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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04G
管理番号 1150536
審判番号 不服2005-12597  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-04 
確定日 2007-01-10 
事件の表示 平成 8年特許願第321140号「鉄筋、鋼管端部用の安全キヤップ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月26日出願公開、特開平10-140842〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年11月14日の出願であって、平成17年5月31日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

2.平成17年7月4日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)について

[補正却下の決定の結論]
平成17年7月4日付の手続補正を却下する。

[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「筒体の頂部には外方へ突出して周縁下方に縁枠を形成した多角形のキャップ状頂板を設けると共に、該頂板の中央部内面に突子を形成し、上記筒体の内周面には上方から見て円弧状を呈し上記頂板に接していない倒三角形状で弾性を有する複数個の係止用羽根を渦巻状に、外周面には倒三角形状の複数個の係止用リブを放射状にそれぞれ設け、上記筒体の内方に複数個の係止用羽根が鉄筋に圧接して挟持する鉄筋への嵌着部を、上記頂板の縁枠の内方に該縁枠の多角形に形成された内面と係止用リブの先端面とで円形の鋼管端部の内外面に圧接して挟持する鋼管への嵌着凹部をそれぞれ形成したことを特徴とする鉄筋、鋼管端部用の安全キャップ。」
と補正された。
上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(1)引用例
(1-1)原査定の拒絶の理由に引用され本願の出願前に頒布された、登録実用新案第3013107号公報(以下、「引用例1」という。)には図面とともに次の記載がある。
「【0007】
図示する実施例において、鉄筋・パイプ用保護キャップ1は筒状部2と、この筒状部2の上端に筒状部と一体に形成される笠部3とから構成される。
筒状部2の内周面2aには天井内面20aより下方に向かって4片の内リブ4・4…が立設されている。
この内リブ4・4…は、それぞれ筒状部2内周面より中心方向に向かって偏心するよう形成されている。
また、内リブ4・4…は図4の底面図において示されるように、その上面部41がそれぞれ同一の円弧上に位置するよう形成されている。
さらに、内リブ4・4…にはそれぞれ、下方に向かって勾配部42が形成され、鉄筋やパイプ等への装着を容易に行えるよう構成されている。
この内リブ4・4…は、キャップ1自体の強度を高める目的と、鉄筋やパイプ等に対する装着性を容易する目的、さらには装着後の抜脱を防止するために設けられている。」
「【0008】
一方、筒状部2外周面には、笠部天井内面30より下方に向かって4片の外リブ5・5…が立設されている。
図示する実施例では、外リブ5・5…には下方に向かってそれぞれ勾配部51・51…が形成されている。
この外リブ5・5…はキャップ自体の強度を高める目的と、さらには径の比較的大きな鉄筋・パイプ等の端部に筒状部2外周面を装着させる際の、キャップの抜脱を防止するために設けられている。
しかも、このように筒状部2外周面に鉄筋やパイプ等を装着させる場合では、勾配部51・51…が形成されているから、鉄筋やパイプ等の先端部内周面への装着作業を容易に行うことができる。」
「【0009】
笠部3は略半球状に形成されており、その先端部31には全周に渡って凹凸部31aが形成されている。
このように笠部3に全周に渡って凹凸部31aを形成することによって、例えば、作業者が手袋をはめたままこのキャップ1を鉄筋やパイプ等に装着していても、手からキャップ1が滑ってしまうことがなく、装着作業や取外し作業を円滑に行うことができる。 ………」
また、図面によると、先端部31は、上方から見て円形であることが看取され、さらに、この種のキャップは、筒状部内に鉄筋を、筒状部外にパイプを、挟持することができることが技術的常識であり、リブはキャップの抜脱を防止するためにも設けられているものであるから、リブにより鉄筋・パイプを圧接するものであることも技術的常識であり、これらは、引用例1に記載されているに等しい事項である。

以上の記載からみて引用例1には、
「筒状部の上端には外方へ突出して周縁下方に全周に渡って凹凸部が形成されている先端部を形成した円形の笠部を設けると共に、上記筒状部の内周面には上方から見て円弧状を呈し天井内面より下方に向かって勾配部が形成され弾性を有する4片の内リブを渦巻状に、外周面には下方に向かって勾配部が形成される4片の外リブを放射状にそれぞれ設け、上記筒状部の内方に4片の内リブが鉄筋に圧接して挟持する鉄筋への装着部を、上記笠部の先端部の内方に該先端部の略半球状に形成された内面と4片の外リブの先端面とで円形のパイプ端部の内外面に圧接して挟持するパイプへの装着部をそれぞれ形成した鉄筋・パイプ用保護キャップ。」
という発明が開示されていると認められる。

