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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1129594 |
審判番号 | 不服2003-13844 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-01-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-18 |
確定日 | 2006-01-13 |
事件の表示 | 平成11年特許願第194024号「半導体薄膜形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年1月26日出願公開、特開2001-23918〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件は、平成11年7月8日の出願であって、平成15年6月12日付けで拒絶査定がさなれ、これに対し、平成15年7月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月7日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年8月7日付けの手続補正について [補正却下の決定の結論] 平成15年8月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)平成15年8月7日付けの手続補正の内容 平成15年8月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成15年5月19日付けで補正された特許請求の範囲を次のとおりに補正するものである(以下、平成15年5月19日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16をそれぞれ「補正前請求項1ないし16」といい、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし16をそれぞれ「補正後請求項1ないし16」という。)。 「 【請求項1】 光マスク上に形成した露光パターンを半導体薄膜に投影露光して、半導体薄膜の所定の領域をμmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチで改質する半導体薄膜形成装置において、露光されるべき光を、上記光マスク上の所定の領域において、該領域内の光の強度分布が該領域内の光の平均強度の±11.2%以内の範囲に含まれるように、均一化させる機構を有し、設定誤差精度0.1〜100μmの精度で所望の露光位置に、上記露光パターンの投影露光を開始する機能を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項2】 光マスク上に形成した露光パターンを、基板ステージに保持された基板上の半導体薄膜に投影露光して、半導体薄膜の所定の領域をμmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチで改質する、請求項1に記載の半導体薄膜形成装置において、光マスクまたは基板ステージを個別または同時に駆動することにより、露光パターンを順次走査する機構を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項3】 請求項1に記載の半導体薄膜形成装置において、露光パターンを半導体薄膜に投影露光する際の、露光パターンの半導体薄膜の前記所定の領域への焦点合わせを行う焦点合わせ機構を有し、上記半導体薄膜の高さを検出する非接触変位計と上記半導体薄膜との間に、露光パターンが透過する窓を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項4】 光マスク上に形成した露光パターンを半導体薄膜に露光ビームにより投影露光して、半導体薄膜の所定の領域をμmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチで改質する、請求項1に記載の半導体薄膜形成装置において、露光ビームの半導体薄膜に対する傾きを補正する傾き補正機構を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項5】 光マスク上に形成した露光パターンを半導体薄膜に露光ビームにより投影露光して、半導体薄膜の所定の領域をμmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチで改質する、請求項1に記載の半導体薄膜形成装置において、半導体薄膜が堆積された基板上に形成されたマークに対し、露光ビームの位置合わせを行うアライメント機能を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項6】 請求項1に記載の半導体薄膜形成装置において、半導体薄膜が堆積された基板をステージ上に保持する機能を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項7】 