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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1147242
審判番号 不服2006-3976  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-01-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-03 
確定日 2006-11-10 
事件の表示 特願2001-206506「録再装置及び録再方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月24日出願公開、特開2003- 22657〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成13年7月6日の特許出願であって、平成18年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月3日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同年3月29日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年3月29付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成18年3月29付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

〔理 由〕

(1)補正前及び補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲についてするもので、補正前(出願当初)に、

「【請求項1】
再生媒体に記録されている複数個の記録・再生単位を記録媒体に記録している記録期間において、ユーザ要求による記録対象の記録・再生単位の選択を少なくとも含むエディットを可能にする記録中エディット手段、及び
最新のエディット内容に基づいて再生媒体の記録・再生単位について記録媒体への記録を実施する記録実施手段、
を有していることを特徴とする録再装置。
【請求項2】
再生媒体の記録・再生単位を記録媒体に記録するに先立ち、ユーザによる記録対象の記録・再生単位の選択を少なくとも含むエディットを可能にする記録前エディット手段、
最新のエディット内容に基づいて再生媒体の記録・再生単位について記録媒体への記録を実施する記録実施手段、及び
記録媒体への記録・再生単位の記録期間に、ユーザ要求に応じてエディット内容の変更を可能にする記録中エディット手段、
を有していることを特徴とする録再装置。
【請求項3】
前記記録中エディット手段は、記録媒体への記録・再生単位の記録期間に、記録中エディットを繰り返し、可能にするものであることを特徴とする請求項1又は2記載の録再装置。
【請求項4】
ユーザからの記録中エディット要求があった時に記録中の記録・再生単位を第1の記録・再生単位、及び第1の記録・再生単位の次に記録予定の記録・再生単位を第2の記録・再生単位とそれぞれ定義して記録中エディットの終了前でかつユーザが第2の記録・再生単位についてのエディットを未処理としたまま第1の記録・再生単位についての記録が終了したときは、記録媒体への記録・再生単位の記録を一時休止する記録一時休止手段、
を有していることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の録再装置。
【請求項5】
前記記録一時休止手段は、記録中エディットの終了前でユーザが第2の記録・再生単位についてのエディットは処理済みでかつ第1の記録・再生単位についての記録が終了したときは、記録を一時休止することなく、前記記録媒体への第2の記録・再生単位の記録を開始することを特徴とする請求項4記載の録再装置。
【請求項6】
前記記録一時休止手段は、ユーザによる第2の記録・再生単位についてのエディットの処理の済みしだい記録一時休止を解除して、前記記録媒体への第2の記録・再生単位の記録を開始することを特徴とする請求項4記載の録再装置。
【請求項7】
再生媒体に記録されている複数個の記録・再生単位を記録媒体に記録している記録期間において、ユーザ要求による記録対象の記録・再生単位の選択を少なくとも含むエディットを可能にし、
最新のエディット内容に基づいて再生媒体の記録・再生単位について記録媒体への記録を実施する、
ことを特徴とする録再方法。
【請求項8】
再生媒体の記録・再生単位を記録媒体に記録するに先立ち、ユーザによる記録対象の記録・再生単位の選択を少なくとも含むエディットを可能にし、
最新のエディット内容に基づいて再生媒体の記録・再生単位について記録媒体への記録を実施し、
記録媒体への記録・再生単位の記録期間に、ユーザ要求に応じてエディット内容の変更を可能にする、
ことを特徴とする録再方法。
【請求項9】
記録中エディットは、記録媒体への記録・再生単位の記録期間に繰り返し、可能とされていることを特徴とする請求項7又は8記載の録再方法。
【請求項10】
ユーザからの記録中エディット要求があった時に記録中の記録・再生単位を第1の記録・再生単位、及び第1の記録・再生単位の次に記録予定の記録・再生単位を第2の記録・再生単位とそれぞれ定義して記録中エディットの終了前でかつユーザが第2の記録・再生単位についてのエディットを未処理としたまま第1の記録・再生単位についての記録が終了したときは、記録媒体への記録・再生単位の記録を一時休止する、
ことを特徴とする請求項7?9のいずれかに記載の録再方法。
【請求項11】
記録中エディットの終了前でユーザが第2の記録・再生単位についてのエディットは処理済みでかつ第1の記録・再生単位についての記録が終了したときは、記録を一時休止することなく、前記記録媒体への第2の記録・再生単位の記録を開始することを特徴とする請求項10記載の録再方法。
【請求項12】
ユーザによる第2の記録・再生単位についてのエディットの処理の済みしだい記録一時休止を解除して、前記記録媒体への第2の記録・再生単位の記録を開始することを特徴とする請求項10記載の録再方法。」

