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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1124314
異議申立番号 異議2003-71166  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-08-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-09 
確定日 2005-09-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3342464号「印刷制御方法及び印刷制御装置」の請求項1ないし26に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3342464号の請求項1ないし26に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第3342464号の請求項1〜26に係る発明についての出願は、平成3年11月15日に出願した特願平3-300567号の一部を新たな特許出願としたものであって、平成14年8月23日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、神田泰貴および市東勇より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年9月6日に訂正請求がなされ、その後、第2回目の取消しの理由が通知され、平成17年5月27日に訂正請求取り下げ書が提出され、平成16年9月6日付けの訂正請求は取り下げられた。

【2】本件発明
本件特許第3342464号の請求項1〜26に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜26に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 印刷データを解析して解析データを作成するデータ作成工程と、
保存指令をユーザーが示す保存指令工程と、
前記保存指令に応じて、前記解析データを不揮発性のメモリ手段に記憶させる記憶工程と、
前記記憶工程によって前記メモリ手段に前記解析データが記憶された後において、前記解析データの印刷指令をユーザーが示す印刷指令工程と、
前記記憶工程後のユーザーによる前記印刷指令に応じて、印刷指令された前記解析データを前記メモリ手段から読み出す読み出し工程と、
前記読み出し工程によって前記メモリ手段から読み出された前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせる直接印刷工程とを備えたことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項2】 前記記憶工程は、前記解析データのファイル名と前記解析データを前記メモリ手段に記憶させ、
前記印刷指令工程は、印刷する前記解析データのファイル名をユーザーが指定して印刷指令を示し、
前記読み出し工程は、ユーザーによって印刷指令されたファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から読み出すことを特徴とする請求項1に記載の印刷制御方法。
【請求項3】 前記印刷指令工程において、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷制御方法。
【請求項4】 前記メモリ手段に記憶された前記解析データを削除する削除工程を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷制御方法。
【請求項5】 前記メモリ手段に記憶された前記解析データの削除指令をユーザーが示す削除指令工程を備え、前記削除工程は、削除指令された前記解析データの削除を行うことを特徴とする請求項4に記載の印刷制御方法。
【請求項6】 前記削除指令工程において、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知することを特徴とする請求項5に記載の印刷制御方法。
【請求項7】 前記記憶工程は、前記解析データのファイル名と前記解析データを前記メモリ手段に記憶させ、
前記削除指令工程は、削除する前記解析データのファイル名をユーザーが指定して削除指令を示し、
前記削除工程は、ユーザーによって削除指令されたファイル名と、そのファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から削除することを特徴とする請求項5または6に記載の印刷制御方法。
【請求項8】 ユーザーが前記ファイル名を指定するファイル名指定工程を備え、
前記記憶工程は、前記ファイル名指定工程にて指定されたファイル名と前記解析データを前記メモリ手段に記憶させることを特徴とする請求項2または7に記載の印刷制御方法。
【請求項9】 前記保存指令が示されているか否かに関わらず、前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせるデータ印刷工程を備え、前記記憶工程は、前記保存指令が示されている場合に、前記解析データを前記メモリ手段に記憶させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の印刷制御方法。
【請求項10】 前記データ作成工程はドットイメージデータを作成することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の印刷制御方法。
【請求項11】 印刷データを解析して解析データを作成するデータ作成工程と、
ユーザーが前記解析データのファイル名を指定するファイル名指定工程と、
保存指令をユーザーが示す保存指令工程と、
前記保存指令に応じて、前記ファイル名指定工程にて指定されたファイル名と前記解析データを不揮発性のメモリ手段に記憶させる記憶工程と、
前記メモリ手段に記憶された前記解析データの印刷指令をそのファイル名にてユーザーが示す印刷指令工程と、
前記印刷指令に応じて、印刷指令されたファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から読み出す読み出し工程と、
前記読み出し工程によって前記メモリ手段から読み出された前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせる直接印刷工程とを備えたことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項12】 印刷データを解析して解析データを作成するデータ作成工程と、
保存指令をユーザーが示す保存指令工程と、
前記保存指令に応じて、前記解析データを不揮発性のメモリ手段に記憶させる記憶工程と、
前記メモリ手段に記憶された前記解析データの印刷指令をユーザーが示す印刷指令工程と、
前記印刷指令に応じて、印刷指令された前記解析データを前記メモリ手段から読み出す読み出し工程と、
前記読み出し工程によって前記印刷指令に応じて前記メモリ手段から読み出された前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせる直接印刷工程とを備え、
