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審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て成立) H01G |
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管理番号 | 1132635 |
判定請求番号 | 判定2005-60066 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 1983-05-16 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2005-09-07 |
確定日 | 2006-03-03 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第1728724号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「タンタルチップコンデンサ」は、特許第1728724号発明の技術的範囲に属する。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に記載するタンタルチップコンデンサ(AVX社製品)ケースサイズTAJ D(以下、「イ号物件」という。)が、特許第1728724号の第1項に記載される発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 第2 本件特許発明 1.本件特許発明の構成 本件特許の第1項に記載される発明(以下、「本件特許発明」という。)は、平成5年1月29日に設定登録された願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の第1項に記載されたとおりのものであり、本件特許発明を構成要件に分説すると、次のとおりである(以下、分説したものを「構成要件A」ないし「構成要件D」という。)。 「A 樹脂外装されたコンデンサ本体の対向する側面からそれぞれ導出され、かつ前記コンデンサ本体の外部面にそってコンデンサ本体の底面にまで延在するように折り曲げ加工して形成された板状金属端子を有するチップ型コンデンサにおいて、 B 前記コンデンサ本体の底面の両端部に前記板状金属端子の底面領域にほぼ等しい切り欠き部をそれぞれ設け、 C 該一対の切り欠き部に前記板状金属端子の先端部をコンデンサ本体底面とほぼ同一平面に収容した D ことを特徴とするチップ型コンデンサ。」 2.本件特許発明の作用・効果 本件特許発明の作用・効果は、本件特許明細書によれば次のアからウのとおりである。 ア 電極端子が切り欠き部に収納される構成となっているため、「はんだ玉」や「はんだカス」の入る余地が少なくなり、高密度実装時に問題となる「はんだ玉」や「はんだカス」の残留による回路のショート、絶縁不良といった不都合が抑制される。 イ 切り欠きされない底面領域が大きいため、実装時の接着安定性が向上するのみならず、コンデンサ素子自体の体積をその分大きくでき体積効率が向上する。 ウ コンデンサ素子自体の寸法を大きくしない場合にあっては、実装時の熱がコンデンサ素子へ与える影響を軽減できる。 第3 イ号物件 1.イ号図面説明書等に記載される事項 検甲第1号証(「Electronic Components & Devices 2000 電子部品総合」)の第3頁<京セラ 表面実装部品 早見表1.>に記載の製品名TAJ Dを含むチップタンタルコンデンサの形状を示す外観の「斜視図」、及び同号証の第27頁「タンタルチップコンデンサ(AVX社製品)」に記載のTAJシリーズの形状・寸法を示す側面図からみて、イ号物件のコンデンサ本体及び板状金属端子からなるタンタルチップコンデンサの外観の形状及び構造はイ号図面及びその説明書記載の形状及び構造を有する。 すなわち、イ号物件は、 ア コンデンサの基本構造として 略直方体のコンデンサ本体1と、コンデンサ本体1の対向する側面1c、1c’からそれぞれ導出された板状金属端子2、2’と、からなり、前記板状金属端子2、2’は当該側面1c、1c’から底面1a側にまで折り曲げられて延在した構造を備える。 イ コンデンサ本体の底面側の構成として コンデンサ本体1の底面1a側の板状金属端子2、2’に対応する両端部に、板状金属端子の底面2b、2b’の底面領域にほぼ等しい切り欠き部1b、1b’がそれぞれ設けられた構造を備える。 