とあったのを、本件補正により、

「【請求項1】
再生媒体に記録されている複数個の記録・再生単位を記録媒体に記録している記録期間において、ユーザ要求によるダビング対象の記録・再生単位の選択及び記録順に関するエディットを可能にする記録中エディット手段、及び
最新のエディット内容に基づいて再生媒体の記録・再生単位について記録媒体への記録を実施する記録実施手段、
を有していることを特徴とする録再装置。
【請求項2】
再生媒体の記録・再生単位を記録媒体に記録するに先立ち、ユーザによるダビング対象の記録・再生単位の選択及び記録順に関するエディットを可能にする記録前エディット手段、
最新のエディット内容に基づいて再生媒体の記録・再生単位について記録媒体への記録を実施する記録実施手段、及び
記録媒体への記録・再生単位の記録期間に、ユーザ要求に応じてエディット内容の変更を可能にする記録中エディット手段、
を有していることを特徴とする録再装置。
【請求項3】
前記記録中エディット手段は、記録媒体への記録・再生単位の記録期間に、記録中エディットを繰り返し、可能にするものであることを特徴とする請求項1又は2記載の録再装置。
【請求項4】
ユーザからの記録中エディット要求があった時に記録中の記録・再生単位を第1の記録・再生単位、及び第1の記録・再生単位の次に記録予定の記録・再生単位を第2の記録・再生単位とそれぞれ定義して記録中エディットの終了前でかつユーザが第2の記録・再生単位についてのエディットを未処理としたまま第1の記録・再生単位についての記録が終了したときは、記録媒体への記録・再生単位の記録を一時休止する記録一時休止手段、
を有していることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の録再装置。
【請求項5】
前記記録一時休止手段は、記録中エディットの終了前でユーザが第2の記録・再生単位についてのエディットは処理済みでかつ第1の記録・再生単位についての記録が終了したときは、記録を一時休止することなく、前記記録媒体への第2の記録・再生単位の記録を開始することを特徴とする請求項4記載の録再装置。
【請求項6】
前記記録一時休止手段は、ユーザによる第2の記録・再生単位についてのエディットの処理の済みしだい記録一時休止を解除して、前記記録媒体への第2の記録・再生単位の記録を開始することを特徴とする請求項4記載の録再装置。
【請求項7】
再生媒体に記録されている複数個の記録・再生単位を記録媒体に記録
している記録期間において、ユーザ要求によるダビング対象の記録・再生単位の選択及び記録順に関するエディットを可能にし、
最新のエディット内容に基づいて再生媒体の記録・再生単位について記録媒体への記録を実施する、
ことを特徴とする録再方法。
【請求項8】
再生媒体の記録・再生単位を記録媒体に記録するに先立ち、ユーザによるダビング対象の記録・再生単位の選択及び記録順に関するエディットを可能にし、
最新のエディット内容に基づいて再生媒体の記録・再生単位について記録媒体への記録を実施し、
記録媒体への記録・再生単位の記録期間に、ユーザ要求に応じてエディット内容の変更を可能にする、
ことを特徴とする録再方法。
【請求項9】
記録中エディットは、記録媒体への記録・再生単位の記録期間に繰り返し、可能とされていることを特徴とする請求項7又は8記載の録再方法。
【請求項10】
ユーザからの記録中エディット要求があった時に記録中の記録・再生単位を第1の記録・再生単位、及び第1の記録・再生単位の次に記録予定の記録・再生単位を第2の記録・再生単位とそれぞれ定義して記録中エディットの終了前でかつユーザが第2の記録・再生単位についてのエディットを未処理としたまま第1の記録・再生単位についての記録が終了したときは、記録媒体への記録・再生単位の記録を一時休止する、
ことを特徴とする請求項7?9のいずれかに記載の録再方法。
【請求項11】
記録中エディットの終了前でユーザが第2の記録・再生単位についてのエディットは処理済みでかつ第1の記録・再生単位についての記録が終了したときは、記録を一時休止することなく、前記記録媒体への第2の記録・再生単位の記録を開始することを特徴とする請求項10記載の録再方法。
【請求項12】
ユーザによる第2の記録・再生単位についてのエディットの処理の済みしだい記録一時休止を解除して、前記記録媒体への第2の記録・再生単位の記録を開始することを特徴とする請求項10記載の録再方法。」

