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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1143022
審判番号 不服2004-1318  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-19 
確定日 2006-09-04 
事件の表示 平成10年特許願第137561号「接木育苗法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月16日出願公開、特開平11-313544〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年5月1日の出願であって、平成15年12月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月17日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月17日付けの手続補正を却下する。
[理由]

(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正することを含むものである。
「苗木の不必要な枝、葉及び芽を切り取って接穂の葉の数を2〜6葉にしたナス科の接穂を根の上方で切り取った根のないナス科の台木に接合し、遮光した断熱材容器内に蓄冷剤と保湿シ-トと接合した苗を入れ、低温で湿度が70%以上の低温高湿雰囲気の中で活着を行う果菜類の接木育苗法。」
(2)検討
上記補正は、補正前の請求項1に限定事項を付加しているものの、補正前の請求項1に係る特定事項の一部であるする「糊剤を接合面に塗布して接穂と台木との活着を行う」という事項を削除するものである。
よって、この補正は、特許法第17条の2第4項各号に規定する要件、即ち、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明の何れを目的としたものでもない。
(3)むすび
したがって、この補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって結論のとおり決定する。

3.本願発明について
(1)1.手続の経緯・本願発明
平成16年2月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年4月14日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「苗木の不必要な枝、葉及び芽を切り取った接穂を根の上方で切り取った根のない台木に接合し、遮光した断熱材容器内に蓄冷剤と保湿シ-トと接合した苗を入れ、低温高湿雰囲気の中で活着を行い、しかも糊剤を接合面に塗布して接穂と台木との活着を行う果菜類の接木育苗法。」(以下、「本願発明」という)
(2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である「河合仁,トマトの接ぎ木二本仕立て用苗の育苗法と草勢管理,農耕と園芸,1996年,51巻10号,P.96-98」(以下、「引用例1」という。)には、次の(イ)ないし(ホ)の事項が記載されている。
(イ)「トマトの産地では、青枯病や根腐萎ちょう病など、土壌伝染病性病害の発生が問題となっており、対策として耐病性台木を用いた接ぎ木栽培が多くなってきている。」(第96頁第1欄第5〜10行目)
(ロ)「側枝の葉数二〜三葉期の苗を、子葉直下一〜二cmの所で斜めに切断して穂木として用い、」(同頁第4欄第1〜3行目)
(ハ)「接ぎ木後の管理は、従来の割り接ぎ同様、ビニルで被覆したトンネルや簡易順化ボックス等に入れ、風を入れないようにする。」(同頁同欄9〜13行目)
(ニ)「遮光のために上部をラブシートや寒冷しゃで被覆し、茎葉の萎れを防ぎ活着を図る。なお、ビニル被覆した中に家庭用の加湿器を入れ、タイマー制御することにより、必要な湿度を必要な時間に発生させることができ、順化中の葉水とかん水の省力化が図れるとともに、萎れを発生させずに活着を進めることができる。接ぎ木後は、三〜四日間黒寒冷しゃの二重被覆を行い八〇%程度の遮光をし、その後遮光の程度を弱くしてじょじょに順化させる。」(第97頁第1欄第1行目〜第2欄第2行目)
(ホ)「・・・簡易ボックスを二重にし、小型のスポットクーラーや窓用クーラーで外側の空気の層を冷やすようにすると、外気温が三五℃を越えても簡易順化ボックス内は三〇℃以下に保たれ活着率が向上する。」(同頁第2欄第11行目〜第3欄第3行目)
よって、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という)「側枝の葉数二〜三葉期の苗を、子葉直下一〜二cmの所で斜めに切断して穂木として用い、接ぎ木後は、ビニルで被覆した簡易順化ボックス等に入れ、遮光のために上部をラブシートや寒冷しゃで被覆し、家庭用の加湿器を入れ、さらに簡易ボックスを二重にし、小型のスポットクーラーや窓用クーラーで外側の空気の層を冷やすようにしたトマトの接ぎ木用苗の育苗法」が記載されていると認められる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である「串間秀敏,促成ピーマン栽培技術(第1報)接ぎ木育苗技術,総合農試だより,1998年 1月27日,129号,P.6-7」(以下、「引用例2」という。)には、次の(ヘ)ないし(チ)の事項が記載されている。
(ヘ)「最近、促成ピーマン栽培において、土壌伝染性病害の発生が増加し、被害が拡大している。」(第6頁左欄第2行目〜第3行目)
(ト)「試験方法」における「試験1:接ぎ木方法の検討」の「(4)耕種概要」において、「接ぎ木方法 断根斜め合わせ接ぎ」の記載(第6頁左欄第23行目)、また、「養生 接ぎ木直後、発泡スチロール箱に湿度を保たせた状態で密閉後、常温保管」との記載が(第6頁左欄第26,27行目)ある。
(チ)「・・・ピーマンの接ぎ木苗の低温貯蔵温度は、10℃が望ましいと思われた。」(同頁右欄第28,29行目)