ウ 板状金属端子の構成として 板状金属端子2、2’の先端部2a、2a’は、当該先端部2a、2a’の底面2b、2b’がコンデンサ本体1の底面1a側の一対の切り欠き部1b、1b’にコンデンサ本体1の底面1aとほぼ同一平面に収容された構造を備える。 また、検甲第2号証及び検甲第3号証の『タンタルチップコンデンサ(AVX社製品)ケースサイズTAJ D、品名「TAJD107M010R」』からみて、イ号物件のコンデンサ本体が樹脂外装されたものであることは明らかである。 さらに、甲第2号証の「タンタルチップデンサ(AVX社製品)ケースサイズTAJ D、品名『TAJD107M010R』の外観図及び実測数値表」によれば、コンデンサ本体の底面の板状金属端子の厚さ[A]と板状金属端子の底面と切り欠き部の底面間距離[E]とは平均値でそれぞれ0.155(mm)と0.199(mm)であってほぼ等しく、かつ板状金属端子の底面領域の長さ[C]と切り欠き部の長さ[D]とは平均値でそれぞれ1.225と1.092であってほぼ等しいコンデンサ本体底面の切り欠き構造を有し、また、コンデンサ本体底面の切り欠き部の深さ[B]と板状金属端子の底面と切り欠き部の底面間距離[E]とは平均値でそれぞれ0.199(mm)と0.199(mm)であってほぼ同一である板状金属端子の収容構造を有しており、この外観図及び実測数値表から見てもイ号物件は前記アないしウの構造を有することは明らかである。 2.イ号物件の構成の分説 イ号物件は、その構成を本件特許発明に対応させて分説すると、次のaないしdからなるものと認める。(以下、分説したものを「構成a」ないし「構成d」という。)。 a 樹脂外装されたコンデンサ本体(1)の対向する側面(1c)、(1c’)からそれぞれ導出され、かつ前記コンデンサ本体(1)の外部面にそってコンデンサ本体(1)の底面(1a)にまで延在するように折り曲げ加工して形成された板状金属端子(2)、(2’)を有するタンタルチップコンデンサにおいて、 b 前記コンデンサ本体(1)の底面(1a)の両端部に、前記板状金属端子(2)、(2’)の底面領域にほぼ等しい切り欠き部(1b)、(1b’)をそれぞれ設け、 c 該一対の切り欠き部(1b)、(1b’)に前記板状金属端子(2)、(2’)の先端部をコンデンサ本体底面(1a)とほぼ同一平面に収容した d ことを特徴とするタンタルチップコンデンサ。 第4 イ号物件が本件特許発明の技術的範囲に属するか否かについて 本件特許明細書には「第6図は本発明によるチップ型タンタル電解コンデンサを示す。」(公告公報第3欄第23及び24行)と記載されるように、本件特許発明のチップ型コンデンサにタンタルコンデンサが含まれることは明らかであるから、イ号物件の構成aは、本件特許発明の構成要件Aに相当し、イ号物件の構成dは本件特許発明の構成要件Dに相当していることが明らかに認められる。 また、イ号物件の構成b及び構成cは、それぞれ、本件特許発明の構成要件B及び構成要件Cに相当していることが明らかに認められる。 したがって、イ号物件は、それぞれ本件特許発明の構成要件A、B、C、Dの全てを充足する。 さらに、イ号物件の作用効果について検討すると、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Aないし構成要件Dの、それぞれに対応する構成aないし構成dを全て備えるのであるから、「第2 2.本件特許発明の作用・効果」に記載した本件特許発明のアないしウの全ての作用効果を奏することは明らかである。 よって、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。 第5 被請求人の主張に対する判断 1.「該一対の切り欠き部」について (1)被請求人は、イ号物件は、コンデンサ本体に一対の切り欠き部を備えるのではなく、『コンデンサ本体底面の両端部に形成された切り欠き部が、左右方向の上端辺及び下端辺を介して連続した一体形状を有していることが一目瞭然であ』るから、イ号物件は『「一対」の切り欠き部を有していないことは明らかである。』と主張している(答弁書第8頁第3〜6行)。 (2)しかしながら、被請求人の主張するように、仮にイ号物件が、「コンデンサ本体底面の両端部に形成された切り欠き部が、左右方向の上端辺及び下端辺を介して連続し」て形成されたものであるとしても、イ号物件のコンデンサ本体の底面に形成された切り欠き部は、コンデンサ本体の底面の短辺方向の両端部及び長辺方向の両端部に形成されたもの、すなわち、イ号物件は、コンデンサ本体の底面の「短辺方向」の両端部と「長辺方向」の両端部に切り欠き部を形成したものであると解するのが妥当である。 