と補正しようとするものである。

(2)補正の適否
上記補正は、各請求項に記載された発明を特定するために必要な事項であるユーザ要求による対象の記録・再生単位について、補正前には「記録対象」としていたのを、「記録対象」より下位概念の「ダビング対象」とし、また、エディットについて、「記録・再生単位の選択を少なくとも含む」「エディット」としていたのを、さらに具体的に「記録・再生単位の選択及び記録順に関する」「エディット」とするものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか)否かについて、以下に検討する。

(3)引用例の記載
(3-1)引用例1(特開平10-320898号公報)
原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-320898号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。
i)「〔発明の属する技術分野〕
本発明は、例えば光磁気ディスクにオーデイオデータ等の主情報を記録する際に付随情報として文字情報を記録する記録装置及び記録システムに関する。」(段落[0001])
ii)「〔従来の技術〕
従来、ミニディスクを代表とする光磁気ディスクにオーデイオデータを記録及び再生する記録再生装置が知られている。
このような光磁気ディスクには、オーデイオデータが記録されるプログラム領域と、このプログラム領域に記録された各プログラムを管理する目録情報(U-TOC:所謂user table of contents)が記録される管理領域が設けられている。
この目録情報(U-TOC)としてのデータ領域は複数のセクターを有しており、U-TOCセクター0ではプログラム領域に記録されている各プログラムの起点アドレス、終点アドレス、コピープロテクト情報、エンファシス情報等が管理されている。なお、本明細書でいう「プログラム」とは、ディスク上に1つの単位として記録されるデータ群を指し、例えば1つの楽曲(一般に1つのトラックといわれるもの)などが相当する。例えばプログラムの起点アドレス、終点アドレスとは、楽曲の先頭位置と終端位置に相当するアドレスとなる。
また、U-TOCセクター1ではプログラム領域に記録されている各プログラムのタイトル、光磁気ディスク全体のタイトルが管理されている。
光磁気ディスク全体のタイトルとは、記録されるプログラムがオーデイオデータの場合はアルバムタイトル、演奏者名等の情報になり、各プログラムのタイトルとは曲名に相当する。 更にU-TOCセクター2ではプログラム領域に記録されている各プログラム毎の記録日時が管理されている。
また、U-TOCセクター4に関してはプログラム領域に記録されている各プログラムのタイトル、光磁気ディスク全体のタイトルのフォントとしてカタカナ、漢字が使用できるように管理されている。」(段落[0002]?[0003])
iii)「〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、上記記録装置において記録する各プログラム毎の文字情報(タイトル等)の入力は遠隔操作部(リモートコントローラ)に設けられたアルファベットキーの操作や、記録装置本体に設けられた操作キー、ダイヤル等を用いて行なわれる。
そして例えばユーザは、プログラムとしてのオーデイオ情報がダビング記録されている間に、上記遠隔操作部(リモートコントローラ)に設けられたアルファベットキーの操作等を行い、そのプログラムに対応する文字入力を行なっていく。 この文字入力の際にプログラムのタイトル文字数が多い場合や、ユーザの入力作業が手間どってしまった場合、更にタイトルを登録するプログラムの演奏時間が短い場合などには、対応するプログラムの演奏が終了してしまいダビング動作が次のプログラムに移行してしまうことがある。
文字入力動作に関しては、入力された文字情報は、そのとき記録、再生、一時停止などの形態でユーザーが指定したプログラムに対応するものとしてU-TOCデータとして登録されるため、記録中には文字入力を行うことで、その入力文字は、そのときの記録動作にかかるプログラムに対応するものとされるが、上記のように文字入力を行っている間に次のプログラムに進んでしまった場合は、そのプログラムの移行に伴い、文字入力状態が中途段階でメモリ(U-TOC更新のためのメモリ)への登録が行われてしまうという問題点が存在する。
ダビングなどの記録動作中は、そのダビング処理を止めると、再生プログラムの選択や設定、再生操作、録音位置設定、録音操作等の各種操作をやり直さなければならず、また例えばプログラムの切れ目(曲と曲の間)が明確でないような場合は、ダビングを最初からやり直さなければならないような場合もある。
