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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1129536 |
審判番号 | 不服2002-11551 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-10-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-24 |
確定日 | 2006-01-10 |
事件の表示 | 平成8年特許願第81871号「通信網において情報記録サービスを提供する方法とそのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月11日出願公開、特開平8-263399〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年2月28日(パリ条約による優先権主張1995年2月28日、米国)の出願であって、平成14年2月28日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月24日付で手続補正がなされたものである。 2.平成14年7月24日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年7月24日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 複数ユーザにアクセス可能な通信網上に、情報記録サービスを提供する方法において、 (a) ユーザ位置から前記情報記録サービスへ情報を伝送し記録するために、前記通信網を介して前記情報記録サービスとユーザ位置との間の接続を確立するステップと、 (b) 前記ユーザ位置から前記情報記録サービスへ、前記通信網を介して、情報を伝送するステップと、 (c) 前記情報記録サービスが前記情報を記憶するステップと、 からなり、 前記ユーザ位置は、情報を記憶する為に、前記情報記憶サービスにアクセス可能な複数ユーザの内の個々の各ユーザに関連づけられ、 前記(a)ステップは、任意の時間、前記ユーザ位置と前記情報記録サービスによって開始され、 前記(c)ステップは、情報損失をユーザが選択した保護の度合いに押さえるために、複数の場所で情報を記憶することを特徴とする通信網において情報記録サービスを提供する方法。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ユーザ位置」について「情報を記憶する為に、前記情報記憶サービスにアクセス可能な複数ユーザの内の個々の各ユーザに関連づけられ」との限定を付加し、同じく「(c)前記情報記録サービスが前記情報を記憶するステップ」について「情報損失をユーザが選択した保護の度合いに押さえるために、複数の場所で情報を記憶する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-236308号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、 「【従来の技術】近年、ワ-ドプロセッサやパ-ソナルコンピュ-タが広く普及してきている。それらの情報の共有化による有効利用も図られ、ネットワ-クサ-バを介してこれらの装置を接続して情報を蓄積管理するファイリングシステムも普及してきている。また、情報の蓄積集中管理に伴いそれまでのフロッピィディスク等によるバックアップではバックアップ及びリカバリ-に手間がかかり実用に耐えないので、これらの情報の安全を確保するために大量の情報を容易にバックアップでき、かつ、ファイリングに使用している記憶装置に障害等が起きた場合にリカバリ-が容易に行えるシステムとして、ファイリングに使用している記憶装置と同容量の記憶装置を装備しファイリングに使用している記憶装置に記憶していると同一の情報をバックアップ用に保管するミラ-リングによるバックアップシステムが開発されている。」(第2頁左欄第23-38行) 「この発明はかかる短所を解消するためになされたものであり、大量のデ-タのバックアップ及びリカバリ-が容易に行えるミラ-リングによるバックアップの利点を有し、ネットワ-クを介し接続された各端末装置から送られてきたデ-タをファイリングに使用している記憶装置より少ない記憶容量の記憶装置でバックアップすることができるネットワ-クサ-バを得ることを目的とする。」(同右欄第6-13行) 「図1はこの発明の一実施例を示す構成図である。図に示すように、ネットワ-クサ-バ1はLAN5を介して複数の端末装置2a〜2nに接続されて、複数のファイリング用のハ-ドディスク3a〜3mとバックアップ用ハ-ドディスク4と接続されている。」