前記印刷指令工程において、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項13】 印刷データを解析して解析データを作成するデータ作成工程と、
保存指令をユーザーが示す保存指令工程と、
前記保存指令に応じて、前記解析データを不揮発性のメモリ手段に記憶させる記憶工程と、
前記メモリ手段に記憶された前記解析データの印刷指令をユーザーが示す印刷指令工程と、
前記印刷指令に応じて、印刷指令された前記解析データを前記メモリ手段から読み出す読み出し工程と、
前記読み出し工程によって前記印刷指令に応じて前記メモリ手段から読み出された前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせる直接印刷工程と、
前記メモリ手段に記憶された前記解析データの削除指令をユーザーが示す削除指令工程と、
削除指令された前記解析データの削除を行う削除工程とを備えたことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項14】 印刷データを解析して解析データを作成するデータ作成手段と、
不揮発性のメモリ手段と、
ユーザーによる保存指令に応じて前記解析データを前記メモリ手段に記憶させる第1メモリ制御手段と、
前記第1メモリ制御手段によって前記メモリ手段に前記解析データが記憶された後におけるユーザーによる前記解析データの印刷指令に応じて、前記メモリ手段から印刷指令された前記解析データを読み出す第2メモリ制御手段と、
前記印刷指令に応じて前記第2メモリ制御手段によって読み出された前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせる印刷制御手段とを備えたことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項15】 前記第1メモリ制御手段は、前記解析データのファイル名と前記解析データを前記メモリ手段に記憶させ、
前記第2メモリ制御手段は、ユーザーによって印刷指令されたファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から読み出すことを特徴とする請求項14に記載の印刷制御装置。
【請求項16】 ユーザーが前記印刷指令を示すための印刷指令モードを有し、
その印刷指令モードにおいて、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項14または15に記載の印刷制御装置。
【請求項17】 前記メモリ手段に記憶された前記解析データを削除する削除手段を備えていることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載の印刷制御装置。
【請求項18】 ユーザーによる前記解析データの削除指令に応じて、前記削除手段が削除指令された前記解析データの削除を行うことを特徴とする請求項17に記載の印刷制御装置。
【請求項19】 ユーザーが前記削除指令を示すための削除モードを有し、
その削除モードにおいて、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項18に記載の印刷制御装置。
【請求項20】 前記第1メモリ制御手段は、前記解析データのファイル名と前記解析データを前記メモリ手段に記憶させ、
前記削除手段は、ユーザーによって削除指令されたファイル名と、そのファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から削除することを特徴とする請求項18または19に記載の印刷制御装置。
【請求項21】 ユーザーが前記ファイル名を指定するファイル名指定手段を備え、
前記第1メモリ制御手段は、指定されたファイル名と前記解析データを前記メモリ手段に記憶させることを特徴とする請求項15または20に記載の印刷制御装置。
【請求項22】 前記保存指令が示されている場合は、前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせ、前記第1メモリ制御手段が前記解析データを前記メモリ手段に記憶させ、
前記保存指令が示されていない場合は、前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせ、前記第1メモリ制御手段は前記メモリ手段への記憶を行わないことを特徴とする請求項14〜21のいずれかに記載の印刷制御装置。
【請求項23】 前記解析データはドットイメージデータであることを特徴とする請求項14〜22のいずれかに記載の印刷制御装置。
【請求項24】 印刷データを解析して解析データを作成するデータ作成手段と、
不揮発性のメモリ手段と、
ユーザーによる保存指令に応じて入力した前記解析データとユーザーによって指定された前記解析データのファイル名を前記メモリ手段に記憶させる第1メモリ制御手段と、
前記解析データの印刷をそのファイル名にて示すユーザーによる印刷指令に応じて、ユーザーによって印刷指令されたファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から読み出す第2メモリ制御手段と、
前記印刷指令に応じて前記第2メモリ制御手段によって読み出された前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせる印刷制御手段とを備えたことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項25】 印刷データを解析して解析データを作成するデータ作成手段と、
不揮発性のメモリ手段と、
ユーザーによる保存指令に応じて前記解析データを前記メモリ手段に記憶させる第1メモリ制御手段と、
ユーザーが前記解析データの印刷指令を示すための印刷指令モードにおいてユーザーにより示された印刷指令に応じて、前記メモリ手段から前記解析データを読み出す第2メモリ制御手段と、
前記印刷指令に応じて前記第2メモリ制御手段によって読み出された前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせる印刷制御手段と、
前記印刷指令モードにおいて、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知する報知手段とを備えたことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項26】 印刷データを解析して解析データを作成するデータ作成手段と、
不揮発性のメモリ手段と、
ユーザーによる保存指令に応じて前記解析データを前記メモリ手段に記憶させる第1メモリ制御手段と、
ユーザーによる前記解析データの印刷指令に応じて、前記メモリ手段から前記解析データを読み出す第2メモリ制御手段と、
前記印刷指令に応じて前記第2メモリ制御手段によって読み出された前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせる印刷制御手段と、
ユーザーによる前記解析データの削除指令に応じて、削除指令された前記解析データの削除を行う削除手段とを備えたことを特徴とする印刷制御装置。

