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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1151049
審判番号 不服2004-5705  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-22 
確定日 2007-01-25 
事件の表示 平成11年特許願第235240号「集積回路の形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月28日出願公開、特開2000-124326〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年8月23日の特許法第36条の2第1項の規定による出願(パリ条約優先権主張、1998年8月26日、米国)であって、平成15年12月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成16年3月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月21日付けで手続補正がなされ、その後、当審において、平成17年4月22日付けで審尋がなされ、これに対して同年10月25日に回答書が提出されたものである。

2.平成16年4月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月21日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、補正前の請求項1及び6(以下、それぞれ「補正前請求項1」及び「補正前請求項6」という。)を補正後の請求項1及び6(以下、それぞれ「補正後請求項1」及び「補正後請求項6」という。)と補正するものである。
すなわち、補正前請求項1の
「【請求項1】 第1絶縁層を形成するステップと、
前記第1絶縁層の中に異なる深さの少なくとも第1トレンチと第2トレンチを形成するステップであって、前記第1トレンチは、前記絶縁層の厚さと同じ深さを有し、前記第2トレンチは前記絶縁層の厚さより、小さい深さを有し、
前記第1トレンチと第2トレンチ内にポリシリコン材料層を形成するステップと
を有することを特徴とする集積回路の形成方法。」を
補正後請求項1の
「【請求項1】 二重ポリシリコン構造を製造する方法であって、前記方法が、
第1絶縁層を形成するステップと、
前記第1絶縁層の中に異なる深さの少なくとも第1トレンチと第2トレンチを形成するステップであって、前記第1トレンチは、前記絶縁層の厚さと同じ深さを有し、前記第2トレンチは前記絶縁層の厚さより、小さい深さを有し、
前記第1トレンチと第2トレンチ内にポリシリコン材料層を形成するステップとを有し、前記ポリシリコン材料が前記二重ポリシリコン構造の一部を形成するが、相互接続の一部として形成されない
ことを特徴とする集積回路の形成方法。」と補正すること(以下、「補正事項1」という。)と、
補正前請求項6の
「【請求項6】 イオンを第1絶縁層内に注入するステップ
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の方法。」を
補正後請求項6の
「【請求項6】 イオンを第1絶縁層内に注入するステップ
をさらに有することを特徴とする請求項4記載の方法。」と補正すること(以下、「補正事項2」という。)である。

(2)補正事項の整理
[補正事項1について]
補正事項1は、補正前請求項1の「第1絶縁層を形成するステップ」の前に補正後請求項1の「二重ポリシリコン構造を製造する方法であって、前記方法が、」を追加すること(以下、「補正事項1-1」という。)と、補正前請求項1の「前記第1トレンチと第2トレンチ内にポリシリコン材料層を形成するステップとを有する」を、補正後請求項1の「前記第1トレンチと第2トレンチ内にポリシリコン材料層を形成するステップとを有し、前記ポリシリコン材料が前記二重ポリシリコン構造の一部を形成するが、相互接続の一部として形成されない」と補正すること(以下、「補正事項1-2」という。)に区分できる。
[補正事項2について]
補正事項2は、補正前請求項6の「請求項1記載の方法」を、補正後請求項6の「請求項4記載の方法」と補正するものである。

(3)本件補正についての検討
(3-1)新規事項の追加及び補正の目的の適否について
[補正事項1について]
補正事項1-1について
補正事項1-1についての補正により追加された「二重ポリシリコン構造を製造する方法であって、前記方法が、」という記載が、補正前請求項1の「集積回路の形成方法」を限定するためのものであるとしても、「二重ポリシリコン構造」が「集積回路」の構成のどの部分を意味するか、また「二重ポリシリコン構造」がどのようなものであるかについては、特許法第36条の2第4項の規定により明細書及び図面とみなされた同条第2項に規定する外国語書面の翻訳文(以下、「当初明細書等」という。)の記載を参酌しても明らかではないから、補正事項1-1についての補正は、補正前請求項1に係る発明を特定するための事項のいずれの下位概念化にも該当せず、当該補正は、発明を特定するための事項を実質的に新たに付加する補正であって、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。

