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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01D
管理番号 1122497
審判番号 不服2004-5855  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-12-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-24 
確定日 2005-09-01 
事件の表示 特願2000-174794「プレキャストセグメント張出架設橋の架設方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月21日出願公開、特開2001-348816〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年(2000年)6月12日に出願された特願2000-174794号の特許出願であって、原審において平成15年6月18日付けで拒絶理由を通知したところ、平成15年9月5日付けの意見書と共に明細書を補正する同日付けの手続補正書が提出され、前記拒絶理由による平成16年2月16日付けの拒絶査定に対し、拒絶査定不服審判の請求が平成16年3月24日になされたものである。

第2 本願発明
当審の審理の対象とすべき本願の発明は、平成15年9月5日付けの手続補正に基いて補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、これを「本願発明1」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】 架設すべき橋体の上方に架設桁を配設し、該架設桁の中間支持点の橋脚から橋軸方向に左右交互にプレキャストセグメントを接合して橋体を張出架設するに当り、奇数番目のセグメントをその次の偶数番目のセグメントの接続完了まで架設桁に結合し、施工工程中の橋体に生ずるアンバランスモーメントの発生を抑止し、柱頭部のアンバランス力を理論上0とすることを特徴とするプレキャストセグメント張出架設橋の架設方法。」
なお、平成15年9月5日付けの手続補正に基いて補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1における「該架設桁の中問支持点の」の記載は、「該架設桁の中間支持点の」の明らかな誤記と認められるから、請求項1に係る発明を当審において上記のように認定した。

