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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28D
管理番号 1131689
審判番号 不服2002-15780  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-19 
確定日 2006-02-13 
事件の表示 平成 9年特許願第 58199号「シート型ヒートパイプとその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月25日出願公開、特開平10-253274〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年3月13日に出願した特願平9-58199号の出願であって,その請求項に係る発明は、平成13年9月3日付け手続補正書及び図面の記載からみて,それぞれ特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 多穴管の端部近傍で各貫通穴が連通してなるシート型ヒートパイプコンテナの前記多穴管の貫通穴の少なくとも一部にワイヤーまたはワイヤーメッシュが備わり,コンテナ内には作動流体が収容されているシート型ヒートパイプ。
【請求項2】 多穴管の端部にキャップ部材を接合して前記多穴管の各貫通穴を連通させてシート型ヒートパイプのコンテナとし,前記多穴管の貫通穴の少なくとも一部にはワイヤーまたはワイヤーメッシュが備わり,コンテナ内には作動流体が収容されているシート型ヒートパイプ。
【請求項3】 多穴管の貫通穴の少なくとも一部にワイヤーまたはワイヤーメッシュを設け,当該多穴管の端部近傍の各々の隔壁を一部除去すると共に当該端部を塞さいでシート型ヒートパイプのコンテナを形成し,当該コンテナ内には作動流体を収容するシート型ヒートパイプの製造方法。
【請求項4】 多穴管の貫通穴の少なくとも一部にワイヤーまたはワイヤーメッシュを挿入し,当該多穴管の端部にキャップ部材を接合して前記多穴管を連通させてシート型ヒートパイプのコンテナを形成し,コンテナ内には作動流体を収容するシート型ヒートパイプの製造方法。」

2. 引用例に記載された事項
これに対して,平成13年6月28日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-133795号(以下,「引用例」という。)には,それぞれ図面と共に以下の記載がある。

1a. 「「産業上の利用分野」
本発明は一般的には細径ヒートパイプに関するものである。近時,ICやLSI等の素子,及びこれらを取付ける基板の小型化に伴い,基板における単位面接当りの発熱量は大きく上昇している。本発明は,特にこれらの基板の熱を除去するのに適するヒートパイプに関するものである。
「従来の技術」
従来は,第7図に示すように,パイプ1の内周面へ均一にグルーブ,ワイヤ,メッシュ等からなるウイック2を取付けた細径ヒートパイプが使用され,あるいは第8図で示すように,パイプ1の内部隅角に極細間隙部3を長手方向に連続するように形成し,この極細間隙部3で作動液を流通させる細径ヒートパイプが使用されている。この場合,極細間隙部3の断面積に占める割合は10%以下である。これらの細径ヒートパイプは,基板の小型化に伴い,丸パイプでは直径3mm以下,また,角パイプその他扁平パイプの場合は短径(短かい方の径)3mm以下のものを要求される場合が多い。」(第1ページ左下欄15行〜同右下欄16行参照)

1b. 「「課題を解決するための手段」
本発明に係る細径ヒートパイプは,前述の目的を達成するため,パイプの長手方向と直交する断面において,内部の片側又は内側へ位置する状態に,長手方向に連続するウイックを設ける手段を採択している。・・・本発明に係る細径ヒートパイプは,丸パイプ,角パイプ,異形パイプ等その断面形状を問わないが,扁平パイプであるのが最も有効である。パイプは,単一のパイプ部(ホール)が複数列で一体に形成された多ホールのパイプでも実施できる。パイプの材質は銅のほか,アルミニウム又はアルミニウム合金,銀,鉄,ステンレス等が好適に使用できる。ウイックはグルーブ,ワイヤ,メッシュ,焼結金属多孔材,極細間隙その他毛細管現象をもつものであればその具体的構造を問わないし,その材質も銅のほか銀,鉄,ステンレス,ガラス等が好適に使用できる。
「作用」
本発明に係る細径ヒートパイプのうち,パイプの長手方向と直交する断面において,内部の片面にウイックを設けた構造のヒートパイプにあっては,断面における他の片側の空間部が蒸気の流路となり,また,断面において内部の両側にウイックを設けたヒートパイプにあっては,両ウイック相互の間の空間部が蒸気の流路となる。」(第2ページ左上欄18行〜同左下欄8行参照)

