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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1122560
審判番号 不服2003-4505  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-04-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-19 
確定日 2005-09-01 
事件の表示 特願2001- 30744「写真プリント配送方法、この方法で用いられるカメラ、写真プリント配送システム、画像データ保管サービス方法、画像データ保管サービスシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月12日出願公開、特開2002-108753〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年2月7日(国内優先権主張、平成12年2月9日、平成12年7月25日)の出願であって、平成15年2月14日付で拒絶査定がなされ、これに対して平成15年3月19日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年4月17日付で手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年4月17日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものである。
「情報通信ネットワークに接続されたサーバーコンピュータによって画像データの保管サービスを行う方法であって、
前記サーバーコンピュータへユーザ端末からアクセスしてきたユーザの識別情報を取得するユーザ情報取得ステップと、
前記アクセスしてきたユーザからの要求に応じて、各ユーザの識別情報と画像データとが関係付けて登録されたデータベースから、前記ユーザ情報取得ステップで取得した識別情報に関係付けて登録された画像データを読み出す画像読み出しステップと、
ユーザの識別情報とユーザ端末の端末識別情報とが関係付けて登録されたデータベースを参照して、前記取得したユーザ識別情報に該当する端末識別情報を取得するステップと、
該取得した端末識別情報に基づいて、前記ユーザ端末がパーソナルコンピュータであるか携帯端末であるかを判別するステップと、
前記ユーザ端末が携帯端末である場合に、ユーザ端末の機種とユーザ端末の特性に関する端末情報とが関係付けて登録されたデータベースを参照して、前記読み出した端末識別情報に該当する端末情報を取得し、前記読み出した画像データを前記取得した端末情報に応じて変換し、該変換した画像データを前記ユーザ端末へ送信するステップと、
前記ユーザ端末がパーソナルコンピュータである場合に、前記読み出した画像データをそのまま前記ユーザ端末へ送信するステップと、
を備えることを特徴とする画像データ保管サービス方法。」

3.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物「特開平11-154218号公報」(以下「引用刊行物1」という。)には「ネットワークフォトサービスシステム」の発明に関して、図面とともに以下の記載(ア〜ク)がある。
ア.「【従来の技術】写真に関するサービスを顧客に提供するにあたり、大手集配ラボにスキャナ、プリンタ、大容量ディスクを有するサーバコンピュータ(以下、画像サーバという)などの各種設備を設置して、顧客が撮影した写真を画像サーバに蓄積し、顧客がその画像サーバにネットワークを介してアクセスできるようにすることによって、写真の焼き増し注文、電子メールへの写真画像添付、写真画像データのダウンロードなどの各種サービスを提供するネットワークフォトサービスが提案されている。」(第2頁右欄第15-24行)

イ.「【課題を解決するための手段】本発明のネットワークフォトサービスシステムは、写真プリンタを有するラボに設置され、ネットワークを介して通信可能な少なくとも1つのラボサーバと、ネットワーク経由でプリントサービスの注文を受け付けるサービスセンタに設置され、各ラボの顧客が撮影した写真をデジタル画像データとして保管し、そのデジタル画像データをネットワーク上でアクセス可能とし、顧客からネットワークを介して転送された注文情報に応じて前記ラボの中の1つのラボをプリント出力先として選択し、その選択されたラボに設置されるラボサーバに対し指示情報を送信して注文により要求されたプリントサービスを顧客に提供するための処理を行うことを指示するセンタサーバとにより構成されることを特徴とするものである。
」(第3頁左欄第9-22行)

ウ.「【0013】なお、ここで「ネットワーク」とはインターネットを中心とするネットワーク網を意味し、専用回線、CATV網、ダイアルアップ接続、LANなど、注文情報や画像データの転送を行うのに十分な通信速度を有するあらゆる通信手段を含むものとする。
【0014】また、センタサーバが「各ラボの顧客が撮影した写真をデジタル画像データとして保管し、該デジタル画像データをネットワーク上でアクセス可能とする」のは、デジタル画像データを一元管理するとともに、顧客がそのデジタル画像データを参照できるようにするためである。写真の焼き増しでは、撮影した全ての写真を見比べて、焼き増しする写真を選択するといったことがよく行われるが、上記センタサーバの画像アクセス機能は、これを表示画面上で行うための機能である。」(第3頁右欄第14-27行)