(同第44-48行) 「【0014】図1に示すように、ネットワ-クサ-バ1は主制御部6、圧縮手段7、書込手段8、記憶部9、ネットワ-ク制御部10及びハ-ドディスク制御部11を有するを有する。 【0015】主制御部6はシステム全体の制御を行う。圧縮手段7は書込手段8の指令によりLAN5を介して接続された端末装置2a〜2nから送られたファイルを記憶部9から読み圧縮し書込手段8に送る。書込手段8は端末装置2a〜2nから送られたファイルを記憶部9から読み込み、読み込んだファイルをハ-ドディスク制御部11を介しハ-ドディスク3a〜3mに書き込む。また、書込手段8はバックアップ対象のファイルを圧縮手段7に送り、圧縮手段7で圧縮したファイルをハ-ドディスク制御部11を介してバックアップ用ハ-ドディスク4のファイル格納部42に格納すると同時に、ファイリングに使用しているハ-ドディスク3a〜3mに対応して設定されたバックアップ用ハ-ドディスク4のディレクトリ-テ-ブル4a〜4m及びファイルアロケ-ションテ-ブル41を更新してファイル属性を登録する。記憶部9はLAN5を介して接続された端末装置2a〜2nから送られたファイルを一時的に記憶する。ネットワ-ク制御部10はLAN5の接続及び制御を行い、端末装置2a〜2nから送られたファイル等を受信したりする。ハ-ドディスク制御部11はファイリングに使用しているハ-ドディスク3a〜3m及びバックアップ用ハ-ドディスク4の接続及び制御を行い、ハ-ドディスク3a〜3m,4に書込手段8の指令によりファイルを格納する。」(第3頁左欄第12-39行) との記載が認められる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用例に記載された発明(以下「引用例発明」という。)とを比較すると、引用例発明の「LAN」は、本願補正発明の「通信網」に相当する。また、引用例発明の複数の端末装置2a〜2nは、ユーザ位置に存在することは明らかである。さらに、引用例発明のネットワークサーバ1並びにハードディスク3a〜3m及びバックアップ用ハードディスク4は、当該端末装置からLAN5を経由して転送されてくるファイルたる情報を記録するものであり、これらネットワークサーバ1並びにハードディスク3a〜3m及びバックアップ用ハードディスク4によって提供されるサービスは本願補正発明の「情報記録サービス」に相当し、情報は「複数の場所」で記憶される。また、端末装置とネットワークサーバ及びハードディスクとからなる引用例発明のようなシステムにおいて、両者の接続を確立するのは、任意の時間になされるものであることは当業者に自明である。また、引用例発明において、複数のハードディスクをネットワークサーバと共に情報記録のために備えるのは、情報損失を押さえるためになされていることは明らかである。 してみれば両者は、 「複数ユーザにアクセス可能な通信網上に、情報記録サービスを提供する方法において、 (a) ユーザ位置から前記情報記録サービスへ情報を伝送し記録するために、前記通信網を介して前記情報記録サービスとユーザ位置との間の接続を確立するステップと、 (b) 前記ユーザ位置から前記情報記録サービスへ、前記通信網を介して、情報を伝送するステップと、 (c) 前記情報記録サービスが前記情報を記憶するステップと、 からなり、 前記(a)ステップは、任意の時間、前記ユーザ位置と前記情報記録サービスによって開始され、 前記(c)ステップは、情報損失を押さえるために複数の場所で情報を記憶することを特徴とする通信網において情報記録サービスを提供する方法。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]本願補正発明は、ユーザ位置は、情報を記憶する為に、情報記憶サービスにアクセス可能な複数ユーザの内の個々の各ユーザに関連づけられるのに対し、引用例発明では、その点が明確でない点。 [相違点2]本願補正発明は、情報損失をユーザが選択した保護の度合いに押さえるために、複数の場所で情報を記憶しているのに対し、引用例発明では、情報損失を押さえるために複数の場所で情報を記憶することが記載されているだけである点。 (4)判断 [相違点1]について 相違点1に係る本願補正発明の「ユーザ位置は、情報を記憶する為に、前記情報記憶サービスにアクセス可能な複数ユーザの内の個々の各ユーザに関連づけられ」との記載はその意味するところは必ずしも明確ではない。 そして、発明の詳細な説明の記載を検討しても、当該記載が何を意味するのか判然としない。 すなわち、本願明細書段落【0019】には、ユーザ指定安全指示に従う局所安全プロトコルによって、顧客(「ユーザ」と同義と認める。以下同じ。)