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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 B32B
審判 査定不服 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B32B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B32B
管理番号 1131860
審判番号 不服2003-428  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-08 
確定日 2006-03-07 
事件の表示 平成 7年特許願第 52983号「積層ヒートシールフィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月24日出願公開、特開平 8-244182、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年3月13日の特許出願であって、平成14年8月29日付けで、拒絶理由が通知されたところ、特許出願人から何の応答もなく、平成14年12月20日付けで拒絶査定がされたものであり、その後、平成15年1月8日に審判請求がされるとともに、平成15年2月7日付けで、手続補正書が提出されたものである。

2.平成15年2月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成15年2月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、明細書の特許請求の範囲についての以下の補正を含むものである。
(補正前の請求項1)
「a)ポリプロピレン成分、またはプロピレンに基づく単量体単位を90モル%より多く含むプロピレン系ランダム共重合体成分
1〜70重量%、
b)エチレンに基づく単量体単位を10〜40モル%、プロピレンに基づく単量体単位を90〜60モル%含むプロピレン-エチレンランダム共重合体成分
30〜99重量%
を含み、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1〜4であるプロピレン系ブロック共重合体よりなる樹脂層が、少なくとも一方のフィルム表面に積層されてなる積層ヒートシールフィルム。」
(補正後の請求項1)
「a)ポリプロピレン成分、またはプロピレンに基づく単量体単位を90モル%より多く含むプロピレン系ランダム共重合体成分
3〜60重量%、
b)エチレンに基づく単量体単位を15〜40モル%、プロピレンに基づく単量体単位を85〜60モル%含むプロピレン-エチレンランダム共重合体成分
97〜40重量%
を含み、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.2〜4であり、メルトフローレートが0.5〜15g/10分であるプロピレン系ブロック共重合体よりなる樹脂層が、少なくとも一方のフィルム表面に積層されてなる積層ヒートシールフィルム。」

(2)補正内容の検討
補正後の請求項1において、新たに発明を特定するために必要な事項として追加された「メルトフローレートが0.5〜15g/10分」という事項は、それに関連する事項が補正前の請求項1に記載されていない。
したがって、この補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定することを目的とするものに該当しない。
また、この補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるとも認められない。

(3)まとめ
この補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項のいずれをも目的とするものではない。
したがって、この補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

3.原査定の理由についての当審の判断
3-1.本願発明
上記2.で述べたとおり、平成15年2月7日付けの手続補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載される事項により特定される、以下のとおりのものである。
「a)ポリプロピレン成分、またはプロピレンに基づく単量体単位を90モル%より多く含むプロピレン系ランダム共重合体成分
1〜70重量%、
b)エチレンに基づく単量体単位を10〜40モル%、プロピレンに基づく単量体単位を90〜60モル%含むプロピレン-エチレンランダム共重合体成分
30〜99重量%
を含み、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1〜4であるプロピレン系ブロック共重合体よりなる樹脂層が、少なくとも一方のフィルム表面に積層されてなる積層ヒートシールフィルム。」

3-2.原査定の理由の概要
理由1: この出願は、明細書及び図面の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
理由2: 本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1〜6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1.特開平5-331346号公報
刊行物2.特開平5-320468号公報
刊行物3.特開平5-287035号公報
刊行物4.特開平6-93166号公報
刊行物5.特開平5-93024号公報
刊行物6.特開昭62-241947号公報