同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭59-175401号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の(リ)ないし(ル)の事項が記載されている。
(リ)「・・・接ぎ木用の接着に供しうるようにしたことを特徴とする接木用粘着剤。」(2.特許請求の範囲1)
(ヌ)「・・・本発明の接木用粘着剤は、・・・パテ状とペースト状の接木用粘着剤の提供を目的とするものである。」(明細書第2頁左欄第8行目〜第14行目】)
(ル)「・・・根張りのはげしい根の切口に接木用粘着剤を接着させて移植しても木の成長を促がすことはあっても成長を阻害することはなかった。・・・」(同第3頁左欄第4行目〜第6行目】)

(3)対比・判断
本願発明と引用発明について対比・判断する。
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「穂木」、「接ぎ木」、「ビニルで被覆した簡易順化ボックス等に入れ」、「遮光のために上部をラブシートや寒冷しゃで被覆し、家庭用の加湿器を入れ、さらに、簡易ボックスを二重にし、小型のスポットクーラーや窓用クーラーで外側の空気の層を冷やすようにした」、「トマトの接ぎ木」「用苗の育苗法」は、それぞれ本願発明の「接穂」、「台木に接合」、「遮光した容器内に接合した苗を入れ」、「低温高湿雰囲気の中で活着を行い」、「接穂と台木との活着を行う果菜類の接木育苗法」に相当する。
なお、引用発明の穂木は、側枝の葉数二〜三葉期の苗を、子葉直下一〜二cmの所で斜めに切断したものであって、不必要な枝、葉等を切り取る旨の記載はないが、このような不必要な枝、葉及び芽があれば苗木からこれらを切り取ることも、技術常識である。
よって両者は、
「苗木の不必要な枝、葉及び芽を切り取った接穂を根の上方で切り取った根のない台木に接合し、遮光した容器内に接合した苗を入れ、低温高湿雰囲気の中で活着を行い、しかも糊剤を接合面に塗布して接穂と台木との活着を行う果菜類の接木育苗法」である点で一致し、次の各点で相違する。
[相違点1]
台木に関して、本願発明は、根の上方で切り取った根のない台木を用いているのに対し、引用発明1ではそのような台木を用いていない点。
[相違点2]
容器内を低温高湿雰囲気とするために、本願発明は、断熱材容器中に蓄冷剤と保湿シ-トを入れているのに対し、引用発明では、二重にした簡易ボックスに、家庭用の加湿器を入れてるとともに、小型のスポットクーラーや窓用クーラーで外側の空気の層を冷やすようにしている点。
[相違点3]
接穂と台木との活着を行うに際し、本願発明では、糊剤を接合面に塗布するのに対し、引用発明では、どのように活着を行っているもか明瞭ではない点。

[相違点1の検討]
上記相違点1を検討すると、引用例2に記載された発明には、接ぎ木方法として、「断根斜め合わせ接ぎ」が記載されており、また、例えば、特開平8-317728号公報(【図4】参照)、特開平7-250565号公報(【図12】ないし【図14】参照)、特開平6-269221号公報などに見られるように、接木を行う際に根の上方で切り取った根のない台木を用いることは周知の技術である。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が引用例1記載された発明に周知の技術を適用することにより容易になし得ることである。
[相違点2の検討]
上記相違点2を検討すると、引用例2に関する説明の上記3.(2)には、(ト)「試験方法」における「試験1:接ぎ木方法の検討」の「(4)耕種概要」において、「接ぎ木方法 断根斜め合わせ接ぎ」の記載(第6頁左欄第23行目)、また、「養生 接ぎ木直後、発泡スチロール箱に湿度を保たせた状態で密閉後、常温保管」(第6頁左欄第26,27行目)、及び、(チ)「・・・ピーマンの接ぎ木苗の低温貯蔵温度は、10℃が望ましいと思われた。」(同頁右欄第28,29行目)が記載されている。
引用例2記載された発明も、本願発明の「接穂と台木との活着を行う果菜類の接木育苗法」と同様の技術分野に関するものであり、このことに加えて、容器内を低温高湿雰囲にするために、容器内に蓄冷剤と保湿シ-トを入れるようにすることは、当業者ならば、適宜なし得るものであると認められる。
したがって、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が引用例2記載された発明に引用例2記載の発明を適用することにより容易になし得ることである。
[相違点3の検討]
上記相違点3を検討すると、上記引用例3には、接ぎ木用の接着(接穂と台木との活着)に際し、根張りのはげしい根の切口(接合面)にパテ状とペースト状の接木用粘着剤(糊剤)を接着(塗布)させて移植する」ことが記載されている。
したがって、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が引用例1記載の発明に引用例3記載の発明を適用することにより容易になし得ることである。
そして、本願発明のように構成したことによる格別の効果も認められない。

(4)むすび
したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1ないし3及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2006-07-06 
結審通知日 2006-07-11 
審決日 2006-07-24 
出願番号 特願平10-137561
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
P 1 8・ 575- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 佳代子  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 宮川 哲伸
小山 清二
発明の名称 接木育苗法  
代理人 戸島 省四郎  

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