が、現在の顧客位置(「ユーザ位置」と同義と認める。以下同じ。)とは関連づけられていない顧客位置から、網記録システムへ転送された記録ファイルにアクセスすることを制限することが記載されているものと認められ、同段落【0025】には、特別なアクセス番号が記録サービスに割り当てられ、サービスに加入するユーザは、特定の番号を顧客位置に関連づけることが記載されているものと認められ、同段落【0027】及び【0028】には、顧客位置が特別アクセス番号をダイヤルすることによって、発呼者自動番号識別(ANI)が網を通じて記録サービスに渡され、顧客特定情報(顧客プロファイル)を取り出すために利用されることが記載されているものと認められ、同段落【0035】には、データベースサーバー704によって、加入者プロファイルが管理され、ユーザ毎に顧客位置を管理することが記載されているものと認められ、同段落【0040】乃至【0044】には、ユーザ毎に設定されたプロファイルに従って、ユーザの指定する顧客位置へのファイルの転送を制限するなどの処理を行うことが記載されているものと認められるが、これらの記載を参酌してもその意味するところは必ずしも明確ではない。 しかしながら、「情報記憶サービスにアクセス可能な複数ユーザの内の個々の各ユーザに関連づけられ」との記載からすれば、情報記録サービスにアクセス可能な複数のユーザ毎にユーザ位置が何らかの方法で関連づけられていることを意図した記載であるとして、一応の理解をすることができる。 そこで、当該相違点を上記の理解で検討すると、一般に、複数ユーザに提供されるサービスを当該複数ユーザが利用するにあたり、個々のユーザ毎に関連づけられた情報を管理する程度のことは周知技術に過ぎず、ユーザ毎にユーザ位置を情報記録サービスと関連づける程度のことは当業者が適宜なし得ることである。 [相違点2]について 引用例の【従来の技術】の項にも記憶装置のミラーリングによるバックアップ技術が記載されているように、ミラーリング等による情報のバックアップ技術は周知であって、それらの技術は情報損失をユーザが所望する保護の度合いに応じて選択して採用されるものである。 そうすると、引用例発明にあって、情報損失をユーザが選択した保護の度合いに押さえるために、複数の場所で情報を記憶することは、当業者であれば周知技術に基づいて容易になし得ることである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用例及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成14年7月24日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年1月31日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「通信網において複数ユーザにアクセス可能な情報記録サービスを提供する方法において、 (a) ユーザ位置から前記情報記録サービスへ情報を伝送し情報を記録するために、前記通信網を介して前記情報記録サービスとユーザ位置との間の接続を確立するステップと、 (b) 前記ユーザ位置から前記情報記録サービスへ、前記通信網を介して、情報を伝送するステップと、 (c) 前記情報記録サービスが、前記情報を記憶するステップと、 からなり、 前記(a)ステップは、任意の時間、前記ユーザ位置と前記情報記録サービスによって開始され、 前記(c)ステップは、ユーザが信頼する一定の程度まで情報損失を防ぐために複数の場所で情報を記憶することを特徴とする通信網において情報記録サービスを提供する方法。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「ユーザ位置」についての限定事項である「情報を記憶する為に、前記情報記憶サービスにアクセス可能な複数ユーザの内の個々の各ユーザに関連づけられ」との構成を省き、「(c)前記情報記録サービスが前記情報を記憶するステップ」についての限定事項である「情報損失をユーザが選択した保護の度合いに押さえるために、複数の場所で情報を記憶する」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-08-03 |
結審通知日 | 2005-08-04 |
審決日 | 2005-08-23 |
出願番号 | 特願平8-81871 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤井 浩、小林 義晴 |
特許庁審判長 |
大野 克人 |
特許庁審判官 |
山崎 慎一 治田 義孝 |
発明の名称 | 通信網において情報記録サービスを提供する方法とそのシステム |
代理人 | 三俣 弘文 |