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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16L |
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管理番号 | 1133890 |
審判番号 | 不服2004-13029 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-05-15 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-24 |
確定日 | 2006-03-30 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第273190号「液圧ブレーキホース」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月15日出願公開、特開平10-122444〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年10月16日の出願であって、平成15年10月20日付で明細書を補正する手続補正がなされたが、平成16年5月20日付で本出願について拒絶の査定がなされ、その後、平成16年6月24日に、この拒絶の査定に対して不服の審判が請求され、当審において平成17年10月28日付で拒絶理由通知がなされ、同年12月22日付で手続補正がなされたものである。 2.本願発明 よって、本願の請求項1に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、平成17年12月22日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも内面ゴム層の外周に編組された補強糸層を有し、該補強糸層の外周に外面ゴム層を有する液圧ブレーキホースであって、加硫初期のゴム粘度を低くすることにより、前記補強糸層の編まれた補強糸間への前記内面ゴム層および前記外面ゴム層の食い込み率がそれぞれ補強糸径に対し35〜100%の範囲に制御することを特徴とする液圧ブレーキホース。」 3.引用文献に記載された発明 これに対して、当審での拒絶理由に引用した、本願の出願前国内において頒布された刊行物である特開平7-127768号公報(以下、「引用文献」という。)には図面とともに次の記載がある。 「【0010】 【実施例】・・・・まず、この発明に係るブレーキホースの拡大断面を図1に示す。図において、20はブレーキ液が透過し難いEPDMからなる内ゴム管、21は内ゴム管20の外周面にビニロン糸により編組した第1補強層、22はゴム糊を充填することによって編目の間を埋め込み、ビニロン糸の外周面を被覆してなる充填ゴム層であり、23は前記充填ゴム層22の外周面にビニロン糸により編組してなる第2補強層、24はEPDMにより被覆してなる外ゴム管である。前記充填ゴム層22を形成するゴム糊は、内ゴム管20を形成するEPDMよりもブレーキ液の透過性に優れており、極性のあるCRにより調製した。 【0011】上記実施例では、充填ゴム層22は第1補強層21にのみ設けたが、第2補強層23にも設けることができる。ブレーキホースの耐圧は第1補強層21で保持されており、第2補強層23は補助的機能を果たしているにすぎないから、充填ゴム層22は第1補強層21に設ければ十分である。」 上記記載及び図面によれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。 「内ゴム管20の外周に編組された第1、第2補強層21、23を有し、該補強層の外周に外ゴム管24を有するブレーキホースであって、前記第1補強層の編まれた補強糸間、あるいは、前記第1及び第2の両補強層の編まれた補強糸間へゴム糊を充填して充填ゴム層を形成したブレーキホース。」 4.対比・判断 本願発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「内ゴム管20」は本願発明の「内面ゴム層」に相当し、以下同様に、「第1、第2補強層21、23」は「補強糸層」に、「外ゴム管24」は「外面ゴム層」に、「ブレーキホース」は「液圧ブレーキホース」に、それぞれ相当するとともに、引用例発明の充填ゴム層は、補強糸管にゴム糊が食い込んだ層であるから、 両者は、 「少なくとも内面ゴム層の外周に編組された補強糸層を有し、該補強糸層の外周に外面ゴム層を有する液圧ブレーキホースであって、前記補強糸層の編まれた補強糸間へゴムを食い込ませたことを特徴とする液圧ブレーキホース。」 である点で一致し、次の点で相違している。 [相違点]本願発明では、補強糸層の編まれた補強糸間へのゴムの食い込みを、内面ゴム層および前記外面ゴム層の加硫初期のゴム粘度を低くすることにより、前記内面ゴム層および前記外面ゴム層の食い込み率がそれぞれ補強糸径に対し35〜100%の範囲に制御して行うのに対して、引用例発明では、補強糸層の編まれた補強糸間へのゴムの食い込みを、ゴム糊を充填することにより行う点。 上記相違点について検討すると、補強糸間へゴムを食い込ませる手段に関し、内面ゴム層あるいは外面ゴム層自体を編まれた補強糸間へ食い込ませることは、従来周知の技術手段である(例えば、特開昭61-201981号公報、特開昭50-12003号公報、特開昭58-131386号公報、実公昭43-24673号公報、実公昭49-11450号公報参照。)し、補強糸層にゴム層を食い込ませるに際して、粘度の低い未加硫のゴム層を補強糸層に食い込ませた後、該ゴム層を加硫して、粘度を高め、ゴムを硬化させることも従来周知の技術手段である(例えば、特開昭61-201981号公報、特開昭57-129742号公報、特開昭50-120013号公報参照。)。また、編まれた補強糸間へのゴムの食い込み率に関しては、内面ゴム層と外面ゴム層とを補強糸間の隙間を通して相互に接着する等してゴム層を補強糸間へ埋め込み、食い込み率を補強糸径に対し事実上100%とすることも従来周知であり(例えば、特開昭61-201981号公報、特開昭57-129742号公報、特開昭58-131386号公報、実公昭49-11450号公報参照。)、しかも、食い込み率が大きいほど糸の摩損が少なくなることは当業者にとって明らかな事項である。 したがって、引用例発明において、補強糸層の編まれた補強糸間へのゴムの食い込みを、内面ゴム層および前記外面ゴム層により行うとともに、内面ゴム層および前記外面ゴム層の加硫初期のゴム粘度を低くすることにより、前記内面ゴム層および前記外面ゴム層の食い込み率がそれぞれ補強糸径に対し35〜100%の範囲に制御して本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の効果は、引用文献に記載された発明および従来周知の技術手段から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、本願の出願前に国内において頒布された引用文献に記載された発明および従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-01-25 |
結審通知日 | 2006-01-31 |
審決日 | 2006-02-16 |
出願番号 | 特願平8-273190 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F16L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 遠藤 秀明、内山 隆史 |
特許庁審判長 |
小椋 正幸 |
特許庁審判官 |
原 慧 東 勝之 |
発明の名称 | 液圧ブレーキホース |
代理人 | 杉村 興作 |
代理人 | 杉村 興作 |