光マスク上に形成した露光パターンを半導体薄膜に露光ビームにより投影露光して、半導体薄膜の所定の領域をμmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチで改質する、請求項1に記載の半導体薄膜形成装置において、複数のレーザ光を前記露光ビームとして合成する合成機構を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項8】 請求項7に記載の半導体薄膜形成装置において、前記複数のレーザ光が第1および第2のレーザ光であり、前記合成機構は、第1のレーザ光に対し第2のレーザ光が遅延して半導体薄膜に照射されるように、第1および第2のレーザ光を前記露光ビームとして合成することを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項9】 光マスク上に形成した露光パターンを基板上の半導体薄膜に投影露光して、半導体薄膜の所定の領域をμmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチで改質するための処理室を有する請求項1に記載の半導体薄膜形成装置において、大気に暴露することなく別の処理室に基板を搬送する機構を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項10】 請求項9に記載の半導体薄膜形成装置において、前記別の処理室が基板に絶縁膜を形成するための絶縁膜形成室であることを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項11】 請求項9に記載の半導体薄膜形成装置において、前記別の処理室が基板に半導体膜を形成するための半導体膜形成室であることを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項12】 請求項9に記載の半導体薄膜形成装置において、前記別の処理室が基板に加熱処理を施すための加熱処理室であることを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項13】 請求項9に記載の半導体薄膜形成装置において、前記別の処理室が基板にプラズマ処理を施すためのプラズマ処理室であることを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項14】 請求項9に記載の半導体薄膜形成装置において、前記処理室が、前記光マスク上に形成したパターンを前記基板上の半導体薄膜にレーザビームにより投影露光して、半導体薄膜の前記所定の領域をμmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチで改質するためのレーザ処理室であり、前記別の処理室がもう一つのレーザ処理室であることを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項15】 請求項9〜13のいずれかに記載の半導体薄膜形成装置において、前記別の処理室は、該別の処理室内の所定の領域にプラズマを発生させるためのプラズマ発生源を有し、前記別の処理室内の前記所定の領域外の領域に基板が配置されることを特徴とする半導体薄膜形成装置。 【請求項16】 請求項13に記載の半導体薄膜形成装置において、前記別の処理室は、該別の処理室内の所定の領域にプラズマを発生させるためのプラズマ発生源を有し、前記別の処理室は、前記所定の領域の前記プラズマにより励起されたガスと、前記所定の領域を介さずに前記別の処理室内に導入される別のガスとを反応させることにより、前記基板に前記プラズマ処理を施すものであることを特徴とする半導体薄膜形成装置。」 (2)本件補正についての検討 (2-1)補正事項の整理 補正事項を整理すると以下のとおりである。 (補正事項1) 「半導体薄膜の所定の領域を改質する」(補正前請求項1、2、4、5、7及び9)を、 「半導体薄膜の所定の領域をμmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチで改質する」(補正後請求項1、2、4、5、7及び9)と補正し、 「半導体薄膜の前記所定の領域を改質する」(補正前請求項14)を、 「半導体薄膜の前記所定の領域をμmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチで改質する」(補正後請求項14)と補正する。 (補正事項2) 「均一化させる機構を有する」(補正前請求項1)を、 「均一化させる機構を有し、設定誤差精度0.1〜100μmの精度で所望の露光位置に、上記露光パターンの投影露光を開始する機能を有する」(補正後請求項1)と補正する。 (補正事項3) 「焦点合わせ機構を有する」(補正前請求項3)を、 「焦点合わせ機構を有し、上記半導体薄膜の高さを検出する非接触変位計と上記半導体薄膜との間に、露光パターンが透過する窓を有する」(補正後請求項3)と補正する。 (2-2)補正の目的の適否及び新規事項の有無について (補正事項1) 補正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の0008段落には、「光マスク上のパターンをシリコン薄膜上に縮小投影しレーザ結晶化する技術」において、「1:5程度の縮小投影を行うことによって、μmオーダのビームサイズとμmオーダの基板ステージの移動ピッチを実現」することが記載されているから、補正事項1は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。 (補正事項2) 補正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである また、当初明細書等の0054段落には、「アライメント動作を行い精密に露光位置を調整する。このとき、例えば0.1μm〜100μm程度といった、所望の設定誤差精度にはいるように調整する」ことが記載されているから、補正事項2は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。 (補正事項3) 補正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである また、当初明細書等の図23には、「焦点調節装置を組み込んだレーザアニール装置」(当初明細書等の0088段落参照)に関し、「アモルファス状Si等の半導体薄膜を形成した被加工体であるワークW」(同0088段落参照)と「ワークWの照射光学系3720に対する高さや傾斜量に対応する信号を検出する非接触変位計3770」(同0089段落参照)との間に、「透過窓3790a」(同0090段落参照)が配置されることが示されているから、補正事項3は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。 したがって、補正事項1ないし3は、いずれも特許法第17条の2第4項に規定された事項を目的とするものであり、同条第3項の規定に適合するものである。 (2-3)独立特許要件について (2-3-1)本件補正後の発明 本件補正後の請求項に係る発明は、補正後請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は次のものである。 「光マスク上に形成した露光パターンを半導体薄膜に投影露光して、半導体薄膜の所定の領域をμmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチで改質する半導体薄膜形成装置において、露光されるべき光を、上記光マスク上の所定の領域において、該領域内の光の強度分布が該領域内の光の平均強度の±11.2%以内の範囲に含まれるように、均一化させる機構を有し、設定誤差精度0.1〜100μmの精度で所望の露光位置に、上記露光パターンの投影露光を開始する機能を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。」 (2-3-2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された刊行物である特開昭57-181537号公報(以下、「引用例」という。)には、第1図及び第2図とともに、以下の事項が記載されている。 (ア)「(1) パルス光源と、その光路中に設けたパターン形状を構成するマスクと、該マスクによりパターン化された上記パルス光ビームを基板上に投影する投影光学系と、から成ることを特徴とする光パターン投影装置。」(特許請求の範囲第1項) (イ)「(4) 投影光学系は縮小投影光学系であり、マスク面における光エネルギ密度が基板面における光エネルギ密度より本質的に減少していることを特徴とする特許請求の範囲(1),(2),(3)のいづれか一つに記載の光パターン投影装置。」(特許請求の範囲第4項) (ウ)「以下、添付の図面に即し本発明の実施例に就き説明する。第1図は本光パターン投影装置の一実施例の概略構成図であつて、パルス光源1としてはこの場合、大口径パルスレーザを用いている。 大口径のパルスレーザとしてはルビーレーザもその一つであり、口径20mmと大きいが、繰り返しは数μmと低いこのビームは一般にマルチモードで発振している為、均一な面内強度分布を得ることが困難である。必要に応じてレーザ発振ビーム内の面内均一分布をえるためには特殊な構造の光ガイド構成よりなるライトパイプ2を通過させてモードをくづすことが有効である。 ・・・レーザ光を均一平面分布とするための公知の手段にはフライアレイレンズ等もある。・・・ ライトパイプ2からでてきた均一化された大口径パルスレーザビームは鏡3で方向をかえ、マスク4に照射される。・・・」(第2頁右上欄第17行〜同頁右下欄第10行) (エ)「投影レンズ系5を通過した光ビームはウエーハ6にマスクのパターンを結像する。ウエーハ6は一般には試料台7の上に設置されたX-Yステージ8によつて精密移動が可能なように支持されている。 これらの投影レンズ光学系には前述の光露光装置に利用されているオートフオーカス機構も同様に使用可能である。 マスクとウエーハの位置合せは以下の手順で行われる。位置合せ用レーザ13から出てマスクマーク14を通つた光をTTL(Through the Lens)機構を通してウエーハ6に当て、ウエーハ表面からの反射光を再びTTL機構を通してハーフミラー15によつて検出器16に導く。