【3】平成16年6月28日付けの取消理由通知に引用した刊行物
・特開平1-100625号公報(以下「刊行物1」という。)
刊行物1には、次のような記載がある。
a.「前記操作パネル3上には、印字開始キー6、印字停止キー7、データを印字機構で印字出力するための印字フォーマット等の印字制御情報を入力する置数キー8からなるキーボード9、および入力した印字制御情報を確認するための例えば液晶表示器で形成された表示部10が配設されている。」(第2頁右下欄第2〜7行)
b.「前記外部記憶装置5の例えばフロッピーディスク等からなる記憶媒体には、前記外部ホストシステム17からインターフェース回路19を介して入力され、最終的に印字機構15で印字出力すべきデータを記憶する複数のデータ領域が形成されている。そして、各データ領域に格納される各データにはデータ番号が付される。このデータ番号はデータを読み出す場合に使用する。」(第3頁左上欄第2〜9行)
c.「しかして、このプリンタの電源スイッチ4が投入されると、前記CPU11は第4図の流れ図を実行するようにプログラム構成されている。・・・しかるのち、P1にてインターフェース回路19の状態を調べ、外部ホストシステム17に対してオンラインモード状態であるかオフラインモード状態であるかを調べる。オンラインモード状態であれば、P2にて操作パネル3の置数キー8の操作状態を監視し、外部記憶装置5に対する記憶指令を示すコードが入力されていなければ、このプリンタは外部ホストシステム17の端末機として機能すると判断する。そしてP3へ進み、外部ホストシステム17からインターフェース回路19を介して入力された文字データをそのまま印字機構15で印字出力する。」(第3頁左上欄第10行〜右上欄第7行)
d.「P2にて、操作パネル3から外部記憶装置5に対する格納指令のコードが入力されると、P4にて、データ番号を置数キー8で置数したのち、外部ホストシステム17からインターフェース回路19を介して入力された文字データをインターフェース回路16を介して外部記憶装置5の該当データ番号のデータ領域へ書き込む。」(第3頁右上欄第10〜16行)
e.「また、P1にてインターフェース回路19が外部ホストシステム17に対してオフラインモード状態であれば、P5にて、操作パネル3から外部記憶装置5に既に記憶されている文字データの出力形式(印字フォーマット)を設定するためのデータが入力されたか否かを判断する。出力形式(印字フォーマット)を設定するためのデータが入力されると、P6にてこのデータをRAM14に印字制御情報として記憶する。なお、この印字制御情報には前述したデータ番号も含まれる。」(第3頁右上欄第17行〜左下欄第6行)
f.「P5にて、出力形式(印字フォーマット)を設定するためのデータが入力されなかった場合は、P7にて既にRAM14に設定された印字制御情報の指定するデータ番号の文字データを外部記憶装置5からインターフェース回路16を介して読出す。そして、読出した文字データを印字機構15でもって前記印字制御情報に基づいて印字出力する。」(第3頁左下欄第7〜14行)
g.「このように構成されたプリンタであれば、外部ホストシステム17に対してオンラインモード時においては、操作パネル3の操作によって、入力される文字データをオンラインモードで印字機構15でもってそのまま印字出力させることも、又は入力される文字データを一旦外部記憶装置5へデータ番号を付して記憶させることも可能である。そして、外部ホストシステム17に対するオフラインモード時に、外部記憶装置5に記憶された文字データを操作パネル3にて設定された印字制御情報に基づいて印字出力させることが可能となる。」(第3頁左下欄第15〜右下欄第5行)
これらの記載からみて、刊行物1には「外部ホストから送出された文字データを受信し、操作パネルでの設定、操作等により、その文字データをそのまま印刷出力したり、操作パネルよりデータ番号を付して格納指令のコード入力をすることにより文字データを外部記憶装置に記憶したり、指定したデータ番号の文字データを外部記憶装置から読み出して印刷出力したりすることが可能な印刷制御方法」についての発明が記載されているものと認める。