第3 引用刊行物における記載事項
原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の特許出願前に頒布された刊行物である特開平8-144224号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「橋梁の架設方法」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】本願発明は、橋脚を中心にバランスを取り、左右交互または同時にブロックを接合してプレストレスを与えながら張り出して行く片持ち架設プレキャストブロック工法による橋梁の架設方法の改良に関するものである。
【0002】【従来の技術】プレキャストブロック工法は、工場あるいは製作ヤードで橋軸方向または橋軸直角方向に分割して構造物を製作し、架設現場に搬入し、プレストレスを導入して一体構造物に作り上げる工法であり、橋梁の施工等に用いられている。」
「【0009】また、プレキャストブロック工法の代表的な架設方法としては、工場またはヤードで製作された1径間分のブロックを架設ガーダー上に運搬して、所定の位置決め後、接合し、プレストレスを与えながら1径間ずつ架設して行くスパンバイスパン工法と、橋脚を中心にバランスを取り、左右交互または同時にブロックを接合してプレストレスを与えながら張り出して行く片持ち架設工法があり、前者は支間40〜60m、後者は支間60〜100m程度のPC桁橋に適している。
【0010】【発明が解決しようとする課題】本願発明が対象とする片持ち架設プレキャストブロック工法についても、ブロックの架設方法について、数種の方法があるが、架設ガーダーを用いる場合、通常、支持脚としての最前部のフロントレグ、中間部のランチングレグ、および最後部のリアーレグを有する架設ガーダーを用いる。
【0011】この場合、ブロック架設時は、架設完了した橋桁上に固定したリアーレグと、施工方向前方に先行施工された橋脚上部に固定した中間のランチングレグとで架設ガーダーを支持し、橋脚を中心にバランスを取りながら、架設ガーダーを利用してブロックの架設、接合を左右交互または同時に行い、プレストレスを与えながら張り出して行く。
【0012】また、架設ガーダーの移動に関しては、2径間以上の長さを有する架設ガーダーを用い、単径間の架設が完了した段階で架設ガーダーを送り出し、リアーレグとフロントレグで架設ガーダー支持した状態でランチングレグをフロントレグのある次架設の橋脚に移動し、続いてリアーレグとランチングレグで架設ガーダーを支持した状態でフロントレグを送り出すといった方法が採られている。」
「【0015】【課題を解決するための手段】本願発明は、架設ガーダーを用い、架設完了した橋桁上に固定したリアーレグと、施工方向前方に先行施工された橋脚上部に固定した中間のランチングレグとで架設ガーダーを支持し、橋脚を中心にバランスを取りながら、架設ガーダーを利用してブロックの架設、接合を左右交互または同時に行い、プレストレスを与えながら張り出して行く工程を、単径間ごと架設ガーダーを送り出しながら繰り返す片持ち架設プレキャストブロック工法による橋梁の架設方法において、架設ガーダーの送り出しを2回に分けて行うようにしたものである。
【0016】すなわち、単径間の架設作業完了後、フロントレグを架設ガーダーに沿って後退させ、架設完了した橋桁上に移動し、リアーレグとフロントレグで架設ガーダーを支持した状態でランチングレグを架設ガーダーに沿ってフロントレグ近傍に移動して橋桁上に固定し、リアーレグとランチングレグで支持した状態で架設ガーダーを送り出し(1回目の送り出し)、フロントレグを次架設の橋脚上部に移動して仮固定し、続いてリアーレグとフロントレグで架設ガーダーを支持した状態でランチングレグを架設ガーダーに沿ってフロントレグを仮固定した橋脚上まで移動して固定し、続いてリアーレグとランチングレグで架設ガーダーを支持した状態で架設ガーダーを次架設のための所定位置まで移動させる(2回目の送り出し)ことを特徴とする。」
「【0019】図1は、本願発明の対象となる架設ガーダーを用いた片持ち架設プレキャストブロック工法における施工および機械構成の概要を示したものである。
【0020】(1)本実施例における施工方針は以下の通りである。
【0021】丸(1)施工支間は、60〜100m程度とする。
【0022】丸(2)ブロック3単体の重量は100t程度までとする。
【0023】丸(3)架設は、架設ガーダー11により橋脚1を中心に、交互または同時に接合しながらブロック3を張り出し架設する。
【0024】丸(4)架設ガーダー11は、フロントレグ32、ランチングレグ33、リアーレグ34の3本の脚を使用し、手延桁方式にて単スパンごとに架設し、移動する。
【0025】丸(5)架設ガーダー11は、フロントレグ32、ランチングレグ33、リアーレグ34の3本の脚により支持され、平行かつ横断勾配、縦断勾配、平面線形に合わせて設置する。
【0026】丸(6)ブロック3は、ブロック製作ヤードから架設地点まで、架設完了した橋桁2上をトレーラー24または自動搬送車を用いて運搬することを原則とする。架設地点まで、仮設道路を使用し、架設地点直下より架設ガーダー11のクラブトロリー16にて直接架設することも可能である。
【0027】丸(7)柱頭部の施工は、場所打ち、プレキャストブロック双方の施工が可能である。
【0028】(2)本実施例における機械構成は以下の通りである。
【0029】丸(1)架設ガーダー11
2本の桁で構成され、架設ブロック3を支える。架設ガーダー11上部は、クラブトロリー16の走行路として使用される。
【0030】丸(2)クラブトロリー16
ブロック3を搬送車より吊り上げ、架設位置まで移動させるためのクレーンで、橋軸方向に走行、横行が可能である。
【0031】丸(3)フロントレグ32
架設ガーダー11最前部の脚で、送り出し、高さ調整、横移動の機能がある。
【0032】丸(4)ランチングレグ33
架設ガーダー11中間部の脚で、送り出し、高さ調整、横移動の機能がある。
【0033】丸(5)リアーレグ34
架設ガーダー11最後部の脚で、高さ調整、横移動の機能があり、架設完了した桁2上を走行する走行装置を装備している。
【0034】丸(6)作業足場23(ワーキングステージ)
ブロック3の位置決め、接合作業用の足場で架設ガーダー11に沿い移動可能である。この作業足場23は中央で左右に分離できるようになっており、分離した状態で移動させることができる。
【0035】丸(7)ハンガー
クラブトロリー16により運搬されたブロック3を所定位置に仮吊りする支持材。
【0036】(3)本実施例におけるブロック3の架設作業は、以下のように行う。
【0037】ブロック製作ヤードから架設地点まで、架設完了した橋桁2上をトレーラー24または自動搬送車を用いて運搬されたブロック3は、架設ガーダー11のクラブトロリー16で吊り上げ、橋脚1両側から橋脚1を中心に、交互または同時に接合しながらブロック3を張り出し架設する。
【0038】架設地点で、ブロック3はクラブトロリー16により所定間隔で転回、調整、位置決めされた後、ハンガーにより仮固定される。
【0039】ハンガーにより仮固定された状態で、作業足場23上での接着剤の塗布、ブロック3の引き寄せ接合を実施する。ブロック3の緊張完了後、ハンガーを解放してブロック3の架設を完了する。
【0040】柱頭部の施工は、プレキャスト、現場打ち双方の施工法が採用可能である。
【0041】プレキャストブロック3の養生を目的として、架設ガーダー11上の施工スパン全長にわたりジャバラ式上屋(架設ガーダー外側に敷設されたレール上を移動する)を装備している。」
「【0050】丸(1)ブロック3の架設開始(図2(a)参照)
先行施工された柱頭部の両側から交互にブロック3の架設を行う。ブロック3は、架設ガーダー11に搭載されたクラブトロリー16により吊り上げられ、90度方向転回した後、架設場所まで運搬して位置決めし、接合する。
【0051】なお、図中左側の部分は足場を組んで、移動式クレーン等を用いて橋桁2を架設した部分である。
【0052】丸(2)ブロック3の架設、接合(図2(b)参照)
ブロック3は、クラブトロリー16により吊り上げられた状態で位置決め調整を行う。作業足場23上から接着剤の塗布、引寄せ鋼棒を用いた引寄せ、接合を行う。」