したがって、イ号物件は、少なくともコンデンサ本体底面の「短辺方向」の両端部に切り欠き部を備えていること、言い換えると、コンデンサ本体の底面の「短辺方向」の両端部に一対の切り欠き部が形成されていることは明らかである。 よって、イ号物件は、コンデンサ本体の底面の両端部に一対の切り欠き部を備えている。 2.構成b(「前記コンデンサ本体(1)の底面(1a)の両端部に、前記板状金属端子(2)、(2’)の底面領域にほぼ等しい切り欠き部(1b)、(1b’)をそれぞれ設け」)の「底面領域」について (1)被請求人は、(1a)イ号物件において、切り欠き部はコンデンサ本体の底面の両端に、底面の短辺方向の幅全体にわたり形成されているが、板状金属端子の「底面領域」はコンデンサ本体の底面の両端の短辺方向の幅全体の中央部分のみに位置しており、 (1b)また、甲第2号証を参酌すると、イ号物件において、板状金属端子の「底面領域」は、幅2.4mm×長さ1.225mmで、コンデンサ本体の底面の切り欠き部の領域は約5mm2であり、板状金属端子の「底面領域」(約3mm2)は、切り欠き部の領域の半分程度であるので、 (1c)イ号物件が構成b(「前記コンデンサ本体(1)の底面(1a)の両端部に、前記板状金属端子(2)、(2’)の底面領域にほぼ等しい切り欠き部(1b),(1b’)をそれぞれ設」けていること)を備えるとする請求人の主張は誤りであって、イ号物件は、構成要件C(「第2 1.本件特許発明の構成」の「構成要件B」に対応)を充足しないと主張している。(答弁書第5頁第13〜28行) (1d)また、被請求人は、本件発明において、板状金属端子の底面領域とは、コンデンサ本体の底面にある広がり(平面)を有して配置される領域のことであって、板状金属端子の「底面領域」という特許請求の範囲の記載を無視して、「長さ」をもって「底面領域」を論ずることは失当であると主張している。(答弁書第5頁第29行〜第6頁第7行) (2)しかしながら、本件特許明細書には、 (2a)「従来のチップ型電解コンデンサは第2図に示すようにコンデンサの底面9aにそって板状金属端子3,4をL字状に折り曲げ加工して板状金属端子3,4の先端の折り曲げ部、すなわち実装時の接続部(以後実装部と称す)3a,4aを形成しているが、この際にコンデンサの底面9aから板状金属端子3,4の実装部3a,4aまでの寸法が、通常のスクリーン印刷法によって塗布できる接着剤の厚さの数十ミクロンよりも大きくなる。このため第5図に示すようにコンデンサの底面9aと配線板11上の接着剤12との間に間隙を生じ、コンデンサ9を配線板11上へ仮留めすることができなくなる。・・・したがって第2図に示すような構造の従来チップ型電解コンデンサでは実装時の仮留めのための接着剤の塗布手段としてスクリーン印刷法を適用できないので、接着剤の塗布に多くの工数を必要とし、かつ自動実装が困難であるという欠点を有していた。 本発明の目的はかかる従来欠点を除去したチップ型コンデンサを提供することにある。」(公告公報第2欄第14行〜第3欄第11行参照)、 (2b)「第6図は本発明によるチップ型タンタル電解コンデンサを示す。樹脂モールドされたコンデンサ9の底面の両端部に板状金属端子3,4の厚さよりも幾分大きい寸法の切り欠き部13を形成し、板状金属端子3,4を外面にそった形状に折り曲げてコンデンサ9の底面の両端の切り欠き部13に収容し、板状金属端子3,4の実装部3a,4aがコンデンサの底面9aとほぼ同一平面になるように本発明のチップ型固体電解コンデンサを完成する。」(公告公報第3欄第23〜32行参照)、 (2c)「図示したとおり、電極端子が切り欠き部に収納される構成となっているため、「はんだ玉」や「はんだカス」の入る余地が少なくなり、高密度実装時に問題となる「はんだ玉」や「はんだカス」の残留による回路のショート、絶縁不良といった不都合が抑制されるので、本願発明のチップ型コンデンサは高密度実装に適した構造となっている。さらに本願では、切り欠きされない底面領域が大きいため、実装時の接着安定性が向上するのみならず、コンデンサ素子自体の体積をその分大きくでき体積効率が向上し、さらにコンデンサ素子自体の寸法を大きくしない場合にあっては、実装時の熱がコンデンサ素子へ与える影響を軽減できる作用効果も奏している。」