・特開平2-245822号公報(以下「刊行物2」という。)

・特開平1-190072号公報(以下、「刊行物3」という。)

【4】対比・判断
<請求項10について>
「前記データ作成工程は前記ドットイメージデータを作成することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の印刷制御方法」と記載された本件特許明細書の請求項10は、
「前記保存指令が示されているか否かに関わらず、前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせるデータ印刷工程を備え、前記記憶工程は、前記保存指令が示されている場合に、前記解析データを前記メモリ手段に記憶させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の印刷制御方法。」と記載された請求項9を引用しており、請求項9は
「ユーザーが前記ファイル名を指定するファイル名指定工程を備え、
前記記憶工程は、前記ファイル名指定工程にて指定されたファイル名と前記解析データを前記メモリ手段に記憶させることを特徴とする請求項2または7に記載の印刷制御方法。」と記載された請求項8を引用しており、請求項8は
「前記記憶工程は、前記解析データのファイル名と前記解析データを前記メモリ手段に記憶させ、
前記削除指令工程は、削除する前記解析データのファイル名をユーザーが指定して削除指令を示し、
前記削除工程は、ユーザーによって削除指令されたファイル名と、そのファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から削除することを特徴とする請求項5または6に記載の印刷制御方法。」と記載された請求項7を引用しており、請求項7は
「前記削除指令工程において、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知することを特徴とする請求項5に記載の印刷制御方法。」と記載された請求項6を引用しており、請求項6は
「前記メモリ手段に記憶された前記解析データの削除指令をユーザーが示す削除指令工程を備え、前記削除工程は、削除指令された前記解析データの削除を行うことを特徴とする請求項4に記載の印刷制御方法。」と記載された請求項5を引用しており、請求項5は
「前記メモリ手段に記憶された前記解析データを削除する削除工程を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷制御方法。」と記載された請求項4を引用しており、請求項4は
「前記印刷指令工程において、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷制御方法。」と記載された請求項3を引用しており、請求項3は
「前記記憶工程は、前記解析データのファイル名と前記解析データを前記メモリ手段に記憶させ、
前記印刷指令工程は、印刷する前記解析データのファイル名をユーザーが指定して印刷指令を示し、
前記読み出し工程は、ユーザーによって印刷指令されたファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から読み出すことを特徴とする請求項1に記載の印刷制御方法。」と記載された請求項2を引用しており、請求項2は
「印刷データを解析して解析データを作成するデータ作成工程と、
保存指令をユーザーが示す保存指令工程と、
前記保存指令に応じて、前記解析データを不揮発性のメモリ手段に記憶させる記憶工程と、
前記記憶工程によって前記メモリ手段に前記解析データが記憶された後において、前記解析データの印刷指令をユーザーが示す印刷指令工程と、
前記記憶工程後のユーザーによる前記印刷指令に応じて、印刷指令された前記解析データを前記メモリ手段から読み出す読み出し工程と、
前記読み出し工程によって前記メモリ手段から読み出された前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせる直接印刷工程とを備えたことを特徴とする印刷制御方法。」と記載された請求項1を引用しているものであり、これらの記載を構成要件毎に整理して記載すると、請求項10に係る発明は、次のA〜Mの構成要件を備えたものとなる。
A: 印刷データを解析して解析データを作成するデータ作成工程と、
B:保存指令をユーザーが示す保存指令工程と、