(2-2)同じく引用された、実願平2-82978号(実開平4-41043号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(あ)「この考案に係る鉄筋・パイプ用保護キャップは少なくとも笠と筒とが一体に形成されており、笠は略球面でこの笠と筒の直径の比が1:0.5以上(ただし1未満)とされ、筒の内部に厚み調整用のリブが筒天井まで立設されてかつこの天井内面には突部が設けられていることを特徴とする鉄筋・パイプ用保護キャップであるから上記課題を悉く解決する。」(明細書3頁17行?4頁4行)
(い)「この第1実施例の鉄筋・パイプ用保護キャップ(1)は、笠(2)と筒(3)とが一体に形成されており、笠(2)は略球面で笠(2)の外周の形状は平面図のごとく4枚の花びら状となっている。 ………
また筒(3)の周縁内側には適当な厚みのあるリブ(5)が縦軸方向に設けられている。
このリブ(5)は鉄筋の太さに合わせて装着するためのものであるから、適当な軟らかさを有する合成樹脂が好適に使用できる。
また筒(3)の内側の天井内面(8)には突部(10)が設けられている。」(明細書5頁2行?6頁3行)
(う)「この第2実施例の鉄筋・パイプ用保護キャップ(1)は、笠(2)と筒(3)とが一体に形成されており、笠(2)は頂上部を除いてほぼ球面で、………
筒(3)の外周表面と笠(2)の周縁は平行である。………
更に筒(3)の周縁外側には適当な厚みのあるリブ(4)が縦軸方向に設けられている。
このリブ(4)はパイプの太さに合わせて装着するためのものであるから、適当な軟らかさを有する合成樹脂が好適に使用できる。 ………
また筒(3)の周縁内側には適当な厚みのあるリブ(5)が縦軸方向に設けられている。
このリブ(5)は鉄筋の太さに合わせて装着するためのものであるから、適当な軟らかさを有する合成樹脂が好適に使用できる。」(明細書6頁8行?8頁3行)

以上の記載からみて、引用例2には
「笠と筒とが一体に形成されており、笠は略球面でこの笠と筒の直径の比が1:0.5以上(ただし1未満)とされ、筒の内部に弾性を有する厚み調整用のリブが筒天井まで立設されてかつこの天井内面には突部が設けられている鉄筋・パイプ用保護キャップにおいて、笠の外周の形状が4枚の花びら状となっているか、又は、筒の外周表面と笠の周縁は平行であって、筒の周縁外側には弾性を有するリブが設けられている鉄筋・パイプ用保護キャップ。」
の点が記載されていると認められる。

(2-3)同じく引用された、登録実用新案第3003723号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「【0007】【実施例】
本考案、合成樹脂製の安全キャップの外形及び断面図を図1及び図2に示す。図1は安全キャップを頭部2から見た平面図で、図2は図1におけるC-C線による断面図である。
図において1は、所要の径と長さを有する円筒形をした円筒本体で、この円筒本体1の一端にキャップ状の頭部2を一体に形成し、他端を開口とし、かつ円筒本体1の内部に鉄筋Aを挟持するための係止用リブ6,6・・・が突設されると共に頭部2は円筒本体1の外径より大径とし、かつ頭部2の内周面と円筒本体1との間にパイプ端を挿入挟持するためのパイプ嵌着溝3が形成される。この安全キャップは合成樹脂にて成形される。」
また図によると、キャップ状の頭部2とは別体に円筒本体1上端から中央に向かって突設される係止用リブ6は、その上端が下へ傾斜しているものであることが看取できる。

以上の記載からみて、引用例3には、
「キャップ状の頭部とは別体に円筒本体上端から中央に向かって突設される係止用リブは、その上端が下へ傾斜している」
点が記載されていると認められる。