エ.「【0019】また、このように各ラボサーバが自分の顧客のデジタル画像データを保管している場合には、センタサーバに保管され、アクセス可能とされたデジタル画像データは、前記ラボサーバに保管される高解像度画像データよりもデータ量が少ない低解像度画像データとしてもよい。すなわちラボサーバのデジタル画像データはプリント出力用、センタサーバのデジタル画像データはネットワーク経由のアクセス用というように、デジタル画像データを使い分けてもよい。」(第4頁左欄第19-27行)

オ.「【0046】デジタル画像データをアクセス可能にするにあたっては、顧客は自分の写真のみ確認できればよいため、言い換えれば他人に自分の写真を見られることは望まないため、パスワードによる認証を行って各顧客が見ることができるデータを制限している。パスワードは、同時プリントの申し込み時に顧客からの指定により、あるいはミニラボ側で適当なパスワードを割り当てることにより決定する。
【0047】センタサーバへのアクセスは、インターネットの場合には上記サービスをホームページの形態で提供し、顧客がNetscape Navigatorなどのブラウザを利用してアクセスするようにする。あるいはその他の独自の通信サービスとして提供する場合には、顧客に専用ソフトウェアを配布するなどして行ってもよい。いずれの場合も、顧客1は自宅あるいはオフィスのパソコン6から、ネットワークを介してセンタサーバ12に保管されている自分の写真のサムネイル画像を確認したりテンプレートを選択したりして、注文画面に対して所定の入力を行うことにより、あるいは所定のフォーマットの注文情報を作成して電子メールでセンタサーバ12宛に送信することにより、ミニラボ3に出向かずにプリントサービスを要求することができる。」(第6頁右欄第18-39行)

カ.「【0056】ここで、図5は上述のようなサービスの一例をデータの流れに着目して表したものである。この図は、テンプレートを利用した加工プリントサービスについて、顧客のパソコン6、センタサーバ12、ラボサーバ8がそれぞれ管理するデータと、そのデータの流れを示している。
【0057】上述のように、ラボサーバ8には顧客の写真の高解像度画像データ21と高解像度テンプレート23が保管されている。またセンタサーバ12には高解像度テンプレート23に対応する低解像度テンプレート24が保管されているが、これはラボにおいて新しいテンプレートが作成される度にセンタサーバに登録されるものである。一方、高解像度画像データ21に対応する低解像度画像データ22もまた、顧客の要求に応じてセンタサーバに登録される。
【0058】顧客は、センタサーバ12上で公開された低解像度画像データ22や低解像度テンプレート24を参照し(必要に応じてダウンロードし)、パソコン6上で合成する。」(第7頁右欄第14-32行)

キ.「【0062】図6の例は、低解像度画像データおよび低解像度テンプレートの閲覧およびダウンロード機能と、注文ファイルのアップロード機能をプラグインとして提供し、ダウンロードした画像データおよびテンプレートの加工を行うための加工処理アプリケーション31と、注文ファイルを作成するための注文ファイル作成モジュール32は別途アプリケーションソフトとして提供する場合を示したものである。
・・・
【0064】・・・次にセンタサーバ12の構成について説明する。上述のようにセンタサーバ12は、大容量ハードディスクと各種通信設備を備えたサーバコンピュータであり、注文受付サービスをホームページの形態で提供するものである。
【0065】上記パソコン6のWWWブラウザ30と通信するWWWアプリケーションサーバ36は、ユーザからの要求に応じて低解像度画像データベース33や低解像度テンプレートデータベース34にアクセスして、必要なデータを入手し、パソコン6に転送する。」(第8頁左欄第12-38行)