C:前記保存指令に応じて、前記解析データのファイル名と前記解析データを不揮発性のメモリ手段に記憶させる記憶工程と、
D:前記記憶工程によって前記メモリ手段に前記解析データが記憶された後において、印刷する前記解析データのファイル名を指定して前記解析データの印刷指令をユーザーが示す印刷指令工程と、
E:前記記憶工程後のユーザーによる前記印刷指令に応じて、ユーザーによって印刷指令されたファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から読み出す読み出し工程と、
F:前記読み出し工程によって前記メモリ手段から読み出された前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせる直接印刷工程と、
G:前記メモリ手段に記憶された前記解析データのファイル名を指定して削除指令をユーザーが示す削除指令工程と、
H:前記削除指令工程によって削除指令されたファイル名と、そのファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から削除する削除工程と、
I:前記保存指令が示されているか否かに関わらず、前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせるデータ印刷工程と、
J:ユーザーが前記ファイル名を指定するファイル名指定工程とを備え、
K:前記印刷指令工程において、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知し、
L:前記削除指令工程において、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知し、
M:前記データ作成工程はドットイメージデータを作成する、
ことを特徴とする印刷制御方法。」

前記A〜Mの構成要件を備えた請求項10に係る発明(以下「本件発明」という。)と刊行物1記載の発明とを対比する。
本件発明の「解析データ」は印刷可能なデータとして印刷機構に印刷出力されるものであるが、刊行物1記載の発明における「印字すべきデータ」も外部ホストシステムから受信したデータを印字可能なデータとして印刷機構に印字出力されるものであることは明らかであるから、刊行物1記載の発明における「印字すべきデータ」は本件発明の「解析データ」相当する。また、刊行物1記載の発明における「格納指令」「外部記憶装置」「データ番号」はそれぞれ本件発明の「ユーザが示す保存指令」「不揮発性のメモリ手段」「ファイル名」に相当するので、刊行物1記載の発明は本件発明の構成要件B(保存指令工程)、構成要件C(記憶工程)を備えており、また、刊行物1記載の発明は、操作パネルによる設定、操作によって、外部から入力される印刷データをそのまま印刷出力したり、入力される印刷データを一旦外部記憶装置へデータ番号を付して記憶させたり、外部記憶装置に記憶された印刷データを印刷出力させたりすることが可能であることから、本件発明の構成要件D(印刷指令工程)、構成要件E(読み出し工程)、構成要件F(直接印刷工程)、構成要件I(データ印刷工程)、構成要件J(ファイル名指定工程)を備えているといえる。
したがって、本件発明と刊行物1記載の発明は、
「印刷データを解析して解析データを作成するデータ作成工程と、
保存指令をユーザーが示す保存指令工程と、
前記保存指令に応じて、前記解析データのファイル名と前記解析データを不揮発性のメモリ手段に記憶させる記憶工程と、
前記記憶工程によって前記メモリ手段に前記解析データが記憶された後において、印刷する前記解析データのファイル名を指定して前記解析データの印刷指令をユーザーが示す印刷指令工程と、
前記記憶工程後のユーザーによる前記印刷指令に応じて、ユーザーによって印刷指令されたファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から読み出す読み出し工程と、
前記読み出し工程によって前記メモリ手段から読み出された前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせる直接印刷工程と、
前記保存指令が示されているか否かに関わらず、前記解析データに基づいて印刷部に印刷を行わせるデータ印刷工程と、
ユーザーが前記ファイル名を指定するファイル名指定工程と
を備えた印刷制御方法」である点で一致し、次の点で相違している。

