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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27B
管理番号 1144032
審判番号 不服2004-16808  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-12 
確定日 2006-09-22 
事件の表示 平成 7年特許願第297416号「プレカット装置における走行ストッパ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月28日出願公開、特開平 9-109106〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成7年10月20日の特許出願であって、同16年2月19日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同16年4月5日に明細書について手続補正がされたが、同16年7月12日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同16年8月12日に本件審判の請求がされ、同日付けで明細書について再度手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲について補正するものであって、その請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正前の請求項1
【請求項1】 ベースに固着された支持台の上面にモータで駆動される複数のローラを設けた搬送路と、該搬送路と平行にベースに装着されたレール支持台と、該レール支持台の側面に装着されたレールに係合されるベアリングを装着し、サーボモータで前記レールに沿って走行される走行部材と、該走行部材に固着された回動支持部材と、該回動支持部材に回動可能に装着された回動部材と、該回動部材の他端に前記搬送路の方向に突出する長尺のストッパと、前記回動部材の一端にシリンダの駆動軸が連結され、該シリンダの中間部分が前記送行部材に固着されたシリンダ支持部材とからなり、前記サーボモータによって前記送行部材が指定された位置に位置決めされ、前記搬送路で搬送される被加工木材を順次前記ストッパの先端に突設して位置決めすることを特徴とするプレカット加工装置における走行ストッパ装置。

(2)補正後の請求項1
【請求項1】 ベースに固着された支持台の上面にモータで駆動される複数のローラを設けた搬送路と、該搬送路と平行にベースに装着されたレール支持台と、該レール支持台の側面に装着されたレールに係合されるベアリングを装着し、サーボモータで前記レールに沿って走行される走行部材と、該走行部材の上部に固着された回動支持部材と、該回動支持部材の上部に回動可能に一端が支持され、他端が前記搬送路に方向に突出する長尺のストッパを設けた回動部材と、前記走行部材の側部に装着されたシリンダ支持部材と、該シリンダ支持部材に中央部分が回動可能に支持され、前記回動部材に駆動軸が回動可能に連結されたシリンダとからなり、前記シリンダを駆動して、前記回動部材を回動し、前記ストッパを前記搬送路の上に突出し、前記サーボモータによって前記送行部材が前記搬送路に沿って移動して指定された位置に位置決めされ、前記搬送路で搬送される被加工木材を順次前記ストッパの先端部に突設して位置決めすることを特徴とするプレカット加工装置における走行ストッパ装置。

2.補正の適否
上記特許請求の範囲についての補正は、回動支持部材について走行部材の「上部に」固着されることを限定し、回動部材について回動支持部材の「上部に回動可能に一端が支持され、他端が前記搬送路に方向に突出する長尺のストッパを設けた」ことを限定するとともに、シリンダ支持部材が走行部材の「側部に装着」されたことを限定し、シリンダが「シリンダ支持部材に中央部分が回動可能に支持され、前記回動部材に駆動軸が回動可能に連結された」ものであり、「前記シリンダを駆動して、前記回動部材を回動し、前記ストッパを前記搬送路の上に突出」することを限定し、さらに、送行部材が「前記搬送路に沿って移動して」位置決めすることを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかである。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、前記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる。

(2)引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭59-100203号(実開昭61-15104号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。

(ア)明細書第1頁第13行〜第2頁第1行
「本願のものは木材の製材工場用機械であって製材の長さを任意の長さにしかも極めて正確な寸法に切断するための自動位置決め装置に関するものである。」

(イ)同第4頁第4行〜第2頁第1行
「1は一般的な横切機架台で、通常架台上面に製材を移動し易くする為に多数のローラー1Aが設置されている。2は丸鋸で架台1に設置されている。3はピン式電動歩出し機またはピン式エアー歩出し機等のテーブル・バンド・ソー用歩出し機で、上記架台1に当該架台の長手方向をもって添設されている。12は歩出し機3に設置されたスライドボックスであるが、通常1mm〜50mmの範囲内で左右に移動する歩出し位置決めするよう構成されている。5はスライドシャフト6の支持軸受で架台1に固定されている。そして、この軸受はスライドシャフト6が自由に貫通スライドできるよう構成されている。6はスライドシャフトで一端をスライドボックス12に接続固定支持させ、他端部分を軸受によって支持されている。この場合、スライドシャフトはスライドボックス12のスライド面に平行延長線上に取付けられている。7は定規でスライドシャフト6上に設けた製材停止用のストッパータイプの定規でスライドシャフト6と共に左右に移動する、なお、この定規は簡単なロック装置によりスライドシャフトに固定し或は取付位置を自由に変更できるようにすることができる。又、定規を使用しない時は第5図の如く定規板を起こすとよい。また、定規はスライドシャフト上に1個または数個取付けることができる。」