ク.「【0074】なお、以上説明した実施の形態はセンタサーバ12にネットワーク経由のアクセス用のサムネイル画像を、ラボサーバ8にプリント出力用の高解像度画像データをそれぞれ保管しているが、プリント出力用の高解像度画像データをセンタサーバ12に保管してアクセス用画像としても兼用し、ラボ側は高解像度画像データを保管は行わずにプリント出力のみを行うようにしてもよいことはいうまでもない。」(第9頁左欄第25-32行)

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物「特開平8-204703号公報」(以下「引用刊行物2」という。)には「通信装置」の発明に関して、図面とともに以下の記載(ケ〜シ)がある。
ケ.「【請求項1】 文字、画像、図形、音声、音楽データ、及びデジタル化されたデータの全種類もしくはそのー部を含む情報を送受信する通信装置であって、データを処理するためのハードウエア及びソフトウエアからなるリソースに関する情報を記憶するリソース情報記憶手段と、データの送信に先立って、受信側の他の通信装置が同じリソースを有するか否かを判定すべく前記受信側の他の通信装置と通信するネゴシエーション手段と、前記受信側の他の通信装置が同じリソースを有さない場合に、送信すべきデータを前記受信側の他の通信装置のリソースで処理可能なデータに変換するための変換手段を記述した変換テーブルに基づいてデータ変換を行うデータ変換手段とを具備することを特徴とする通信装置。
【請求項2】 前記通信装置の計算性能を示す性能評価値を記憶する性能評価値記憶手段と、前記通信装置の性能評価値と前記受信側の他の通信装置の性能評価値を比較する性能比較手段とを具備し、前記通信装置の性能評価値と前記受信側の他の通信装置の性能評価値を比較し、性能評価値が優位な通信装置で前記データ変換を行う請求項1に記載の通信装置。」(第2頁左欄第2-21行)

コ.「【産業上の利用分野】本発明は、通信装置に関し、特に文字、画像、音声などのデータを公衆回線網、LAN、赤外線通信などのネットワークを通じて送受信する通信装置に関する。」(第2頁右欄第8-11行)

サ.「【0004】そこで、この問題点を解消するものとして、扱うデータをカラー静止画像に限った場合には、特開平5-260242号公報で示される方式が存在する。これは、データ通信に先駆けてネゴシエーションを行い、受信装置が処理できる形式に送信側で変換してからデータを送る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平5-260242号公報で示される方式では扱うデータがカラー静止画像画像のみを対象としている。静止画像以外のデータの通信に対しては方法が存在しない。またカラー画像であってもそのカラーの扱い方のみを述べているのであって、画像サイズの違いなどについては触れられていない。
【0006】例えば文字データの例を考えると、通常ワードプロセッサは文章や図形の格納のための機種固有のフォーマットをもっており、フォーマットの異なる機種で通信を行おうとすると何らかの変換が必要である。同様に個人用の携帯端末ではアドレスやスケジュールを格納するために固有のフォーマットを有している。理想的にはこれらは唯一の共通フォーマットに統一されることが望ましいが、それが事実上困難である場合には、なんらかの変換の手段が必要となる。また、他のデータでも同様であり、動画の場合にはMPEG1、MPEG2などの標準フォーマットの他にマイクロソフト社のAVIフォーマットやアップル社のQuickTimeフォーマットなどがある。音楽では波形そのものを送る場合であってもサンプリング周波数や1サンプルのビット精度などの選択の余地があり、またMIDIなどの記号情報で送る場合もある。通信を行う機器が相互に同じフォーマットを解釈できる能力があることが望ましいが、他種類の機種の間で通信を行おうとすると、この仮定は必ずしも成り立たない。このため、データ通信に先立ち送信側と受信側でネゴシエーションを行い、送信装置において受信側で扱える形式に変換して送信することが望ましい。もし、フォーマットとしては送信が可能な場合であっても受信側の記憶容量などが問題になることも考えられる。
【0007】本発明は、上記のような課題を解消するためになされたもので、データフォーマットが異なっても通信が行える通信装置を提供することを目的とする。(第2頁右欄第33行-3頁左欄第23行)