1c. 「「実施例」
第1図及び第2図はその一実施例であり,短径hが1.5mm,長径wが3mm,内厚tが0.2mm,長さlが150mmの銅よりなる角型扁平のパイプ1の内部に,線径0.2mmの銅よりなるワイヤを集合させたウイック2を,長手方向と直交する断面において内部の片側に偏って位置するように,長手方向へ連続して取付け,他の片側に空間部4を形成し,内部へウイック2全体に充填するよう作動液(水)を封入して,細径ヒートパイプを製造した。・・・前記実施例の構造の細径ヒートパイプと,同形銅サイズの銅パイプの内周面へ,同様な線径の銅線からなるウイックを均一な厚みに形成した従来の細径ヒートパイプとについて,長手方向に対して直交する断面における内面積に対し,ウイック2の占める割合をそれぞれ異にしたものを用意し,最大熱輸送量の測定を行ったところ,第3図のような結果を得た。なお,測定は,第4図のように,パイプ1の放熱側1aより吸熱側1bが上になるように,パイプ1を0.5度傾けた状態で行った。」(第2ページ右下欄6行〜第3ページ左上欄11行参照)

1d. 「前記各実施例において,細径ヒートパイプを構成するパイプ1は,第6図のように一定方向へ一体に複数並べて,いわゆる多ホール状に成形したものでも実施することができる。」(第3頁右上欄16行〜19行参照)

上記記載事項1a〜1d及び図1〜図6から、引用例には、次の発明(以下、「引用例1の発明」という。)が記載されていると認められる。
「細径ヒートパイプを構成するパイプを一定方向へ一体に複数並べて多ホール状に成形したヒートパイプのパイプの内部にグルーブ,ワイヤ,メッシュ,焼結金属多孔材,極細間隙その他毛細管現象をもつウイックを備え,ヒートパイプの内部には作動液(水)を封入した多ホール状に成形したヒートパイプ。」

3. 対比・判断
〈対比〉
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用例の発明を対比すると、引用例の発明の「細径ヒートパイプを構成するパイプを一定方向へ一体に複数並べて多ホール状に成形したヒートパイプ」は本願発明の「シート型ヒートパイプ」に相当し、それを構成する「細径ヒートパイプを一定方向へ一体に複数並べて多ホール状に成形したパイプ」は本願発明の「多穴管」に相当し,同様に「細径ヒートパイプを一定方向へ一体に複数並べて多ホール状に成形したもの」は「シート型ヒートパイプコンテナ」に,「一定方向へ一体に複数並べて多ホール状に成形したパイプの内部」は「多穴管の貫通穴」に,「作動液(水)」は「作動流体」に相当する。

〈一致点〉
したがって、両者は、「ヒートパイプコンテナの多穴管の貫通穴内に作動流体が収容されているシート型ヒートパイプ」
の点で一致し、次の点で相違する。

〈相違点1〉
本願発明では,多穴管の貫通穴の少なくとも一部にワイヤー又はワイヤーメッシュを備えたのに対し,引用例の発明では,ワイヤ,メッシュからなるウイックを備えた点で相違している(以下「相違点1」という。)。
〈相違点2〉
本願発明では、多穴管の端部近傍で各貫通穴が連通しているのに対し,引用例の発明では,これらの記載がない(以下「相違点2」という。)。

〈判断〉
上記相違点について検討する。

・相違点1について,引用例の発明においては,ウイックの実施例として記載事項1cにあるように,線径0.2mmの鋼よりなるワイヤを集合させたものを使用することが記載されており,本願発明のワイヤー又はワイヤーメッシュを備えたものと比較して格別の差異が見いだせない。また引用例の記載事項1c及び第4図には,ヒートパイプの放熱側より吸熱側を上にしても熱移動が生じることも記載されており本願発明と同様の効果を奏するものである。したがって,本願発明のように多穴管の貫通穴の少なくとも一部にワイヤー又はワイヤーメッシュを備えることは当業者が格別な困難性なく容易に想到することができたことである。

・相違点2について,多穴管を備えたヒートパイプにおいて,多穴管の端部近傍で各貫通穴を連通させることは,従来周知の事項(例えば,特開昭60-106633号公報,特開昭55-41362号公報参照)であるから、相違点2における本願発明の構成を引用例の発明に適用することに困難性は認められない。

そして、本願発明の効果は引用例の発明及び周知技術から予測し得る程度であって、格別ではない。

4. むすび

したがって、本願発明は引用例の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-12 
結審通知日 2005-12-13 
審決日 2006-01-04 
出願番号 特願平9-58199
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F28D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳田 利夫長崎 洋一  
特許庁審判長 小椋 正幸
特許庁審判官 原 慧
櫻井 康平
発明の名称 シート型ヒートパイプとその製造方法  

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