補正事項1-2について
補正事項1-2についての補正は、実質的に、「ポリシリコン材料が前記二重ポリシリコン構造の一部を形成するが、相互接続の一部として形成されない」ことを追加するものであるが、(a)「ポリシリコン材料」が「二重ポリシリコン構造」の構成のどの部分を構成しているのか、また「二重ポリシリコン構造」がどのようなものであるか、当初明細書等を参酌しても明らかでないから、「ポリシリコン材料」の構成をどのように限定しているのか明らかでない。また、(b)「ポリシリコン材料」と他の構成要素との接続関係に関し「相互接続の一部として形成されない」ことはどのような構成を意味するか当初明細書等を参酌しても明らかでなく、補正前請求項1に係る発明を特定するための事項のいずれの下位概念化にも該当しないから、補正事項1-2についての補正は、発明を特定するための事項を新たに付加する補正であって、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。

また、半導体分野において、「相互接続」とは、ある領域と他の領域とを相互に接続することを意味するから、「ポリシリコン材料」が「相互接続の一部として形成されない」とは、ポリシリコン材料がある領域と他の領域とを相互に接続するための領域の一部としては形成されないことを意味するとも解釈できる。
しかしながら、当初明細書等には、【0021】段落の「実際のデバイスにおいては、電気接続(図示せず)がポリシリコン層40とソース/ドレイン領域34に電気的接続が従来方法により行われる。」及び【0027】段落の「従来方法によりポリシリコン層40とソース/ドレイン領域34への電気的接続を行う。」において、「ポリシリコン材料」が「相互接続の一部を形成する」ことが記載されており、また、当初明細書等には、「ポリシリコン層」の電気的接続について上記段落以外には何らの記載もないから、補正事項1-2についての補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものとは認められない。

したがって、補正事項1-1及び補正事項1-2を含む補正事項1についての補正は、当初明細書等に記載された範囲内においてなされたものとは認められず、また、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。

[補正事項2について]
補正事項2についての補正は、請求項6が引用する請求項を、請求項1から請求項4に変更するものである。
そして、請求項4は請求項3を引用し、また、請求項3は補正後請求項1を引用するものであるから、補正後請求項6は実質的に補正後請求項1を引用するものであり、補正後請求項6に係る発明は、補正後請求項1に係る発明を前提とするものであるから、補正事項2についての補正は、上記[補正事項1について]において検討したとおりの理由により、当初明細書等に記載された範囲内においてなされたものとは認められず、また、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。

したがって、補正事項1及び補正事項2についての補正を含む本件補正は、当初明細書等に記載された範囲内においてなされたものとは認められず、また、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないので、特許法第17条の2第3項及び同第4項第1号ないし第4号に規定された要件を満たさず、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

なお、以下では、仮に、本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、且つ、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものとして、独立特許要件について検討する。

(3-2)独立特許要件について
[補正後請求項1について]
補正後請求項1には「二重ポリシリコン構造を製造する方法」および「前記ポリシリコン材料が前記二重ポリシリコン構造の一部を形成する」とあるが、「二重ポリシリコン構造」に関して、当初明細書等には、「本発明により平面状表面を有する二重ポリシリコン構造を実現できる。この二重ポリシリコン構造は、均一の厚さを有する第1絶縁層と、この第1絶縁層内に異なる深さを有する複数のトレンチと、第1絶縁層よりも薄い第2絶縁層(各トレンチの底において)と、このトレンチを少なくとも部分的に充填するポリシリコン層を有し、比較的平坦な表面を有する。」(【0007】)、「これにより図4に示した二重ポリシリコン構造が形成できる。」(【0020】)と記載されているのみで、「二重ポリシリコン構造」は定義されていないから、「二重ポリシリコン構造」がどのような構成であるか明確でなく、補正後請求項1に係る発明の構成が明確でない。
また、補正後請求項1には「前記ポリシリコン材料が前記二重ポリシリコン構造の一部を形成するが、相互接続の一部として形成されない」とあるが、「前記ポリシリコン材料」が「相互接続の一部として形成されない」との構成に関し、当初明細書等には、「前記ポリシリコン材料」が「相互接続の一部として形成されない」との記載はなく、また、当初明細書等の【0021】段落の記載、「実際のデバイスにおいては、電気接続(図示せず)がポリシリコン層40とソース/ドレイン領域34に電気的接続が従来方法により行われる。」を参酌しても、「ポリシリコン材料」と他の構成要素がどのような関係で「相互接続の一部として形成されない」としているのか明らかでなく、「ポリシリコン材料」の構成をどのように限定しているのかも明確でなく、補正後請求項1に係る発明の構成は明確でない。
したがって、補正後請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願の特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

