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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1144158
審判番号 不服2003-14256  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-09-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-24 
確定日 2006-09-21 
事件の表示 平成10年特許願第 59720号「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月21日出願公開、特開平11-255419〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年3月11日の出願であって、平成15年6月19日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月18日付で手続補正がなされたものである。

2.本願発明
平成15年8月18日付の手続補正は、請求項4乃至6を削除するものであるから、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当し、適法になされたものである。
したがって、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成15年8月18日付の手続補正書の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「シートに画像形成を行う画像形成手段と、前記画像形成手段により画像形成されたシートに穴を空ける穴空け手段と、前記穴空け手段による穴空け動作を設定するための設定手段と、印刷すべきシートのサイズを判別する第1の判別手段と、前記第1の判別手段によって判別された印刷すべきシートのサイズに基づいて、前記穴空け手段による穴空け位置がシート内に収まるか否か判別する第2の判別手段と、画像形成動作の開始が指示された後、前記第2の判別手段により穴空け位置がシート内に収まらないと判別されたことに応じて画像形成動作の開始を解除させ、画像形成動作の開始を解除させた後に再び画像形成動作の開始が指示されると、前記設定手段により設定された穴空け動作の設定を解除して画像形成動作を開始させる制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。」

(2-2) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の平成7年10月17日に頒布された特開平7-267481号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある。
(a)「【0010】
本願発明は、上記課題に鑑みて成されたもので、その目的は、搬送方向を横切る方向に穿孔手段(穿孔爪と駆動部とからなる)を可動にすることで、用紙の搬送方向に沿ってパンチ孔を形成する場合も、一つの穿孔手段にて、コストアップや装置の複雑化を招くことなく、センター基準型の複写機等に搭載可能とし、さらには、一つの穿孔手段にて、用紙の搬送方向に直交する方向に沿って、任意の位置に、任意の個数、かつ、用紙を停止させることなくパンチ孔を形成可能な用紙穿孔装置を提供することにある。また、パンチ孔を形成するにあたり、用紙サイズに応じてパンチ処理を実施するか否かを決定することで、ミスパンチによるミスコピーの発生を防止可能な用紙穿孔装置を提供することにある。」
(b)「【0020】
本実施例に係る複写機には、図2に示すように、本体1の上面に複写対象となる原稿を載置する透明な原稿載置台2が設けられると共に、この原稿載置台2を覆う原稿カバー3が設けられている。また、本体1の上面には、図3に示す操作部100が設けられている。」
(c)「【0021】
上記操作部100は、パンチモードを指定するためのパンチキー101、メッセージ表示用の表示パネル102、入力キー103、テンキー104、テンキー用クリアキー105、解除キー106、及びプリントキー107を備えており、ユーザはこの操作部100を操作することで、各種モード、コピー枚数、パンチモードにおけるパンチ孔数、パンチ孔形成位置等を指定できるようになっている。」
(d)「【0023】
光学系の下方には、上述の感光体13を中心とする複写プロセス部が配置されており、この感光体13の周囲には、メインチャージャユニット14、現像ユニット15、転写チャージャ16、剥離チャージャ17、クリーニングユニット18等が配されている。また、複写プロセス部には、感光体13の出紙側に設けられるベルト状のサクションユニット19や、サクションユニット19の出紙側に配される定着装置20も含まれている。」
(e)「【0057】
図10に示すように、この制御系では、CPU(Central Processing Unit)からなるコントローラ(制御手段・判断手段)60が備えられている。このコントローラ60には、上記した用紙検出センサ32、用紙側端部検出センサ110、ホームポジションセンサ111、リターンポジションセンサ112、及び本体1側の給紙部に備えられた前述の用紙サイズ検出センサ118が接続されており、各センサからの検出信号が入力されるようになっている。また、このコントローラ60には、本体1側とも接続されており、用紙搬送の有無、搬送される用紙Pに対してパンチ処理を実施するかどうか(即ち、パンチモードが指定されているかどうか)、パンチ孔の形成位置・個数等を知らせる信号が入力されるようになっている。」
(f)「【0111】
以下に、本実施例の複写機におけるミスコピーを防止するための動作を、図2、図3、図10、図23を用いて、図22のフローチャートを参照しながら説明する。ここで、フローチャート中における判断基準Xとしては、上記用紙穿孔装置27が用紙Pの搬送方向に直交する方向に沿ってパンチ孔を形成する場合には、『用紙の幅が短すぎず、適切であるか?』が適合する。一方、用紙Pの搬送方向に沿ってパンチ孔を形成する場合には、『用紙の長さが短すぎず、適切であるか?』が適合する。また、その他、用紙Pの搬送方向もしくはその直交方向の何れに沿ってパンチ孔を形成する場合にも、『用紙は定形サイズであるかどうか?』が適合する。また、用紙自動選択モードが設定されている場合は、判断基準Xとしては、『原稿の置き方は適切であるか?、不適切な場合は、原稿の向きを変えることで適切となるか?』が適合する。」
(g)「【0112】
ユーザによる原稿載置台2上への原稿セットが行われると(S100)、まず、用紙自動選択モードが設定されているかどうかが判断される(S101)。用紙自動選択モードが設定されている場合は、原稿載置台2近傍に備えられた図示しない原稿検知センサにより原稿検知が行われ(S104)、原稿の大きさに等しい用紙Pが自動的に選択される(S105)。そして、この用紙Pの自動選択時に、用紙Pの大きさが検知される。一方、用紙自動選択モードが非設定である場合は、ユーザによる給紙部への用紙セットが行われ(S102)、本体1側に備えられた図10に示す用紙サイズ検出センサ118によりこの用紙Pのサイズが検知される(S103)。」
(h)「【0113】
次いで、ユーザによる図3に示す操作部100のパンチキー101のONにより(S106)、パンチモードが設定される(S107)。パンチモードが設定されると、判断基準Xを満たしているかどうかが判断される(S108)。ここで、判断基準Xを満たしている場合は、ユーザによるプリントキー107のONにより(S116)、複写動作が実施され(S117)、続いてパンチ処理が実施された後(S118)、用紙Pが排出され(S115)、動作を終了する。」
(i)「【0114】
一方、もし上記S108にて、判断基準Xを満たしていない場合は、判断基準Xに応じた警告メッセージが操作部100の表示パネル102に表示される(S109)。」
(j)「【0116】
これにより、ユーザは、表示された警告メッセージに応じて複写を実施する前に、用紙Pを変更、或いは原稿の向きを変えることができる。したがって、上記のようなミスパンチによるミスコピーを未然に防止することが可能となる。」
(k)「【0118】
一方、上記S108にて変更されなかった場合は、ユーザによるプリントキー107のONと共に(S112)、自動的にパンチモードが解除され(S113)、複写動作のみが実施されて用紙Pが排出されて(S114・S115)、処理を終了する。」