レーザ光がウエーハ上のウエーハ・マーク9に当つたとき検出器16に入る反射光強度が大きくなるので、これが実現するようにウエーハ6の乗つたステージ8を動かして調整する。ウエーハの移動量と位置はレーザ10、干渉計11、鏡11a、検出器12より成るレーザ干渉計によつて測定される。」(第3頁左上欄第7行〜同頁右上欄第6行) (オ)「次に本発明の光パターン投影装置を用いて可能となる局所的光パルスアニールを用いた応用例として、半導体デバイス、IC等の製作上の特徴ある要素プロセスについて第2各図に従つてのべる。 第2図(1)の工程ではSi基板α1上にSiO2等の絶縁膜α2を1μm程度付着させ、さらにa-Si膜α3をLPCVD(減圧CVD)法で約0.3〜0.4μmデポシツトしている。 同図(2)の工程では、たとえば大口径ルビーレーザ(λ=0.69μm)を光源として第1図示の装置でa-Si膜に対し局所的パルスレーザアニールを行つている。アニール条件は略々1J/cm2程度で数パルスの重ね合せも場合によつて行う。 これによつてパルスレーザアニールが行なわれた部分α3′はポリSi(多結晶シリコン)化して、アモルフアスよりドライエツチスピードがおそくなり、その比は2程度以上になりえる。」(第4頁右下欄第13行〜第5頁左上欄第10行) なお、上記(ア)及び(イ)の部分における「基板」、上記(エ)の部分における「ウエーハ」、並びに、上記(オ)の部分における「Si基板α1上にSiO2等の絶縁膜α2を1μm程度付着させ、さらにa-Si膜α3をLPCVD(減圧CVD)法で約0.3〜0.4μmデポシツト」したものが、マスクによりパターン化されたパルスレーザビームが投影される対象物としての同一のものを指していることは明らかである。 これらの記載事項によれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「マスクによりパターン化されたパルスレーザ光を基板上にデポジットしたa-Si膜に縮小投影して多結晶シリコン化する光パターン投影装置において、 前記レーザ光を均一平面分布として前記マスクに照射する手段を有し、 前記基板をX-Yステージによって精密移動が可能なように支持し、前記マスクと前記基板との位置合せは、位置合せ用レーザから出てマスクマークを通った光をTTL機構を通して前記基板に当て、前記基板表面からの反射光を再びTTL機構を通してハーフミラーによって検出器に導き、レーザ光が前記基板上のウエーハ・マークに当ったとき検出器に入る反射光強度が大きくなるので、これが実現するように前記基板の乗った前記X-Yステージを動かして調整することを特徴とする光パターン投影装置。」 (2-3-3)対比・検討 本件補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「a-Si膜」は、本件補正発明の「半導体薄膜」に相当し、また、引用発明1の「多結晶シリコン化」は、アモルファス状態から多結晶状態にSiの結晶形態を改質するものであるから、本件補正発明の「改質」に相当するので、引用発明1の「マスクによりパターン化されたパルスレーザ光を基板上にデポジットしたa-Si膜に」「投影して多結晶シリコン化する光パターン投影装置」は、本件補正発明の「光マスク上に形成した露光パターンを半導体薄膜に投影露光して、半導体薄膜の所定の領域を」「改質する半導体薄膜形成装置」に相当する。 引用発明1の「前記レーザ光を均一平面分布として前記マスクに照射する手段」は、レーザ光がマスク上に照射される前に該レーザ光を均一平面分布にすることによって、マスク上でのレーザ光の平面分布を均一にするものであるから、本件補正発明の「露光されるべき光を、上記光マスク上の所定の領域において」「均一化させる機構」に相当する。 引用発明1の「前記基板をX-Yステージによって精密移動が可能なように支持し、前記マスクと前記基板との位置合せは、位置合せ用レーザから出てマスクマークを通った光をTTL機構を通して前記基板に当て、前記基板表面からの反射光を再びTTL機構を通してハーフミラーによって検出器に導き、レーザ光が前記基板上のウエーハ・マークに当ったとき検出器に入る反射光強度が大きくなるので、これが実現するように前記基板の乗った前記X-Yステージを動かして調整すること」は、マスクマークの位置と基板上のウエーハ・マークの位置とが一致するように基板の乗ったX-Yステージを移動させて、マスクと基板の位置合せを行うものであるから、本件補正発明の「所望の露光位置に、上記露光パターンの投影露光を開始する機能を有すること」に相当する。 よって、本件補正発明と引用発明1とは、 「光マスク上に形成した露光パターンを半導体薄膜に投影露光して、半導体薄膜の所定の領域を改質する半導体薄膜形成装置において、露光されるべき光を、上記光マスク上の所定の領域において、均一化させる機構を有し、所望の露光位置に、上記露光パターンの投影露光を開始する機能を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 本件補正発明は、「半導体薄膜の所定の領域をμmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチで改質する」のに対して、引用発明1は、「パルスレーザ光を基板上にデポジットしたa-Si膜に縮小投影して多結晶シリコン化する」点。 (相違点2) 本件補正発明は、「露光されるべき光を、上記光マスク上の所定の領域において、該領域内の光の強度分布が該領域内の光の平均強度の±11.2%以内の範囲に含まれるように、均一化させる機構を有し」ているのに対して、引用発明1は、「前記レーザ光を均一平面分布として前記マスクに照射する手段を有し」ている点。 (相違点3) 本件補正発明は、「設定誤差精度0.1〜100μmの精度で所望の露光位置に、上記露光パターンの投影露光を開始する機能を有する」のに対して、引用発明1は、「前記基板をX-Yステージによって精密移動が可能なように支持し、前記マスクと前記基板との位置合せは、位置合せ用レーザから出てマスクマークを通った光をTTL機構を通して前記基板に当て、前記基板表面からの反射光を再びTTL機構を通してハーフミラーによって検出器に導き、レーザ光が前記基板上のウエーハ・マークに当ったとき検出器に入る反射光強度が大きくなるので、これが実現するように前記基板の乗った前記X-Yステージを動かして調整する」点。 上記の各相違点について検討する。 (相違点1について) 本件補正発明における「μmオーダのビームサイズとμmオーダの移動ピッチ」は、本件明細書の0008段落を参照すれば、「1:5程度の縮小投影を行うことによって」実現される「ビームサイズ」と基板ステージの「移動ピッチ」の程度を意味しているものと認められる。 一方、引用発明1も「縮小投影」を行うものであり、また、縮小投影における1:5程度の縮小率は当該技術分野においては一般的なものであるから、引用発明1においても、レーザ光のビームサイズとX-Yステージの移動ピッチは、μmオーダ程度になっているものと認められる。 よって、相違点1は、露光装置における縮小投影という技術的事項をどのように規定しているかという表現上の差異にすぎず、実質的な相違点ではない。 (相違点2について) 本件補正発明における「上記光マスク上の所定の領域において、該領域内の光の強度分布が該領域内の光の平均強度の±11.2%以内の範囲に含まれる」ようにした点に関し、本件明細書の0035段落には、図面の図10を根拠に、「424〜339mJ/cm2の範囲(平均強度381.5mJ/cm2の約±11.2%以内の範囲)に分布が収まるように照射を行えば、極端な平均粒径の相違を抑制したSi薄膜のレーザ結晶化が可能になる」と記載されているが、一方で、同段落には、「521〜470mJ/cm2の範囲」では、「平均強度495.5mJ/cm2の約±5.2%以内の範囲」に分布が収まるように照射を行わなければならないことが示されているように、「平均強度の±11.2%以内の範囲」が、光の平均強度、さらには照射する光の波長や照射対象の半導体薄膜の構造(材質、膜厚等)などの諸条件には関係しない、極端な平均粒径の相違を抑制した半導体薄膜の改質を可能にするための普遍的な条件であるとは認められない。 よって、「上記光マスク上の所定の領域において、該領域内の光の強度分布が該領域内の光の平均強度の±11.2%以内の範囲に含まれる」ようにした点に何ら臨界的意義はなく、かつ、「±11.2%以内の範囲」で均一化を行うことに技術的な困難性があったとも認められないから、引用発明1において、均一平面分布の程度を±11.2%以内の範囲に収まるように設定することは、当業者が適宜なし得たものである。 (相違点3について) 「設定誤差精度0.1〜100μmの精度」は、当該技術分野における露光装置に当然要求される程度のものであり、また、引用発明1における「前記基板をX-Yステージによって精密移動が可能なように支持し、前記マスクと前記基板との位置合せは、位置合せ用レーザから出てマスクマークを通った光をTTL機構を通して前記基板に当て、前記基板表面からの反射光を再びTTL機構を通してハーフミラーによって検出器に導き、レーザ光が前記基板上のウエーハ・マークに当ったとき検出器に入る反射光強度が大きくなるので、これが実現するように前記基板の乗った前記X-Yステージを動かして調整する」ことにより、この程度の精度が得られることは、当業者にとって明らかである。 よって、相違点3は、露光装置における位置合せという技術的事項をどのように規定しているかという表現上の差異にすぎず、実質的な相違点ではない。 以上のとおり、本件補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (2-4)本件補正についての検討のむすび 上記(2-3)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものである。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本件発明について (3-1)本件発明の認定 平成15年8月7日付けの手続補正は上記2.のとおり却下されたので、本件の請求項に係る発明は、平成15年5月19日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は次のものである。 