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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F23G |
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管理番号 | 1133807 |
審判番号 | 不服2005-6089 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2006-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-07 |
確定日 | 2006-03-13 |
事件の表示 | 平成10年特許願第524518号「固体廃棄物のガス化燃焼方法及び設備」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月 4日国際公開、WO98/23898〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1997年11月26日(優先権主張1996年11月26日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成17年3月1日付け(発送日:同月8日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月7日に審判請求がなされるとともに、同年5月9日に手続補正がなされたものである。 2.平成17年5月9日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年5月9日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に記載された発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。 「廃棄物を流動層ガス化炉にて熱分解ガス化してガスおよび炭化物を生成し、生成されたガスおよび炭化物を溶融燃焼炉に供給して該ガスおよび炭化物を溶融燃焼し灰分を溶融スラグ化する廃棄物のガス化燃焼方法において、 前記流動層ガス化炉の流動層部に廃棄物の理論燃焼酸素量の10〜30%となる酸素量を含む流動化ガスを供給して該流動層部を450〜650℃とし、 廃棄物の理論燃焼酸素量の0〜20%となる酸素量を含むガスを前記流動層ガス化炉のフリーボードに供給して該フリーボード部を650〜850℃とし、 廃棄物の理論燃焼酸素量の80〜120%となる酸素量を含むガスを前記溶融燃焼炉に供給して該溶融燃焼炉を1200〜1500℃とすることを特徴とする廃棄物のガス化燃焼方法。」 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「フリーボード部」について「650〜850℃とし」との限定を付加し、また、「溶融燃焼炉」について「1200〜1500℃とする」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用した特開平7-332614号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。 ・「【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来技術の前記の問題点を解消することにあり、都市ごみ、廃プラスチック等の廃棄物や石炭等の可燃物から多量の可燃分を含む可燃ガスを高効率で生成することにある。(中略)本発明の別の目的は、多量の可燃分を含む可燃ガスを生成し、生成された可燃ガスの自己熱量により燃焼灰を熔融することができるガス化及び熔融燃焼方法並びに装置を提供することにある。本発明においては、熔融炉へ供給される生成ガスは、自己熱量により1300°C以上の高温を発生するような充分な熱量を持ち、チャー、タールを含む均質なガスであるようにされ、またガス化装置から不燃物の排出が支障なく行われるようにされる。」 ・「【0021】本発明においては、流動層炉へ供給される中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように転向され、それによって、流動媒体の沈降拡散する移動層が炉の中央部に形成されると共に、炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成される。炉内へ供給された可燃物は、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化される。可燃物は、最初に、炉中央の下降する移動層の中で、主として揮発分が流動媒体(一般的には、硅砂を使用)の熱によりガス化される。そして、移動層を形成する中央流動化ガスの酸素含有量が、小さため、移動層内で生じた可燃ガスは、ほとんど燃焼されずに中央流動化ガスと共にフリーボードへ上昇され、発熱量の高い良質の生成ガスとなる。」 ・「【0022】移動層において揮発分が失われ加熱された可燃物、即ち、固定炭素(チャー)やタール分等は、次に流動層内へ循環され、流動層内の比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガスと接触し燃焼され、燃焼ガス及び灰分に変わると共に炉内を450〜650℃に維持する燃焼熱を発生する。この燃焼熱により流動媒体が加熱され、加熱された流動媒体が炉周辺部上方で炉中央部へ転向され移動層内を下降することにより移動層内の温度を揮発分のガス化に必要な温度に維持する。