シ.「【0049】本発明は例えば、以下のようにして適用される。A,B,Cの3種類の装置を仮定する。装置AとCは同等の能力をもつ装置、例えばパソコンであり、装置Bは装置A,Cに比較して劣った性能をもつもの、例えば携帯端末と仮定する。装置AにはデータXが存在する。これを装置Bに送る場合に、装置BがデータXを解釈する能力がないため、装置Aもしくは装置BでデータXは、これと異なるフォーマットに変換される。変換されたデータをX’とする。ここで行われた変換が不可逆変換であるとすると、本発明によつてデータX’にはオリジナルのデータを保持する装置Aのアドレスと、Xを装置A内で特定するための識別子が付加される。装置BではX’が解釈され、出力(表示)が行われる。更に、装置Bではそのデータを装置Cに送信することを考える。装置CではデータX’を解釈するが、データXのフォーマットも解釈する能力がある場合には、情報量の落ちたデータX’よりもデータXをユーザは望む可能性がある。この場合に、本発明によりデータX’にはデータXの存在する装置Aのアドレスとデータを特定する識別子を含んでいるので、装置Cから装置Aに対してデータXの送信を要求することが可能になる。例えば、データXはカラ-画像をJPEGによって圧縮したものであり、データX’は白黒のビットマップデータであるような場合である。」(第7頁右欄第14-37行)

同じく、原査定において周知慣用技術を示すものとして例示された、本願の優先日前に頒布された刊行物「特開平10-326244号公報」(以下「引用刊行物3」という。)には「データ送出方法及びそれに用いるサーバ」の発明に関して、図面とともに以下の記載(ス、セ)がある。
ス.「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、携帯端末や、車両等に設けられている表示装置等においては表示装置の解像度が640×480ドット未満である場合も多い。このように、クライアント側のコンピュータが上記640×480ドット未満の解像度である場合にはサーバ側から提供される全てのデータを一度に表示することはできない。」(第2頁右欄第48-第3頁左欄第4行)

セ.「【0045】図4には本実施の形態において、クライアント10がサーバ12に対し接続を開始したときの動作をあらわすフローチャートが示されている。このフローチャートに示されている例は、クライアント10がサーバ12に対しダイヤルアップ接続を行う場合の動作が示されている。
【0046】まず、クライアント10とサーバ12との間で電気的な接続が行われる(ステップS4-1)。ここで、サーバ12はIPアドレスをクライアント10側に割り当てる。以降このIPアドレスを利用して、ネットワークの接続が確立されている。
【0047】ステップS4-2においては、ユーザの認証が行われる。ユーザの認証方式には一般的にPAP、CHAP等が用いられており、本実施の形態においても一般に用いられているユーザ認証方式がそのまま用いられている。また、IPアドレスの割付にはDHCPやICPC等のプロトコルが採用される。次に、サーバ側においてはユーザ認証時点で把握している端末仕様と、IPアドレス等を対応付けることにより、この対応を付けた以降の処理においてはIPアドレスからユーザの機器仕様を把握することが可能である。
【0048】本実施の形態においては、ステップS4-2におけるユーザ認証においてユーザを認証し、同時にそのユーザにおけるクライアント10の機器仕様がサーバ12内部のクライアント機器仕様記憶手段14から読み出されるとともに、上記IPアドレスと、端末仕様との関連付けが行われる。
【0049】図4に従ってダイヤルアップ接続が完了すると、クライアント10からサーバ12に対しHTMLデータの転送要求が行われる。この転送要求は上述した図3のフローチャートに従って行われる。
【0050】図5には本実施の形態におけるサーバ12がHTMLデータの転送を行う場合の動作をあらわすフローチャートが示されている。
【0051】クライアント10側からHTMLのファイルの転送要求を受け付けると、サーバ12はその要求を発したクライアント10のIPアドレスを確認する。この確認はステップS5-1において行われる。
【0052】次に、確認したIPアドレスからクライアント10側における機器の仕様を把握することができる(ステップS5-2)。これは、上述したようにユーザ認証時点で把握した端末仕様とIPアドレスとを対応付けることによりこのような処理が可能となるのである。
【0053】次に、クライアント10側に提供するHTMLファイルの解析が行われる。この解析はステップS5-3において行われ、具体的にはHTMLファイルの中に記述されているデータ(画像や音声等)の部分を把握し、そのデータがクライアント側の機器仕様に合致しているか否かの確認が行われる。合致している場合にはステップS5-4においてステップS5-6に処理が移行しそのままHTMLのファイルがクライアント10側に転送される。一方、合致していない場合には、ステップS5-5及びステップS5-6に処理が移行する。ステップS5-5においてはデータをクライアント10側の機器仕様に合致するように加工が行われる。
【0054】例えば、クライアント10側の機器仕様によればGIF形式のみの画像データを表示できる場合には、GIF形式以外のJPEG方式等の画像データをGIF方式に変換するのである。なお、画像データのサイズ変換、縮尺変換もこのステップS5-5において行われる。
【0055】データの加工は大別するとデータのフォーマット変換と、データの縮尺を変更する、の2つに分けられることになろう。」(第5頁左欄第28行-右欄第41行)

