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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01D |
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管理番号 | 1140648 |
審判番号 | 不服2003-19407 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-02 |
確定日 | 2006-07-26 |
事件の表示 | 平成6年特許願第333422号「コンバインの駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成8年6月25日出願公開、特開平8-163917〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成6年12月14日の出願であって、平成15年8月21日付で平成14年12月17日付の手続補正が却下されるとともに、拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年10月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 そして、その請求項1に係る発明は、平成14年7月3日付の手続補正書により補正された請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「走行ミッションケース(30)の上部に搭載する油圧ポンプ(31)及び油圧モータ(32)を有する油圧式無段変速機構(33)を設けると共に、前記無段変速機構(33)の作動油(A)を貯留するギヤケース(25)内に、エンジン(18)からの駆動入力軸(29)と、走行ミッションケース(30)に駆動力を出力する走行出力軸(34)と、脱穀部(4)の扱胴及び揺動選別機構に駆動力を出力する脱穀出力軸(44)(50)と、該脱穀出力軸(44)(50)への駆動力伝達を入切する脱穀クラッチ(43)とを設けるコンバインの駆動装置において、 前記無段変速機構(33)における油圧ポンプ(31)のチャージポンプ(55)からのポンプ圧を利用して脱穀クラッチ(43)を操作すると共に、脱穀クラッチ(43)とチャージポンプ(55)の接続回路間に切換弁(57)を介設し、クラッチレバー(56)による切換弁(57)の切換操作によって脱穀クラッチ(43)の入切を行うように設けることを特徴とするコンバインの駆動装置。」 (以下「本願発明」という。) 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である実願昭60-140822号(実開昭62-49931号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、「コンバインの動力伝達装置」に関して下記の記載がある。 (イ)「本考案の特徴は…農用のコンバインにおいて、弾性支持されたエンジンの出力軸と、機体フレームに固設された伝動ケースの入力軸とを、自在継手を含んだ軸伝動機構で連動連結し、この伝動ケースから取出した動力を脱穀装置の各部に分配伝達するとともに、前記伝動ケースに走行変速用の油圧式無段変速装置におけるポンプ部を連結して駆動すべく構成し、かつ、前記伝動ケース内の潤滑油を前記油圧式無段変速装置の作動油に利用すべく構成してあることに有り、…機体フレームに弾性支持されたエンジンの動力を、…伝動ケースに一旦伝達して、この伝動ケースから装置各部に動力を分配する構成としたので、伝動ケースから装置各部に動力を伝達する手段としてベルト式伝動機構を用いても…エンジンの振動もその弾性支持によつて吸収されてしまう。又、機体走行用の油圧式無段変速装置におけるポンプ部を前記伝動ケースに併設し、伝動ケース内の潤滑油を油圧式無段変速装置の作動油にも兼用できるように構成したので、作動油専用の油タンクは不要となつた。」(明細書3頁9行〜4頁16行) (ロ)「軸伝動機構(11)を介して伝動ケース(10)の入力軸(10a)に伝達されたエンジン(5)の動力は、伝動ケース(10)内のギア機構(13)によつて減速及び方向変換され、脱穀クラツチ(20)及びベルト式伝動機構(14)を介して脱穀装置(4)の各部に分配伝達される。又、前記伝動ケース(10)には油圧式無段変速装置(16)におけるシリンダ型のポンプ部(16a)を供設し、伝動ケース(10)内のギア機構(13)から分岐したエンジン(5)の動力によつてポンプ部(16a)を駆動すると共に、フイルタ(17)、パイプ(18)を介して伝動ケース(10)とポンプ部(16a)とをつないで伝動ケース(10)内の潤滑油を油圧式無段変速装置(16)の作動油としても使用できるように構成している。前記ポンプ部(16a)から送り出された圧油は油圧ポンプ(16b)を通つてトランスミツシヨン(19)に併設された油圧式無段変速装置(16)のモータ部(16c)に送られ、これを駆動する。このモータ部(16c)で発生した動力はトランスミツシヨン(19)に伝達されてクローラ走行装置(7)を駆動する…」(明細書6頁8行〜7頁8行) (ハ)第1図の動力の伝達系路を示す系統図をみると、伝動ケース10の図面上側から上外へ突出してベルト式伝動機構14を介して脱穀装置4へ駆動力を出力する出力軸と、伝動ケース10の図面右上側から右外へ突出して符号の無いベルト式伝動機構を介して脱穀装置4へ駆動力を出力する出力軸との、2つの出力軸が示されている。 (ニ)同第1図の伝動ケース10の図面右下側からも右へ駆動力を出力する出力軸が突出されており、該出力軸からの動力は、トランスミツシヨン19に伝達されてクローラ走行装置7を駆動するから、該出力軸は、トランスミツシヨンに駆動力を出力する走行出力軸であるといえる。 これらの記載事項および特に第1図を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認める。かっこ内は対応する引用例1における構成・用語である。 