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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1125884 |
異議申立番号 | 異議2003-72718 |
総通号数 | 72 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2001-08-03 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-11-06 |
確定日 | 2005-10-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3404674号「超高温熱処理装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3404674号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本件特許第3404674号に係る手続きの主な経緯は、次のとおりである。 特許出願(特願2000-013511号) 平成12年 1月21日 特許権設定登録 平成15年 3月 7日 特許異議申立(特許異議申立人:石塚雄次、請求項1に対して) 平成15年11月 6日 取消理由通知 平成16年 6月 9日 (起案日) 意見書 平成16年 8月13日 第2 特許異議申立についての判断 1 本件発明 本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである 「【請求項1】 超高温熱処理装置を構成する電気炉において、 正面よりみてU形状の発熱部と上方が折曲する非発熱部からなる加熱ヒーターが、その非発熱部を炉内断熱材内に貫通せしめ、前記炉内断熱材を所定間隔をもって被覆する外側囲み壁部に前記非発熱部を固定して取着し、当該加熱ヒーターの発熱部は、前記炉内断熱材の内側壁面に間隙部を設け、密着することなく、且1本単位で交換可能に装着せしめたことを特徴とする超高温熱処理装置。」 2 特許異議申立の理由及び取消理由の概要 (1)特許異議申立の理由 特許異議申立人石塚雄次は、証拠として、 刊行物1(甲第1号証)David P. Hamling,“Furnace Insulation Modules-A Unique Insulation And Heating System For Rapid Thermal Processing Of Semiconductor Materials”,5th Int. Conf. on Advanced Thermal Processing of Semiconductors-RTP'97,1997年9月,p.369〜376 刊行物2(甲第2号証)特開平5-315057号公報 刊行物3(甲第3号証)カンタル・ガデリウス株式会社「カンタルスーパー」,1988年6月,p.17〜20 刊行物4(甲第4号証)株式会社リケン「パイロマックススーパー(PX-S)技術資料」,1997年10月,p.2〜5,p.27 刊行物5(甲第5号証)社団法人日本工業炉協会他「素形材センター研究調査報告No.360 新工業炉の体系化に関する調査研究」,1989年2月,p.40〜41 刊行物6(甲第6号証)カンタル・ガデリウス株式会社「カンタル・スーパー講演会」,1982年9月14日,Fig.10 刊行物7(甲第7号証)石川島播磨重工業株式会社「IHI真空熱処理炉」カタログ,1986年3月 刊行物8(甲第8号証)「セラミックス」,29,No.5,1994年,p.399〜402 を提出し、本件請求項1に係る特許発明は、甲第1〜8号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものであると主張している。 (2)取消理由の概要 取消理由の概要は、以下のとおりである。 「理由1.第29条第2項違反について 刊行物1:David P. Hamling,“Furnace Insulation Modules-A Unique Insulation And Heating System For Rapid Thermal Processing Of Semiconductor Materials”,5th Int. Conf. on Advanced Thermal Processing of Semiconductors-RTP'97,1997年9月,p.369〜376(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第1号証) 刊行物2:特開平5-315057号公報(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第2号証) 刊行物3:カンタル・ガデリウス株式会社「カンタルスーパー」,1988年6月,p.17〜20(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第3号証) 刊行物4:株式会社リケン「パイロマックススーパー(PX-S)技術資料」,1997年10月,p.2〜5,p.27(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第4号証) 刊行物5:社団法人日本工業炉協会他「素形材センター研究調査報告No.360 新工業炉の体系化に関する調査研究」,1989年2月,p.40〜41(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第5号証) 刊行物6:カンタル・ガデリウス株式会社「カンタル・スーパー講演会」,1982年9月14日,Fig.10(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第6号証) 刊行物7:石川島播磨重工業株式会社「IHI真空熱処理炉」カタログ,1986年3月,(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第7号証) 刊行物8:「セラミックス」,29,No.5,1994年,p.399〜402(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第8号証) 本件請求項1に係る発明は、特許異議申立書(但し、「甲第1号証」ないし「甲第8号証」は、それぞれ「刊行物1」ないし「刊行物8」と読み替える。)