従ってユーザーにとってダビングを中断して文字入力を修正するといったことは好ましくなく、このように入力しようとするタイトル名が途中で切れてメモリ上に登録された場合に、ユーザーが修正を行うことができるのは全プログラムのダビング終了後になってしまい、ユーザーにとってダビング作業等が効率的に実行できないものとなってしまう。」(段落[0004]?[0005])
iv)「5.CD-MDダビング時の制御
ユーザは上記ダビングシステムでディスク91の再生オーデイオ信号をディスク90にダビングする際に、各プログラムに応じてタイトル等の文字入力を行うことで効率的なダビング作業ができる。 このようにダビング中に文字入力が行われる際のシステムコントローラ11処理を図3で説明する。
基本的にダビング中には、入力された文字データは、そのときダビングが行われているプログラムに対応する文字情報と扱われ、従って従来の装置では、そのプログラム(楽曲)のダビングが終わるまでに、そのプログラムの曲名等の文字情報を入力し終わらなければならないものであったが、本例では、短い曲であったり、入力文字数が多いなどの事情で、曲のダビングが終わるまでに文字入力が完了しなくても不都合がないようにするものである。
図3のステップF101においてCD(ディスク91)からMD(ディスク90)へのダビングが指示されると、CDプレーヤ30からMDレコーダ1のアナログ入力端子17若しくはデジタル入力端子21にオーデイオ信号が供給される。
システムコントローラ11はステップF102において、無音検知部22もしくはデジタルインターフェース部25から供給される信号により、ダビングするプログラム番号が変化したか否かを監視している。
ステップF102にてプログラム番号の変化を検知できたら、次にステップF103にて文字入力手段(即ちリモートコマンダー29もしくは操作部19)を用いた文字入力が既に終了したか否かを判別する。
なお、そのときダビングを終了したプログラムについて、ダビング中に文字入力が開始されなかった場合(ユーザーが文字入力を実行しなかった場合)は、ステップF103では肯定結果となりステップF107に進む。
ステップF103の、文字入力が終了したか否かは、例えばリモートコマンダー29もしくは操作部19に設けられている決定キーが操作済みか否かを判別して判断する。
これによってプログラム番号が変化する直前に、ダビングを行っているプログラムに対応するタイトル入力等の文字入力が終了しているのか否かが判別できる。
ステップF103にて文字入力手段を用いた文字入力が既に終了していると判別された場合は、ダビングするプログラムが最終プログラムであるか否かの判別をステップF107にて行い、ダビングするプログラムが最終プログラムであった場合はステップF108で記録動作を停止するコマンドをシステムコントローラから発生して各種サーボ回路を停止させて記録動作を終了させる(ステップF109)。
一方ステップF107にてダビングするプログラムが最終プログラムで無いと判断された場合は、再度ステップF102に戻り、ダビングするプログラム番号の変化を監視することになる。
ステップF103にて文字入力手段を用いた文字入力が未だ終了して無いと判別された場合は、システムコントローラ11はステップF104にてディスク91からのオーデイオ出力を一旦待機状態に制御するコマンドを発生して、システムコントローラ41に送信する。これに応じてシステムコントローラ41は、CDプレーヤ30の動作を再生待機状態にする。
またシステムコントローラ11は、MDレコーダ1側の記録制御も待機状態に制御するサーボ回路9、メモリコントローラ12等に対して必要なコマンドを発生する。
このように、再生側のプログラム番号は変更になっても再生待機状態に制御することで次プログラムの先頭で再生待機でき、更に記録側の記録動作も待機状態に制御されるので、その間にユーザーは文字入力を続行することができる。
ステップF104でCDプレーヤ30からのオーデイオ出力及びMDレコーダ1側の記録動作を待機状態に制御したら、次にユーザーによる文字入力が終了したか否かをステップF105にて判別する。この判別は、ユーザーが決定キー操作を行ったか否かによるものとすればよい。
ステップF105にて文字入力が終了したと判断された場合は、ステップF106にてシステムコントローラ11は、MDレコーダ1側の記録待機状態を解除するために所要のコマンドを発生するとともに、CDプレーヤ30からのオーデイオ出力の待機状態を解除するためのコマンドを発生させ、システムコントローラ41に送信する。
この処理によって次のプログラムからのダビング動作が再開される。図3の処理はステップF103、F107を介してステップF102に戻る。
なお、このときステップF107で、CDの次のプログラムの再生がない(ダビング終了)と判断された場合は、ステップF108、F109でダビング動作を終了させる。」(段落[0054]?[0062])

