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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01F |
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管理番号 | 1137165 |
審判番号 | 不服2002-25056 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-12-02 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-26 |
確定日 | 2006-05-26 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第145947号「コンバイン」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月 2日出願公開、特開平10-313665〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年5月20日の出願であって、平成14年8月28日付の拒絶理由が通知され、平成14年10月31日付で意見書が提出され、同日付で提出された手続補正書により手続補正がなされ、平成14年11月22日付の拒絶査定がなされ、平成14年12月26日に審判請求され、さらに平成15年1月21日付の手続補正書により手続補正がなされたものである。 2.平成15年1月21日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年1月21日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 1)平成15年1月21日付の手続補正について 平成15年1月21日付の手続補正による補正後の本願発明は、下記の特許請求の範囲の請求項1において特定されるとおりのものである。 「【請求項1】機体フレーム上に配置される脱穀部の一側方に、穀粒搬出装置を備える穀粒タンクを配置すると共に、前記穀粒搬出装置に、機体中心側から伝動ベルトを介して動力を供給するコンバインにおいて、前記脱穀部と穀粒タンクとの間に配線および配管を通すにあたり、前記伝動ベルトに張力を与えるテンションプーリを、伝動ベルトに下側から接当させるようにして伝動ベルトと機体フレームとの間に空間を確保し、該空間に前記配線と配管を纏めて通したことを特徴とするコンバイン。」(以下、「本願補正発明」という。) そして、平成15年1月21日付の手続補正は、平成14年10月31日付の手続補正による補正後の発明を特定するための事項の限定に相当するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法第126条第4項に適合するか)について以下に検討する。 2)引用例について 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭62-6407号(実開昭63-114160号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、次のことが記載されている。 ・記載事項1 「〔産業上の利用分野〕 本考案は、コンバイン等の脱穀粒タンクの駆動構造に係り、詳しくは脱穀粒タンクを機体内側に収納した格納姿勢と機体外側に引き出した点検用姿勢とに切換え自在に構成すると共に、機体原動部から底スクリューへの動力伝達を格納姿勢と点検用姿勢との切換えに伴って自動的に断続されるようにしてある脱穀粒タンクの駆動構造に関する。」(第2頁第3行乃至11行) ・記載事項2 「〔従来の技術〕 この種の脱穀粒タンクの駆動構造としては、実開昭60-86046号公報に開示されているように、機体側の機体原動部に連動して回転する駆動プーリを設け、該駆動プーリと脱穀粒タンクの底スクリューの軸端に取付けられた従動プーリとに亘って伝動ベルトを巻架し、以て機体原動部の動力を底スクリューに伝達している。」(第2頁第12行乃至第19行) ・記載事項3 「〔実施例〕 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。第4図及び第5図に、刈取前処理部(1)、脱穀装置(2)、脱穀粒タンク(3)等を備えたコンバインが示されている。」(第5頁第19行乃至第6頁第4行) ・記載事項4 「前記脱穀粒タンク(3)の底部に内部の貯留穀粒を後方側へ搬送する底スクリューコンベア(4)を設け、この底スクリューコンベア(4)により搬送された穀粒を揚送する縦送りスクリューコンベア(5)を前記脱穀粒タンク(3)の後壁下部に連通接続すると共に、前記縦送りスクリューコンベア(5)の上端部に横送りスクリューコンベア(6)を連通接続して、スクリューコンベア(4)により搬送された穀粒を縦送りスクリューコンベア(5)及び横送りスクリューコンベア(6)を介して機外に搬出するように構成してある。」