そして、引用刊行物1には、明細書の発明の詳細な説明欄に記載の上記技術事項を裏付ける図面が示され、【図1】(a)には片持ち架設プレキャストブロック工法における架設中の橋梁の側面図、【図1】(b)には(a)図のA-A線断面図、【図1】(c)には(a)図のB-B線断面図、そして【図1】(d)には(a)図のC-C線断面図がそれぞれ記載され、また、【図2】(a)〜(d)及び【図3】(e)〜(h)には、片持ち架設プレキャストブロック工法の一実施例における施工手順を示す側面図が記載されている。

そうしてみると、引用刊行物1の上記摘記事項及び添付図面の記載からみて、前記引用刊行物1には、次の発明(以下、これを、「引用発明」という。)の記載が認められる。
「支持脚としての最前部のフロントレグ32、中間部のランチングレグ33、および最後部のリアーレグ34の3本の脚により支持される架設ガーダー11を用い、ブロック製作ヤードで橋軸方向に分割して製作されたブロック3を、ブロック製作ヤードから架設完了した橋桁2上をトレーラー24または自動搬送車を用いて運搬し、架設ガーダー11上部を走行路とするクラブトロリー16で吊り上げて架設地点直下より直接架設されたブロック3にプレストレスを導入して一体構造物に作り上げるプレキャストブロック工法を利用する片持ち架設プレキャストブロック工法において、
前記ブロック3の架設は、架設完了した橋桁2上に固定したリアーレグ34と施工方向前方に先行施工された橋脚1上部に固定した中間のランチングレグ33とで支持された前記架設ガーダー11を利用し、前記架設ガーダー11に搭載されたクラブトロリー16により吊り上げられ、橋脚1を中心にバランスを取りながら橋脚1の両側から橋脚1を中心に左右交互に架設及び接合されるブロック3を、架設地点でクラブトロリー16により90度方向転回、調整、位置決めした後ハンガーにより所定位置に仮固定し、ブロック3がハンガーにより所定位置に仮固定された状態で、作業足場23上で接着剤の塗布及び引寄せ鋼棒を用いてブロック3を引き寄せ接合し、ブロック3へのプレストレス緊張完了後にハンガーによる仮固定を解放するようにしてブロック3にプレストレスを与えながら張り出して行く工程よりなり、
単径間ごと架設ガーダー11を送り出しながら前記工程を繰り返す際の架設ガーダー11の前記送り出しを、フロントレグ32、ランチングレグ33、リアーレグ34の3本の脚を使用して手延桁方式により単スパンごとに架設し移動することにより2回に分けて行うようにした、
片持ち架設プレキャストブロック工法による橋梁の架設方法」

第4 当審の判断
1.対比及び一致点・相違点
(1) 本願発明1と上記引用発明とを対比すると、引用発明の「橋桁2」、「架設ガーダー11」、「橋脚1」、「ブロック3」及び「片持ち架設プレキャストブロック工法による橋梁の架設方法」のそれぞれが、本願発明1の「架設すべき橋体」、「架設桁」、「該架設桁の中間支持点の橋脚」、「プレキャストセグメント」及び「プレキャストセグメント張出架設橋の架設方法」に対応する。