(2)対比
そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「筒状部」、「先端部」、「笠部」、「下方に向かって勾配部が形成され」、「4片」、「内リブ」、「鉄筋への装着部」、「外リブ」、「パイプ」、「パイプへの装着部」、「鉄筋・パイプ用」及び「保護キャップ」は、それぞれ本願補正発明の「筒体」、「縁枠」、「キャップ状頂板」、「倒三角形状」、「複数個」、「係止用羽根」、「鉄筋への嵌着部」、「係止用リブ」、「鋼管」、「鋼管への嵌着凹部」、「鉄筋、鋼管端部用」及び「安全キャップ」に対応する。
そうすると、両者は、
「筒体の頂部には外方へ突出して周縁下方に縁枠を形成したキャップ状頂板を設けると共に、上記筒体の内周面には上方から見て円弧状を呈し倒三角形状で弾性を有する複数個の係止用羽根を渦巻状に、外周面には倒三角形状の複数個の係止用リブを放射状にそれぞれ設け、上記筒体の内方に複数個の係止用羽根が鉄筋に圧接して挟持する鉄筋への嵌着部を、上記頂板の縁枠の内方に該縁枠の内面と係止用リブの先端面とで円形の鋼管端部の内外面に圧接して挟持する鋼管への嵌着凹部をそれぞれ形成した鉄筋、鋼管端部用の安全キャップ。」
の点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
キャップ状頂板に関し、本願補正発明が多角形であり、中央部内面に突子を形成しているのに対し、引用例1記載の発明が円形であり、中央部内面に突子を形成していない点。
[相違点2]
係止用羽根に関し、本願補正発明がキャップ状頂板に接していないのに対し、引用例1記載の発明がそのようなものでない点。

(3)判断
(3-1)[相違点1]について
引用例2には、略球面の笠(本願補正発明の「キャップ状頂板」に対応する。以下同様。)の中央部内面に突部(「突子」)が設けられている鉄筋・パイプ用保護キャップ(「鉄筋、鋼管端部用の安全キャップ」)において、笠(「キャップ状頂板」)の外周の形状が4枚の花びら状となっているもの、又は、筒(「筒体」)の外周表面と笠(「キャップ状頂板」)の周縁は平行であって、筒(「筒体」)の周縁外側には弾性を有するリブ(「係止用リブ」)が設けられているものが記載されている。
ここで、前者の第1図(B)のような4枚の花びら状の各凹凸曲線の弧を直線としたものが周知の八角形であり(キャップ状頂板の外周の形状が多角形のキャップの周知例については、実願昭56-141060号(実開昭58-45855号)のマイクロフィルム等参照。)、直線より弧の縁枠の方が、曲面の鋼管と線接触状態になりやすいことも自明な事項である。
また、後者の筒の外周表面と笠の周縁が平行である実施例では、筒の周縁外側には弾性を有するリブが設けられているにもかかわらず、笠の外周の形状が4枚の花びら状となっている前者の実施例では、筒の周縁外側にリブが設けられていない点は、リブを設けてはいけないのではなく、リブを設けなくても十分に笠(「キャップ状頂板」)をパイプに圧接して取り付けることができるものであるからというべきである。
そうすると、引用例2に記載のキャップ状頂板を引用例1記載の発明に適用して、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到しえたものというべきであり、その際、キャップ状頂板を周知の多角形とすることも単なる設計変更にすぎない。

(3-2)[相違点2]について
本願明細書において、【従来の技術】としている引用例3には、「キャップ状の頭部(本願補正発明の「キャップ状頂板」に対応する。以下同様。)とは別体に円筒本体(「筒体」)上端から中央に向かって突設される係止用リブ(「係止用羽根」)は、その上端が下へ傾斜している」点が記載されている。
そうすると、相違点2に係る本願補正発明の構成は、上記引用例3に記載された点を引用例1記載の発明に適用して、当業者が容易に想到しえたものというべきであり、その際、係止用羽根がキャップ状頂板に接していないようにする点も、単なる設計変更にすぎない。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1?3記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1?3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年7月4日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「筒体の頂部には外方へ突出して周縁下方に縁枠を形成した多角形のキャップ状頂板を設けると共に、該頂板の中央部内面に突子を形成し、上記筒体の内周には上方から見て円弧状を呈し上記頂板に接していない倒三角形で弾性を有する複数個の係止用羽根を渦巻状に、外周には倒三角形の複数個の係止用リブを放射状にそれぞれ設け、上記筒体の内方に鉄筋への嵌着部を、上記頂板の縁枠の内方に鋼管への嵌着凹部をそれぞれ形成したことを特徴とする鉄筋、鋼管端部用の安全キャップ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及び、その記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の一部の限定事項である構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1?3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-13 
結審通知日 2006-11-14 
審決日 2006-11-28 
出願番号 特願平8-321140
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04G)
P 1 8・ 121- Z (E04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 聡志萩田 裕介  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 宮川 哲伸
青山 敏
発明の名称 鉄筋、鋼管端部用の安全キヤップ  

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