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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60H |
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管理番号 | 1131766 |
審判番号 | 不服2004-4812 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-10-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-09 |
確定日 | 2006-02-16 |
事件の表示 | 特願2000- 93014「送風機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月10日出願公開、特開2001-277834〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年3月28日の出願であって、平成15年7月30日付で明細書を補正する手続補正がなされたが、平成16年2月2日付で本出願について拒絶の査定がなされた。その後、平成16年3月9日に、この拒絶の査定に対して不服の審判が請求され、同年4月1日付で明細書を補正する手続補正がなされたが、この手続補正は当審において平成17年6月14日付で却下されるとともに、同年6月28日付で拒絶理由通知がなされ、同年8月30日付で手続補正がなされたものである。 2.本願発明 よって、本願の請求項1に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、平成17年8月30日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 ファン(71)を回転駆動する送風機用モータ(72)と、 前記ファン(71)を収納するケーシング(74)と、 前記送風機用モータ(72)を前記ケーシング(74)に固定する支持部材(73)とを有する送風機であって、 前記支持部材(73)は、前記送風機用モータ(72)を収納する円筒状のモータケーシング(73a)と、前記モータケーシング(73a)の全周に渡って径方向外側に延出して前記ケーシング(74)に固定される板状のフランジ部(73b)とからなり、 前記モータケーシング(73a)と前記板状のフランジ部(73b)は樹脂にて一体成形されており、 前記板状のフランジ部(73b)のうち、前記送風機用モータ(72)側における肉厚寸法を前記ケーシング(74)側における肉厚寸法より小さくして低剛性部(73d)を形成したことを特徴とする送風機。」 3.引用文献に記載された発明 これに対して、当審での拒絶理由に引用した、本願の出願前国内において頒布された刊行物である実願平4-32899号(実開平5-91923号)のCD-ROM(以下、「引用文献」という。)には図面とともに次の記載がある。 「【0015】 本実施例の自動車用空気調和装置用ファンモータのフランジ13は、従来のものと同様に、ファンモータMを保持する筒状本体14と、この筒状本体14をファンスクロール12に取り付けると共にモータ取付孔12aと筒状本体14との隙間を閉塞するフランジ部15とを有し、これらを一体的に樹脂成形したものである。 【0016】 特に、本実施例のフランジ13は、フランジ部15の一部を遠心ファン11に向けて突出するように屈曲させて形成される屈曲部30を有している。この屈曲部30は、図示例のように、フランジ部15の一部を蛇腹形状に形成したものでも良い。更に、ファンスクロール12内に臨む屈曲部30の屈曲先端30aは、鋭角的な形状を持たず、滑らかなアール形状に形成されている。・・・・・ 【0017】 屈曲部30は、フランジ部15や筒状本体14とともに樹脂材料により一体成形されており、このように樹脂材料より屈曲部30を構成することで、この屈曲部30は弾性を有することになる。」(考案の詳細な説明の段落【0015】〜【0017】) 「【0023】 更に、屈曲部30はフランジ部15とともに樹脂材料により一体成形されているため、ファンモータMで発生した振動は、フランジ部15の材質である樹脂材料自体によってある程度減衰されると共に、弾性を有する屈曲部30によっても吸収されることになる。このため、ファンモータMの振動のファンスクロール12への伝達をほぼ完全に遮断することができ、ファンスクロール12にファンモータMの振動が伝わって騒音が発生する虞がない。このように、振動を減衰させるという樹脂材料が有する機能が一層発揮されるため、ファンモータMをソフトマウントしなくても騒音の発生を防止でき、ソフトマウントの廃止を通してコスト低減に寄与することが可能となる。」(考案の詳細な説明の段落【0023】) 上記記載及び図面によれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。 「遠心ファン(11)を回転駆動するファンモータ(M)と、前記遠心ファンを収納するファンスクロール(12)と、前記ファンモータを前記ファンスクロールに固定するフランジ(13)とを有する送風機であって、前記フランジは、ファンモータを収納する円筒状の筒状本体(14)と、前記筒状本体の全周に渡って径方向外側に延出して前記ファンスクロールに固定されるフランジ部(15)とからなり、前記筒状本体と前記フランジ部は樹脂にて一体成形されており、前記フランジ部の一部に屈曲部(30)による低剛性部を形成したことを特徴とする送風機。」 4.対比・判断 本願発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「遠心ファン(11)」は本願発明の「ファン」に相当し、以下同様に、「ファンモータ(M)」は「送風機用モータ」に、「ファンスクロール(12)」は「ケーシング」に、「フランジ(13)」は「支持部材」に、「筒状本体(14)」は「モータケーシング」に、「フランジ部(15)」は「フランジ部」に、それぞれ相当するから、 両者は、 「ファンを回転駆動する送風機用モータと、 前記ファンを収納するケーシングと、 前記送風機用モータを前記ケーシングに固定する支持部材とを有する送風機であって、 前記支持部材は、前記送風機用モータを収納する円筒状のモータケーシングと、前記モータケーシングの全周に渡って径方向外側に延出して前記ケーシングに固定されるフランジ部とからなり、 前記モータケーシングと前記板状のフランジ部は樹脂にて一体成形されており、 前記板状のフランジ部の一部に低剛性部を形成したことを特徴とする送風機。」 である点で一致し、次の点で相違している。 [相違点]本願発明では、フランジ部の一部に形成した低剛性部が、送風機用モータ側における肉厚寸法をケーシング側における肉厚寸法より小さくして形成したものであり、そのため、フランジ部は板状であるのに対して、引用例発明では、フランジ部の一部に形成した低剛性部が、屈曲部であり、そのため、フランジ部は蛇腹状である点。 上記相違点について検討すると、部材の一部の肉厚寸法を小さくして低剛性部を形成することにより、防振機能を高めることは従来周知の技術手段であり(例えば、実願昭55-106001号(実開昭57-30152号)のマイクロフィルム、実願昭56-4253号(実開昭57-117286号)のマイクロフィルム参照。)、さらには、ゴム材料に比して弾性が小さい樹脂のような部材からなる板状部材自体に防振機能を持たせるべく、該板状部材の支持部周辺を部分的に薄肉部として低剛性部を形成することも従来周知の技術手段である(例えば、実願昭61-22181号(実開昭62-133297号)のマイクロフィルム、実願昭56-29988号(実開昭57-142410号)のマイクロフィルム、実願昭54-72059号(実開昭55-173184号)のマイクロフィルム参照。)し、引用例発明において、ファンモータとともに振動するフランジ部の面積をできるだけ小さくすること、すなわち、低剛性部を送風機用モータ側に近づければ騒音防止がより効果的に達成できることは当業者にとって明らかな事項であるから、引用例発明において、フランジ部のうち、送風機用モータ側における肉厚寸法を前記ケーシング(74)側における肉厚寸法より小さくして低剛性部(73d)を形成して本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の効果は、引用文献に記載された発明および従来周知の技術手段から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、本願の出願前に国内において頒布された引用文献に記載された発明および従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-12-07 |
結審通知日 | 2005-12-13 |
審決日 | 2006-01-04 |
出願番号 | 特願2000-93014(P2000-93014) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B60H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 谷口 耕之助 |
特許庁審判長 |
水谷 万司 |
特許庁審判官 |
原 慧 櫻井 康平 |
発明の名称 | 送風機 |
代理人 | 三浦 高広 |
代理人 | 伊藤 洋二 |
代理人 | 伊藤 洋二 |
代理人 | 水野 史博 |
代理人 | 三浦 高広 |
代理人 | 水野 史博 |