(ウ)同第6頁第6行〜第7頁第6行
「8Aは卓子盤に取付けられるべきフレームで、左右両端部にはスプロケットホイール8B,8C,8D及びトルクモーター(ロッキングモートル〜商標)9が取付けられている。10,10は・・・(中略)・・・左右のガイド取付け板で、この取付け板10,10には上下に2本のガイドバー11,11が配設されている。12は上記ガイドバー11,11上を左右に摺動するスライドシャフト取付け用スライドボックスで、その構成は、・・・(中略)・・・が設けられている。」

(エ)同第13頁第2〜15行
「歩出し機本体の位置決め範囲が500mmの場合を例にとって説明する。
i)歩出し機3を操作することによりスライドボックス12とこれに接続するスライドシャフト6は1mm〜500mmの範囲で1mm単位で任意の位置にスライドし停止する。
ii)スライドシャフト6にロックされた定規7もこれと同じ動きをするので、任意の位置にスライドし停止し横切り切断ラインと定規との距離が得られ、位置決めが完了する。
iii)切断しようとする製材Wを架台上を移動した先端を定規7に突き当て、丸鋸2によって製材を所定寸法に切断する。」

(オ)第2,3図及び第7〜9図の記載によれば、架台1の上面に複数のローラ1Aを設けた搬送路が設けられるとともに、前記架台1に搬送路と平行に歩出し機3が添設され、該歩出し機3のフレームの側面にガイドバー11,11が装着されることが看取できる。
また、第3〜5図の記載によれば、定規7は、不使用時は起立され使用時には搬送路の上に突出するようスライドシャフト6上に回動可能に支持されることが看取できる。

これらの記載事項を本件補正発明に照らして整理すると、刊行物には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「架台1の上面に複数のローラ1Aを設けた搬送路と、前記架台1に該搬送路と平行に歩出し機3が添設され、該歩出し機3のフレームの側面に装着されたガイドバー11,11に沿ってトルクモータ9により走行されるスライドボックス12と、前記スライドボックス12に接続固定されたスライドシャフト6と、不使用時は起立され使用時には搬送路の上に突出するようスライドシャフト6上に回動可能に支持されるストッパータイプの定規7とからなり、前記定規7を前記搬送路の上に突出させ、前記トルクモータ9によって前記スライドボックス12が前記搬送路に沿って移動して指定された位置に位置決めされ、前記搬送路で搬送される製材を前記定規7に突き当て位置決めする自動位置決め装置。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「架台1」は、本件補正発明における「ベースに固着された支持台」に相当し、以下同様に「ガイドバー11,11」は「レール」に、「スライドボックス12」は「走行部材」に、「製材」は「被加工木材」に、それぞれ相当する。
また、引用発明において、架台1に該搬送路と平行に歩出し機3が添設され、該歩出し機3のフレームの側面にガイドバー11,11が装着されるから、引用発明が、搬送路と平行にベースに装着されたレール支持台を備え、該レール支持台の側面にレールが装着されるものであることは明らかである。
引用発明において、ストッパータイプの定規7は、不使用時は起立され使用時には搬送路の上に突出するようスライドシャフト6上に回動可能に設けられており、前記スライドシャフト6は、スライドボックス12に接続固定されるものである。そして、スライドシャフト6上の定規7を回動可能に支持する部分は回動支持部材ということができるものである。したがって、引用発明における「定規7」は、「走行部材に固着された回動支持部材と、該回動支持部材に回動可能に一端が支持され、他端が前記搬送路の方向に突出するストッパ部を有する回動部材」という限りで、本件補正発明における「走行部材の上部に固着された回動支持部材と、該回動支持部材の上部に回動可能に一端が支持され、他端が前記搬送路に方向に突出する長尺のストッパを設けた回動部材」と共通している。
また、引用発明における「トルクモータ9」は、モータという限りで本件補正発明における「サーボモータ」と共通する。
さらに、引用発明における「自動位置決め装置」は、走行ストッパ装置とも表現することができるものであり、引用発明において「搬送路で搬送される製材を前記定規7に突き当て位置決めする」ことは、搬送路で搬送される被加工木材を順次前記ストッパ部に突設して位置決めすることということができる。
したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。
[一致点]
「ベースに固着された支持台の上面にモータで駆動される複数のローラを設けた搬送路と、該搬送路と平行にベースに装着されたレール支持台と、該レール支持台の側面に装着されたレールと、モータで前記レールに沿って走行される走行部材と、該走行部材に固着された回動支持部材と、該回動支持部材に回動可能に一端が支持され、他端が前記搬送路の方向に突出するストッパ部を有する回動部材と、前記回動部材を回動し、前記ストッパ部を前記搬送路の上に突出し、前記モータによって前記送行部材が前記搬送路に沿って移動して指定された位置に位置決めされ、前記搬送路で搬送される被加工木材を順次前記ストッパ部に突設して位置決めする走行ストッパ装置。」である点。
[相違点1]
本件補正発明では、プレカット加工装置における走行ストッパ装置であって、搬送路を構成する複数のローラはモータで駆動されるのに対して、引用発明では、プレカット加工装置とはされてなく、前記複数のローラはモータで駆動されるか否か明らかでない点。
[相違点2]
本件補正発明では、走行部材がレールに係合されるベアリングを装着しており、サーボモータで前記レールに沿って走行されるのに対して、引用発明では、スライドボックスはベアリングを有するか否か明らかでなく、トルクモータにより走行される点。
[相違点3]
本件補正発明では、走行部材の上部に固着された回動支持部材と、該回動支持部材の上部に回動可能に一端が支持され、他端が前記搬送路に方向に突出する長尺のストッパを設けた回動部材と、前記走行部材の側部に装着されたシリンダ支持部材と、該シリンダ支持部材に中央部分が回動可能に支持され、前記回動部材に駆動軸が回動可能に連結されたシリンダとからなり、前記シリンダを駆動して、前記回動部材を回動し、前記ストッパを前記搬送路の上に突出し、前記搬送路で搬送される被加工木材を順次前記ストッパの先端部に突設して位置決めするのに対して、引用発明では、定規はシリンダで駆動されるものではなく、定規が長尺のストッパを設けたものとはされていない点。

