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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D
管理番号 1132386
審判番号 不服2004-21213  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-14 
確定日 2006-03-09 
事件の表示 平成 9年特許願第284779号「顧客誘導システム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月30日出願公開、特開平11-120416〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年10月17日の出願であって、平成16年9月10日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月15日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年11月15日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年11月15日付の手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正後の本願発明
平成16年11月15日付の手続補正(以下、「本件補正」という)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「金融機関等の店舗に複数台の自動取引装置を設置し、その店舗に少なくとも1台のオートホンを設置して、自動取引装置及びオートホンともに監視センタに公衆網等の通信回線を介して接続し、
顧客の自動取引装置の使用時に、故障等の障害が発生した場合に、顧客がオートホンにより監視センタに連絡した際、
監視センタでは、障害の発生した自動取引装置の設置された店舗内の全ての自動取引装置の運用状態を調査して、その取扱可能な取引種類の運用状態を監視センタの表示画面に表示することで、オペレータが前記オートホンによって他の正常な自動取引装置への顧客の誘導を補助するようにしたことを特徴とする顧客誘導システム。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「運用状態」について、「取扱可能な取引種類の運用状態」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか(特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.引用例
2-2-1.引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-54054号公報(以下、引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

・「【産業上の利用分野】
本発明は、金融自動化機器等の無人化運用システムにおいて、装置の障害により顧客サービスが不能となった場合の無人化運用システムの障害時顧客誘導方式に関するものである。」(段落【0001】)

・「【課題を解決するための手段】
本発明の無人化運用システムの障害時顧客誘導方式は、各営業店の各自動化機器を集中して監視し、各営業店毎に当該営業店内のすべての自動化機器が取扱不能であるか否かを判定し、すべての自動化機器が取扱不能となった営業店に対しては、当該営業店に距離が近い運用可能な営業店を通知する集中監視装置と、前記各営業店の各自動化機器に設けられ、顧客に対して他の営業店への案内情報を表示する案内情報表示装置とから成ることを特徴とするものである。」(段落【0005】)

・「【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の障害時顧客誘導方式の実施例のブロック図である。図示のシステムは、勘定ホスト1と、集中監視装置2と、営業店a,b,c等から成る。営業店a,b,cは、それぞれ自動化機器11、…、21、…、31、…を備えている。これらの自動化機器11、…、21、…、31、…は、各々通信回線
を介して勘定ホスト1及び集中監視装置2にそれぞれ接続されている。
・・・・ 集中監視装置2は、各営業店a,b,cが営業状態でないため、店舗に係員がいないときに、自動化機器11、…、21、…、31、…を集中して管理する。この集中監視装置2は、各営業店a,b,c毎に当該営業店内のすべての自動化機器11、…、21、…、31、…が取扱不能であるか否かを判定する。
例えば、営業店aについては、当該営業店a内のすべての自動化機器11、12、13が取扱不能であるか否かを判定する。そして、営業店aにおけるすべての自動化機器11、12、13が取扱不能となった場合には、集中監視装置2から営業店aに対し、当該営業店aに距離が近い営業店bが通知される。この通知を受けた営業店aの自動化機器11、12又は13は、案内情報表示装置14、15又は16により、顧客に対して他の営業店bへ行くための案内情報を表示する。」(段落【0007】〜【0009】)

・「図3は、本発明の方式の処理概要を説明するフローチャートである。また、図4は、一部機障害の表示画面例を示す図であり、図5は、全機障害の表示画面例を示す図であり、図6は、最寄店サービス不能の表示画面例を示す図である。図1に示す営業店aに、3台の自動化機器11、12、13が稼動しており、自動化機器11が障害で使用不能になったとする。この場合、集中監視装置2へ障害通知を送信する(ステップS1)。これにより、集中監視装置2で全台数の稼動状況を把握し、動作中の自動化機器が一部ある場合、動作中の自動化機器が全くない場合、最寄店に動作中の自動化機器がある場合等に応じて応答を返し、自動化機器11はこの応答を受信する(ステップS2)。
この応答を基に自動化機器11では、一部機の取扱不能(ステップS3)に対しては、図4の一部障害画面を表示する(ステップS9)。そして、全台取扱不能の場合は(ステップS4)、図5の全機障害画面を表示する(ステップS5)。この時、集中監視装置2から送られてくる情報から最寄店の稼動を確認し(ステップS6)、サービスできない支店は画面上から支店名、位置を消す(ステップS7)。」(段落【0013】〜【0014】)