(第6頁第5行乃至第15行) ・記載事項5 「前記底スクリューコンベア(4)の駆動構造について説明すれば、第2図、第3図、及び第4図に示すように、エンジンボンネット(8)の下方に配置した機体原動部のエンジン(E)からの動力を第1ベルト伝動機構(10)を介して前記脱穀装置(2)の入力軸としての唐箕軸(11)に伝達すると共に、前記唐箕軸(11)に伝達された動力を接当式伝動機構(A)、ベベルギアー機構(12)、第2ベルト伝動機構(13)を介して前記底スクリューコンベア(4)のスクリュー軸(4A)に伝達するように構成してある。」(第6頁第16行乃至第7頁第5行) ・記載事項6 「前記脱穀粒タンク(3)の一端側が連結された前記縦送りスクリューコンベア(5)の下部ケース(5B)を機体フレーム(17)に回転自在に支持させて、縦スクリューコンベア(5)の上部ケース(5A)に対して下部ケース(5B)を回動することにより脱穀粒タンク(3)を機体内側に収納した格納姿勢から機体外側に引き出した点検用姿勢に縦軸芯(X)周りで切換え揺動自在にしてある。」(第8頁第3行乃至第10行) 以上の記載事項1乃至6、および第2図、第3図、第4図並びに第5図の記載を勘案すると引用例には、 「機体フレーム(17)上に配置される脱穀粒装置(2)の一側方に、底スクリューコンベア(4)を備える脱穀粒タンク(3)を配置すると共に、底スクリューコンベア(4)に、第1ベルト伝動機構(10)、接当式伝動機構(A)、ベベルギアー機構(12)並びに第2ベルト伝動機構(13)を介して動力を供給するコンバインにおいて、第2ベルト伝動機構(13)と機体フレーム(17)との間に空間が確保されているコンバイン。」 が記載されていると認められる(以下、「引用例に記載された発明」という。)。 3)対比 引用例に記載された発明と本願補正発明とを対比すると、引用例に記載された発明の「機体フレーム(17)」は、本願補正発明の「機体フレーム」に相当し、以下同様に「脱穀粒装置(2)」は「脱穀部」に、「底スクリューコンベア(4)」は「穀粒搬出装置」に、「脱穀粒タンク(3)」は「穀粒タンク」に、それぞれ相当するものと認められる。 そして、引用例に記載された発明は、以下の点を実質的に具備しているということができる。 ・実質的具備事項1 記載事項5の「機体原動部のエンジン(E)からの動力を第1ベルト伝動機構(10)を介して、前記脱穀装置(2)の入力軸としての唐箕軸(11)に伝達すると共に、前記唐箕軸(11)に伝達された動力を接当式伝動機構(A)、ベベルギアー機構(12)、第2ベルト伝動機構(13)を介して前記底スクリューコンベア(4)のスクリュー軸(4A)に伝達するように構成してある。」なる記載と第2図、第3図および第4図から見て、引用例の底スクリューコンベア(4)は、エンジン(E)からの動力をほぼ機体の中心側に配置された第1ベルト伝動機構(10)、接当式伝動機構(A)、ベベルギアー機構(12)並びに第2ベルト伝動機構(13)を介して動力を供給されており、かつ、第2ベルト伝動機構(13)が伝動ベルトを用いていることは記載事項2の「・・・該駆動プーリと脱穀粒タンクの底スクリューの軸端に取付けられた従動プーリとに亘って伝動ベルトを巻架し、以て機体原動部の動力を底スクリューに伝達している。」なる記載から明らかであるので、底スクリューコンベア(4)は、機体中心側から伝動ベルトを介して動力を供給されているということができる。 そうすると、引用例に記載された発明は、「機体中心側から伝動ベルトを介して動力を供給する」構成を実質的に具備しているということができる。 ・実質的具備事項2 引用例の底スクリューコンベア(4)は、エンジン(E)からの動力を機体中心側から伝動ベルトを介して動力を供給されていることは上記実質的具備事項1において示したとおりであり、また、上記記載事項5および第2図、第3図並びに第4図から見て、第2ベルト伝動機構(13)の伝動ベルトは、その下部に下側から接当し伝動ベルトの下部を屈曲させ張力を与えるプーリ、すなわちテンションプーリと呼称できるプーリを有していることは明らかなことである。 そうすると、引用例に記載された発明は、「伝動ベルトに張力を与えるテンションプーリを、伝動ベルトに下側から接当させる」構成を実質的に具備しているということができる。 したがって、本願補正発明と引用例に記載された発明とは、 「機体フレーム上に配置される脱穀部の一側方に、穀粒搬出装置を備える穀粒タンクを配置すると共に、穀粒搬出装置に、機体中心側から伝動ベルトを介して動力を供給するコンバインにおいて、伝動ベルトに張力を与えるテンションプーリを、伝動ベルトに下側から接当させるようにして伝動ベルトと機体フレームとの間に空間を確保したことを特徴とするコンバイン。」 の点で一致するとともに下記の点で相違しているものと認められる。 <相違点> 本願補正発明では、「脱穀部と穀粒タンクとの間に配線および配管を通すにあたり、伝動ベルトに張力を与えるテンションプーリを、伝動ベルトに下側から接当させるようにして伝動ベルトと機体フレームとの間に空間を確保し、該空間に前記配線と配管を纏めて通している」のに対して、引用例に記載された発明ではその点については不明な点。 