「光マスク上に形成した露光パターンを半導体薄膜に投影露光して、半導体薄膜の所定の領域を改質する半導体薄膜形成装置において、露光されるべき光を、上記光マスク上の所定の領域において、該領域内の光の強度分布が該領域内の光の平均強度の±11.2%以内の範囲に含まれるように、均一化させる機構を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。」 (3-2)引用例 これに対して、前出の引用例には、上記(2-3-2)のとおりの記載があり、これによれば、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「マスクによりパターン化されたパルスレーザ光を基板上にデポジットしたa-Si膜に投影して多結晶シリコン化する光パターン投影装置において、 前記レーザ光を均一平面分布として前記マスクに照射する手段を有することを特徴とする光パターン投影装置。」 (3-3)対比・検討 本件発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「a-Si膜」は、本件発明の「半導体薄膜」に相当し、また、引用発明2の「多結晶シリコン化」は、アモルファス状態から多結晶状態にSiの結晶形態を改質するものであるから、本件発明の「改質」に相当するので、引用発明2の「マスクによりパターン化されたパルスレーザ光を基板上にデポジットしたa-Si膜に投影して多結晶シリコン化する光パターン投影装置」は、本件発明の「光マスク上に形成した露光パターンを半導体薄膜に投影露光して、半導体薄膜の所定の領域を改質する半導体薄膜形成装置」に相当する。 引用発明2の「前記レーザ光を均一平面分布として前記マスクに照射する手段」は、レーザ光がマスク上に照射される前に該レーザ光を均一平面分布にすることによって、マスク上でのレーザ光の平面分布を均一にするものであるから、本件発明の「露光されるべき光を、上記光マスク上の所定の領域において」「均一化させる機構」に相当する。 よって、本件発明と引用発明2とは、 「光マスク上に形成した露光パターンを半導体薄膜に投影露光して、半導体薄膜の所定の領域を改質する半導体薄膜形成装置において、露光されるべき光を、上記光マスク上の所定の領域において、均一化させる機構を有することを特徴とする半導体薄膜形成装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 本件発明は、「露光されるべき光を、上記光マスク上の所定の領域において、該領域内の光の強度分布が該領域内の光の平均強度の±11.2%以内の範囲に含まれるように、均一化させる機構を有し」ているのに対して、引用発明2は、「前記レーザ光を均一平面分布として前記マスクに照射する手段を有し」ている点。 上記の相違点について検討すると、本件発明における「上記光マスク上の所定の領域において、該領域内の光の強度分布が該領域内の光の平均強度の±11.2%以内の範囲に含まれる」ようにした点に関し、本件明細書の0035段落には、図面の図10を根拠に、「424〜339mJ/cm2の範囲(平均強度381.5mJ/cm2の約±11.2%以内の範囲)に分布が収まるように照射を行えば、極端な平均粒径の相違を抑制したSi薄膜のレーザ結晶化が可能になる」と記載されているが、一方で、同段落には、「521〜470mJ/cm2の範囲」では、「平均強度495.5mJ/cm2の約±5.2%以内の範囲」に分布が収まるように照射を行わなければならないことが示されているように、「平均強度の±11.2%以内の範囲」が、光の平均強度、さらには照射する光の波長や照射対象の半導体薄膜の構造(材質、膜厚等)などの諸条件には関係しない、極端な平均粒径の相違を抑制した半導体薄膜の改質を可能にするための普遍的な条件であるとは認められない。 よって、「上記光マスク上の所定の領域において、該領域内の光の強度分布が該領域内の光の平均強度の±11.2%以内の範囲に含まれる」ようにした点に何ら臨界的意義はなく、かつ、「±11.2%以内の範囲」で均一化を行うことに技術的な困難性があったとも認められないから、引用発明2において、均一平面分布の程度を±11.2%以内の範囲に収まるように設定することは、当業者が適宜なし得たものである。 したがって、本件発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件は、請求項2ないし16に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-11-09 |
結審通知日 | 2005-11-16 |
審決日 | 2005-11-30 |
出願番号 | 特願平11-194024 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) P 1 8・ 561- Z (H01L) P 1 8・ 572- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 園子 |
特許庁審判長 |
松本 邦夫 |
特許庁審判官 |
瀧内 健夫 河合 章 |
発明の名称 | 半導体薄膜形成装置 |
代理人 | 池田 憲保 |
代理人 | 池田 憲保 |