これら記載によれば、引用例1には以下のような発明が記載されている。
「営業店の店舗に複数台の金融自動化機器を設置し、金融自動化機器を集中監視装置に通信回線を介して接続し、
金融自動化機器の使用時に、障害が発生した場合に、集中監視装置に通知された際に、
集中監視装置は、障害の発生した金融自動化機器の設置された店舗内の全ての金融自動化機器の稼働状況を把握し、店舗内の全ての金融自動化機器が取扱不能でない場合、他の金融自動化機器に誘導する画面表示を行う障害時顧客誘導方式。」

2-2-2.引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-153169号公報(以下、引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

・「図2において、ATM10、…は、その後面が平行に揃った状態で、金融機関の床面25上に並んで設置されている。ATM10、…は、それぞれ通信制御部を介して通信ネットワークNに接続されている。また、通信ネットワークNには、各ATM10、…を監視する運用管理装置1が接続されている。そして、この運用管理装置1には、各ATM10、…からATMの動作状態、例えば障害発生状況や、取扱媒体として、紙幣や硬貨の残量等が通信ネットワークNを介して随時報告される。」(段落【0029】)

・「すなわち、上述したような種々の表示がなされている状態で、ATM10から障害が通知された場合、主制御部41はその通知された障害内容を障害内容テーブル42aに記憶するとともに、障害内容表示モードとなり、表示部44により、図23に示すような、障害機表示と障害内容表示とからなる障害内容表示画面を表示する(ST111)。
図23の場合、障害機表示として各ATMを示すコーナーレイアウト図により障害の発生した対応号機の表示部が赤で表示され、障害内容表示として号機-機番に対応して、出金、入金、記帳、照会、振込、振替等の取引名、障害が発生した時の取引金額、障害が発生した時の銀行番号、支店番号、口座番号からなる取引口座、センター元帳更新状況やATMカウンタ更新状況等のカウンタ更新状況、障害が発生したときの動作ステップ、障害が発生したときのエラーコード、ATM内に保留している保留媒体、ATM内の媒体の状況、発生した障害内容、障害に対する係員の対応方法を説明する係員ガイダンスが表示されるようになっている。」(段落 【0129】〜【0130】)

2-3.対比
ここで、本願補正発明と引用例1に記載の発明とを対比する。
引用例1に記載の発明の「金融自動化機器」は、本願発明の「自動取引装置」に相当し、以下同様に、「営業店の店舗」は「金融機関等の店舗」に、「集中監視装置」は「監視センタ」に、「店舗内の全ての金融自動化機器の稼働状況を把握」することは、「店舗内の全ての自動取引装置の運用状態を調査」することに、「金融自動化機器が取扱不能でない場合、他の金融自動化機器に誘導する」ことは、「他の正常な自動取引装置への顧客の誘導を補助する」ことに、「顧客誘導方式」は、「顧客誘導システム」に、それぞれ、相当する。

そうすると、本願発明と引用例1に記載の発明とは、
「金融機関等の店舗に複数台の自動取引装置を設置し、自動取引装置を監視センタに通信回線を介して接続し、
顧客の自動取引装置の使用時に、故障等の障害が発生した場合に、監視センタに通知された際、
監視センタでは、障害の発生した自動取引装置の設置された店舗内の全ての自動取引装置の運用状態を調査して、他の正常な自動取引装置への顧客の誘導を補助するようにしたことを特徴とする顧客誘導システム。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本願補正発明が、顧客誘導システムのハードウエア構成として「その店舗に少なくとも1台のオートフォンを設置して、自動取引装置及びオートフォンともに監視センタに公衆網等の通信回線を介して接続し」ていて、該構成のもとで、障害が発生した場合に、「顧客がオートフォンにより監視センタに連絡し」、監視センタの「オペレータが前記オートフォンによって他の正常な自動取引装置への顧客の誘導を補助」しているのに対し、引用例1に記載の発明では、金融自動化機器が障害があったときに集中監視装置に通知するようになっており、ハードウエア構成として、オートフォンが設置されておらず、オートフォンにより、顧客が障害通知をしたり、オペレータが他の自動取引機に誘導していない点。

