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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01H
管理番号 1142559
審判番号 不服2003-18978  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-29 
確定日 2006-08-21 
事件の表示 平成 7年特許願第110060号「車両用ノブスイッチ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月 1日出願公開、特開平 8-287778号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年4月11日の出願であって、平成15年8月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月29日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに同年15年10月23日に手続補正がなされ、この後、平成18年4月13日付けで当審により拒絶理由が通知され、これに対して同年6月13日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願発明の認定
本願の請求項1〜4に係る発明は、平成15年10月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】 極盤、可動盤、節度体及びノブを設置する軸棒が開口部の中央から突出している操作レバーと、
該操作レバーの開口部に挿着され前記軸棒を挿通する孔を有する略ドーナツ型の極盤と、
該極盤に設置した固定接点板に接触する可動接点板、節度体の筒部が挿入される貫通孔、ノブに係止する係止片及び被回動規制部を有すると共に前記軸棒に回動自在に軸支した可動盤と、
前記軸棒に軸止する弾性爪、前記軸棒が貫通する筒部及び前記可動盤の回動に伴って回動する前記被回動規制部と衝当することにより該可動盤の回動規制を行う回動規制部を有すると共に、前記開口部との間で前記極盤及び前記可動盤を挟持する節度体と、
前記可動盤の係止片が係合する係止部を有する前記ノブとで構成し、
前記ノブの回動に連動して前記可動盤が回動することにより該可動盤に設置した可動接点板が前記固定接点板に接触するようにしたことを特徴とする車両用ノブスイッチ。」

3.刊行物に記載された発明
当審による拒絶理由通知書に引用された刊行物である実願平5-332号(実開平6-56939号)のCD-ROM(以下「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「図6,図7は、従来の車両用レバースイッチの構成を示すものであり、図6は側断面図、図7は分解斜視図である。同図において、41は操作レバーとなるノブベースで、その軸42が回動不能に嵌合固定されている。43はホルダで、その底面の基板43a上の全周に渡って端子51,52が装着され、軸42に嵌合されている。45はロータでその一端には環状の可動コンタクト44が固定され、また他の一端には回転操作時の節度感を得るために鋼球46とスプリング47とが穴45aに挿入されている。そしてこのロータ45は軸42に回動可能に取りつけられている。
48は節度板で軸42に回動不能に嵌合固定されている。そして節度板48に凹凸状の節度山部48aをロータ45との組合せ側に形成することでロータ45の回動操作により節度感が得られるようになっている。節度板48の上方には、それが軸42の上部方向へ抜けるのを防止するため、軸42に設けられた溝42aに係止するリング状の止め輪49aが装着されている。50はロータ45に回転操作を伝達し、外観にもなりうる可動ノブで、その内周面でロータ45と嵌合固定されている。さらに可動ノブ50の上方には、軸42を収納するキャップ55が設けられ、ピン56により軸42と固定されている。また、軸42の下端近傍には軸42がノブベース41から抜けるのを防止するための止め輪49bが装着されている。そしてノブベース41の開口部を閉じるようにカバー54が被せられ、ビス53によりノブベース41にビス止めされた構成となっている。」(段落【0002】〜【0003】)
(b)「4は円板形状の一部分が扇状に切欠かれた切欠き部4dを設けた回転操作時にホルダ3の壁面3cに当接して回転ストッパとなりうる構造のロータである。」(段落【0011】)
(c)「次に、第1のスイッチユニット部25を軸2に挿入し、軸2の係止突部22とホルダの切欠き部3aとを係合させた後、抜け防止のためにリング状の止め輪9bを軸2の溝19bに嵌合固定する。8は内周部に係合用凹部8aを備えた可動ノブで、この係合用凹部8aがロータ4の外周凸部4eに嵌合固定される。このように第1のスイッチユニット部25を固定した軸2をその溝部20aにノブベース1の穴21に設けた凸部21aに挿入し、軸2の溝19aにリング状の止め輪9aを係合して固定させる。そして、ノブベース1の開口部にカバー26を被せてビス27で固定し、さらに軸2を収納するようにキャップ28を被せてピン29で止めた構成となっている」(段落【0013】)
(d)図7には、ホルダ43に図2の壁面3c、外周凸部4eと同じ部材が設けられていることが示されていると共に、ロータ45に図2の切欠き部4dと同じ部材が、また、可動ノブ50に図2の係合用凹部8aと同じ部材がそれぞれ設けられていることが示されている。(以下、便宜上これらをそれぞれ「壁面」、「外周凸部」、「切欠き部」、「係合用凹部」という。)
(e)図6、図7には、軸42が、ノブベース41の開口部の中央から突出していることが示されている。
(f)図6、図7には、ホルダ43が軸42を挿通する孔を有するとともに略ドーナツ型であること、節度板48に軸42が貫通する孔が設けられること、及び、節度板48がノブベース41の開口部との間でホルダ43及びロータ45を挟持することが示されている。