(2) また、引用発明における「橋脚1を中心にバランスを取りながら橋脚1の両側から橋脚1を中心に左右交互に架設及び接合されるブロック3」は、本願発明1における「該架設桁の中間支持点の橋脚から橋軸方向に左右交互に接合して橋体を張出架設されるプレキャストセグメント」と同じ意味であり、そうすると、引用発明における前記「橋脚1を中心にバランスを取りながら橋脚1の両側から橋脚1を中心に左右交互に架設及び接合されるブロック3」は、橋脚1の左に接合されたブロック3とその次に橋脚1の右に接合されるブロック3という関係になるから、本願発明1の「橋軸方向に左右交互に接合される奇数番目のセグメントとその次の偶数番目のセグメント」に対応する。

(3) そして、引用発明における「橋脚1を中心にバランスを取りながら橋脚1の両側から橋脚1を中心に左右交互に架設及び接合されるブロック3を、架設地点でクラブトロリー16により90度方向転回、調整、位置決めした後ハンガーにより所定位置に仮固定し」は、ブロック3にプレストレスを与えながら左右交互に張り出して行く工程の中で接合されるブロック3の個数の偏りにより橋脚1の中心に一時的に発生する左右荷重(W)のアンバランス及び左右の腕の長さ(L)のアンバランスによる回転モーメントの発生を未然に防ぐための具体的技術手段に他ならないから、引用発明における前記「橋脚1を中心にバランスを取りながら橋脚1の両側から橋脚1を中心に左右交互に架設及び接合されるブロック3を、架設地点でクラブトロリー16により90度方向転回、調整、位置決めした後ハンガーにより所定位置に仮固定し」は、本願発明1の「施工工程中の橋体に生ずるアンバランスモーメントの発生を抑止し」に対応する。

(4) さらに、引用発明の「ハンガーにより所定位置に仮固定し」と、本願発明1の「架設桁に結合し」とは、共に「所定個所に結合」することにおいて共通する。

(5) そうすると、本願発明1と引用発明とは、「架設すべき橋体の上方に架設桁を配設し、該架設桁の中間支持点の橋脚から橋軸方向に左右交互にプレキャストセグメントを接合して橋体を張出架設するに当り、セグメントの接続完了まで所定個所に結合し、施工工程中の橋体に生ずるアンバランスモーメントの発生を抑止するプレキャストセグメント張出架設橋の架設方法」である点で一致し、次の点で両者の構成が相違する。
相違点1:本願発明1が「奇数番目のセグメントをその次の偶数番目のセグメントの接続完了まで結合」するのに対し、引用発明は、ブロック3へのプレストレス緊張完了後にハンガーによる仮固定を解放する点。
相違点2:セグメントの結合対象としての「所定個所」が、本願発明1では「架設桁に」としているのに対し、引用発明では「所定位置に」としている点。
相違点3:本願発明1が「柱頭部のアンバランス力を理論上0とする」のに対して、引用発明は、その点の構成の有無が明確でない点。

2.相違点についての検討
(1)相違点1について
引用発明におけるブロック3の架設の工程が、
ア. 架設ガーダー11を利用して、前記架設ガーダー11に搭載されたクラブトロリー16により吊り上げられ、橋脚1を中心にバランスを取りながら橋脚1の両側から橋脚1を中心に左右交互に架設及び接合されること。
イ. 前記ブロック3は、架設地点でクラブトロリー16により90度方向転回、調整、位置決めした後ハンガーにより所定位置に仮固定されること。
ウ. ブロック3がハンガーにより所定位置に仮固定された状態で、作業足場23上で接着剤の塗布及び引寄せ鋼棒を用いてブロック3を引き寄せ接合し、ブロック3へのプレストレス緊張完了後にハンガーによる仮固定を解放するようにして、ブロック3にプレストレスを与えながら張り出して行くこと。
の各工程からなることからすれば、引用発明のブロック3の架設では、絶えず橋脚1を中心にバランスを取りながら、橋脚1の両側から橋脚1を中心に左右交互に架設及び接合することを考えるとき、引用発明において、ブロック3をその次のブロック3へのプレストレス緊張完了まではハンガーによる所定位置への仮固定を解放しないようにすることにより、本願発明1の上記相違点1に係る「奇数番目のセグメントをその次の偶数番目のセグメントの接続完了まで結合」する構成を得ることは、当業者が格別の困難を要することなく容易に想到できることである。