上記記載事項及び図面の記載を参酌すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認める(特に、図2、図3。)。

「CD(ディスク91)に記録されている複数のプログラム(例えば、楽曲)をMD(ディスク90)に記録している期間において、ユーザー要求によるダビング対象のプログラム(楽曲)に対応する文字情報(タイトル、曲名等)の入力を可能にする手段、及び
CD(ディスク91)のプログラム(例えば、楽曲)についてMD(ディスク90)への記録を実施する手段
を有するCD-MDダビングシステム。」

(3-2)引用例2(特開平10-162552号公報)
同じく引用された特開平10-162552号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。
i)「〔発明の属する技術分野〕
本発明はテレビジヨン放送システム及びデータ再生装置及びデータ再生方法並びに記録媒体に関し、例えば符号化処理して記録したデータを再生及び復号処理して放送するテレビジヨン放送システム及びデータ再生装置及びデータ再生方法並びに記録媒体に適用して好適なものである。」(段落[0002])
ii)「〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、このように放送用データをデイジタルに記録することにより緊急の番組変更等にも容易に対応し得る。例えば放送直前に所定の放送用データを他のデータに差し換える必要が生じる場合がある。
同一の記録媒体上に変更前及び変更後の放送用データが記録されている場合、各時間毎に送出する放送用データを示すために予め設定されたデータ送出プログラムリストを変更して、変更前の放送用データに換えて変更後の放送用データを読み出すようにすることにより、こうした変更にも容易にかつ短時間で対応し得る。変更前及び変更後の放送用データがそれぞれ別々の記録媒体上に記録されている場合でも各放送用データは符号化されて記録されているため、容易にかつ短時間で所望の放送用データを検索することができ、データの差し換えも容易に行い得る。
ところが、放送中のデータ送出プログラムリストを変更して、変更前の放送用データに換えて変更後の放送用データを読み出すようにした場合、プログラムリストの変更作業中に変更対象となつている放送用データを送出する時間となることが考えられ、これによりデータ送出プログラムリストに異常が生じて放送用データの送出が途切れたりするという問題が生じる可能性がある。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、データの送出中に編集を行い得ると共に、確実かつ連続的なデータの送出を補償し得るテレビジヨン放送システム及びデータ再生装置及びデータ再生方法並びに記録媒体を提案しようとするものである。」(段落[0004]?[0006])
iii)「図12に示すように、プレイリスト編集用画面96は放送中であるプレイリストの各イベント番号、開始時刻、クリツプID、データ名及び表示所要時間等を表示しており、放送中であるプレイリストに編集を加えられるようになされている。プレイリスト編集用画面96の画面上部にはキヤンセルボタン96A、印刷ボタン96B、マウス編集画面移行ボタン96C、プレイリストテーブル移行ボタン96D、プレビユーボタン96E及びメインメニユー移行ボタン96Fが表示されており、それぞれクリツクすることにより、編集処理の中断、プレイリストのデータ印刷、マウスによる編集用画面への移行、プレイリストテーブル98の画面への移行、メインメニユー91の画面への移行、1つ前の画面への移行、メインメニユー91の画面への移行を要求する制御信号がCPU51Bに入力され、画面移行等の各要求が実行される。
・・・・・(中略)・・・・・
実際に編集作業を行う場合、表示枠96K及び上述した編集機能枠96Gが用いられる。例えば所望のクリツプIDのデータを他のクリツプIDのデータに差し換える場合、まず編集機能枠96G内の「Overwrite」項目をクリツクし、次に表示枠96Kに表示された所望のイベント番号をクリツクする。これによりCPU51Bがクリツクにより選択されたイベント番号、クリツプID、開始時刻、タイトル名及び再生所要時間を編集機能枠96G内に表示すると共に、表示枠96Kの選択されたイベント番号の1つ前の番号部分にデータ変更位置を示す位置表示を表示する。この状態で編集機能枠96G内のクリツプID表示欄に所望のIDをキーボード60Bから入力してクリツプIDのID名を所望のクリツプIDに書き換えることにより、CPU51Bは選択されたイベント番号のクリツプIDのデータを新たに書き換えられたクリツプIDのデータに変更する。