以上の記載事項及び図面の内容を総合すれば、上記刊行物には次の発明が記載されているものと認められる。
「ホルダ43、ロータ45、節度板48及び可動ノブ50を設置する軸42が開口部の中央から突出しているノブベース41と、
該ノブベース41の開口部に挿着され前記軸42を挿通する孔と、壁面とを有する略ドーナツ型のホルダ43と、
該ホルダ43に設置した端子51、52に接触する可動コンタクト44、可動ノブ50に係合する外周凸部及び切欠き部を有すると共に前記軸42に回動自在に軸支したロータ45と、
前記軸42が貫通する孔を有すると共に、前記開口部との間で前記ホルダ43及び前記ロータ45を挟持する節度板48と、
前記ロータ45の外周凸部が係合する係合用凹部を有する前記可動ノブ50と、
前記節度板48が軸42から抜けるのを防止する止め輪49aとで構成し、
前記可動ノブ50の回転操作が前記ロータ45に伝達されることにより該ロータ45に設置した可動コンタクト44が前記端子51、52に接触するようにした車両用レバースイッチ。」

4.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と、上記刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「ホルダ43」は本願発明の「極盤」に、以下同様に、「ロータ45」は「可動盤」に、「節度板48」は「節度体」に、「可動ノブ50」は「ノブ」に、「軸42」は「軸棒」に、「ノブベース41」は「操作レバー」に、「端子51、52」は「固定接点板」に、「可動コンタクト44」は「可動接点板」に、「可動ノブ50に係合する外周凸部」は「ノブに係止する係止片」に、「係合用凹部」は「係止部」に、「前記可動ノブ50の回転操作が前記ロータ45に伝達される」は「前記ノブの回動に連動して前記可動盤が回動する」に、「車両用レバースイッチ」は「車両用ノブスイッチ」にそれぞれ相当する。
また、刊行物記載の発明において、「壁面」は、ロータ45の回転に伴って回転する「切欠き部」と衝当することにより該ロータ45の回転規制を行うものであるから、「壁面」、「切欠き部」はそれぞれ本願発明の「回動規制部」、「被回動規制部」に相当するものといえる。
また、刊行物記載の発明の「止め輪49a」と本願発明の「弾性爪」とは、節度板48(節度体)を軸42(軸棒)に軸止する手段としては共通するものである。
さらに、刊行物記載の発明の節度板48に設けられた「孔」と、本願発明の節度体に設けられた「筒部」とは、軸42(軸棒)が貫通する孔部としては共通するものといえる。
してみれば、両発明は、本願発明の用語を用いて表現すると、
「極盤、可動盤、節度体及びノブを設置する軸棒が開口部の中央から突出している操作レバーと、
該操作レバーの開口部に挿着され前記軸棒を挿通する孔を有する略ドーナツ型の極盤と、
該極盤に設置した固定接点板に接触する可動接点板、ノブに係止する係止片及び被回動規制部を有すると共に前記軸棒に回動自在に軸支した可動盤と、
前記軸棒が貫通する孔部を有すると共に、前記開口部との間で前記極盤及び前記可動盤を挟持する節度体と、
前記節度体を前記軸棒に軸止する手段と、
前記可動盤の回動に伴って回動する前記被回動規制部と衝当することにより該可動盤の回動規制を行う回動規制部と、
前記可動盤の係止片が係合する係止部を有する前記ノブとで構成し、
前記ノブの回動に連動して前記可動盤が回動することにより該可動盤に設置した可動接点板が前記固定接点板に接触するようにした車両用ノブスイッチ。」
である点で一致し、次の3点で相違する。
[相違点1]本願発明では、節度体が軸棒が貫通する筒部を有し、可動盤が節度体の筒部が挿入される貫通孔を有するのに対して、刊行物記載の発明では、節度板48が軸42が貫通する孔は有するものの筒部は有さず、したがって、ロータ45は該筒部が挿入される貫通孔を有さない点。
[相違点2]節度体を軸棒に軸止するために、本願発明では弾性爪を節度体に設けるのに対して、刊行物記載の発明では節度板48とは別体の止め輪を用いる点。
[相違点3]可動盤の被回動規制部に衝当する回動規制部について、本願発明ではこれを節度体に設けるのに対して、刊行物記載の発明ではこれをホルダ43に設ける点。