(3-3)むすび
したがって、補正事項1及び補正事項2についての補正を含む本件補正は、当初明細書等に記載された範囲内においてなされたものとは認められず、また、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないので、特許法第17条の2第3項及び同第4項第1号ないし第4号に規定された要件を満たさず、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
仮に、本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、且つ、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものとしても、補正後請求項1に係る発明は、その構成が不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、その特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではなく、補正事項1及び補正事項2についての補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから、適法でない補正を含む本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成16年4月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成15年9月25日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「第1絶縁層を形成するステップと、
前記第1絶縁層の中に異なる深さの少なくとも第1トレンチと第2トレンチを形成するステップであって、前記第1トレンチは、前記絶縁層の厚さと同じ深さを有し、前記第2トレンチは前記絶縁層の厚さより、小さい深さを有し、
前記第1トレンチと第2トレンチ内にポリシリコン材料層を形成するステップと
を有することを特徴とする集積回路の形成方法。」

4.刊行物に記載された発明
刊行物1:特開平5-102325号公報
刊行物1は、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布されたものであって、図1および図2とともに以下の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多層配線された半導体装置に係り、特には、コンタクトホールに導体膜を埋め込む、いわゆるプラグ形成技術に関する。」(0001段落)
「【0004】この半導体装置を形成するには、図2(a)に示すように、絶縁層3の所定箇所をエッチングしてコンタクトホール1a,1bを形成した後、同図(b)に示すように、CVDなどによってコンタクトホール1a,1bが完全に埋まるように導体膜5を積層する。次に、エッチングによりコンタクトホール1a,1bに埋設された導体膜5以外の箇所に存在する導体膜5を除去するいわゆる平坦化処理を行う。そして、同図(c)に示すように、平坦化されたコンタクトホール1a,1bの上の部分に配線層6a,6bを形成する。」(0004段落)
「【0012】
【実施例】図1は本発明の実施例に係る半導体装置を製造工程順に示す断面図であり、図2の従来例に対応する部分には同一の符号を付す。
【0013】図1において、1a,1bはそれぞれ深さの異なるコンタクトホール、2はAlの下地配線、3はSiO2の絶縁層、4はp層、5はWやポリシリコンの導体膜、6a、6bはAlの配線層である。
【0014】この実施例の特徴は、各コンタクトホール1a,1bについて、その深さLa,Lbと開口径Da,Dbとのアスペクト比La/Da,Lb/Dbが一定になるように設定されていることである。したがって、一方のコンタクトホール1aは、その深さLaが浅いので、これに合わせてその開口径Daは小さく設定され、他方のコンタクトホール1bは、その深さLbが深いので、これに合わせてその開口径Dbは大きく設定される。
【0015】この構成にすれば、図1(a)において、各コンタクトホール1a,1bを形成した後、図1(b)において、CVDなどによってコンタクトホール1a,1bが完全に導体膜5で埋まるように積層した際に、コンタクトホール1a,1bの上端から導体膜5の表面までの膜厚Pa,Pbはいずれも略等しくなる。
【0016】このため、次に、エッチングによりコンタクトホール1a,1bに埋設された導体膜5以外の箇所に存在する導体膜5を除去する平坦化処理においては、上記の膜厚Pa,Pbの大きさにばらつきが無いので、エチッチング時間を一義的に設定することができ、したがって、エッチング不十分で絶縁層3の表面に存在する導体膜5を取り残したり、オーバエッチングのために深さの浅い方のコンタクトホール1a内の導体膜5が消失するといったことが無くなる。」(0012?0016段落)
また、図1には、p層4上にSiO2の絶縁層3が形成されていること、および、コンタクトホール1bの深さLbがSiO2の絶縁層3の膜厚と同じ深さであることが示されている。

