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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07K
管理番号 1133706
審判番号 不服2000-9370  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2006-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-06-22 
確定日 2006-03-31 
事件の表示 平成2年特許願第514151号「組換ヒトトロンボモジュリン」拒絶査定不服審判事件〔平成3年5月2日国際公開、WO91/05803〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本件発明

本件出願は、1990年10月15日(パリ条約による優先権主張 1989年10月18日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1乃至5に係る発明は、平成17年6月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項1】プラスミドpO-gal由来のRSVプロモータの下流に、ヒトトロンボモジュリンのアミノ酸配列のN末端より1番目のアラニンより491番目のアラニンまでをコードするDNA配列と、プラスミドpSV2-neo由来のネオマイシン耐性遺伝子と、プラスミドpSV2-gpt由来のSV2ターミネータとを結合した発現ベクタープラスミドpRS7TM-neoで形質転換されたCHO細胞が産生する組換ヒトトロンボモジュリンであって、ヒトトロンボモジュリンのアミノ酸配列のN末端より1番目のアラニンより491番目のアラニンまでのペプチドであり、かつ、コンドロイチナーゼABC処理によりペプチド1分子当たり平均20〜25分子の2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エンピラノシルウロン酸)-4-O-スルホ-D-ガラクト-スを生成するコンドロイチン-4-硫酸で修飾されている組換ヒトトロンボモジュリン。」

2.引用刊行物記載事項

これに対して、当審における平成17年5月9日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本件出願日前に頒布された下記刊行物(1)乃至(3)(以下、「引用例1乃至3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)The EMBO J. 6:1891-1897(1987)
(a)ヒト肺上皮細胞膜より精製したトロンボモジュリンはジスルフィド結合を還元する前、後での、SDSーPAGE上での分子量はそれぞれ、78000と105000であった。ノイラミニダーゼとO-グルカナーゼ処理(・・・)により非還元状態のSDS-PAGE上(Fig.1a)でのヒトトロンボモジュリンの分子量は68000〜70000へ減少した。ノイラミニダーゼとN-グルカナーゼ処理(・・・)でも完全な蛋白質の分子量を69000〜72000へと減少させた(データ示さず)。これらの発見からヒトトロンボモジュリンにはO-グリコシル化及びN-グリコシル化の部位が存在し、糖鎖のない蛋白質の分子量は〜60000である。(1891頁右欄下から37〜25行)
(b)・・・Fig.3bはヒトトロンボモジュリン前駆体のcDNA塩基配列とその配列から推測されるアミノ酸配列を示している。このアミノ酸配列にはヒトトロンボモジュリンのアミノ末端の25アミノ酸とマッチする配列が含まれていた。成熟型ヒトトロンボモジュリンのアミノ末端であるアラニンから18アミノ酸上流にATGコドンが発見された。・・・、18アミノ酸からなる推測されるシグナルペプチドと分子量が58662の557アミノ酸からなる成熟型トロンボモジュリンから構成される。・・・(1892頁右欄7〜19行)
(c)・・・全体の配列中に5個のN-グリコシル化配列(Asn-X-Ser/Thr)と7個のO-グリコシル化配列(Ser/Thr-X-X-Pro)が存在する。・・・(1892頁右欄下から6行〜3行)
(d)第3のドメインはアミノ酸番号463〜497からなり、このドメインの35アミノ酸のうち16アミノ酸はセリン、スレオニンおよびプロリンからなる。7個のグリコシル化される能力がある配列のうち3個が集中がしている。以前に書いてあるように、完全なトロンボモジュリンはO-グリカナーゼ処理により分子量約1万が減少した。それゆえに糖鎖がこれら3個のO-グリコシル化部位のいくつかあるいは全てに結合していたであろう。第4のドメインは2個のセリンを含むアミノ酸残基498〜521からなる24アミノ酸からなる疎水性の膜貫通ドメインである。・・・(1894頁右欄16〜26行)
(e)Fig.5によれば、O-グリコシル化される部位の位置がアミノ酸番号474〜477,480〜483及び486〜489であることが読み取れる。(1894頁Fig.5)
(f)・・・COS細胞で発現させたトロンボモジュリンはヒト肺と胎盤から精製したトロンボモジュリンと同じ分子量であると思われる(データ示さず)。それ故に組換えトロンボモジュリンの糖鎖のサイズは精製したトロンボモジュリンのそれと多分非常に似ている。(1895頁右欄下から10〜5行)
(g)トロンボモジュリンが次に示してあるような機能活性を保持していることがこれまでに示されている。・・・(iv)アンチトロンビンIII依存性抗ヘパリン様活性・・・(1896頁左欄下から8〜1行)

