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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1150565
審判番号 不服2004-2883  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-03-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-12 
確定日 2007-01-30 
事件の表示 特願2000-257539「半導体装置の製造方法及びフォトリソグラフィ用マスク」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月15日出願公開、特開2002- 76288、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.本願発明
本願は、平成12年8月28日の出願であって、平成15年12月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成16年2月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成15年10月30日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定された以下のとおりのものである。
「【請求項1】 半導体基板上に、第1導電型及び第2導電型の低耐圧MOSトランジスタと、前記低耐圧MOSトランジスタよりも高い電圧で動作し、かつドリフト拡散領域を有する第1導電型及び第2導電型の高耐圧MOSトランジスタとを備える半導体装置の製造方法であって、
半導体基板上の素子分離領域のみにロコス酸化膜を形成した後、
第1導電型の低耐圧MOSトランジスタを形成するための第1領域、第1導電型の高耐圧MOSトランジスタの素子分離を行うための前記ロコス酸化膜が形成された第2領域及び第2導電型の高耐圧MOSトランジスタのドリフト拡散領域を形成するための第3領域の各領域に開口を有する1つのフォトレジスト膜をマスクとして用いて、前記第1及び第3領域においては前記半導体基板の深さ方向に第2導電型の注入イオンが2以上の異なる濃度ピークを有するように、第2領域においては前記ロコス酸化膜と半導体基板との界面近傍に注入イオンが濃度ピークを有するようにイオン注入し、
アニールを行って、第1領域に第2導電型のウェルを形成し、第2領域に第2導電型の拡散層を形成し、第3領域に第2導電型のドリフト拡散領域を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】 第1及び第3領域における濃度ピークが、少なくとも、ロコス酸化膜と半導体基板との界面近傍と、それよりも浅い位置とに有するようにイオン注入する請求項1に記載の方法。
【請求項3】 イオン注入が、加速エネルギーを変えて2回以上行われる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】 イオン注入が、第2領域のロコス酸化膜と半導体基板との界面近傍に注入イオンが濃度ピークを有する加速エネルギーで1回行われ、該加速エネルギーよりも小さい加速エネルギーで少なくとも1回行われる請求項1?3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】 イオン注入が、第1領域において、第1導電型の低耐圧MOSトランジスタの閾値を制御するために少なくとも1回、かつ半導体基板の不純物濃度を制御するために少なくとも1回行われる請求項1?4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】 請求項1?5の何れか1つに記載の半導体装置の製造方法におけるフォトレジスト膜に開口を形成するためのフォトリソグラフィ用マスクであって、
半導体基板上における、第1導電型の低耐圧MOSトランジスタを形成するための第1領域、第1導電型であって前記低耐圧MOSトランジスタよりも高い電圧で動作する高耐圧MOSトランジスタの素子分離を行うための第2領域及び第2導電型の高耐圧MOSトランジスタのドリフト拡散領域を形成するための第3領域の各領域に開口形成用パターンを有してなるフォトリソグラフィ用マスク。」