・相違点
(1)データ作成工程について、本件発明は、ドットイメージデータも作成するのに対して、刊行物1記載の発明は、その点についてあ不明である点。
(2)本件発明は、不揮発性のメモリ手段に記憶された解析データのファイル名を指定して削除指令をユーザーが示す削除指令工程、前記削除指令工程によって削除指令されたファイル名と、そのファイル名に対応する前記解析データを前記メモリ手段から削除する削除工程を備えているのに対し、刊行物1記載の発明は、削除指令工程や削除工程について不明である。
(3)本件発明は、印刷指令工程において、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知し、また、前記削除指令工程において、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていない場合には、前記メモリ手段に前記解析データが記憶されていないことを報知するのに対し、刊行物1記載の発明は、そのような報知については不明である。

相違点の判断
相違点(1)について
印刷制御方法におけるデータ作成工程において、実際に印刷する文字や画像データをドットイメージデータに変換して印刷出力するようにすることは、刊行物2にみられるように周知であり(このことは本件特許明細書の段落【0060】にも記載されている。)、この相違点は、当業者が適宜採用する設計事項に過ぎない。
相違点(2)について
ファイル名が付されて記憶手段に保存されているデータを、ファイル名を指定して削除することは、刊行物3に見られるように周知であり、この相違点は、当業者が適宜採用する設計事項に過ぎない。

相違点(3)について
記憶手段に指定したデータが記憶されていない場合、ユーザにそれが記憶されていないことを報知することは周知であり、この相違点は、利便性などを考慮して適宜採用する設計事項に過ぎない。

したがって、本件発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。

<請求項1〜9について>
請求項1〜9に係る発明は、本件発明の構成要件A〜Mのうちの一部が存在しないだけのものであるから、本件発明の場合と同様、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。

<請求項11〜13について>
請求項11〜13に係る発明は、本件発明と同様の「印刷制御方法」に関する発明であり、請求項11に係る発明は、請求項8に係る発明とその構成要件は同じであり、請求項12係る発明は、請求項3に係る発明とその構成要件は同じであり、請求項13に係る発明は、請求項5に係る発明とその構成要件は同じである。したがって、請求項11〜13に係る発明は、本件発明と同様、刊行物1〜3に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。

<請求項14〜26について>
請求項14〜26に係る発明は、請求項1〜13に係る発明のカテゴリーを単に「装置」として表現しただけであり、実質的に請求項1〜13に係る発明と同じである。したがって、請求項14〜26に係る発明も、請求項1〜13に係る発明の場合と同様、刊行物1〜3に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。

【4】むすび
以上のとおり、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜26に係る発明は、上記各刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-07-29 
出願番号 特願2000-56624(P2000-56624)
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G06F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 田中 貞嗣  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 治田 義孝
大野 克人
登録日 2002-08-23 
登録番号 特許第3342464号(P3342464)
権利者 ブラザー工業株式会社
発明の名称 印刷制御方法及び印刷制御装置  
代理人 武藤 勝典  

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