4.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用刊行物1に記載された発明を対比すると、
引用刊行物1に記載された「ネットワーク」、「センタサーバ」及び「顧客」は、それぞれ本願発明の「情報通信ネットワーク」、「サーバーコンピュータ」及び「ユーザ」に相当し、また、引用刊行物1のセンターサーバに設けられた「低解像度画像データベース」は本願発明の画像データが登録された「データベース」に相当する。
そして、引用刊行物1に記載された「センタサーバ」は画像データを保管し、ネットワーク上でユーザがアクセス可能となるように構成されているから(記載事項イ、ウ、カ参照)引用刊行物1には本願発明と同様に画像データの保管サービスを行う方法が記載されている。
また、引用刊行物1では、サーバコンピュータへのユーザのアクセスはブラウザを利用して行われ、ユーザが画像データにアクセス可能にするにあたってはパスワードによる認証を行っており、自分の写真のみ確認できる旨記載されている(記載事項オ参照)ことから、引用刊行物1では、各ユーザを識別する情報(ユーザID等)によりユーザーを管理していること、「低解像度画像データベース」において、各ユーザの画像情報はユーザを識別する情報と関係づけて登録されていること及び、ユーザが画像データにアクセスするに際し、ユーザの識別情報を取得するステップを有することは当然のことである。
したがって、両者は、
「情報通信ネットワークに接続されたサーバーコンピュータによって画像データの保管サービスを行う方法であって、
前記サーバーコンピュータへユーザ端末からアクセスしてきたユーザの識別情報を取得するユーザ情報取得ステップと、
前記アクセスしてきたユーザからの要求に応じて、各ユーザの識別情報と画像データとが関係付けて登録されたデータベースから、前記ユーザ情報取得ステップで取得した識別情報に関係付けて登録された画像データを読み出す画像読み出しステップと、
前記読み出した画像データをそのまま前記ユーザ端末へ送信するステップと、
を備える画像データ保管サービス方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1
本願発明では、ユーザ端末が携帯端末である場合と、パーソナルコンピュータである場合について記載されているが、刊行物1ではユーザ端末はパーソナルコンピュータについてのみ記載されている点。
相違点2
本願発明は、ユーザ端末が携帯端末の場合に画像データを端末情報に応じて変換するために
(i)「ユーザの識別情報とユーザ端末の端末識別情報とが関係付けて登録されたデータベースを参照して、前記取得したユーザ識別情報に該当する端末識別情報を取得するステップ、該取得した端末識別情報に基づいて、前記ユーザ端末がパーソナルコンピュータであるか携帯端末であるかを判別するステップ」と、
「前記ユーザ端末がパーソナルコンピュータである場合に、前記読み出した画像データをそのまま前記ユーザ端末へ送信するステップ」
(ii)「前記ユーザ端末が携帯端末である場合に、ユーザ端末の機種とユーザ端末の特性に関する端末情報とが関係付けて登録されたデータベースを参照して、前記読み出した端末識別情報に該当する端末情報を取得し、前記読み出した画像データを前記取得した端末情報に応じて変換し、該変換した画像データを前記ユーザ端末へ送信するステップ」
の各ステップを有しているのに対して、引用刊行物1ではユーザ端末はパーソナルコンピュータであって、画像データがそのままユーザ端末に送信されている点。