(4)相違点についての検討
ア.相違点1について
引用発明に係る位置決め装置を、プレカット加工装置に適用できないとする特段の理由はないから、引用発明をプレカット加工装置における走行ストッパ装置とすることに格別困難性は見出せない。また、搬送路を構成する複数のローラをモータで駆動することは従来周知の技術手段であり(必要であれば、特開平1-140912号公報の第3頁左上欄第1〜5行の記載を参照)、引用発明における複数のローラをモータで駆動することにも困難性は見出せない。

イ.相違点2について
走行部材をレールにベアリングを介して走行可能に配置することは従来周知の技術手段であり(例えば、原査定の拒絶理由で引用された実願昭62-130334号(実開昭64-34203号)のマイクロフィルムにおけるすべりナット11を参照)、引用発明における走行部材にレールに係合されるベアリングを装着することに困難性は見当たらない。
また、走行部材の走行をサーボモータにより行うことも周知の技術手段であり、引用発明における走行部材の走行をサーボモータにより行うことは当業者が容易になし得たことである。

ウ.相違点3について
引用発明では、スライドブロックに対する定規の回動を動力により行うとはされていないが、部材の回動を手動で行うか動力により行うかは当業者が適宜選択できる事項であるとともに、ストッパ等の部材の回動をシリンダにより行うことも従来周知の技術手段にすぎない(必要であれば、上記特開平1-140912号公報の第6〜8図における停止部材58を参照)。
そして、部材の回動をシリンダにより行うに当たり、シリンダ及びシリンダの駆動軸をどの部位に連結支持するかは当業者が適宜設定し得る設計的事項である。また、ストッパの長さをどの程度にするか及びストッパのどの部位に被加工木材を当接させるかも、搬送路の配置等に応じて当業者が適宜設定すべき設計的事項にすぎないものである。
そうすると、引用発明に上記周知の技術手段を適用して相違点3に係る本件補正発明の特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

エ.本件補正発明の効果について
本件補正発明によってもたらされる効果も、引用発明及び上記従来周知の技術手段から当業者であれば十分予測できる範囲内のものであって格別顕著なものではない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び従来周知の技術手段事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は審判請求書において、概略、「又、引用文献2(実願昭59-100203号(実開昭61-15104号)のマイクロフィルム)には、スライドシャフトに定規を1個又は複数個配置し、定規を使用しない時は、定規を手で上方に押し上げるように構成されている。しかしながら、引用文献2には、本願発明のように、搬送路と平行にレール支持台を装着し、レール支持台のレールに沿って走行部材を走行させ、走行部材に設けた回動部材にストッパの一端を装着し、他端をストッパの先端部とし、走行部材をシリンダで回動して、ストッパが搬送路の上に来るように構成したもので、ストッパの先端部に被加工木材が当接して位置決めされ、ストッパを使用しないで走行させる場合は、回動部材をシリンダで上方に引き上げるような構成は全く記載されておらず、示唆すらされていない。」として、本件発明が引用文献1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨を主張している。
しかしながら、上述のとおり、部材の回動を手動で行うか動力により行うかは当業者が適宜選択できる事項であるとともに、ストッパ等の部材の回動をシリンダにより行うことも従来周知の技術手段にすぎないものであり、引用発明における回動部材をシリンダで駆動するよう構成することは当業者が容易になし得た事項というべきである。
よって、請求人の上記主張は採用することができない。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、その余の補正の要件について検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1.本件発明
平成16年8月12日付の補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成16年4月5日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、前記第2の2(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本件発明は、本件補正発明から前記第2の2に示した限定事項を省いたものである。
そうすると、本件発明を特定する事項の全てを含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が前記第2の2(4)で示したとおり、引用発明及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-12 
結審通知日 2006-07-18 
審決日 2006-08-02 
出願番号 特願平7-297416
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B27B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就堀川 一郎  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 豊原 邦雄
佐々木 正章
発明の名称 プレカット装置における走行ストッパ装置  
代理人 鈴木 和夫  

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