2.刊行物に記載された発明
原審の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された特開平8-148577号公報(以下、「刊行物1」という。)の図1ないし図4、0014段落、0018段落ないし0048段落には、以下の発明が記載されている。
「n型及びp型の高耐圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、n型及びp型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが共通の基板上に形成されてなる半導体装置の製法において、
n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの周囲とp型の高耐圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタを形成する領域に絶縁膜171を形成する第1の局部的熱酸化工程と、
前記第1の局部熱酸化工程の後に、所定のイオン注入マスクで前記n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ14を形成する部分の開口17Wとその周囲の前記絶縁膜171を通じて、ボロンB+を200?400kev、100?120kev及び20?30kevでそれぞれイオン注入することによりp型のイオン注入領域26ないし28、前記絶縁膜171の下にp型のイオン注入領域42及び43を形成する工程と、
前記イオン注入工程と同時に、前記絶縁膜171を介して前記p型の高耐圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ13のゲート部を挟んで形成するS/D領域24p形成部に、所定のイオン注入マスクで、ボロンB+を200?400kev及び100?120kevでそれぞれイオン注入することにより前記絶縁膜171の下にp型のイオン注入領域261及び271を形成する工程と、
その後、前記第1の局部的熱酸化によって形成された前記絶縁膜171の一部を、第2の耐酸化膜をマスクとして、第2の局部的熱酸化により、厚い第2の絶縁膜161を形成する工程とを有し、
前記第1の局部的熱酸化のみによって形成された前記絶縁膜171によって前記p型の高耐圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタのゲート絶縁膜と、n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの素子分離絶縁膜とを形成し、第1および第2の局部的熱酸化が重ねられて形成された前記厚い第2の絶縁膜161を他部の素子分離絶縁膜、すなわちn型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの形成部における素子分離絶縁膜あるいは、n型及びp型の高耐圧電界効果トランジスタ間の素子分離絶縁膜とし、
アニールを行って、前記p型イオン注入領域26ないし28が形成された領域にp型ウェル領域23を形成し、前記p型のイオン注入領域42及び43が形成された領域に前記厚い第2の絶縁膜161に接してチャネルストップ領域39を形成し、前記p型のイオン注入領域261及び271が形成された領域に、前記S/D領域24pを形成することを特徴とする半導体装置の製法。」

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物発明」という。)とを対比検討する。

(a)刊行物発明の「n型及びp型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ」、「n型及びp型の高耐圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ」及び「基板」は、それぞれ、本願発明の「第1導電型及び第2導電型の低耐圧MOSトランジスタ」、「低耐圧MOSトランジスタよりも高い電圧で動作」「する第1導電型及び第2導電型の高耐圧MOSトランジスタ」及び「半導体基板」に相当する。
(b)刊行物1の0053段落の「低電圧p-MOS15および高耐圧p-MOS13の形成部において、サイドウオール58、各ゲート電極52および53、素子分離絶縁膜16および17をマスクとして各低電圧p-MOS15の高濃度S/D領域60pと高耐圧p-MOS13のアクティブS/D領域25pとをイオン注入によって形成する。」との記載から、「アクティブS/D領域25p」が高濃度のp型であり、一方、「アクティブS/D領域25p」を囲んで形成された「S/D領域24p」は、p型ウェル領域23の形成と同等のp型不純物が導入された領域であるから、「アクティブS/D領域25p」と比較して低濃度のp型である。
したがって、刊行物発明の「S/D領域24p」は、本願発明の「ドリフト拡散領域」に相当する。
(c)刊行物発明の「p型ウェル領域23」には、n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタが形成され、一方、本願発明の「第1導電型の低耐圧MOSトランジスタ」は第1領域の「第2導電型のウェル」に形成されるから、刊行物発明の「p型ウェル領域23」は、本願発明の「第2導電型のウェル」に相当する。
(d)刊行物発明の「チャネルストップ領域39」は、「n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの形成部における素子分離絶縁膜あるいは、n型及びp型の高耐圧電界効果トランジスタ間の素子分離絶縁膜」である「前記厚い第2の絶縁膜161」に接して形成されたp型不純物が拡散された層であり、一方、本願発明の「第2導電型の拡散層」は、「第1導電型の高耐圧MOSトランジスタの素子分離を行うための前記ロコス酸化膜が形成された第2領域」に形成され、「第2領域においては前記ロコス酸化膜と半導体基板との界面近傍に注入イオンが濃度ピークを有するようにイオン注入」された後アニールされ、「第2導電型の拡散層」は「前記ロコス酸化膜」に接して形成されていることは明らかであるから、刊行物発明の「チャネルストップ領域39」は、本願発明の「第2導電型の拡散層」に相当する。
(e)刊行物発明の「所定のイオン注入マスクで前記n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ14を形成する部分の開口17Wとその周囲の前記絶縁膜171を通じて、ボロンB+を200?400kev、100?120kev及び20?30kevでそれぞれイオン注入することによりp型のイオン注入領域26ないし28」を「形成する工程」において、加速電圧を変えて3回のイオン注入を行っており、また「前記絶縁膜171を介して前記p型の高耐圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ13のゲート部を挟んで形成するS/D領域24p形成部に、所定のイオン注入マスクで、ボロンB+を200?400kev及び100?120kevでそれぞれイオン注入することにより前記絶縁膜171の下にp型のイオン注入領域261及び271を形成する工程」においては、加速電圧を変えて2回のイオン注入を行っており、一方、本願発明において、「第1領域」は、「第1導電型の低耐圧MOSトランジスタを形成するための第1領域」であって、「第3領域」は、「第2導電型の高耐圧MOSトランジスタのドリフト拡散領域を形成するための第3領域」であり、「前記第1及び第3領域においては前記半導体基板の深さ方向に第2導電型の注入イオンが2以上の異なる濃度ピークを有するように」「イオン注入」されている。
したがって、上記(b)を参酌すると、刊行物発明の「所定のイオン注入マスクで前記n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ14を形成する部分の開口17W」に「ボロンB+を200?400kev、100?120kev及び20?30kevでそれぞれイオン注入することによりp型のイオン注入領域26ないし28」「を形成する工程と」、「前記p型の高耐圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ13のゲート部を挟んで形成するS/D領域24p形成部に、所定のイオン注入マスクで、ボロンB+を200?400kev及び100?120kevでそれぞれイオン注入することにより前記絶縁膜171の下にp型のイオン注入領域261及び271を形成する工程と」は、本願発明の「前記第1及び第3領域においては前記半導体基板の深さ方向に第2導電型の注入イオンが2以上の異なる濃度ピークを有するように」「イオン注入」することに相当する。