3-3.理由1についての判断
理由1に関する原査定の具体的な理由は、概略、「発明の詳細な説明における記載からは、どのようにして、各表の各欄に開示される各特性を満足する樹脂/フイルムをつくるのかが不明である。なお、発明の詳細な説明には、「公知の如何なる方法によって重合したものを用いても良い。」(0016)という記載が、一応、あるものの、この程度の記載をもって、当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されているとは、到底、言うことはできない。」というものである。
これに対して、請求人は、審判請求書に対する手続補正書において、
「本発明の「a成分とb成分を含むプロピレン系ブロック共重合体」は、周知の方法により製造できます。例えば、引例6…に、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法、MFR、Mw/Mn及びエチレン含有量の調整方法が記載されています。さらに、引例1-5にも、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法がかなり詳しく記載されています…。引例1の段落0037,0038などには「分子量調節として水素を使用すること」が記載されています。
このように、ポリプロピレン成分(a)とプロピレン-エチレン共重合体成分(b)からなるブロック共重合体は、引例1-6に記載の2段重合方法により製造できます。その際、原料であるプロピレン、エチレンの量を調整することで、これらの重合体における含有量を調整できます。
また、水素量を減らすこと、或いは、チーグラ・ナッタ触媒で重合した共重合体を、過酸化物と混合して溶融混練することによって、Mw/Mnを小さくすることができます。
また、重合触媒を選択することによっても、Mw/Mnを調整することができます。具体的には、メタロセン触媒を利用することにより、Mw/Mnを1〜4とすることができます。
また、水素量を増やすことや、共重合体を過酸化物と混合して溶融混練することによって、MFRを大きくすることができます。
このような調整方法は当業者には知られているものと思料します。
従って、当業者であれば、このような公知の方法から、本発明のプロピレン系ブロック共重合体を製造することは可能であると思料します。」と主張している。
請求人が指摘するように、本願出願前公知の引例1〜6(刊行物1〜6に同じ。)に、MFR、Mw/Mn、分子量、エチレン含有量を調整する方法が記載されていることからも、請求人のこの主張は、技術常識に照らして特に不合理な点はないから、これを否定する理由は見い出せない。
したがって、当業者の技術常識を踏まえれば、本願明細書の発明の詳細な説明が、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載したものではないということはできない。