(2)J. Clin. Invest. 76:2178-2181(1985)
(h)可溶性型トロンボモジュリンは膜結合ドメインが欠損したために細胞型よりも小さいのであろう。可溶性トロンボモジュリンは中和抗体によって測定されるプロテインC活性化補助因子活性について、本来のトロンボモジュリンのそれと似ている。(2178頁左欄16〜20行)
(i)可溶性で機能活性があるトロンボモジュリンの型が存在することが発見されたことにより、医薬品としての可能性が暗示された。このようにもしも可溶性トロンボモジュリンの構造を決定する事ができれば、分子クローニング技術によりこの部分を大量に産生することが可能になるであろう。そのようなタンパク質は病理学的状態での血栓形成を阻害することができる自然の抗血液凝固剤として使用することができる。(2181頁左欄下から4行〜右欄第3行)

(3)J. Biol. Chem. 263:8044-8052 (1988)
(j)Fig.8によれば、精製されたウサギトロンボモジュリンをコンドロイチナーゼABC処理することにより、天然型では保持されていたアンチトロンビン依存性抗凝固活性が失われたことが見て取れる。(8050頁)
(k)我々の研究室からの以前のレポート(・・・)で、アンチトロンビン依存性及び直接的な抗血液凝固活性は異なる酸性ドメインに関与している。そのドメインは・・・。その代わりに、我々はその酸性ドメインはコンドロイチン硫酸あるいはデルマタン硫酸のような硫酸化ガラクトサミノグリカンであると提案する。(8050頁右欄25〜37行)
(l)・・・ヒトトロンボモジュリン(・・・)のアミノ酸配列中に、コア蛋白質(・・・)にグリコサミノグリカンを付加するのに必要な認識コンセンサス配列と一致する1つの-Ser-Gly-Ser-Gly-構造を保有していること、及びポリペプチドの膜貫通ドメインのちょうど外側で、分子のカルボキシル基末端の近く存在することに注目する。(8050頁右欄39〜46行)

3.対比・判断

本件発明1は、宿主細胞としてCHO細胞を使用することにより、コンドロイチナーゼABC処理によりペプチド1分子当たり平均20〜25分子の2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エンピラノシルウロン酸)-4-O-スルホ-D-ガラクト-スを生成するコンドロイチン-4-硫酸で修飾されているアンチトロンビンIII依存性抗トロンビン活性を有する組換ヒトトロンボモジュリンを得たものである。
これに対して、上記引用例1には、上記記載事項からみて、「COS細胞で発現させたヒトトロンボモジュリンはヒト肺と胎盤から精製したヒトトロンボモジュリンと同じ分子量を示し、組換えヒトトロンボモジュリンの糖鎖のサイズは精製したヒトトロンボモジュリンと非常に似ているらしい」ことが窺えるから、上記引用例1には、「COS細胞で発現させた557アミノ酸から構成されるペプチドを有し、ヒト肺と胎盤から精製したヒトトロンボモジュリンと同じ分子量でほぼ同じサイズの糖鎖を有する組換えヒト全長トロンボモジュリン。」「(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
本件発明1と、引用発明とを対比すると、COS細胞もCHO細胞も動物宿主細胞であるから、両者は、「形質転換された動物宿主細胞が産生する糖鎖で修飾された組換えヒトトロンボモジュリン。」である点で一致し、
(1)ペプチドについて、前者が、「ヒトトロンボモジュリンのアミノ酸配列のN末端より1番目のアラニンより491番目のアラニンまでのペプチド」であるのに対して、後者が、全長のヒトトロンボモジュリンの557アミノ酸から構成されるペプチドである点、
(2)ヒトトロンボモジュリンを産生する「形質転換された動物宿主細胞」について、前者が、「プラスミドpO-gal由来のRSVプロモータの下流に、ヒトトロンボモジュリンのアミノ酸配列のN末端より1番目のアラニンより491番目のアラニンまでをコードするDNA配列と、プラスミドpSV2-neo由来のネオマイシン耐性遺伝子と、プラスミドpSV2-gpt由来のSV2ターミネータとを結合した発現ベクタープラスミドpRS7TM-neoで形質転換されたCHO細胞」と特定されたCHO細胞であるのに対して、後者が「COS細胞」である点、
(3)修飾糖鎖について、前者が、「コンドロイチナーゼABC処理によりペプチド1分子当たり平均20〜25分子の2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エンピラノシルウロン酸)-4-O-スルホ-D-ガラクト-スを生成するコンドロイチン-4-硫酸」であるのに対して、後者にそのような特定のない点
で相違している。
そこで、これらの相違点について検討する。