4)判断 上記相違点について検討する。 機械一般分野においてデッドスペースを有効利用することは自明の課題であって、なんらかの収容物をデッドスペースに配置してデッドスペースを有効利用することは、本願補正発明の属するコンバインの技術分野において周知技術である(必要であれば実願平5-37140号(実開平7-7338号)のCD-ROM、特開平7-39234号公報、及び特開平9-84442号公報を参照。)。 また、デッドスペースの収容物として配線及び配管を纏めて配置することは、作業車、乗用車および自動販売機、浴室ユニット等の設計上において多用される技術常識にすぎない(必要であれば、特開平9-156532号公報の【0053】、特開平10-51933号公報、特開平4-21091号公報および特開平5-302352号公報等を参照されたい。)。 そうすると、脱穀部と穀粒タンクとの間に配線および配管を通すにあたり、脱穀部と穀粒タンクとの間であって、伝動ベルトに張力を与えるテンションプーリを伝動ベルトに下側から接当させて得られた伝動ベルトと機体フレームとの間の空間において、その空間を有効利用するために、その空間内に配線および配管を通すことは、すなわち、上記相違点に係る構成となすことは、引用例に記載された発明および周知技術並びに技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得る程度のことという他はない。 そして、本願補正発明の効果は、引用例に記載された発明および周知技術並びに技術常識から予測し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明および周知技術並びに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5)むすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用例に記載された発明および周知技術並びに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 (2)補正却下の判断 上記2.(1)のとおり、本願補正発明は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条第4項の規定に違反するものであるので、平成15年1月21日付の手続補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成15年1月21日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成14年10月31日付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1において特定される以下のものである。 「【請求項1】機体フレーム上に配置される脱穀部の一側方に、穀粒搬出装置を備える穀粒タンクを配置すると共に、前記穀粒搬出装置に、機体中心側から伝動ベルトを介して動力を供給するコンバインにおいて、前記脱穀部と穀粒タンクとの間に配線または配管を通すにあたり、前記伝動ベルトに張力を与えるテンションプーリを、伝動ベルトに下側から接当させるようにして伝動ベルトと機体フレームとのあいだに空間を確保し、該空間に前記配線または配管を通したことを特徴とするコンバイン。」(以下、「本願発明」という。) (1)刊行物 引用例の記載、及びそれらの記載事項は上記2.(1)に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、上記2.(1)で検討した本願補正発明の「配線および配管」、「配線と配管を纏めて」と限定した構成要件のそれぞれから限定事項を省いた「配線または配管」、「配線または配管」を構成要件としたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含んでいる本願補正発明が、上記に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明および周知技術並びに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明および周知技術並びに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-22 |
結審通知日 | 2006-02-28 |
審決日 | 2006-03-28 |
出願番号 | 特願平9-145947 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A01F)
P 1 8・ 575- Z (A01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関根 裕 |
特許庁審判長 |
三原 裕三 |
特許庁審判官 |
白樫 泰子 辻野 安人 |
発明の名称 | コンバイン |