• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E21D
管理番号 1123971
審判番号 不服2004-26532  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-11-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-28 
確定日 2005-09-30 
事件の表示 特願2002-129059「地山補強工法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月14日出願公開、特開2003-321992〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年4月30日の出願であって、平成16年11月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年1月25日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年1月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年1月25日付けの手続補正を却下する。
[理由]

(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正することを含むものである。
「【請求項1】 トンネル掘削時(当審注:「持」は「時」の誤記と認定した。)にその前方地山を補強する地山補強工法であって、管状補強材を地中に打設し、その打設された又は打設途中の管状補強材の内部空間から膨張率5〜20%の膨張性セメント系固結材を注入し、その固結材を管状補強材の周面に設けた貫通小孔等からその周囲の地山内に浸出させて膨張させ、その固結材の膨張圧力によって上記管状補強材の周囲の地山を圧密にし、その地山内の内部応力を上昇させて地山を改良することにより、上記管状補強材の引き抜き耐力を実質的に増大させることを特徴とする地山補強工法。」
(【請求項2】は省略)
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「地山補強工法」に関して、「トンネル掘削時にその前方地山を補強する地山補強工法」との限定を付加して減縮し、「地山を圧密にし」に関して、「上記管状補強材の周囲の」との限定を付加して減縮し、「地山内の内部応力を上昇させて地山を改良すると共に、上記管状補強材の引き抜き耐力を増大させて地山を補強する」に関して、「と共に、」を「ことにより」に言い換え、また「上記管状補強材の引き抜き耐力を増大させて地山を補強する」を「上記管状補強材の引き抜き耐力を実質的に増大させる」に減縮するものであり、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-34882号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の(イ)ないし(ホ)の事項が記載されている。
(イ)「繊維強化樹脂からなる管の先端に削孔機能を有するリングビットを設け、・・・トンネル掘削等の切羽外周及び/または鏡部の所定位置の地山内に、・・・上記管を補強管として地山内の所定位置に存置させ、上記管を打設する際もしくは打設後に・・・上記管を通して周囲の地山内に固化材を注入して地山を補強することを特徴とする地山補強工法。」(【特許請求の範囲】)
(ロ)「前記補強管は、注入材の吐出孔を有した管からなり、内径が60mmから120mmで長さ1mから12mであることを特徴とする請求項1記載の地山補強工法。」(【特許請求の範囲】【請求項6】)
(ハ)「・・・セメント系注入材をフラッシングして補強管周囲の地山補強を行いながら前記補強管を地山内の所定位置に存置させることを特徴とする請求項1記載の地山補強工法。」(【特許請求の範囲】【請求項7】)
(ニ)「【産業上の利用分野】
本発明は例えばトンネルや地下空洞等の掘削時に適用される地山先行補強工法としての先受け工法や鏡部補強工法などの地山補強工法に関する。特に地質の悪い条件下で適用可能な地山補強工法に関するものである。」(段落【0001】)
(ホ)「固化材の注入には、前述の全長に亘って存置された補強管11を注入管として使用して行う。このため補強管11には、図4(b)に示すように予め所定間隔にストレーナ孔11cを形成してある。・・・補強管11内に固化材を導入する。その補強管11内に導入された固化材は、補強管11のストレーナ孔11cから順次吐出し、地山内に注入されて固化することにより補強管11とその周囲の地山が一体となって補強される。」(段落【0035】)
(ヘ)「・・・注入材は・・・補強管11のストレーナ孔11cから吐出し、地山内に注入され固化することにより補強管11とその周囲の地山が一体となって補強される。」(段落【0038】)
これらの記載から、引用例1には、「トンネル掘削時にその前方地山を補強する地山補強工法であって、補強管11を地山内の所定位置に存置させ、前記管を打設する際もしくは打設後に、その管を通してセメント系注入材を注入し、その注入材を補強管11の周面に設けたストレーナ孔11cからその周囲の地山内に注入させて、上記補強管11の周囲の地山を補強する地山補強工法。」の発明が記載されていると認められる。