上記相違点について検討する。
[相違点1について]
同軸上に軸支される2つの部材について、一方の部材に設けた筒部を他方の部材に設けた貫通孔に挿入させることにより、筒部の長さを確保しつつ両者を部分的にオーバーラップさせ、軸方向の組み付け長さの短縮を図ることは機械設計上広く行われているものと認められるところ、車両用ノブスイッチの技術分野において、隣接して軸支される2部材を上記のように組み付けることは、例えば、実願昭63-50293号(実開平1―155231号)のマイクロフィルムの「受け体14」と「節度用ケース20」や、実願平1-117592号(実開平3-57841号)のマイクロフィルムの「固定盤3」と「第1ロータリノブ2」にみられるように、従来周知の技術である。(以下「周知技術1」という。)
また、刊行物記載の発明において、節度板48に筒部を設けると共にロータ45に該筒部が挿入される貫通孔を設けることを妨げる特段の事情も見当たらない。
したがって、刊行物記載の発明に周知技術1を適用し相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
[相違点2について]
車両用ノブスイッチの技術分野において、軸棒に挿通される部材を軸止するのに、弾性爪を該部材に設けることは、例えば、実願平4-77357号(実開平6-43981号)のCD-ROMの「係合爪6a」や、実願昭61-10769号(実開昭62-123039号)のマイクロフィルムの「係合爪13」にみられるように、従来周知である。(以下「周知技術2」という。)
したがって、刊行物記載の発明において、止め輪49aに係る構成に代えて節度板48に弾性爪を設け、相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。
[相違点3について]
回動規制部は、可動盤の軸棒に対する回動範囲を規制するものであるから、可動盤に隣接しかつ軸棒に軸止されている部材(軸棒に対して回転しない部材)に設ければ機能上足りることは明らかであり、刊行物記載の発明において、これをホルダ43に設けるか節度板48に設けるかは当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。
したがって、刊行物1記載の発明において、相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の事項である。

なお、請求人は、平成18年6月13日付け意見書において、「本願請求項1に係る発明では、「節度体4の筒部4aを可動盤3の貫通孔3aに挿入させ得る」上記(A1)(B1)の構成により、弾性爪4c及び切溝1hの結合を補強し、結果として組み付け強度を向上させながら、軸方向に短くすることが可能」(第2頁第22行乃至第24行)となる旨主張するが、請求項1では、弾性爪が節度体の筒部に形成されることは特定されておらず、当該主張は請求項1の記載に基づかないものである。また、仮に、弾性爪が節度体の筒部に設けられていると限定的に解釈する余地があるとしても、上記[相違点1について]で述べたように、筒部の長さを確保しつつ軸方向の組み付け長さを短縮できることは、周知技術1がそもそも有する効果であるから、請求人が主張する効果は、周知技術1、2に接した当業者であれば予測できる範囲のものというべきである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び上記周知手段1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、他の請求項に係る発明について判断するまでもなく拒絶をすべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-28 
結審通知日 2006-06-28 
審決日 2006-07-11 
出願番号 特願平7-110060
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 孝明  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 中村 則夫
和泉 等
発明の名称 車両用ノブスイッチ  
代理人 須藤 雄一  

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