可燃物が投入される炉中央部ほど低酸素状態であるので、高い可燃分を有する生成ガスを発生することができる。また、可燃物中の金属が不燃物取出口から未酸化の有価物として回収することができる。」 ・「【0023】本発明においては、流動層炉において生成されたガス及び灰分その他の微粒子を熔融燃焼炉において燃焼させる場合、生成ガスが高可燃分を含むので、加熱用燃料を必要とすることなく、熔融炉内を1300℃以上の高温にすることができ、熔融炉内で灰分を充分熔融させることができる。熔融した灰は、熔融炉から取り出し水冷等の周知の方法により容易に固化させ得る。それ故、灰分の体積は、著しく減少され、また灰分中の有害金属は、固化されるので、灰分は、埋め立て処理可能な形態となる。」 ・「【0026】第1表に示すように、中央流動化ガス7は、水蒸気、水蒸気と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つであり、周辺流動化ガス8は、酸素、酸素と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つである。中央流動化ガスの酸素含有量は、周辺流動化ガスの酸素含有量以下とされる。流動化ガス全体の空気量が、可燃物11の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下とされ、炉内は、還元雰囲気とされる。」 ・「【0047】図10は、廃熱ボイラ及びタービンと組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図である。(中略)熔融燃焼炉41の排出口152から排出される熔融状態の灰44は、水室178に受け入れられ急冷されて、スラグ176として排出される。」 ・「【0048】図10において、熔融燃焼炉41から排出される燃焼ガスは、廃熱ボイラ31、エコノマイザ183、空気予熱器186、集塵器43、誘引通風機54を経て大気へ排出される。(中略)空気Aが空気予熱器186へ供給され、加熱された後、空気ジャケット185で更に加熱され、空気管184を介し、熔融燃焼炉41、及び必要に応じてフリーボード102へ供給される。」 ・「【0050】図10の装置においては、流動層炉2の燃焼が低空気比による低温部分燃焼とされ、流動層温度が450°C〜650°Cに維持されることにより、高熱量の可燃ガスを発生させることができる。また、低空気比により還元雰囲気で燃焼が行われるので、不燃物中に鉄、アルミが未酸化の有価物として得られる。流動層炉2で発生された高熱量の可燃ガス及びチャーは、熔融燃焼炉41において、1300°C以上の高温燃焼することができ、灰を熔融させ、ダイオキシンを分解させることができる」 これらの記載及び図面を参照すると、引用例には次の発明が記載されている(以下、「引用例発明」という。)。 「廃棄物を流動層ガス化炉にて熱分解ガス化してガスおよび炭化物を生成し、生成されたガスおよび炭化物を溶融燃焼炉に供給して該ガスおよび炭化物を溶融燃焼し灰分を溶融スラグ化する廃棄物のガス化燃焼方法において、 前記流動層ガス化炉の流動層部に廃棄物の理論燃焼空気量の30%以下となる空気量を含む流動化ガスを供給して該流動層部を450〜650℃とし、 空気を必要に応じて前記流動層ガス化炉のフリーボードに供給し、 空気を前記溶融燃焼炉に供給して該溶融燃焼炉を1300℃以上とする廃棄物のガス化燃焼方法。」 (3)対比 本願補正発明と上記引用例発明とを比較すると、両者は、 「廃棄物を流動層ガス化炉にて熱分解ガス化してガスおよび炭化物を生成し、生成されたガスおよび炭化物を溶融燃焼炉に供給して該ガスおよび炭化物を溶融燃焼し灰分を溶融スラグ化する廃棄物のガス化燃焼方法において、 前記流動層ガス化炉の流動層部に酸素を含む流動化ガスを供給して該流動層部を450〜650℃とし、 酸素を空気を必要に応じて流動層ガス化炉のフリーボードに供給し、 酸素を前記溶融燃焼炉に供給して該溶融燃焼炉を1300〜1500℃とする廃棄物のガス化燃焼方法。」 の点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明では、流動層ガス化炉の流動層部に廃棄物の理論燃焼酸素量の10〜30%となる酸素量を含む流動化ガスを供給して該流動層部を450〜650℃とするのに対して、引用例発明では、流動層ガス化炉の流動層部に廃棄物の理論燃焼空気量の30%以下となる空気量を含む流動化ガスを供給して該流動層部を450〜650℃とする点。 [相違点2] 本願補正発明では、廃棄物の理論燃焼酸素量の0〜20%となる酸素量を含むガスを流動層ガス化炉のフリーボードに供給して該フリーボード部を650〜850℃とするのに対して、引用例発明では、空気を必要に応じて流動層ガス化炉のフリーボードに供給する点。 [相違点3] 本願補正発明では、廃棄物の理論燃焼酸素量の80〜120%となる酸素量を含むガスを溶融燃焼炉に供給して該溶融燃焼炉を1200〜1500℃とするのに対して、引用例発明では、空気を溶融燃焼炉に供給して該溶融燃焼炉を1300℃以上とする点。 (4)判断 相違点1について 引用例発明において、、流動層ガス化炉の流動層部を450〜650℃とするために、廃棄物の理論燃焼酸素量の10〜30%となる酸素量を含む流動化ガスを供給することは、単なる設計事項である。また、このように酸素量の数値範囲を限定することに、臨界的意義又は格別な効果も認められない。 