相違点2:本願補正発明が、オペレータが「オートホンによって他の正常な自動取引装置への顧客の誘導を補助する」ために、「監視センタでは、障害の発生した自動取引装置の設置された店舗内の全ての自動取引装置の運用状態を調査して、その取扱可能な取引種類の運用状態を監視センタの表示画面に表示する」事項を有しているのに対し、引用例1に記載の発明では、「集中監視装置で全台数の金融自動化装置の稼働状態を把握している」が、その表示については、一部障害画面を店舗内の金融自動化装置へ表示しているのみで、監視装置に表示画面を設け表示することは記載されていない点。

2-4.判断
2-4-1.相違点1について
自動取引装置毎に、もしくは店舗に一台、オートフォンを設置することは、請求人もその明細書で述べているように(例えば、段落【0002】、【003】等参照。)本願出願前周知な事項であり、自動取引装置及びオートフォンやインタフォンともに監視センタに公衆網等の通信回線を介して接続することも、本願出願前、周知な技術事項(例えば、特開平6-243155号公報、特開昭61-242153号公報、等参照)であり、自動取引装置で何らかの障害があったときに、オートホンやインターフォンで、顧客が監視センタに連絡し、オペレータと会話することは、本願出願前普通に行われていることであり、上記周知技術事項にも示唆されている。そして「他の正常な自動取引装置への顧客の誘導」をする際に、引用例1に記載の発明の「画面表示」により行う代わりに、上記周知技術事項のようにオートホンを設置し、対話するときに、オペレータがオートホンによって、他の正常な自動取引装置への顧客の誘導を補助することは、当業者が適宜なし得たことと認められる。

2-4-2.相違点2について
オペレータが「オートホンによって他の正常な自動取引装置への顧客の誘導を補助する」ためには、「取扱可能な取引種類の運用状態を監視センタの表示画面に表示する」ことが必要であるが、引用例2には、「通信ネットワークNには、各ATM10、…を監視する運用管理装置1が接続されている」システムにおいて、運用管理装置(本願補正発明の「監視センタ」に相当。)側で、「図23の場合、障害機表示として各ATMを示すコーナーレイアウト図により障害の発生した対応号機の表示部が赤で表示」することが記載され、図23に示された「コーナーレイアウト図」において、ATMやCDの配置が示され、赤で表示されていないATM、CDは正常に動作しているものであるので、顧客誘導システムに、引用例2記載の事項を適用して、「取扱可能な取引種類の運用状態を監視センタの表示画面に表示する」ことは、当業者が必要に応じ適宜なし得たことと認められる。


したがって、本願補正発明は、引用例1に記載の発明、引用例2に記載の事項、及び周知技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
3-1.本願発明
平成16年11月15日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年12月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、「本願発明」という)。
「金融機関等の店舗に複数台の自動取引装置を設置し、その店舗に少な
くとも1台のオートホンを設置して、自動取引装置及びオートホンともに監視センタに公衆網等の通信回線を介して接続し、
顧客の自動取引装置の使用時に、故障等の障害が発生した場合に、顧客がオートホンにより監視センタに連絡した際、
監視センタでは、障害の発生した自動取引装置の設置された店舗内の全ての自動取引装置の運用状態を調査して、その運用状態を監視センタの表示画面に表示することで、オペレータが前記オートホンによって他の正常な自動取引装置への顧客の誘導を補助するようにしたことを特徴とする顧客誘導システム。」

3-2.引用例
原査定の拒絶の利用に引用された刊行物、及び、その記載事項は、上記「2-2.引用例」に記載したとおりである。

3-3.対比・判断
本願発明は、「2-1.補正後の本願発明」で検討した本願補正発明から「運用状態」の限定事項である「取扱可能な取引種類の運用状態」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2-4.」に記載したとおり、引用例1に記載の発明、引用例2に記載の事項、及び周知技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載の発明、引用例2に記載の事項、及び周知技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載の発明、引用例2に記載の事項、及び周知技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-04 
結審通知日 2006-01-10 
審決日 2006-01-24 
出願番号 特願平9-284779
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07D)
P 1 8・ 575- Z (G07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨江 耕太郎  
特許庁審判長 小椋 正幸
特許庁審判官 今井 義男
原 慧
発明の名称 顧客誘導システム  
代理人 金倉 喬二  
代理人 金倉 喬二  

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