同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-86318号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の(ト)ないし(ヌ)の事項が記載されている。
(ト)「【発明の属する技術分野】
本発明は、土木、建築分野で使用される高膨張性グラウト材に関する。」(段落【0001】)
(チ)「【従来の技術とその課題】
従来から、セメントに減水剤、膨張剤、及び川砂や珪砂などの細骨材を配合したグラウト材が知られている。
そして、グラウト材の用途には、・・・トンネルやシールドの裏込めグラウト、・・・等がある。・・・」(段落【0002】)
(リ)「【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、初期膨張率が3%以上、・・・である高膨張性グラウト材であり、セメント、膨張剤、骨材、及び減水剤を含有する該高膨張性グラウト材である。」(段落【0004】)
(ヌ)そして、【表1】をみると、高膨張性グラウト材の実施例として、実験No.1-3、1-4、1-5のものは、それぞれ膨張率が、7.0%、9.8%、13.4%のものが記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを比較すると、引用例1記載の発明の「補強管11」、「地山内の所定位置に存置させ」、「管を打設する際もしくは打設後に、・・・管を通して」、「セメント系注入材」、「ストレーナ孔11c」、「注入」、「補強」は、本願補正発明の「管状補強材」、「地中に打設し」、「打設された又は打設途中の管状補強材の内部空間から」、「セメント系固結材」、「貫通小孔等」、「浸出」、「改良」に相当するから、両者は、
「トンネル掘削時にその前方地山を補強する地山補強工法であって、管状補強材を地中に打設し、その打設された又は打設途中の管状補強材の内部空間からセメント系固結材を注入し、その固結材を管状補強材の周面に設けた貫通小孔等からその周囲の地山内に浸出させ、地山を改良する地山補強工法。」である点で一致し、以下の点で相違している。
〈相違点1〉
セメント系固結材が、本願補正発明では、膨張率5〜20%の膨張性のものであるのに対し、引用例1記載の発明では膨張性か否か不明な点。
〈相違点2〉
本願補正発明では、固結材を「膨張させ、その固結材の膨張圧力によって上記管状補強材の周囲の地山を圧密にし、その地山内の内部応力を上昇させて地山を改良することにより、上記管状補強材の引き抜き耐力を実質的に増大させる」のに対し、引用例1記載の発明では、そのような構成ではない点。

(4)判断
〈相違点1について〉
地山補強工法に膨張性セメント系固結材を用いることは、特開2001-73666号公報の従来技術に関する説明に見られるようにきわめて普通に行われていることである。また、引用例2記載の発明のセメント系固結材は、トンネルやシールドの裏込めグラウトとして用いるものであるが、引用例1記載の発明におけるセメント系固結材と共に、トンネルの用途に用いることでは共通しているものである。そして、引用例2記載の発明に関する上記2.(ト)ないし(ヌ)には、膨張率3%以上であり、7〜13%の膨張性セメント系固結材を、トンネルの裏込めグラウトとして用いることが記載され、本願補正発明の膨張率とオーバーラップする固結材が記載され、さらに、5〜20%と限定することに臨界的意義も認められないから、引用例1記載のセメント系固結材を膨張率5〜20%の膨張性セメント系固結材とすることは、当業者ならば、容易に成し得るものである。
〈相違点2について〉
上記〈相違点1について〉で検討したとおり、引用例1記載の発明のセメント系固結材を、膨張性セメント系固結材とすることは、当業者ならば容易に成し得るものである。そして、刊行物1記載の発明に、膨張性セメント系固結材を適用すれば、当然に、上記相違点2に係る本願補正発明の構成からなる作用を奏することは明らかである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1、2記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下するべきものである。

3.本願発明について
平成17年1月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年11月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】 管状補強材を地中に打設し、その打設された又は打設途中の管状補強材の内部空間から膨張率5〜20%の膨張性セメント系固結材を注入し、その固結材を管状補強材の周囲に設けた貫通小孔等からその周囲の地山内に浸出させて膨張させ、その固結材の膨張圧力によって地山を圧密にし、地山内の内部圧力を上昇させて地山を改良すると共に、上記管状補強材の引き抜き耐力を増大させて地山を補強することを特徴とする地山補強工法。」
(【請求項2】以下は省略)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、本願補正発明から「地山補強工法」に関して、「トンネル掘削時にその前方地山を補強する地山補強工法」との限定、「地山を圧密にし」に関して、「上記管状補強材の周囲の」との限定の構成を省き、また「地山内の内部応力を上昇させて地山を改良することにより、上記管状補強材の引き抜き耐力を実質的に増大させる」から「地山内の内部圧力を上昇させて地山を改良すると共に、上記管状補強材の引き抜き耐力を増大させて地山を補強する」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-03 
結審通知日 2005-08-08 
審決日 2005-08-19 
出願番号 特願2002-129059(P2002-129059)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E21D)
P 1 8・ 121- Z (E21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 勝治  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 南澤 弘明
小山 清二
発明の名称 地山補強工法  
代理人 元井 成幸  
代理人 高橋 隆二  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