また所望のイベント番号の次に新たにクリツプIDを追加する場合、まず編集機能枠96G内の「Insert」項目をクリツクし、次に表示枠96Kに表示された所望のイベント番号をクリツクする。これによりCPU51Bは表示枠96Kの選択されたイベント番号の1つ前の番号部分にデータ変更位置を示す位置表示を表示する。この状態で編集機能枠96G内のクリツプID表示欄に所望のクリツプIDをキーボード60Bから入力することにより、CPU51Bは編集機能枠96G内に選択されたイベント番号、追加するクリツプID、開始時刻、タイトル名及び再生所要時間を表示し、当該選択されたイベント番号に新たなクリツプIDのデータを追加すると共に、以降の番号を1つづつずらして変更し表示する。さらに所望のイベント番号のクリツプIDを削除する場合、表示枠96Kに表示された所望のイベント番号をクリツクする。これによりCPU51Bは編集機能枠96G内に選択されたイベントのイベント番号、クリツプID、開始時刻、タイトル名及び再生所要時間を表示すると共に、表示枠96Kの選択されたイベント番号の1つ前の番号部分にデータ変更位置を示す位置表示を表示する。この状態で編集機能枠96G内の「Delete」ボタンをクリツクすることにより、CPU51Bは選択されたイベント番号のデータを削除する。なお当該プレイリスト編集用画面96のマウス編集画面移行ボタン96Cをクリツクしてマウス入力用のプレイリスト編集画面(図示せず)に切り換えることにより、CPU51Bはマウスからの各選択入力及び機能選択を行うことができる。
こうした修正変更、追加又は削除等の編集作業はコンピユータ24(図2)内のRAM53Bのメモリ空間上でなされ、コンピユータ24のハードデイスクにセーブされることによつて編集後のプレイリストが編集前のプレイリストに上書きされる。 ここで上述したように、放送中であるプレイリストに編集を加える場合、コンピユータ24(図6)は所定の処理手順に基づき、編集対象として指定されたイベント番号のデータ送出開始までの残り時間を検出して、検出結果に応じて、編集作業による変更を有効とするか否かを決定するようになされている。」(段落[0052]?[0056])
iv)「すなわち図13に示すように、所定のプレイリストが再生処理中であり、かつ当該プレイリストに編集処理を施す場合、コンピユータ24はステツプSP1で手順を開始する。コンピユータ24はステツプSP2で編集作業を処理すると共に、所定時刻となつた際に対応するイベント番号の放送データを再生して送出する。
コンピユータ24はステツプSP3で、現在、送出しているイベント番号(i)のデータの残り時間tを検出して、予め設定される所定時間と比較する。この実施例では所定時間を10秒として設定しており、10秒以上である場合はステツプSP2に戻る。また所定時間が10秒である場合は次のステツプに移行する。次にコンピユータ24は、ステツプSP4で、送出中のイベント番号(i)の次のデータ、すなわちメモリ空間上のイベント番号(i+1)のデータをハードデイスク内に格納したプレイリストのイベント番号(i+1)のデータと比較して一致するか否かを判別する。
コンピユータ24は、ステツプSP5で、ハードデイスク内に格納したプレイリストのイベント番号(i+1)のデータがメモリ空間上のプレイリストのイベント番号(i+1)のデータと一致する場合はステツプSP2に戻り、一致しない場合は次のステツプSP6に移行する。
ハードデイスク内に格納したプレイリストのイベント番号(i+1)のデータがメモリ空間上のプレイリストのイベント番号(i+1)のデータと一致する結果が得られない場合、コンピユータ24はステツプSP6で、メモリ空間上のプレイリストのイベント番号(i+1)のデータをハードデイスク内に格納したプレイリストのイベント番号(i+1)のデータに変更してステツプSP2に戻る。
このように、コンピユータ24は放送中であるプレイリストを編集する際、編集対象として指定されたイベント番号のデータ再生開始時刻までの残り時間を検出して、編集処理の完了が再生開始時刻に間に合わないと判別した場合、編集中のプレイリストのデータを編集前のプレイリストに登録されたデータに変更すると共に、編集前のプレイリストに登録されたデータを強制的に送出するようになされている。」(段落[0057]?[0059])
v)「また上述の実施例においては、記録媒体としてハードデイスク及びストリーマを用いる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば光デイスク、MO又はDVD等を用いる場合に適用してもよい。」(段落[0066])