上記(a)乃至(k)より、引用例には、
「用紙に複写動作を行う『複写プロセス部等からなるもの』と、前記複写動作を行う『複写プロセス部等からなるもの』により複写された用紙にパンチ処理を行う用紙穿孔装置と、前記用紙穿孔装置によるパンチ処理を設定するためのパンチキーと、複写すべき用紙のサイズを検出する用紙サイズ検出センサと、前記用紙サイズ検出センサによって検出された複写すべき用紙のサイズに基づいて前記用紙穿孔装置によるパンチ孔の位置が用紙内に収まるか否か判断するコントローラと、パンチ処理を設定した後、前記コントローラによりパンチ孔の位置が用紙内に収まらないと判断されたことに応じて用紙の変更等を促す警告メッセージを表示させ、警告メッセージを表示させた後にプリントキーをONすると、前記パンチキーにより設定されたパンチ処理を解除して複写動作を開始させるコントローラとを有することを特徴とする画像形成装置。」が開示されているものと認める。

(2-3) 対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比する。
○後者の「用紙」、「複写動作」、「複写プロセス部等からなるもの」、「パンチ処理」、「用紙穿孔装置」、「パンチキー」、「検出」、「用紙サイズ検出センサ」、「複写」、「パンチ孔の位置」、「判断」、「プリントキーをONする」は、
前者の「シート」、「画像形成」、「画像形成手段」、「孔を空ける・孔空け動作」、「孔空け手段」、「設定手段」、「判別」、「第1の判別手段」、「印刷」、「孔空け位置」、「判別」、「画像形成動作の開始が指示される」にそれぞれ相当している。
○後者の「パンチ処理(孔空け動作)を設定した後、コントローラによりパンチ孔の位置(孔空け位置)が用紙(シート)内に収まらないと判断(判別)されたことに応じて警告メッセージを表示させ、警告メッセージを表示させた」と、
前者の「画像形成動作の開始が指示された後、第2の判別手段により穴空け位置がシート内に収まらないと判別されたことに応じて画像形成動作の開始を解除させ、画像形成動作の開始を解除させた」とは、共に、
「プリントキーをONする(画像形成動作の開始が指示される)と、パンチキー(設定手段)により設定されたパンチ処理(穴空け動作)の設定を解除して複写動作(画像形成動作)を開始させる」の前に行われるもの(前工程)であることから、両者は「前工程」という点で軌を一にしているものと認める。
○後者の「コントローラ」は、
用紙サイズ検出センサ(第1の判別手段)によって検出(判別)された複写(印刷)すべき用紙(シート)のサイズに基づいて、用紙穿孔装置(穴空け手段)によるパンチ孔の位置(穴空け位置)が用紙(シート)内に収まるか否か判断(判別)するもの(第2の判別手段)であると共に、
「前工程」の後にプリントキーをONする(画像形成動作の開始が指示される)と、パンチキー(設定手段)により設定されたパンチ処理(穴空け動作)の設定を解除して複写動作(画像形成動作)を開始させるもの(制御手段)でもあることから、
前者の「第2の判別手段」および「制御手段」に対応しているものと認める。