したがって、本願発明と刊行物発明とは、
「半導体基板上に、第1導電型及び第2導電型の低耐圧MOSトランジスタと、前記低耐圧MOSトランジスタよりも高い電圧で動作し、かつドリフト拡散領域を有する第1導電型及び第2導電型の高耐圧MOSトランジスタとを備える半導体装置の製造方法であって、
第1導電型の低耐圧MOSトランジスタを形成するための第1領域及び第2導電型の高耐圧MOSトランジスタのドリフト拡散領域を形成するための第3領域の各領域に開口を有するフォトレジスト膜をマスクとして用いて、前記第1及び第3領域においては前記半導体基板の深さ方向に第2導電型の注入イオンが2以上の異なる濃度ピークを有するようにイオン注入し、
アニールを行って、第1領域に第2導電型のウェルを形成し、第2領域に第2導電型の拡散層を形成し、第3領域に第2導電型のドリフト拡散領域を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。」で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1
本願発明は、「半導体基板上の素子分離領域のみにロコス酸化膜を形成した後」、「第1導電型の高耐圧MOSトランジスタの素子分離を行うための前記ロコス酸化膜が形成された第2領域」「に開口を有する」「フォトレジスト膜をマスクとして用いて」、「第2領域においては前記ロコス酸化膜と半導体基板との界面近傍に注入イオンが濃度ピークを有するようにイオン注入し」、「アニールを行って」、「第2領域に第2導電型の拡散層を形成」することを特徴とする「半導体装置の製造方法」であるのに対して、
刊行物発明は、「n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの周囲とp型の高耐圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタを形成する領域に絶縁膜171を形成する第1の局部的熱酸化工程と、」「前記第1の局部熱酸化工程の後に」、「所定のイオン注入マスクで前記n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ14を形成する部分の開口17W」「の周囲の前記絶縁膜171を通じて、ボロンB+を200?400kev、100?120kev及び20?30kevでそれぞれイオン注入することにより」「前記絶縁膜171の下にp型のイオン注入領域42及び43を形成する工程」と、「その後、前記第1の局部的熱酸化によって形成された前記絶縁膜171の一部を、第2の耐酸化膜をマスクとして、第2の局部的熱酸化により、厚い第2の絶縁膜161を形成する工程とを有し」、「前記第1の局部的熱酸化のみによって」「n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの素子分離絶縁膜」「を形成し、第1および第2の局部的熱酸化が重ねられて形成された前記厚い第2の絶縁膜161を他部の素子分離絶縁膜、すなわちn型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの形成部における素子分離絶縁膜あるいは、n型及びp型の高耐圧電界効果トランジスタ間の素子分離絶縁膜とし」、「アニールを行って」、「前記p型のイオン注入領域42及び43が形成された領域に前記厚い第2の絶縁膜161に接してチャネルストップ領域39を形成」「することを特徴とする半導体装置の製法。」である点。

