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審決分類 |
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効とする。(申立て全部成立) C07H |
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管理番号 | 1142880 |
審判番号 | 無効2003-35028 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-02-23 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2003-01-30 |
確定日 | 2006-08-30 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2848721号「結晶ラクチュロース三水和物とその製造法」の特許無効審判事件についてされた平成16年 3月 2日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10205号平成18年 2月16日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第2848721号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2848721号は、平成3年8月9日に特許出願され、平成10年11月6日にその特許の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立がなされ、平成12年1月17日付けで訂正請求がされ、同年6月6日付けで「訂正を認める。本件特許の請求項1ないし3に係る特許を維持する」旨の異議決定がされた。 請求人イナルコ エス.ピー.エーは,平成15年1月30日,本件特許の請求項1ないし3に係る特許を無効にすることについて審判(無効2003-35028号)を請求し、平成16年3月2日に「本件審判の請求は,成り立たない」旨の審決がなされた。 この審決に対する訴えが,請求人よりなされ,知的財産高等裁判所において平成17年(行ケ)10205号事件として審理され,平成18年2月16日に「特許庁が無効2003-35028号事件について平成16年3月2日にした審決を取り消す」旨の判決が言い渡され、当該判決は確定した。 2.当事者の主張 (1)請求人の主張 請求人は「特許第2848721号の特許を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第12号証及び参考資料1ないし5を提出しているところ、その理由の概要は次のとおりである。 本件特許の請求項1〜3に記載された発明は、旧特許法第29条第1項第3号および第2項に違反して特許されたものであり、また本件特許は旧特許法第36条第4項または第5項および第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものであるから、旧特許法第123条第1項第1号および第3号に該当し、無効とすべきである。 記 甲第1号証:特許第2848721号公報 甲第2号証:特許異議申立書(平成11年異議第72748号) 甲第3号証:特許異議意見書(平成12年1月17日付け) 甲第4号証:訂正請求書(平成12年1月17日付け) 甲第5号証:異議の決定(平成12年6月6日付け) 甲第6号証:欧州特許出願公開0318630公報 甲第7号証:本件特許に対応する米国特許の再審査手続きで提出されたGiuseppe Bimbiの宣誓供述書 甲第8号証:デルフト工科大学のG.M.van Rosmalen教授のM. J. Hatzmannに宛てた報告書 甲第9号証:Bruni教授の第2宣誓供述書 甲第10号証:Bruni教授の第3宣誓供述書 甲第11号証:Fabrizio Bruniの宣誓供述書 甲第12号証:欧州特許第0532173号明細書 参考資料:甲第6号証のパラメータの計算 参考資料2:本件特許に対応する欧州特許についての2003年6月26日付け欧州特許庁の異議決定、(カバーの第2頁及び本文第7頁が欠落している。) 参考資料3の1〜7:甲第11号証の実験中に撮影した写真 参考資料4:甲第11号証の公証人による証明書 参考資料5:メルク・インデックス、第11版、第844頁 (2)被請求人の主張 被請求人は、「請求人の主張は失当であり、排斥されるべきものである」と主張し、証拠方法として下記の証拠を提出している。 記 乙第1号証:東京工業大学・広瀬教授の監督の下に森永乳業株式会社作成の実験成績証明書 乙第2号証:Y.Tamura,T.Mizota,S.Shimamura and M.Tomita, Bulletin of the International Dairy Fedaration 289:43-53、1993 乙第3号証:実験の状況写真証明書 乙第4号証:千葉大学・真田教授による実験成績証明書 乙第5号証:本件特許に対応する欧州特許の異議事件において提出されたFukuwatari博士による宣誓供述書(F2) 乙第6号証:本件特許に対応する欧州特許の異議事件において提出された広瀬教授による宣誓供述書(H2) 参考資料A:特許権者の現地代理人から国内代理人の事務所員への2003年1月21日付書簡 参考資料B:本件特許に対応する欧州特許の異議決定書 3.