相違点(1)
引用例1において、ヒトトロンボモジュリン遺伝子がクローニングされ、その構造機能が解明され、さらにヒト全長トロンボモジュリンをCOS細胞で産生することが記載されていることから、引用例2に記載されているようなヒト可溶性トロンボモジュリンを取得するために、引用例1に記載されているようにO-グリコシル化される可能性のある部位(アミノ酸番号474〜489)を含み、細胞質ドメイン及び細胞膜貫通ドメイン(アミノ酸番号498〜521)を含まない可溶性となる細胞外領域(アミノ酸番号1-491)をコードするDNAを用いることは当業者が容易に想到するところであるところ、引用発明において、「ヒトトロンボモジュリンのアミノ酸配列のN末端より1番目のアラニンより491番目のアラニンまでのペプチド」を選択してヒト可溶性トロンボモジュリンを取得することは、当業者が容易になし得るところである。

相違点(2)及び(3)
前記のとおり、引用例1に記載されているようにO-グリコシル化される可能性のある部位(アミノ酸番号474〜489)を含み、細胞質ドメイン及び細胞膜貫通ドメイン(アミノ酸番号498〜521)を含まない可溶性となる細胞外領域(アミノ酸番号1-491)をコードするDNAを用いることは当業者が容易に想到するところであるから、組み込むヒトトロンボモジュリン遺伝子を、ヒトトロンボモジュリンのアミノ酸配列のN末端より1番目のアラニンより491番目のアラニンまでをコードするDNA配列とすることは当業者が適宜なし得るところである。
ここで、本件優先日においてヒト由来のO-グリコシル化(コンドロイチン硫酸グリコサミノグリカン)タンパク質をCOS細胞やCHO細胞で産生させることや、目的の遺伝子を安定させて発現させるためにCHO細胞を宿主とすることも常套手段であったから、公知のプロモーター、選択マーカー及びターミネーターを適宜組み合わせて「プラスミドpO-gal由来のRSVプロモータの下流に、構造遺伝子と、プラスミドpSV2-neo由来のネオマイシン耐性遺伝子と、プラスミドpSV2-gpt由来のSV2ターミネータとを結合した発現ベクタープラスミド」という発現ベクター系とし、それで形質転換したCHO細胞を培養してO-グリコシル化された組換えヒト可溶性トロンボモジュリンを製造できることは、当業者が当然に期待するところであり、発現ベクタープラスミドを特定の発現ベクタープラスミドpRS7TM-neoとすることにより、本件発明1が引用発明から予期し得ない効果を奏するものでもない。
また、その際の修飾糖鎖が引用例3に記載されたウサギトロンボモジュリンと同様に、コンドロイチン硫酸で修飾された糖鎖となると考えることにも無理はない。
そうであるから、引用発明において、宿主細胞をCOS細胞に代えて、「プラスミドpO-gal由来のRSVプロモータの下流に、ヒトトロンボモジュリンのアミノ酸配列のN末端より1番目のアラニンより491番目のアラニンまでをコードするDNA配列と、プラスミドpSV2-neo由来のネオマイシン耐性遺伝子と、プラスミドpSV2-gpt由来のSV2ターミネータとを結合した発現ベクタープラスミドpRS7TM-neoで形質転換されたCHO細胞」とし、「コンドロイチナーゼABC処理によりペプチド1分子当たり平均20〜25分子の2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エンピラノシルウロン酸)-4-O-スルホ-D-ガラクト-スを生成するコンドロイチン-4-硫酸」で修飾された組換えヒトトロンボモジュリンを得ることは当業者が容易になし得るところであり、発現系を特定し糖鎖の種類とサイズを特定することにより、本件発明1が引用発明から予期し得ない効果を奏するものでもない。

そして、このようにして産生されたヒト組換えトロンボモジュリンがO-グリコシル化され、アンチトロンビンIII依存性抗トロンビン活性を保持するであろうことは、引用例1及び3から当業者が予期しうることであるから、本件発明1が、引例発明から予測できない効果を奏するとは到底いえない。

なお、本件発明1は化学物質発明であるから、単に修飾された糖鎖の構造を特定した点は、格別の効果として参酌されない。本件発明1が引例発明から予測できない効果を奏することを主張するのであれば、ヒト組換えトロンボモジュリンを発現させる宿主としてCHO細胞を選択した場合に、COS細胞で組換ヒトトロンボモジュリンを発現させるものと比較して、単に糖鎖が異なるだけでなく、それにより、アンチトロンビンIII依存性抗凝固活性、血中血小板凝集抑制効果(DIC抑制効果)が格別すぐれていることを示す必要があるが、本件明細書、審判請求書、意見書等を検討しても、そのことを示す合理的な説明がない。