上記より、両者は、
「シートに画像形成を行う画像形成手段と、前記画像形成手段により画像形成されたシートに穴を空ける穴空け手段と、前記穴空け手段による穴空け動作を設定するための設定手段と、印刷すべきシートのサイズを判別する第1の判別手段と、前記第1の判別手段によって判別された印刷すべきシートのサイズに基づいて、前記穴空け手段による穴空け位置がシート内に収まるか否か判別する第2の判別手段と、『前工程』後に画像形成動作の開始が指示されると、前記設定手段により設定された穴空け動作の設定を解除して画像形成動作を開始させる制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。」という点で一致し、以下の点で相違しているものと認める。

本願発明では、「再び画像形成動作の開始が指示されると、設定手段により設定された穴空け動作の設定を解除して画像形成動作を開始させる」前に行われるもの(前工程)が、「画像形成動作の開始が指示された後、第2の判別手段により穴空け位置がシート内に収まらないと判別されたことに応じて画像形成動作の開始を解除させ、画像形成動作の開始を解除させた」ものであるのに対して、
引用例記載の発明では、「画像形成動作の開始が指示されると、設定手段により設定された穴空け動作の設定を解除して画像形成動作を開始させる」前に行われるもの(前工程)が、「孔空け動作を設定した後、第2の判別手段により孔空け位置がシート内に収まらないと判別されたことに応じて用紙の変更等を促す警告メッセージを表示させ、警告メッセージを表示させた」ものである点。(以下、「相違点」という。)

上記相違点について検討する。
引用例記載の発明において、
「孔空け動作の設定」は、「画像形成動作の開始」を前提にして行われるものであることから、上記設定と共に「画像形成動作の開始の指示」も行われることは十分に想定されるので、「孔空け動作を設定した後」は、「孔空け動作を設定して、画像形成動作の開始が指示された後」に対応していると認められ、
また、「画像形成動作の開始が指示された後」に、「第2の判別手段により孔空け位置がシート内に収まらないと判別され、用紙の変更等を促す警告メッセージが表示された」ならば、画像形成動作をこのまま続行するかどうかを判断しなければならないのは当然のことであり、そうである以上、判断の一つとして、「画像形成動作の解除」を選択すること自体、当業者であれば普通に行ない得ることであると認める。
上記より、引用例記載の発明の「孔空け動作を設定した後、第2の判別手段により孔空け位置がシート内に収まらないと判別されたことに応じて用紙の変更等を促す警告メッセージを表示させ、警告メッセージを表示させた」点は、「孔空け動作を設定して、画像形成動作の開始が指示された後、第2の判別手段により穴空け位置がシート内に収まらないと判別されたことに応じて用紙の変更等を促す警告メッセージを表示して、画像形成動作の開始を解除させ、画像形成動作の開始を解除させた」点を示唆するものであると認める。
したがって、引用例記載の発明において、
「孔空け動作を設定した後、第2の判別手段により孔空け位置がシート内に収まらないと判別されたことに応じて用紙の変更等を促す警告メッセージを表示させ、警告メッセージを表示させた」点を、
「孔空け動作を設定して、画像形成動作の開始が指示された後、第2の判別手段により穴空け位置がシート内に収まらないと判別されたことに応じて用紙の変更等を促す警告メッセージが表示して、画像形成動作の開始を解除させ、画像形成動作の開始を解除させた」点に、
いい方を変えると、
「画像形成動作の開始が指示された後、第2の判別手段により孔空け位置がシート内に収まらないと判別されたことに応じて画像形成動作の開始を解除させ、画像形成動作の開始を解除させた」点に代えることに格別の困難性があるとは云えない。
さらに、上記のようにしたとき、「画像形成動作の開始を解除させた」後の「画像形成動作の開始が指示される」ことは、2度目の指示であることから、実質的に「再び画像形成動作の開始が指示される」ことになるものと認める。

以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2、3に係る発明について、検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-20 
結審通知日 2006-07-25 
審決日 2006-08-08 
出願番号 特願平10-59720
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉野 裕幸  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 豊永 茂弘
宮崎 敏長
発明の名称 画像形成装置  
代理人 内尾 裕一  
代理人 西山 恵三  

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