相違点2
本願発明は、「第1導電型の低耐圧MOSトランジスタを形成するための第1領域、第1導電型の高耐圧MOSトランジスタの素子分離を行うための前記ロコス酸化膜が形成された第2領域及び第2導電型の高耐圧MOSトランジスタのドリフト拡散領域を形成するための第3領域の各領域に開口を有する1つのフォトレジスト膜をマスクとして用いて、前記第1及び第3領域においては前記半導体基板の深さ方向に第2導電型の注入イオンが2以上の異なる濃度ピークを有するように、第2領域においては前記ロコス酸化膜と半導体基板との界面近傍に注入イオンが濃度ピークを有するようにイオン注入」しているのに対して、
刊行物発明は、「所定のイオン注入マスクで前記n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ14を形成する部分の開口17Wとその周囲の前記絶縁膜171を通じて、ボロンB+を200?400kev、100?120kev及び20?30kevでそれぞれイオン注入することによりp型のイオン注入領域26ないし28、前記絶縁膜171の下にp型のイオン注入領域42及び43を形成する工程と、前記イオン注入工程と同時に、前記絶縁膜171を介して前記p型の高耐圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ13のゲート部を挟んで形成するS/D領域24p形成部に、所定のイオン注入マスクで、ボロンB+を200?400kev及び100?120kevでそれぞれイオン注入することにより前記絶縁膜171の下にp型のイオン注入領域261及び271を形成する工程」とを備えているが、「前記n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ14を形成する部分の開口17Wとその周囲」及び「前記p型の高耐圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタ13のゲート部を挟んで形成するS/D領域24p形成部」へのイオン注入を「1つ」のフォトレジスト膜をマスクとして用いて行っているか否か明らかでない点。