(2)相違点2について
引用発明において、ブロック3が架設ガーダー11に搭載されたクラブトロリー16により吊り上げられた状態で、架設地点でブロック3がクラブトロリー16により90度方向転回、調整、位置決めされた後に、ハンガーによりブロック3を「所定個所」に仮固定する場合に、架設ガーダー11を利用してブロック3を架設することをその眼目とする引用発明の片持ち架設プレキャストブロック工法による橋梁の架設方法では、ハンガーによるブロック3の仮固定の対象として、クラブトロリー16が搭載される「架設ガーダー11」を想到することはきわめて自然なことといえる。
そうしてみると、引用発明におけるハンガーによるブロック3の仮固定されるべき所定個所を架設ガーダー11とすることにより、本願発明1の前記相違点2に係る「奇数番目のセグメントをその次の偶数番目のセグメントの接続完了まで架設桁に結合し」の構成を得ることは、当業者が容易に想到できる程度のことであり、格別の困難を要することではない。

(3)相違点3について
橋脚1を中心にバランスを取りながら橋脚1の両側から橋脚1を中心に左右交互に行なわれる引用発明におけるブロック3の架設及び接合の仕方は、本願発明1の「該架設桁の中間支持点の橋脚から橋軸方向に左右交互にプレキャストセグメントを接合して橋体を張出架設する」方法と同様であり、しかも、引用発明における「ハンガーにより所定位置に仮固定し」の手段は、本願発明1の「セグメントの接続完了まで架設桁に結合」する手段と同じく、施工工程中の橋体に生ずるアンバランスモーメントの発生を抑止する方向に作用することは明らかであるから、引用発明における橋脚1を中心にバランスを取りながら行なわれるブロック3の架設及び接合の際の「ハンガーにより所定位置に仮固定し」という具体的技術手段は、本願発明1と同じく、引用発明においても「柱頭部のアンバランス力を理論上0とする」ことになる。
そうしてみると、本願発明1の「柱頭部のアンバランス力を理論上0とする」の発明特定事項を、構成(原因)と作用(結果)との関係においてみれば、結局のところ「セグメントの接続完了まで架設桁に結合」するという構成から導かれる「柱頭部のアンバランス力を理論上0とする」という物理事象としてはきわめて自明の作用を、特許請求の範囲の請求項1の中に記載してみただけのことといえる。
したがって、引用発明も、その構成から当然に導かれる作用として、前記「柱頭部のアンバランス力を理論上0とする」の自明の事項を具有しているといえるから、本願発明1の「柱頭部のアンバランス力を理論上0とする」という発明特定事項は、引用発明と本願発明1との間に本質的な差異をもたらすものではなく、「柱頭部のアンバランス力を理論上0とする」という自明な事項を、特許請求の範囲の請求項1に敢えて記載しておくか、あるいは記載しないでおくかの選択でしかないことになる。
以上のとおりであり、引用発明においても、基本的に前記橋脚1を中心にバランスを取りながらブロック3の架設及び接合を橋脚1の両側から橋脚1を中心に左右交互に行うのであり、しかも、ハンガーによるブロック3の仮固定により、結果的に施工工程中の橋体に生ずるアンバランスモーメントの発生が抑止されることになるのであるから、引用発明においても、本願発明1と同様に、「柱頭部のアンバランス力を理論上0とする」ことになるので、この点において、引用発明と本願発明1との間に実質的な相違を認めることができない。

そして、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明から予測できる範囲内のものであって、格別顕著であるということができない。

(4)まとめ
したがって、本願発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであることにより、他の請求項に係る発明についての検討をするまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-05 
結審通知日 2005-07-05 
審決日 2005-07-20 
出願番号 特願2000-174794(P2000-174794)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 勝治柳澤 智也  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 佐藤 昭喜
▲高▼橋 祐介
発明の名称 プレキャストセグメント張出架設橋の架設方法および装置  
代理人 山田 正紀  
代理人 小杉 佳男  

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