したがって、本件発明1は、上記の引用例1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

審判請求人は、平成17年7月5日付け意見書において、
「(1)『Trends in Glycoscience and Glycotechnology Vol.6 No.28 (March 1994) pp.111-120』を参考資料として引用して、CHO細胞以外にCOS細胞や他の細胞を宿主細胞として用いたときに、本願発明に組換ヒトトロンボモジュリンと同じようにΔDi-4Sを基本単位とすると糖鎖構造をもち、かつアンチトロンビンIII依存性抗トロンビン活性を有するものが得られるとは限らないから、ヒト組換トロンボモジュリンがO―グリコシル化され、アンチトロンビンIII依存性抗トロンビン活性を保持するであろうことは、引用例1及び3から当業者が予期しうることではない。
(2)COS細胞産生の組換ヒトトロンボモジュリンは引用例1に記載されているが、引用例1では、発現プラスミドで形質転換したCOS細胞をそのまま可溶化してSDS電気泳動し、イムノブロットにより抗トロンボモジュリン抗体と反応するバンドの泳動位置(分子量に対応)が、ヒト肺及び胎盤から精製した天然型トロンボモジュリンの泳動位置と一致した(すなわち分子量が一致した)ことを示したに過ぎず、組換ヒトトロンボモジュリンを精製してはいない、
」旨主張しているので検討する。

主張(1)
前述のように、上記載事項(k)及び(l)から、組換えヒト可溶性トロンボモジュリンは、組換えヒト可溶性トロンボモジュリンを発現させた場合にコンドロイチン硫酸/デルマタン酸様グルコサミノグリカンが付加されると考えられているコンセンサス配列を保持をしていることから、組換えヒト可溶性トロンボモジュリンがコンドロイチン硫酸或いはデルマタン硫酸どちらかの構造の糖鎖が付加されていると考えることに無理はないところ、審判請求人の主張は採用できない。
また、参考資料114頁のTable1には、V79 379A細胞とBHK21細胞などでもCHO細胞と同様にC4S糖鎖が付加され同様の活性が示すが、HepG2細胞とFL細胞ではC4SとC6S糖鎖を付加するために中間の活性を示し、L細胞ではコンドロイチンを付加し低い活性を示すことが見て取れるだけで、組換えヒト可溶性トロンボモジュリンをCOS細胞で発現させた場合のデータはないから、これによってCHO細胞で産生されたトロンボモジュリンが格別な効果を示すものとは認められない。
なお、本件優先日後に頒布された文献ではあるが、「Microbes and Infection 2:779-788 (2000)」には、779頁アブストラクトの3行目から5行目に「我々は可溶性組換えヒトトロンボモジュリンをコードする遺伝子をCOS細胞とCHO細胞で発現させ、コンドロイチン-4-硫酸部分を保持したそれを産生させた。」(779頁アブストラクトの3〜5行)こと、「このトロンボモジュリンは血液凝固において正常な活性を示した」(779頁アブストラクトの8〜9行)こと、「付加されたコンドロイチン-4-硫酸のサイズはCHO細胞で36kDaで、COS細胞のそれでは17.5kDaであった」(779頁アブストラクトの14〜15行)ことが記載されているから、COS細胞で産生された組換えヒト可溶性トロンボモジュリンはコンドロイチン-4-硫酸が糖鎖として付加されており、CHO細胞で産生された組換えヒト可溶性トロンボモジュリンと同様な糖鎖が付加され、正常な活性を保持していることが示されている。

主張(2)
引用発明では、上記記載事項(f)のとおり、COS細胞で発現させたトロンボモジュリンはヒト肺と胎盤から精製したトロンボモジュリンと同じ分子量であると思われ、組換えトロンボモジュリンの糖鎖のサイズは精製したトロンボモジュリンのそれと多分非常に似ているとされ、また、プロテインC活性化能を調べるAPCアッセイを行なって活性があることが示されていることから正常な糖鎖が付加された組換えヒトトロンボモジュリンを得ていると考える方が自然である。引用発明では取得したcDNAをCOS細胞で発現させ、このcDNAがトロンボモジュリンであること、及びCOS細胞で発現させた場合に活性に必要な糖鎖が付加されていることを確認することが目的であったと考えられるから、そのためには、トロンボモジュリンの活性を調べるだけで充分である。
そして、引用発明においては、COS細胞から正常な糖鎖が付加された組換えヒトトロンボモジュリンが産生されているのであるから、それを通常の方法で精製し、その糖鎖の構造を決定することに困難性は見いだせないところ、審判請求人の主張は採用できない。

4. むすび

以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、当審で通知した上記拒絶理由通知に引用したその出願前に頒布された上記の引用刊行物(1)乃至(3)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その他の請求項2乃至5については判断するまでもなく、本件出願は特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-07 
結審通知日 2006-02-07 
審決日 2006-02-20 
出願番号 特願平2-514151
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高堀 栄二  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鵜飼 健
佐伯 裕子
発明の名称 組換ヒトトロンボモジュリン  
代理人 山田 洋資  
代理人 山田 文雄  

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