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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1144035 |
審判番号 | 不服2005-6294 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-08-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-08 |
確定日 | 2006-09-22 |
事件の表示 | 特願2000-36489「茹でピーナッツの製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年8月21日出願公開、特開2001-224345〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件発明 本件出願は、平成12年2月15日の特許出願であって、その請求項1乃至2に係る発明は、平成16年11月5日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項により特定されるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本件発明1」という。) 「【請求項1】洗浄された8分〜9分完熟のさや付き落花生を圧力容器内でボイルする工程と、ボイルしたさや付き落花生を急速冷凍する工程とを備えた茹でピーナッツの製造法において、前記圧力容器内でボイルする前に、調味液中に前記落花生を加圧状態で予め定められた時間浸漬する工程を備えることを特徴とする茹でピーナッツの製造法。」 2.引用例記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された刊行物である特開昭63-296670号公報(以下、「引用例1」という。)には、(a)「1.外皮殻白色の中粒種改良品等の厳選された特定品種の子実熟度約80%のピーナツを新鮮なうちに、短時間で加圧状態の高温蒸気を用いて加熱処理し、その後急速凍結し、ピーナツの外皮殻の色沢及び子実の味、香り、舌ざわり、柔らかさを良くしたことを特徴とする莢付きピーナツの加工方法。」(特許請求の範囲)が記載され、(b)「第3工程において、洗浄された莢付きピーナツを塩分9%以下、アミノ酸類0.1%以上の混合液に10〜15分の短時間浸漬し、熟度80%のものを使用したことによるアミノ酸減少分を補填し、且つ適量の塩分によってうま味を活性化させる。」(公報第2頁右下欄第15〜19行)ことが記載され、同じく特開平10-66547号公報(以下、「引用例2」という。)には、(c)「【請求項1】ピーナツを水に浸漬して灰汁を取り、さらに煮沸により灰汁を取ったピーナツを水で洗浄し、洗浄したピーナツ、塩及び水を圧力釜に入れて加熱加圧し、圧力釜から取り出したピーナツを冷却し、真空包装し、真空包装したピーナツを加熱殺菌した後に冷却することを特徴とする塩ゆでピーナツの製造方法。・・・」(【特許請求の範囲】)が記載され、(d)「(2)圧力釜で味付け加熱するので、短時間でピーナツを芯まで柔らかくかつムラなく煮ることができる。」(段落【0021】)ことが記載され、同じく特開昭62-296863号公報(以下、「引用例3」という。)には、(e)「殻付き種実を蓋付き篭に入れ、これを耐圧容器内に食塩水その他の調味液と共に収容して該容器内の圧力を大気圧よりも高めて一定時間保持し、しかるのち該容器内の調味液を排出して内部を大気圧とし、その後該容器内の圧力を空気圧により大気圧より高めることを約1分間以上の間隔をおいて数回繰返し、該蓋付き篭から取出した該種実を水洗し、脱水することを特徴とする殻付き種実の味付方法。」(特許請求の範囲)が記載され、(f)「本発明は、さや付きピーナツ、殻付きくるみ等の殻付き種実に殻を壊さずにその内部の実に味付する方法に関する。」(公報第1頁左下欄第16〜18行)と記載されている。 3.対比・判断 本件発明1は、洗浄された8分〜9分完熟のさや付き落花生を、調味液中に加圧状態で予め定められた時間浸漬し、その後、圧力容器内でボイルし、ボイルしたさや付き落花生を急速冷凍して茹でピーナッツを製造することにより、シブ味がなくシブ皮のついたまま美味しく食べることのできる茹でピーナッツを得、また、さや付き落花生を用いてもさやの内部の種子にまで調味液が浸み込んだ茹でピーナッツを得るものである。 これに対して、引用例1には、「洗浄された殻付きの子実熟度約80%のピーナッツを塩分9%以下、アミノ酸類0.1%以上の混合液に短時間浸漬し、短時間で加圧状態の高温蒸気を用いて加熱処理し、その後急速凍結し、ピーナッツの外皮殻の色沢及び子実の味、香り、舌ざわり、柔らかさを良くした殻付きピーナッツの加工方法。」が記載されているといえる。(以下、「引用例発明」という。) 