これらの記載より、刊行物1には、以下の事項が記載されている。
(1)p層4上に形成されたSiO2の絶縁層3に各コンタクトホール1a,1bを形成する工程。
(2)コンタクトホール1a,1bは、ぞれぞれ深さの異なるコンタクトホールであること。
(3)一方のコンタクトホール1aは、その深さLaが浅く、他方のコンタクトホール1bは、その深さLbが深いこと。
(4) コンタクトホール1bの深さLbがSiO2の絶縁層3の膜厚と同じ深さであること。
(5)コンタクトホール1a,1bを導体膜5で埋設する工程。
(6)導体膜5はW又はポリシリコンであること。
(7)コンタクトホール1a,1bを備えた半導体装置を製造する方法。

よって、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「p層4上に形成されたSiO2の絶縁層3に深さの異なるコンタクトホール1a,1bを形成する工程と、コンタクトホール1a,1bをW又はポリシリコンからなる導体膜5で埋設する工程を有し、一方のコンタクトホール1aは、その深さLaが浅く、他方のコンタクトホール1bは、その深さLbが深く、かつ、コンタクトホール1bの深さLbが前記SiO2の絶縁層3の膜厚と同じ深さであることを特徴とする半導体装置を製造する方法。」

5.対比・判断
本願発明と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物発明」という。)とを対比する。
(a)刊行物発明の「SiO2の絶縁層3」および「工程」は、それぞれ、本願発明の「第1絶縁層」および「ステップ」に相当する。
(b)刊行物発明には「SiO2の絶縁層3」を形成する工程について明示されていないが、「SiO2の絶縁層3」は「p層4上に形成された」ものであり、刊行物発明が「SiO2の絶縁層3」を形成する工程を実質的に有することは当業者にとって明らかであるから、刊行物発明も「SiO2の絶縁層3」を形成する工程を実質的に備えている。
(c)「絶縁層3の所定箇所をエッチングしてコンタクトホール1a,1bを形成」する(0004段落)のであるから、刊行物発明の「コンタクトホール1a,1b」は「SiO2の絶縁層3」をエッチングにより除去した部分であり、本願発明においても、図1及び0012段落の記載より、「第1絶縁層」をエッチングにより除去した部分が「第1トレンチ」および「第2トレンチ」であるから、刊行物発明の「コンタクトホール1a,1b」は、それぞれ、本願発明の「第1トレンチ」及び「第2トレンチ」に相当する。
(d)刊行物発明では「コンタクトホール1bの深さLb」が「SiO2の絶縁層3の膜厚と同じ深さであ」り、また、「一方のコンタクトホール1aは、その深さLaが浅く、他方のコンタクトホール1bは、その深さLbが深」いから、「コンタクトホール1a」の「深さLa」は、「SiO2の絶縁層3の膜厚」よりも小さい深さであることは、当業者にとって明らかである。
(e)刊行物発明の「ポリシリコンからなる導電膜5」は、本願発明の「ポリシリコン材料層」に相当し、刊行物発明の「W又はポリシリコンからなる導体膜5で埋設する」は、「ポリシリコンからなる導体膜5で埋設する」ことを含み、また、「埋設する」とは、埋め込んで形成することを意味するから、刊行物発明の「ポリシリコンからなる導体膜5で埋設する」は、本願発明の「ポリシリコン材料層を形成する」に相当する。
よって、両者は、
「第1絶縁層を形成するステップと、前記第1絶縁層に第1トレンチと第2トレンチを形成するステップであって、前記第1トレンチは、前記絶縁層の厚さと同じ深さを有し、前記第2トレンチは前記絶縁層の厚さより、小さい深さを有し、前記第1トレンチと第2トレンチ内にポリシリコン材料層を形成するステップを有する方法」である点で一致し、以下の各点で相違する。
相違点1
本願発明は、「前記第1絶縁層の中に異なる深さの少なくとも第1トレンチと第2トレンチを形成するステップ」を備えるのに対し、刊行物発明は、「SiO2の絶縁層3に深さの異なるコンタクトホール1a,1bを形成する工程」を備えた点。
相違点2
本願発明は、「前記第1トレンチと第2トレンチ内にポリシリコン材料層を形成するステップ」を備えるのに対し、刊行物発明は、「コンタクトホール1a,1bをWまたはポリシリコンからなる導体膜5で埋設する工程」を備える点。
相違点3
本願発明は、「集積回路の形成方法」であるのに対し、刊行物発明は、「半導体装置を製造する方法」である点。