以下、相違点について検討する。
相違点1について
(f)本願発明においては、「半導体基板上の素子分離領域のみにロコス酸化膜を形成した後」、「第1導電型の高耐圧MOSトランジスタの素子分離を行うための前記ロコス酸化膜が形成された第2領域」「に開口を有する」「フォトレジスト膜をマスクとして用いて」、「第2領域においては前記ロコス酸化膜と半導体基板との界面近傍に注入イオンが濃度ピークを有するようにイオン注入し」、「アニールを行って」、「第2領域に第2導電型の拡散層を形成」している、言い換えると、半導体基板上に「ロコス酸化膜を形成」する工程の後に、「前記ロコス酸化膜と半導体基板との界面近傍に注入イオンが濃度ピークを有するようにイオン注入し」、その後アニールすることにより、「第2導電型の拡散層を形成」している。
一方、刊行物発明においては、「n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの周囲」に「絶縁膜171を形成する第1の局部的熱酸化工程」の後に、「前記絶縁膜171を通じて」「イオン注入し」て、「前記絶縁膜171の下にp型のイオン注入領域42及び43を形成」し、「その後、前記第1の局部的熱酸化によって形成された前記絶縁膜171の一部を、第2の耐酸化膜をマスクとして、第2の局部的熱酸化により」、「n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの形成部における素子分離絶縁膜あるいは、n型及びp型の高耐圧電界効果トランジスタ間の素子分離絶縁膜」となる「厚い第2の絶縁膜161を形成する工程」の後に、「アニールを行って」、「前記p型のイオン注入領域42及び43が形成された領域に前記厚い第2の絶縁膜161に接してチャネルストップ領域39を形成」している。
(g)本願は、「ロコス酸化の前にイオン注入を行うため、ロコス酸化のバラツキ等の影響でイオン注入された不純物のロコス酸化膜中への偏析量が変化し、素子分離領域での耐圧がばらついたり、ドリフト拡散領域のシート抵抗及びドリフト拡散領域の実効寸法のバラツキが大きくなり、このため、得られたトランジスタの耐圧にばらつきが生じるという問題がある。」(0008段落)との課題を解決するために、「ロコス酸化」した後に「イオン注入」を行うことにより、素子分離領域であるロコス酸化膜と半導体基板との界面近傍に注入イオンが濃度ピークを持つチャネルストップ領域として作用する「第2導電型の拡散層」を形成したものであり、「ロコス酸化」のための熱処理工程の後に「イオン注入」が行われている。
一方、刊行物1の0009段落の「上述した駆動回路において、その高耐圧トランジスタ、低電圧トランジスタにおいて、CMOS(相補型電界効果トランジスタ)構成がとられることなどによって、半導体基板にウエル領域が形成されるものであるが」、「上述した従来方法」、即ち、厚い素子分離絶縁膜2を形成する方法、「による場合、低電圧トランジスタのウェル領域を形成するイオン注入も、上述した500?700nmの厚い素子分離絶縁膜を通じて行う必要が生じ、そのイオン注入には、高エネルギーによるイオン注入を必要とする。」との課題を解決するために、「本発明は、イオン注入エネルギーを低減化し、低電圧トランジスタと高耐圧トランジスタの寄生トランジスタのしきい値電圧Vthのマージンの向上をはかって、それぞれの特性を損なうことなく、共通の基板上に形成することができるようにした半導体装置とその製法を提供する。」(0011段落)ものであると記載されており、刊行物発明においては、n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの素子分離絶縁膜である、絶縁膜171を形成するための第1の局部的熱酸化工程の後に、前記絶縁膜171を介してのイオン注入がなされ、その後、「第2の局部的熱酸化により」、「n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの形成部における素子分離絶縁膜あるいは、n型及びp型の高耐圧電界効果トランジスタ間の素子分離絶縁膜」となる「厚い第2の絶縁膜161を形成」しており、言い換えると、「イオン注入」した後に「高耐圧電界効果トランジスタ間の素子分離絶縁膜」形成のための「第2の局部的熱酸化」が行われている。
(h)上記(g)で検討したとおり、本願発明と刊行物発明とは、「高耐圧電界効果トランジスタ間の素子分離絶縁膜」としての「ロコス酸化膜」または「厚い第2の絶縁膜」を形成する工程と「イオン注入」する工程との順序が全く逆であり、この工程順序は、それぞれが解決しようとする課題が異なることに由来するものであるから、刊行物発明において、「素子分離領域」としての「厚い第2の絶縁膜」を形成する工程と「イオン注入」する工程の順序を入れ替えることはできず、結局、両工程の順序を変更することには、阻害要因が存在する。
(i)また、相違点1については、本願発明においては、「半導体基板上の素子分離領域のみにロコス酸化膜を形成」するもの、言い換えると、「ロコス酸化膜」は「素子分離領域」「のみ」に形成されており、一方、刊行物発明においては、「第1および第2の局部的熱酸化が重ねられて形成された前記厚い第2の絶縁膜161を他部の素子分離絶縁膜、すなわちn型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの形成部における素子分離絶縁膜あるいは、n型及びp型の高耐圧電界効果トランジスタ間の素子分離絶縁膜」としての「厚い第2の絶縁膜」と、「n型の低電圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタの素子分離絶縁膜」としての「前記第1の局部的熱酸化のみによって形成された前記絶縁膜171」を備えると共に、「前記第1の局部的熱酸化のみによって形成された前記絶縁膜171によって」形成された「前記p型の高耐圧絶縁ゲート型電界効果トランジスタのゲート絶縁膜」をも備えている点においても、両者は相違する。
(j)相違点1については、上記(i)で検討した相違点について検討するまでもなく、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとは言えない。
また、他に本願発明を拒絶すべき理由を発見しない。

さらに、請求項1を引用する、請求項2ないし6に係る発明についても、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとは言えず、また、他に請求項2ないし6に係る発明を拒絶すべき理由を発見しない

4.むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2007-01-17 
出願番号 特願2000-257539(P2000-257539)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宇多川 勉大嶋 洋一  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 長谷山 健
今井 拓也
発明の名称 半導体装置の製造方法及びフォトリソグラフィ用マスク  
代理人 野河 信太郎  

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