3-4.理由2についての判断
3-4-1.刊行物の記載
(1)刊行物1には、以下の記載がある。
ア: 「【請求項1】(1)ポリブテン成分、ポリプロピレン成分、及びプロピレン-エチレンランダム共重合体成分を含むブロック共重合体であって、ポリブテン成分が0.01〜5重量%、ポリプロピレン成分が1〜70重量%、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分が25〜98.99重量%であり、該プロピレン-エチレンランダム共重合体成分はエチレンに基づく単量体単位を15〜80モル%、プロピレンに基づく単量体単位を85〜20モル%含むランダム共重合体で構成されてなり、且つ分子量1万以下の成分の割合が1.0重量%以下であり、重量平均分子量が60万以上であるプロピレン系ブロック共重合体の有機過酸化物による分解生成物
100重量部
(2)ポリプロピレン 1〜150重量部
よりなるプロピレン系樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
イ: 「本発明のプロピレン系樹脂組成物は、従来の熱可塑性エラストマーが用いられている種々の分野に好適に用いることができる。例えば、射出成形分野では自動車部品に於けるバンパー、マッドガード、ランプパッキン類、また、家電部品に於いては、各種パッキン類、及びスキーシューズ、グリップ、ローラースケート類が挙げられる。一方、押出成形分野では、各種自動車内装材、家電・電線材として各種絶縁シート、コード、ケーブル類の被覆材料及び土木建材分野における防水シート、止水材、目地材等に好適に用いることができる。」(段落0052)
(2)刊行物2には、以下の記載がある。
ウ: 「【請求項1】ポリブテン成分、ポリプロピレン成分、及びプロピレン-エチレンランダム共重合体成分を含むブロック共重合体であって、ポリブテン成分が0.01〜5重量%、ポリプロピレン成分が1〜70重量%、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分が25〜98.99重量%であり、該プロピレン-エチレンランダム共重合体成分はエチレンに基づく単量体単位を15〜80モル%、プロピレンに基づく単量体単位を85〜20モル%含むランダム共重合体で構成されてなり、且つ分子量1万以下の成分の割合が1.0重量%以下であり、重量平均分子量が60万以上であるプロピレン系ブロック共重合体と有機過酸化物とを溶融混練することを特徴とするプロピレン系樹脂の製造方法。
【請求項2】ポリブテン成分、ポリプロピレン成分、及びプロピレン-エチレンランダム共重合体成分を含むブロック共重合体であって、ポリブテン成分が0.01〜5重量%、ポリプロピレン成分が1〜70重量%、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分が25〜98.99重量%であり、該プロピレン-エチレンランダム共重合体成分はエチレンに基づく単量体単位を15〜80モル%、プロピレンに基づく単量体単位を85〜20モル%含むランダム共重合体で構成されてなり、且つ分子量1万以下の成分の割合が1.0重量%以下であり、重量平均分子量が60万以上であるプロピレン系ブロック共重合体と有機過酸化物とを一分子中にラジカル重合性基を2個以上有する化合物の存在下に溶融混練することを特徴とするプロピレン系樹脂の製造方法。」(特許請求の範囲)
エ: 「本発明で得られたプロピレン系樹脂は、自動車部品、家庭電気部品、建築建設資材、医療器具等の幅広い分野に使用することができる。」(段落0050)
(3)刊行物3には、以下の記載がある。
オ: 「【請求項1】ポリブテン成分、ポリプロピレン成分、及びプロピレン-エチレンランダム共重合体成分を含むブロック共重合体であって、ポリブテン成分が0.01〜5重量%、ポリプロピレン成分が1〜70重量%、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分が25〜98.99重量%であり、該プロピレン-エチレンランダム共重合体成分はエチレンに基づく単量体単位を15〜80モル%、プロピレンに基づく単量体単位を85〜20モル%含むランダム共重合体で構成されてなり、且つ分子量1万以下の成分の割合が1.0重量%以下であり、重量平均分子量が60万以上であることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体。」(特許請求の範囲)
カ: 「 本発明のブロック共重合体は、射出成形、押出成形、プレス成形など各種の成形法により種々の形状を有する成形品にすることができる。」(段落0057)
(4)刊行物4には、以下の記載がある。
キ: 「【請求項1】(1)ポリブテン成分、ポリプロピレン成分、及びプロピレン-エチレンランダム共重合体成分を含むブロック共重合体であって、ポリブテン成分が0.01〜5重量%、ポリプロピレン成分が1〜70重量%、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分が25〜98.99重量%であり、該プロピレン-エチレンランダム共重合体成分はエチレンに基づく単量体単位を15〜80モル%、プロピレンに基づく単量体単位を85〜20モル%含むランダム共重合体で構成されてなり、且つ分子量1万以下の成分の割合が1.0重量%以下であり、重量平均分子量が60万以上であるプロピレン系ブロック共重合体の有機過酸化物による分解生成物
100重量部
(2)結晶核剤 0.05〜2重量部
よりなるプロピレン系樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
ク: 「従って、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、自動車部品、家庭電気部品、建築建設資材、医療器具等の幅広い分野に使用することができる。」(段落0053)
(5)刊行物5には、以下の記載がある。
ケ: 「【請求項1】 ポリブテン成分とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分又はポリプロピレン成分及びプロピレン-エチレンランダム共重合体成分とがそれぞれブロック共重合してなり、ポリブテン成分が0.1〜10wt%,プロピレン-エチレンランダム共重合体成分とポリプロピレン成分との合計が99.9〜90wt%及びポリプロピレン成分が0〜30wt%含まれており、該プロピレン-エチレンランダム共重合体成分はエチレンに基づく単量体単位を15〜80モル%,プロピレンに基づく単量体単位を85〜20モル%含むランダム共重合体で構成されてなり且つ該ブロック共重合体は分子量1万以下の成分の割合が1.0重量%以下であり、かつ高分子量の粉状体であることを特徴とするプロピレン-エチレン/ブテン系ブロック共重合体。
【請求項2】 下記成分A及びB、又はA及びB並びにC若しくはD
A.チタン化合物
B.有機アルミニウム化合物
C.一般式〔I〕
Rn Si(OR′)4-n 〔I〕
(但し、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基,炭素原子数2〜7のアルケニル基,フェニル基,シクロヘキシル基又はノルボルネン基であり、R′は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、nは1〜3の整数である。)
で示される有機ケイ素化合物
D.一般式〔II〕
R″-I 〔II〕
(但し、R″はヨウ素原子,炭素原子数1〜7のアルキル基又はフェニル基である。)
で示されるヨウ素化合物の存在下にプロピレン又は1-ブテンを0.1〜500gポリマー/g・Ticompoundの範囲となるように予備重合を行い触媒含有予備重合体を得て、次いで該触媒含有予備重合体の存在下に1-ブテンの重合、必要に応じてプロピレンの重合及びプロピレンとエチレンとの混合物のランダム共重合を順次行ない高分子量の粉状物を得ることを特徴とするプロピレン-エチレン/ブテン系ブロック共重合体の製造方法。」(特許請求の範囲)
コ: 「本発明のP-E/Bブロック共重合体は、射出成形,押出成形,プレス成形など各種の成形法により種々の形状を有する成形品にすることができる。」(段落0063)
(6)刊行物6には、以下の記載がある。
サ: 「1. プロピレン単独重合体単位とエチレン含量が25〜70重量%のプロピレン-エチレンランダム共重合体単位とよりなり、該エチレン含量が全重合体に対して3.5〜11重量%、メルトフローインデックスが6〜20g/10分であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5以下であるエチレン-プロピレンブロック共重合体100重量部に対して、有機系結晶核剤0.1〜2重量部を配合した樹脂組成物。
2. プロピレン単独重合体単位とエチレン含量が25〜70重量%のプロピレン-エチレンランダム共重合体単位とよりなり、該エチレン含量が全重合体に対して3.5〜11重量%、メルトフローインデックスが6〜20g/10分であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5以下であるエチレン-プロピレンブロック共重合体100重量部に対して、有機系結晶核剤0.1〜2重量部および酸化チタン0.05〜5重量部を配合した樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
シ: 「本発明は耐摩耗性および低ソリ性に優れ、特にテープリールの成形材料として有用な樹脂組成物に関する。」(第1ページ下右欄第9〜11行)
ス: 「本発明の樹脂組成物はテープリールの用途に限らず、その優れた耐摩耗性を発揮しうる他の用途に対しても有効に使用される。」(第4ページ上右欄第3〜6行)