第8頁第1行〜第15頁第20行に記載の理由により、上記刊行物1〜8に記載の発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。 よって、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。」 3 対比・判断 (1)刊行物に記載された発明 (ア)刊行物1:David P. Hamling,“Furnace Insulation Modules-A Unique Insulation And Heating System For Rapid Thermal Processing Of Semiconductor Materials”,5th Int. Conf. on Advanced Thermal Processing of Semiconductors-RTP'97,1997年9月,p.369〜376(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第1号証) 刊行物1に記載された発明は、「炉断熱モジュール-半導体材料の急速加熱処理用ユニーク断熱・ヒータシステム」(タイトル)に関するものであり、以下の点が記載されている。 「ジルカー炉断熱モジュール(モジュール)が事前に、軽量繊維セラミック断熱層と二珪化モリブデンヒーターとから組み立てられる。モジュールは急速熱処理装置のOEM製造者によって、彼らが製造する装置システムの断熱材/ヒーター炉室として使用される。」(第369頁左欄第1段落第2〜8行の訳文) 「二珪化モリブデン(MoSi2)ヒーターを使用したジルカー炉断熱モジュールは、大気中で1825℃の高温まで昇温でき、他の多くの抵抗加熱システムよりも大電力を投入できる。」(第369頁左欄第2段落第1〜4行の訳文) 「MoSi2がRTPシステムに有利ないくつかの特徴は: ・・・ ・ヒーターが一つずつ交換でき、保守を比較的簡単にする。」(第372頁右欄第1〜17行の訳文) また、刊行物1の第373頁左欄上側の写真の中央部には、正面よりみてU字型で、上方が屈曲しているヒーターが示されており、刊行物1の第374頁右欄下側の写真には、軽量繊維セラミック断熱層から突出したヒーターの根本部分が屈曲した様態が示されている。 よって、刊行物1には、 「大気中で1825℃の高温まで昇温できる急速熱処理装置に用いられる断熱材/ヒーター炉室において、 軽量繊維セラミック断熱層と二珪化モリブデンヒーターとから組み立てられるジルカー炉断熱モジュールが、断熱材/ヒーター炉室として使用され、 前記二珪化モリブデンヒーターが、正面よりみてU形状で、上方が屈曲しており、 前記軽量繊維セラミック断熱層から突出した前記二珪化モリブデンヒーターの根本部分が屈曲しており、 前記二珪化モリブデンヒーターが、一つずつ交換できることを特徴とする急速熱処理装置。」 が記載されている。 (イ)刊行物2:特開平5-315057号公報(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第2号証) 刊行物2には、図5、6、12、13とともに、以下の点が記載されている。 「【0029】ヒータ1の端子部3は貫通孔16aに挿通され、その上端側は耐火物製ワッシャ18を介して端子部把持具19に把持され、ヒータ1が鉛直に固定される。前壁12には、ヒータ発熱部2の中央部及びU字形折曲部の状態を鑑視できるよう、覗き窓12a、12bを設けてある。」 (ウ)刊行物3:カンタル・ガデリウス株式会社「カンタルスーパー」,1988年6月,p.17〜20(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第3号証) 刊行物3の第20頁図7aには、端子部(非発熱部)を90°曲げた発熱体が示されている。 (エ)刊行物4:株式会社リケン「パイロマックススーパー(PX-S)技術資料」,1997年10月,p.2〜5,p.27(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第4号証) 刊行物4の第3頁左上の図には、端子部(非発熱部)を90°曲げた「端子90°ベンドヒーター」が示されている。 (オ)刊行物5:社団法人日本工業炉協会他「素形材センター研究調査報告No.360 新工業炉の体系化に関する調査研究」,1989年2月,p.40〜41(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第5号証) 刊行物5の第41頁図2.21の左図には、炉内断熱材を所定間隔をもって被覆する外側囲み壁部に非発熱部を固定して取着したヒーターが示されている。 (カ)刊行物6:カンタル・ガデリウス株式会社「カンタル・スーパー講演会」,1982年9月14日,Fig.10(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第6号証) 刊行物6のFig.10の左図には、炉内断熱材を所定間隔をもって被覆する外側囲み壁部に非発熱部を固定して取着したヒーターが示されている。 (キ)刊行物7:石川島播磨重工業株式会社「IHI真空熱処理炉」カタログ,1986年3月,(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第7号証) 刊行物7の第2頁右図には、炉内断熱材を所定間隔をもって被覆する外側囲み壁部に非発熱部を固定して取着したヒーターが示されている。 (ク)刊行物8:「セラミックス」,29,No.5,1994年,p.399〜402(特許異議申立人石塚雄次の提出した甲第8号証) 刊行物8の第402頁図9には、炉内断熱材を所定間隔をもって被覆する外側囲み壁部に非発熱部を固定して取着したヒーターが示されている。 (2)本件発明と刊行物に記載された発明との対比・判断 本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。 A.本件特許明細書には、「図面中、Aは超高温熱処理装置であり、Bは前記Aを構成する1,500℃対応の電気炉である。」(特許公報第2頁第3欄第20〜21行参照)と記載されている。 一方、刊行物1に記載された発明は、「大気中で1825℃の高温まで昇温できる急速熱処理装置を構成するジルカー炉断熱モジュール」であり、超高温(1,500℃)で加熱できることは明らかであるから、刊行物1に記載された発明の「大気中で1825℃の高温まで昇温できる急速熱処理装置」は、本件発明の「超高温熱処理装置」に相当する。 また、刊行物1には、「二珪化モリブデン(MoSi2)ヒーターを使用したジルカー炉断熱モジュールは、・・・他の多くの抵抗加熱システムよりも大電力を投入できる。」(第369頁左欄第2段落第1〜4行の訳文)と記載されているから、「断熱材/ヒーター炉室」が、電気炉であることは明らかである。 よって、刊行物1に記載された発明の「大気中で1825℃の高温まで昇温できる急速熱処理装置に用いられる断熱材/ヒーター炉室」は、本件発明の「超高温熱処理装置を構成する電気炉」に相当する。 B.刊行物1に記載された発明において、「軽量繊維セラミック断熱層」は、「ヒーター炉室」内にあることは明らかであるから、刊行物1に記載された発明の「軽量繊維セラミック断熱層」は、本件発明の「炉内断熱材」に相当する。 C.刊行物1に記載された発明の「二珪化モリブデンヒーター」は、本件発明の「加熱ヒーター」に相当する。 D.刊行物1に記載された発明の「二珪化モリブデンヒーター」の「前記断熱材の内側から突出した」部分が、発熱部を含んでいることは明らかである。 E.刊行物1に記載された発明において、「二珪化モリブデンヒーター」は、「一つずつ交換できる」ものであるから、この「二珪化モリブデンヒーター」が、1本単位で交換可能に装着せしめられることは明らかである。 よって、本件発明と刊行物1に記載された発明は、 「超高温熱処理装置を構成する電気炉において、 加熱ヒーターが、1本単位で交換可能に装着せしめたことを特徴とする超高温熱処理装置。」 である点で一致するが、以下の点で相違する。 (相違点) 本件発明は、「正面よりみてU形状の発熱部と上方が折曲する非発熱部からなる加熱ヒーターが、その非発熱部を炉内断熱材内に貫通せしめ、前記炉内断熱材を所定間隔をもって被覆する外側囲み壁部に前記非発熱部を固定して取着し、当該加熱ヒーターの発熱部は、前記炉内断熱材の内側壁面に間隙部を設け、密着することなく」「装着せしめて」ているのに対して、刊行物1に係る発明は、「軽量繊維セラミック断熱層と二珪化モリブデンヒーターとから組み立てられるジルカー炉断熱モジュールが、断熱材/ヒーター炉室として使用され、 前記二珪化モリブデンヒーターが、正面よりみてU形状で、上方が屈曲しており、 前記軽量繊維セラミック断熱層の内側から突出した前記二珪化モリブデンヒーターの根本部分が屈曲して」いる点。 しかしながら、加熱ヒーターとして、正面よりみてU形状の発熱部と上方が折曲する端子部(非発熱部)からなるものは、刊行物3、4に記載されているように一般的な構成であり、また、刊行物5〜8には、炉内断熱材を所定間隔をもって被覆する外側囲み壁部にヒーターの非発熱部を固定して取着することが記載されているから、刊行物1に記載された発明の具体化に際し、ヒーターとして、刊行物3、4に記載のヒータを用い、かつ、刊行物5〜8に記載の構成を適用すること、すなわち、正面よりみてU字形状の発熱部と上方が折曲する非発熱部からなる二珪化モリブデンヒーターが、その非発熱部を軽量繊維セラミック断熱層を所定間隔を持って被覆する外側囲み壁部にヒーター非発熱部を固定して取着し、当該二珪化モリブデンヒーターの発熱部は、前記軽量繊維セラミック断熱層の内側壁面に間隙部を設け、密着することなく装着せしめることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。 したがって、本件発明は、刊行物1、刊行物3ないし8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 なお、平成16年8月13日付けの意見書において、特許権者は、「甲第1号証の第369頁右欄写真は、不鮮明であって、構造を特定することができない。」(第2頁第14〜15行)、「甲第4号証の第27頁写真は、不鮮明であり、構造上の対比が困難である。」と主張しているが、上記のとお り、甲第1号証第369頁右欄写真及び甲第4号証第27頁写真を参照しなくても、本件発明は、刊行物1、刊行物3ないし8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許権者の主張は採用しない。 4 むすび 以上のとおり、本件発明は、刊行物1、刊行物3ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2005-08-22 |
出願番号 | 特願2000-13511(P2000-13511) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 宮崎 園子 |
特許庁審判長 |
松本 邦夫 |
特許庁審判官 |
河本 充雄 橋本 武 |
登録日 | 2003-03-07 |
登録番号 | 特許第3404674号(P3404674) |
権利者 | 株式会社真空技研 破産管財人 増田 尚 |
発明の名称 | 超高温熱処理装置 |
代理人 | 庄司 建治 |
代理人 | 榊原 弘造 |