「走行ミッション(トランスミツシヨン19)に油圧ポンプ(ポンプ部16a)及び油圧モータ(モータ部16c)を有する油圧式無段変速機構(油圧式無段変速装置16)を設けると共に、前記無段変速機構の作動油を貯留するギヤケース(伝動ケース10)内に、エンジン(エンジン5)からの駆動入力軸(入力軸10a)と、走行ミッションに駆動力を出力する走行出力軸と、脱穀部(脱穀装置4)に駆動力を出力する脱穀出力軸(脱穀装置4への2つの出力軸)と、該脱穀出力軸への駆動力伝達を入切する脱穀クラッチ(脱穀クラツチ20)とを設けるコンバインの駆動装置(動力伝達装置)。」 (以下、「引用例1発明」という。) 同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である特開昭63-258220号公報(以下、「引用例2」という。)には、トラクターの駆動車軸を駆動する「HST式走行変速装置」に関して次の記載がある。 (ホ)「…従来の技術においては、ミッションケースに付設したHST変速装置は油圧ポンプと油圧モーターを一体的に構成した構成のものがミッションケースの載置面に載置されていた…」(1頁右下欄5〜9行) 同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である特開平6-133631号公報(平成6年5月17日公開)(以下、「引用例3」という。)には、「乗用型芝刈機」に関して、特に図3とともに下記の記載がある。 (ヘ)「【0009】…図3に示すように、走行装置の静油圧式無段変速装置Hを構成する油圧ポンプP1と油圧モータM1との接続油路R1に油を補充する為のチャージポンプ8から3位置切換式のコントロールバルブV1を介してモーアリフトシリンダCに圧油を供給可能に構成すると共に、2位置切換式のコントロールバルブV2を介してPTOクラッチPに圧油を供給可能に構成し…」 (ト)「【0010】…クラッチハウジングに設けたロータリ式のコントロールバルブV2によって圧油が供給可能になっている。…」 (チ)図3の油圧回路図によると、PTOクラッチPとチャージポンプ8の接続回路間に2位置切換式のコントロールバルブV2を介設し、PTOクラッチレバー25による2位置切換式のコントロールバルブV2の切換操作によってPTOクラッチPの入切を行うように設けられていると解される。 3.対比・判断 本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると両者は、 「走行ミッションに油圧ポンプ及び油圧モータを有する油圧式無段変速機構を設けると共に、前記無段変速機構の作動油を貯留するギヤケース内に、エンジンからの駆動入力軸と、走行ミッションケースに駆動力を出力する走行出力軸と、脱穀部に駆動力を出力する脱穀出力軸と、該脱穀出力軸への駆動力伝達を入切する脱穀クラッチとを設けるコンバインの駆動装置。」 の点で一致し、下記の点で相違している。 相違点1:油圧式無段変速機構が有する油圧ポンプ及び油圧モータを、本願発明では、走行ミッションケースの上部に搭載するのに対し、引用例1発明では、走行ミッションのどこに設けるのか不明な点。 相違点2:脱穀出力軸が、本願発明では、脱穀部の扱胴及び揺動選別機構に駆動力を出力するものであるのに対し、引用例1発明では、脱穀部の、どの機構へ出力するものか不明な点。 相違点3:本願発明では、無段変速機構における油圧ポンプのチャージポンプからのポンプ圧を利用して脱穀クラッチを操作すると共に、脱穀クラッチとチャージポンプの接続回路間に切換弁を介設し、クラッチレバーによる切換弁の切換操作によって脱穀クラッチの入切を行うようにしているのに対し、引用例1発明では、そのようになっていない点。 そこで、相違点について、以下に検討する。 (相違点1について) 引用例2にも記載されているように、変速機構が有する油圧ポンプ及び油圧モータをミッションケースの上部に搭載することは、従来から行われていることにすぎない。 (相違点2について) コンバインの脱穀部に、扱胴及び揺動選別機構を設けることは例をあげるまでもなく周知技術にすぎず、引用例1発明の、脱穀装置に駆動力を出力する2つの出力軸を、本願発明のように、脱穀部の扱胴及び揺動選別機構に駆動力を出力する脱穀出力軸とすることは、適宜決定し得る設計的事項にすぎない。 (相違点3について) 引用例3には、芝刈機のクラッチの操作に関してではあるが、静油圧式無段変速装置(本願発明の「油圧式無段変速機構」に相当。)を構成する油圧ポンプのチャージポンプからのポンプ圧を利用してPTOクラッチ(本願発明の「脱穀クラッチ」に相当。)を操作すると共に、PTOクラッチとチャージポンプの接続回路間に2位置切換式のコントロールバルブ(本願発明の「切換弁」に相当。)を介設し、PTOクラッチレバー(本願発明の「クラッチレバー」に相当。)による2位置切換式のコントロールバルブの切換操作によってPTOクラッチの入切を行うことが記載されており、 該クラッチ操作の技術を、引用例1発明の脱穀クラッチに採用することは、当業者が容易に想到しうることにすぎない。 なお、請求人は審判請求書において、却下された平成14年12月17日付手続補正書に記載された請求項1に係る発明を基に不自然な反論をしている。 しかし、前審が平成15年8月21日付の補正の却下の決定で周知例を示し述べているように、コンバインの駆動伝達装置において、本願発明の「ギヤケース」に相当するカウンタケース等から各装置への出力軸を突出させ、各装置にプーリ、ベルトを介して動力を伝達することは周知の技術である。 また、同周知例および引用例1の図面においても、各出力軸は分散されて配置されており、ギヤケースのどの側面からどの出力軸を突出させるかは、当業者が適宜決定しうる設計的事項にすぎないものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1発明および引用例2,3記載の技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶されるべきものである。 |
審理終結日 | 2006-05-16 |
結審通知日 | 2006-05-23 |
審決日 | 2006-06-05 |
出願番号 | 特願平6-333422 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A01D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 恭 |
特許庁審判長 |
安藤 勝治 |
特許庁審判官 |
木原 裕 宮川 哲伸 |
発明の名称 | コンバインの駆動装置 |