(公告公報第4欄第5〜19行参照)と記載されており、また、 (2d)第6図の「本発明チップ型コンデンサの側面図」を参照すると、本件特許発明の技術的課題は、板状金属端子の折り曲げ部の「厚さ」に関するものであり、また、「本発明チップ型コンデンサの側面図」を示す第6図から、本件特許発明において、コンデンサ本体の底面の両端部に形成された切り欠き部が、コンデンサ本体の底面の短辺方向の幅全体に渡り形成されたものであることは明らかであり、さらに、板状金属端子の折り曲げ部(実装部)3a,4aの厚さと折り曲げ部(実装部)の長さで示される領域(厚さ×長さ領域)と、チップ型コンデンサ9の底面の両端に形成された切り欠き部13の長さと切り欠き部の深さにより示される領域がほぼ同等であることは明らかである。 したがって、本件特許発明の構成要件Bの「前記コンデンサ本体の底面の両端部に前記板状金属端子の底面領域にほぼ等しい切り欠き部をそれぞれ設け」ることは、板状金属端子の折り曲げ部(実装部)3a,4aの厚さと折り曲げ部(実装部)の長さで示される領域(厚さ×長さ領域)と、チップ型コンデンサ9の底面の両端に形成された切り欠き部13の長さと切り欠き部の深さにより示される領域とが同等であることを意味する。 (3)一方、イ号物件においても、イ号図面及びその説明書(「タンタルチップコンデンサ(AVX社製品)ケースサイズTAJ D」)の「(b)側面図」、及び検甲第2号証の『タンタルチップコンデンサ(AVX社製品)ケースサイズTAJ D、品名「TAJD107M010R」の外観図及び実測数値表』から、板状金属端子2,2’の先端部2a,2a’の厚さと前記先端部2a,2a’のコンデンサ本体の切り欠き部1b、1b’への長さで示される領域(厚さ×長さ領域)と、コンデンサ本体の底面1aの両端に形成された切り欠き部1b、1b’の長さと切り欠き部の深さにより示される領域が同等であることは明らかである。 よって、イ号物件は、構成bを備えている。 3.構成c(「該一対の切り欠き部(1b)、(1b’)に前記板状金属端子(2)、(2’)の先端部をコンデンサ本体底面(1a)とほぼ同一平面に収容した」)の「同一平面」について (1)被請求人は、『本件特許発明の構成要件Dにおいては、「同一平面」と記載されているが、イ号製品部は、板状金属端子の先端部はコンデンサ本体の底面よりも下側に収容しており、同一平面に収容していない。』(答弁書第8頁第29行〜第9頁第1行)(ここで、「構成要件D」は「第2 1.本件特許発明の構成」の「構成要件C」に対応する。)と主張している。 しかしながら、イ号物件の形状・寸法を示すカタログである検甲第1号証(第27頁)には、タンタルチップコンデンサの板状金属端子の先端部をコンデンサ本体の底面部と同一平面となるように収容した図面が明記されている。また、ケースサイズTAJ Dの寸法表を見ると、例えば高さHは、(2.9+0.2〜2.9-0.1)mmの範囲を許容していることからみて、ある程度の誤差は許容範囲として認めている。 (2)請求人が提出したイ号物件『タンタルチップコンデンサ(AVX社製品)ケースサイズTAJ D、品名「TAJD107M010R」』における実測値にバラツキがあるとしても、それは、上記イ号物件におけるサイズの許容誤差、および測定誤差の範囲内のものであって、これらの誤差を根拠として、イ号物件は、「板状金属端子の先端部はコンデンサ本体の底面よりも下側に収容しており、同一平面に収容していない」ということはできない。 実際、甲第2号証、検甲第2号証及び検甲第3号証を参照すると、イ号物件が、コンデンサ本体の底面の両端部に設けた切り欠き部に、板状金属端子の先端部をコンデンサ本体底面とほぼ同一平面に収容した構成となっていることは明らかである。 第6 むすび 以上のとおり、イ号物件は、本件特許の第1項に記載される発明の構成要件を充足しているから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2006-02-20 |
出願番号 | 特願昭56-179295 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
YA
(H01G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 富田 博行 |
特許庁審判長 |
河合 章 |
特許庁審判官 |
松本 邦夫 橋本 武 |
登録日 | 1993-01-29 |
登録番号 | 特許第1728724号(P1728724) |
発明の名称 | チツプ型コンデンサ |
代理人 | 鈴木 康夫 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 臼田 保伸 |
代理人 | 高石 秀樹 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 那須 威夫 |