(2)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。

相違点1について
情報通信ネットワークに接続されたサーバーコンピュータにアクセスするユーザ端末として、パーソナコンピュータだけではなく、携帯端末を用いることは慣用手段であって格別のことではない。

相違点2について
送信側において受信側端末の性能等の情報を保存(本願発明のユーザの識別情報に基づいて端末識別情報、端末情報が登録されたデータベースに相当する。)し、画像等を送信するに際して、接続された受信側端末の性能等の情報に応じて、送信すべきデータを変換する必要があると判断した場合に、送信すべきデータを変換することは引用刊行物3(記載事項チ)、特開平11-250009号公報(請求項1,請求項4,段落【0127】)、特開平11-345201号公報(請求項1)に記載されているように周知である。(引用刊行物2(記載事項ケ参照)にも受信側端末の性能等に応じて送信側で送信データを変換することが記載されている。)また、上記、特開平11-345201号公報(段落【0096】)にも記載されているように、携帯端末の情報として「機種」が主要な情報であることも当然である。
そして、データの変換が携帯端末の場合に必要であることは上記、引用刊行物2(記載事項シ)、引用刊行物3(記載事項ス)、特開平11-250009号公報(段落【0005】)及び特開平11-345201号公報(段落【0002】)の記載から明らかである。(情報通信ネットワークにパーソナルコンピュータが接続されている場合には特に送信側でデータ変換を行うことなくデータが送信されていることも周知の事実である。)
また、一般的に所定の条件により判断を行うに際して、判断の順序をどのようにするか、また、判断に必要なデータをデータベースとしてどのように情報を整理し、配置するかは、当業者が必要に応じて適宜に決定することのできる設計的事項と考えられる。
そうすると、上記引用刊行物1に記載された発明に上記周知技術を適用して端末情報に応じて画像変換を行うか否かを判断するに際して、受信端末が画像変換を必要とする端末であるのか否か、即ち、受信端末がパーソナルコンピュータであるのか否かの判断を端末情報に基づいて行い、それ以外の携帯端末の場合に更に端末情報に基づいて判断を行い、(i)「「ユーザの識別情報とユーザ端末の端末識別情報とが関係付けて登録されたデータベースを参照して、前記取得したユーザ識別情報に該当する端末識別情報を取得するステップ、該取得した端末識別情報に基づいて、前記ユーザ端末がパーソナルコンピュータであるか携帯端末であるかを判別するステップ」と、「前記ユーザ端末がパーソナルコンピュータである場合に、前記読み出した画像データをそのまま前記ユーザ端末へ送信するステップ」とを設けること、(ii)ユーザ端末が携帯端末である場合には、「ユーザ端末の機種とユーザ端末の特性に関する端末情報とが関係付けて登録されたデータベースを参照して、前記読み出した端末識別情報に該当する端末情報を取得し、前記読み出した画像データを前記取得した端末情報に応じて変換し、該変換した画像データを前記ユーザ端末へ送信するステップ」を有する構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明のように構成したことによる効果も引用刊行物1及び周知技術から予測できる程度のものである。
したがって、本願発明(請求項2に係る発明)は、引用刊行物1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願はその余の請求項について論及するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-29 
結審通知日 2005-07-05 
審決日 2005-07-19 
出願番号 特願2001-30744(P2001-30744)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 義晴  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 治田 義孝
内田 正和
発明の名称 写真プリント配送方法、この方法で用いられるカメラ、写真プリント配送システム、画像データ保管サービス方法、画像データ保管サービスシステム  
代理人 一色 健輔  
代理人 原島 典孝  

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