本件発明1と引用例発明とを対比すると、前者の「ボイル」も加熱処理の一種であり、後者の「殻付きの子実熟度約80%のピーナッツ」は、前者の「8分〜9分完熟のさや付き落花生」に相当するから、両者は、「洗浄された8分〜9分完熟のさや付き落花生を加圧状態で加熱処理する工程と、加熱処理したさや付き落花生を急速冷凍する工程とを備えた茹でピーナッツの製造法において、加熱処理する前に、調味液中に前記落花生を予め定められた時間浸漬する工程を備える茹でピーナッツの製造法。」である点で一致し、 (1)加圧状態の加熱処理に関して、前者が「圧力容器内でボイル」しているのに対して、後者が「短時間で加圧状態の高温蒸気を用いて加熱処理」している点、 (2)調味について、前者が加圧状態で行っている点、 で相違している。 そこで、上記相違点について検討する。 相違点(1)について、 加圧状態の加熱処理として圧力容器内でボイル処理することは調理技術における周知技術であり、圧力下で行うことによって迅速に調理が行えることも技術常識である。そして、引用例2には、殻付きピーナツではないが、洗浄したピーナツ、塩及び水を圧力釜に入れて加熱加圧し、短時間でピーナツを芯まで柔らかくかつムラなく煮ることができることも記載されている。 そうすると、調理の迅速化などを目的として引用例発明の加熱工程において、「短時間で加圧状態の高温蒸気を用いて加熱処理」することに代えて、「圧力容器内でボイル」する技術を採用することは周知技術の適用にすぎず、それにより当業者が予期し得ない効果を奏するものでもないから、当業者が容易になし得ることである。 相違点(2)について 本件発明1においては,本件明細書の段落【0005】に「本発明は、シブ味がなくシブ皮のついたまま美味しく食べることのできる茹でピーナッツを得ることを目的とする。また、さや付き落花生を用いてもさやの内部の種子にまで浸み込むことができる茹でピーナッツを得ることを別の目的とする。」と記載されているように、さやを壊さずにさやの内部のピーナツを味付けすることを目的として、さや付き落花生を加圧調味するものである。 ここで、調味するにあたって加圧処理することは調理技術における周知技術であり、圧力下で行うことによって調味時間を短縮できることも技術常識である。そして、引用例2には、ピーナツを圧力釜で味付け加熱すること(上記記載事項(d))、また、引用例3には、さや付きピーナツを耐圧容器内に食塩水その他の調味液と共に収容して該容器内の圧力を大気圧より高めて一定時間保持し、殻を壊さずにその内部のピーナツを味付けできることが記載されている(上記記載事項(f))。 そうすると、殻を壊さずにその内部のピーナツを味付けするという同一の目的を以て、引用例発明の調味について加圧状態で行うことも当業者が容易になし得るところであり、それを妨げる特段の理由も見出せない。 そして、本件発明1の明細書記載の効果も、引用例1乃至3及び周知技術にから当業者が予期しうる効果にすぎない。 したがって、本件発明1は、本件の出願日前に頒布された引用例1乃至3 に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 審判請求人は、審判請求書において「引用例3での調味における加圧処理は本願発明の加圧処理とは添加された食塩の量及び加圧処理後の加熱処理工程が相違するため、その作用・機能が相違するものであるから、引用例3から本願発明が容易になし得るものではない」旨主張しているので検討する。 本件特許請求の範囲の請求項1には、「添加された食塩の量」については何も記載されていないから、審判請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づく主張とはいえない。 また、前記のとおり、本件発明1において、さや付き落花生を調味液中に加圧状態で浸漬する目的は、さや内部の種子に調味成分を浸み込ませることであり、しっかり味付けをするという加圧調味の目的において、引用例3に記載された発明と同様であるから、その点において両者の作用・機能が相違するものとはいえないところ、審判請求人の主張は採用できない。 4. むすび 以上のとおり、本件発明1は、その出願前日本国内において頒布された上記の引用刊行物1乃至3に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-07-14 |
結審通知日 | 2006-07-19 |
審決日 | 2006-08-07 |
出願番号 | 特願2000-36489(P2000-36489) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A23L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小石 真弓 |
特許庁審判長 |
河野 直樹 |
特許庁審判官 |
鈴木 恵理子 鵜飼 健 |
発明の名称 | 茹でピーナッツの製造法 |
代理人 | 佐藤 年哉 |
代理人 | 花村 太 |
代理人 | 佐藤 正年 |