以下、各相違点について検討する。
[相違点1について]
刊行物発明の「コンタクトホール1a,1bを形成する工程」とは、「コンタクトホール1a,1b」という2つコンタクトホールを形成する工程を意味し、また、本願発明の「少なくとも第1トレンチと第2トレンチを形成するステップ」とは、「第1トレンチと第2トレンチ」を少なくとも含むトレンチ(コンタクトホール)を形成する工程を意味するから、刊行物発明における「コンタクトホール1a,abを形成する工程」は、本願発明の「少なくとも第1トレンチと第2トレンチを形成するステップ」に相当する。
また、「5.対比・判断」の「(c)」及び「(d)」を参酌すれば、刊行物発明における「深さの異なるコンタクトホール1a,1b」が、本願発明の「異なる深さの」「第1トレンチと第2トレンチ」に相当することは、当業者にとって明らかである。
したがって、上記相違点1は、実質的なものではない。

[相違点2について]
刊行物発明の「コンタクトホール1a,1bをW又はポリシリコンからなる導体膜5で埋設する工程」は、「コンタクトホール1a,1b」内を「W」「からなる導体膜5で埋設する工程」と、「コンタクトホール1a,1b」内を「ポリシリコンからなる導体膜5で埋設する工程」という2つの工程を択一的に記載したものであり、上記(e)で検討したとおり、刊行物発明の「コンタクトホール1a,1b」内を「ポリシリコンからなる導体膜5で埋設する工程」が、本願発明の「前記第1トレンチと第2トレンチ内にポリシリコン材料層を形成するステップ」に相当することは、当業者にとって明らかであるから、上記相違点2は、実質的なものではない。

[相違点3について]
集積回路が複数の半導体装置が複数組み合わされたものを意味すること、そして、「集積回路の形成方法」が、集積回路を構成する各半導体装置の形成方法、言い換えると、半導体装置を製造する方法をも意味することは当業者にとって明らかであるから、刊行物発明の「半導体装置を製造する方法」は、本願発明の「集積回路の形成方法」に相当しており、上記相違点3は、実質的なものではない。

よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし16に係る発明について判断するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-30 
結審通知日 2006-09-04 
審決日 2006-09-15 
出願番号 特願平11-235240
審決分類 P 1 8・ 574- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
P 1 8・ 573- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 571- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 雅彦  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 長谷山 健
松本 邦夫
発明の名称 集積回路の形成方法  
代理人 本宮 照久  
代理人 朝日 伸光  
代理人 岡部 正夫  
代理人 越智 隆夫  
代理人 産形 和央  
代理人 高梨 憲通  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 藤野 育男  
代理人 高橋 誠一郎  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 臼井 伸一  

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