(4)対 比
本願補正発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1に記載された発明が対象とする「CD-MDダビングシステム」は、本願補正発明が対象とする「録再装置」に相当する
引用例1に記載された発明における「CD(ディスク91)」、及び「MD(ディスク90)」は、それぞれ、本願補正発明における「再生媒体」、及び「記録媒体」に相当する。
引用例1に記載された発明における、CD(再生媒体)に記録されている「プログラム(例えば、楽曲)」とは、ディスク上に1つの単位として記録されるデータ群(1つのトラック)のことであるから、本願補正発明における「記録・再生単位」に相当する。
引用例1に記載された発明におけるダビング対象のプログラム(記録・再生単位)に対応する「文字情報(タイトル、曲名等)」は、記録・再生単位の編集に関する情報といえるので、その意味に限り該「文字情報(タイトル、曲名等)」の「入力」は、本願補正発明における「記録・再生単位の選択及び記録順に関する」「エディット」と共通する。

そうすると、本願補正発明と引用例1に記載された発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「再生媒体に記録されている複数個の記録・再生単位を記録媒体に記録している記録期間において、ユーザ要求によるダビング対象の記録・再生単位に関するエディットを可能にする記録中エディット手段、及び
再生媒体の記録・再生単位について記録媒体への記録を実施する記録実施手段、
を有している録再装置。」

そして、次の各点で相違する。
<相違点>
(a) エディットの内容について、本願補正発明においては、ダビング対象の記録・再生単位の選択及び記録順に関するものであるのに対し、引用例1に記載された発明においては、ダビング対象の記録・再生単位に対応する文字情報(タイトル、曲名等)である点(以下、「相違点a」という。)。
(b) 記録媒体への記録について、本願補正発明においては、最新のエディット内容に基づいて記録するものであるのに対し、引用例1に記載された発明においては、このことについて特に示されていない点(以下、「相違点b」という。)。

(5)判 断
そこで、上記各相違点について検討する。

(相違点a、bについて)
ダビング対象のエディット(編集)内容として、どのプログラム(楽曲)をどのような順序でダビングするか、つまり記録・再生単位の選択や記録順に関する編集は、ダビングする際ごく普通に行うことにすぎない。
引用例2には、上記の摘記事項を参酌すると、画像及び音声データの再生順序を表す所定のプログラムリストに従って、記録された上記複数の画像及び音声データが再生中のとき、ユーザの指示入力により、当該プログラムリストにデータの差し替え、追加又は削除等の編集処理を施し、その内容をコンピュータのハードディスク等にセーブすることによって編集後のプログラムリストを編集前のプログラムリストに上書きし、編集済みのプログラムリストに従ってデータを再生することが記載されており、ここで、「画像及び音声データ」、「プログラムリスト」、及び「データの差し替え、追加又は削除等の編集処理」は、それぞれ、本願補正発明における「記録・再生単位」、「エディット内容」、及び「エディット」に相当するものである。また、「編集済みの」「プログラムリスト」は、本願補正発明における「最新の」「エディット内容」に相当するということができる。
引用例1に記載された発明と引用例2に記載されたものとは、再生媒体からのプログラム再生中における該プログラムのエディット(編集)に関する技術である点で共通することは明らかである。
してみれば、引用例1に記載された発明においても、ダビング中に行うエディットの内容を、ダビング対象の記録・再生単位に対応する文字情報(タイトル、曲名等)の入力に替えて、引用例2に記載されたもののように、単に、複数のプログラム(楽曲)(記録・再生単位)の選択・記録順に関するものとし、最新のエディット内容に基づいて記録媒体へ記録することは当業者が容易に想到できたものである。

そして、上記相違点についての判断を総合しても、本願補正発明の奏する効果は引用例1及び引用例2から当業者が十分に予測できたものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(6)補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年3月29付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、本願出願当初明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「2.〔理由〕(2)」における補正前の請求項1の記載を参照。)。

(2)引用例及びその記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1、引用例2及びその記載事項は上記「2.〔理由〕(3)」において示したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明から、ユーザ要求による対象の記録・再生単位について「ダビング対象」より上位の概念である「記録対象」とし、また、「エディット」について「(記録・再生単位の)記録順」との構成を省略したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.」に示したとおり、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-12 
結審通知日 2006-09-13 
審決日 2006-09-26 
出願番号 特願2001-206506(P2001-206506)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 秀彦小林 大介  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 江畠 博
山田 洋一
発明の名称 録再装置及び録再方法  
代理人 山崎 隆  

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