3-4-2.本願発明と刊行物1〜6に記載された発明との対比
刊行物1〜5には、ポリプロピレン成分とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分を含むプロピレン系ブロック共重合体に関する発明が記載され、刊行物6には、Mw/Mnが5以下である、ポリプロピレン成分とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分を含むプロピレン系ブロック共重合体に関する発明が記載されている。
本願発明と刊行物1〜6に記載された発明とを対比すると、本願発明が、積層ヒートシールフィルムに係るものである点で、少なくとも相違する。

3-4-3.相違点についての検討
プロピレン系ブロック共重合体の適用分野については、摘示イ(刊行物1)、摘示エ(刊行物2)、摘示カ(刊行物3)、摘示ク(刊行物4)、摘示コ(刊行物5)及び摘示シ、ス(刊行物6)の多くの例示をみても、積層ヒートシールフィルムを形成するための樹脂層とすることは記載がなく、また、その示唆も認められない。
したがって、刊行物1〜6の記載を総合しても、前記相違点を想到することが、当業者にとって容易であるとすることはできない。

3-4-4.まとめ
よって、本願発明は、刊行物1〜6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3-5.むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2006-02-23 
出願番号 特願平7-52983
審決分類 P 1 8・ 572- WY (B32B)
P 1 8・ 121- WY (B32B)
P 1 8・ 532- WY (B32B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 野村 康秀
川端 康之
発明の名称 積層ヒートシールフィルム  
代理人 田中 有子  
代理人 渡辺 喜平  

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