示している。柱部材50と柱部材固定用パターン36との間の接続や、柱部材50と底面電極46との接続方法は、夫々クリームハンダを用いたリフロー接続であってもよいし、導電性接着剤を用いた接続であってもよい。この場合も、金属ブロックを用いた場合と同様に、電極52、53や接続導体54を設けるための手数が不要となる。
【0010】次に、図4は本発明の第2の実施形態に係る水晶発振器の他の例を示す図であり、図2に示した実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。この実施形態が図2の実施形態の水晶発振器と異なる点は、柱部材50として、チップ型の電子部品33のうち最も背の高い電子部品33Aを使用した構成に存する。図示した例では、配線基板32の上面の端縁に設けたランドを兼ねる柱部材固定用パターン36上にハンダ等のバインダを用いて最も背の高い電子部品33Aを複数個配置し、各電子部品33Aの上面に水晶振動子41のパッケージ底面を固定している。電子部品33Aの上面は水晶振動子41の底面電極46と導通接続することによって水晶振動子内部の水晶振動素子45と各電子部品33、33Aとの導通を確保するように構成する。柱部材として利用する複数の電子部品33Aは同じ高さであることが肝要であるが、配線基板32上における配置位置は図示の位置に限定されない。この実施形態によれば、格別の柱部材を用意することなく、配線基板32上に本来搭載すべき電子部品33の内から背の高い電子部品33Aを複数個選んで柱部材として利用するので、部品コスト、製造手数を低減できる。
【0011】次に、図5(a)及び(b)は本発明の第3の実施形態に係る水晶発振器の例を示す部分構成図であり、この実施形態は使用する柱部材43、50の平面形状(底面形状、或は、横断面形状)を円形、或は楕円形(長円形を含む)とすることにより、柱部材43、50を介して配線基板32と水晶振動子41とを接合する際に、柱部材43、50が回転方向に位置ずれを起したとしても、柱部材43、50が配線基板32の端縁から外側へ突出することがないようにした点が特徴的である。即ち、図5(c)に示すように柱部材43、50の平面形状が矩形、その他の多角形である場合には、柱部材43、50が何らかの理由によって点線で示した本来の搭載位置から回転方向にずれを起した場合に、その角部が配線基板32の端縁から外側に突出した状態で固定され、これがバリとなって不具合を起こす原因となる。しかし、図5(a)(b)に示した如く、柱部材43、50の平面形状を円形、楕円形等の角部を有しない形状とすることにより、柱部材43、50が多少回転したとしても、配線基板の端縁から外側に突出しにくく、また、柱部材の周面が少し突出したとしても角部が突出する訳ではないので、バリとはならず不具合をもたらさない。
【0012】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、発振回路や温度補償回路を構成する電子部品を搭載するパッケージ部分の上部にパッケージ化された圧電振動子を固定した構成を備えた圧電発振器において、電子部品を搭載する配線基板として平板状の基板を採用することによって配線基板上のランド上にクリームハンダをスクリーン印刷することを可能にしてバッチ処理による量産化に対応しつつ、パッケージ化された水晶振動子を配線基板の上方に立体的に配置することによって占有面積の低減を図った圧電発振器を提供することができる。また、配線基板と水晶振動子とを電気的、機械的に接続する手段として、格別の柱部材を使用することにより、バッチ処理による製造が可能となる。即ち、請求項1の発明は、圧電振動子の底部に柱部材を予め一体化しておき、この柱部材を配線基板上の柱部材固定用パターンに電気的、機械的に接続するようにしたので、平板状の配線基板を用いつつ狭い占有面積の圧電発振器を構築することができる。このため、配線基板をバッチ処理によって量産することが可能となり、且つ発振器の平面形状も小さくすることができる。請求項2の発明は、前記柱部材を、前記配線基板及び圧電振動子とは別体の部材とし、この柱部材の底部を前記配線基板の上面に形成した柱部材固定用パターンに対して電気的機械的に固定するとともに、該柱部材の上部を圧電振動子の底面電極と電気的機械的に固定したので、大面積の配線基板母材を用いたバッチ処理によって配線基板上に電子部品及び柱部材を搭載する工程を実施することが可能となり、量産性を高めることができる。請求項3の発明は、柱部材として、セラミックブロックと、該セラミックブロックの上部及び底部に夫々形成されて互いに導通し合う上部電極及び底部電極と、から成るものを用いたので、例コストに柱部材を量産し、使用することが可能となる。請求項4の発明は、柱部材として、金属ブロック或は金属ボールを用いたので、柱部材の構成を更に簡単にし、生産性を高めることが可能となる。請求項5の発明は、柱部材として、前記電子部品のうち最も背の高い電子部品を使用したので、格別の柱部材を用意することなく、部品点数を減らして製造することが可能となる。請求項6の発明は、柱部材として、その底面形状が円形、楕円形、或は長円形のものを使用したので、柱部材が何らかの理由によって回転したとしても、その一部が配線基板の端縁から突出してバリとなることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係る圧電発振器としての水晶発振器の縦断面図、及び分解斜視図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器の一例としての水晶発振器の構成説明図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器の他例としての水晶発振器の構成説明図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器の他例としての水晶発振器の構成説明図。
【図5】(a)〜(c)は本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器の他例としての水晶発振器の構成説明図。
【図6】(a)及び(b)は従来例の説明図。
【図7】他の従来例の説明図。
【符号の説明】31 水晶発振器、32 配線基板、33、33A 電子部品、34 外部電極、35 ランド、36 柱部材固定用パターン、41 水晶振動子、42 パッケージ、42a パッケージ本体,42b 金属蓋,43 柱部材,44 底部電極,50 柱部材、51 セラミックブロック、52 底部電極(メタライズ部)、53 上部電極(メタライズ部)、54 接続導体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-03-15 
出願番号 特願2000-246965(P2000-246965)
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (H03B)
最終処分 取消  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 治田 義孝
矢島 伸一
登録日 2003-03-07 
登録番号 特許第3405330号(P3405330)
権利者 東洋通信機株式会社
発明の名称 圧電発振器  

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