相違点2について 被ガス化物質をガス化するに際して、ガス化をより完全に行うために、ガス化により生成された物質を更に高温雰囲気でガス化することは、特開平2-147692号公報、特開平6-256775号公報、また、特公平6-68108号公報に記載されるように、従来周知である。 特に、上記特開平2-147692号公報は、本願明細書において流動層ガス化炉の従来例として引用されたものであって、そこには、次の記載がある。 ・「下降移動層34と流動層35において生成したガスは、層上方のフリーボード部29にて混合し、高温雰囲気下でさらにガス化反応が進行する。」(第5頁右上欄第1-4行)。 また、上記特開平6-256775号公報には、次の記載がある。 ・「【0012】(3)ガス化炉を2段に分割する。(中略)そこで、第1段ガス化工程において酸素による部分酸化と、水性ガス化反応の併発により、約90〜95%以上の高ガス化率でガス化した後、さらに第2段ガス化工程で未反応有機物及びタールガスをガス化して100%のガス化率を達成する。このとき、適正なガス化温度は下記の例に示すように原料物質によって相違する。 〇完全ガス化温度の例 プラスチック類 : 約600〜800℃ 木材、農作物、一般植物類 : 約900〜1,000℃ 第2段ガス化工程ではガス状未反応有機物及びタールをさらに完全ガス化するためには第1段ガス化工程より約50℃〜100℃以上高温で操作する必要がある。」 したがって、引用例発明において、空気を必要に応じて供給する流動層ガス化炉のフリーボード部を650〜850℃として、ガス化により生成された物質をより完全にガス化する領域とすること、そのために、廃棄物の理論燃焼酸素量の0〜20%となる酸素量を含むガスを供給することは、当業者が容易に想到し得たことである。また、このように温度及び酸素量の数値範囲を限定することに、臨界的意義又は格別な効果も認められない。 相違点3について 引用例発明において、灰を熔融させ、ダイオキシンを分解するために、溶融燃焼炉の温度を1300℃以上とすることに代えて1200〜1500℃とし、そのために、廃棄物の理論燃焼酸素量の80〜120%となる酸素量を含むガスを供給することは、単なる設計事項である。また、このように温度及び酸素量の数値範囲を限定することに、臨界的意義又は格別な効果も認められない。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用例に記載された事項、及び従来周知の技術から当業者が予測できた範囲内のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明、及び、従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成17年5月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年11月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。 「廃棄物を流動層ガス化炉にて熱分解ガス化してガスおよび炭化物を生成し、生成されたガスおよび炭化物を溶融燃焼炉に供給して該ガスおよび炭化物を溶融燃焼し灰分を溶融スラグ化する廃棄物のガス化燃焼方法において、 前記流動層ガス化炉の流動層部に廃棄物の理論燃焼酸素量の10〜30%となる酸素量を含む流動化ガスを供給して該流動層部を450〜650℃とし、 廃棄物の理論燃焼酸素量の0〜20%となる酸素量を含むガスを前記流動層ガス化炉のフリーボードに供給し、 廃棄物の理論燃焼酸素量の80〜120%となる酸素量を含むガスを前記溶融燃焼炉に供給することを特徴とする廃棄物のガス化燃焼方法。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用した引用例、及びその記載事項は前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「フリーボード部」について「650〜850℃とし」との限定を省き、また、「溶融燃焼炉」について「1200〜1500℃とする」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明、及び、従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明、及び、従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明、及び、従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-01-12 |
結審通知日 | 2006-01-17 |
審決日 | 2006-01-30 |
出願番号 | 特願平10-524518 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F23G)
P 1 8・ 121- Z (F23G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長清 吉範、関口 哲生 |
特許庁審判長 |
水谷 万司 |
特許庁審判官 |
櫻井 康平 原 慧 |
発明の名称 | 固体廃棄物のガス化燃焼方法及び設備 |
代理人 | 内田 博 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 星野 修 |
代理人 | 神田 藤博 |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 宮前 徹 |