本件発明 本件発明は平成12年1月17日付けの訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】C12H22O11・3H2Oの分子式を有する結晶ラクチュロース三水和物。 【請求項2】次の理化学的性質を有する請求項1記載の結晶ラクチュロース三水和物。 1)元素分析 炭素:水素:酸素のモルヒ率が12:28:14であること、 2)分子量 氷点降下法で測定した分子量が396ダルトンであること、 3)水分 カールフィッシャー法で測定した水分含量が13.6%(重量)であること、 4)融解開始点 キャピラーリー式で測定した融点開始点が58〜60℃であること、および 5)比旋光度 変旋光を示すが、平衡時1%(重量)水溶液を20℃で測定した比旋光度が-43.1±0.3°であること。 【請求項3】固形分中無水ラクチュロース換算でラクチュロースを70〜90%(重量)の割合で含有するラクチュロース・シロップを、このシロップに含まれている乳糖の水中糖比、および全固形分含量がそれぞれ10%(重量)以下および65〜75%(重量)の範囲に濃縮し、濃縮したシロップを2〜20℃の温度に冷却し、ラクチュロース三水和物を種晶添加し、攪拌して結晶ラクチュロース三水和物を生成させたのち、この三水和物を分離することを特徴とする結晶ラクチュロース三水和物の製造法。」 4.当審の判断 (1)旧特許法第36条第4項について 上記平成17年(行ケ)第10205号判決において、知的財産高等裁判所は次のように判示している。 『(3) ・・・ 本件明細書の発明の詳細な説明には,実施例1〜3として,ラクチュロース三水和物を種晶としてラクチュロース三水和物を製造する方法が具体的に記載されているから,種晶となるべきラクチュロース三水和物を製造することができれば,当業者は,これを用いて実施例1〜3に記載された手法によりラクチュロース三水和物を製造することができ,「ラクチュロース三水和物」に係る本件発明1,2及び「ラクチュロース三水和物の製造法」に係る本件発明3を容易に実施することができると認められる。しかし,最初に,種晶となるべきラクチュロース三水和物をどのようにして製造するのかについて,発明の詳細な説明には,具体的な記載は存在しない。』 『(8) 被告は,本件明細書の記載に基づいて実際にラクチュロース無水物を種晶として使用しても,ラクチュロース三水和物が得られることは,追試実験(被告による甲5,6,原告による甲4)からも裏付けられると主張する。 しかしながら,上記のとおり,本件出願時の技術常識を考慮しても,本件明細書の記載から,当業者が種晶としてラクチュロース無水物を使用してラクチュロース三水和物を製造する方法を知り得るものと認めることはできないのであるから,被告の挙げる追試実験の結果を本件明細書の記載を補完するものとして参酌することはできない。 (9) 以上検討したところによれば,被告の主張はいずれも採用できず,本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて,当業者が種晶として使用するラクチュロース三水和物を容易に製造できる特段の事情が存在すると認めることはできないから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載には,特許法旧36条4項に違反する不備があるというべきである。』 当審の審理は上記判決の判断に拘束されるものである。 よって,本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件請求項1ないし3に係る発明について、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果が記載されていないとすべきものである。 5.むすび 以上のとおり,請求人主張の他の無効理由を検討するまでもなく,本件請求項1ないし3に係る特許は旧特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものであるから、旧特許法第123条第1項第3号に該当し、無効とすべきである。 審判に関する費用については,特許法169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-30 |
結審通知日 | 2004-02-10 |
審決日 | 2004-03-02 |
出願番号 | 特願平3-200928 |
審決分類 |
P
1
112・
531-
Z
(C07H)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中木 亜希 |
特許庁審判長 |
塚中 哲雄 |
特許庁審判官 |
内田 俊生 横尾 俊一 |
登録日 | 1998-11-06 |
登録番号 | 特許第2848721号(P2848721) |
発明の名称 | 結晶ラクチュロース三水和物とその製造法 |
代理人 | 西澤 利夫 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 大屋 憲一 |
代理人 | 藤田 節 |