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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1151465
審判番号 不服2004-17885  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-02-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-30 
確定日 2007-02-07 
事件の表示 特願2000-215973「トラックジャンプ方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月16日出願公開、特開2001- 43540〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許出願(以下「本願」という。)は、平成12年7月17日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 1999年7月16日 韓国)に出願されたものであって、平成16年5月25日付けで拒絶査定がなされたところ、平成16年8月30日付けで特許法第121条第1項の審判請求がなされ、平成16年9月29日付けで手続補正書が提出されたものである。

II.平成16年9月29日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成16年9月29日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正について補正の内容
本件補正による特許請求の範囲の補正内容は、本件補正前には、
「【請求項1】基準周波数の認識可能な情報がウォブル信号としてトラック上にウォブリングされている記録可能なデータ領域の間に前記データ領域の形状の区分のために位相の相違する複数のヘッダ領域が配置されている回転中の光記録媒体でのトラックジャンプ方法であって、
トラックジャンプ命令を受信する段階と、
前記トラックジャンプ命令が受信されると、この受信時点で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点なのか否かを確認する段階と、
前記確認段階で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点ではないと確認された場合は前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認されるまでトラックジャンプを行わずに待機する段階と、
前記確認段階で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点と確認された場合、及び前記待機段階で前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認された場合は前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止しトラックジャンプを行う段階と、
前記トラックジャンプ段階でトラックジャンプが完了すると、前記ウォブル信号のPLLを再開する段階と
を備えることを特徴とするトラックジャンプ方法。
【請求項2】前記確認段階は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオフ時点をヘッダ領域の終わる地点と判断することを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項3】前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止する段階は、前記ウォブル信号のPLLを禁止し、PLL-ウォブル信号をトラックジャンプ以前の値に維持することを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項4】前記確認段階は、前記光記録媒体からの光反射信号の和を一定のレベルでスライスしてヘッダ領域を示すヘッダマスク信号を生成することを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項5】前記確認段階は、前記光記録媒体からのトラック長手方向に分割された光反射信号の差を一定のレベルでスライスしてヘッダ領域を示すヘッダマスク信号を生成することを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項6】前記確認段階は、PLLがかけられたウォブル信号をカウントしてヘッダ領域を示すヘッダマスク信号を生成することを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項7】前記PLL再開段階は、前記トラックジャンプの完了時にPLLがかけられたウォブル信号をカウントしてヘッダ領域を示すヘッダマスク信号を生成することを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項8】前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止する段階は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオンされる区間では前記ウォブル信号のPLLを禁止する段階を含むことを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項9】前記PLL再開段階は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオン時点の以前にトラックジャンプを終えることを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項10】N回連続トラックジャンプ命令が受信されると、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号の立ち下がりエッジ時点でトラックジャンプを始めた後、ヘッダマスク信号の立ち上がりエッジ前にトラックジャンプを終えてサーボをオンする過程をN回繰り返すことを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項11】トラックジャンプ時にヘッダ領域を示す第1ヘッダマスク信号を用いてヘッダ領域をマスキングする段階と、
正常記録/再生時にヘッダ領域を示す第2ヘッダマスク信号を用いてヘッダ領域をマスキングする段階と
を備え、
前記第1ヘッダマスク信号はウォブル周期に影響を受けないことを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項12】前記第1ヘッダマスク信号は前記光記録媒体からの光反射信号の和又は差信号を一定のレベルでスライスして生成することを特徴とする請求項11記載のトラックジャンプ方法。
【請求項13】前記第2ヘッダマスク信号はPLLがかけられたウォブル信号をカウントして生成することを特徴とする請求項11記載のトラックジャンプ方法。
【請求項14】トラックジャンプが完了した後、ウォブル信号が正常に検出されるまでは前記第1ヘッダマスク信号を用いてヘッダ領域をマスキングする段階を更に備えることを特徴とする請求項11記載のトラックジャンプ方法。
【請求項15】基準周波数の認識可能な情報がウォブル信号としてトラック上にウォブリングされている記録可能なデータ領域の間に位相の相違する複数のヘッダ領域が配置されている光記録媒体のトラックジャンプ方法において、
(a)トラックジャンプ命令が受信された時に前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点なのか否かを確認するステップと、
(b)前記ステップ(a)で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点であると確認された場合はトラックジャンプを開始させるステップと
を備えることを特徴とするトラックジャンプ方法。
【請求項16】前記ステップ(a)は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオフ時点を、ヘッダ領域の終わる地点として決定することを特徴とする請求項15記載のトラックジャンプ方法。
【請求項17】前記ステップ(b)は、ウォブル信号の位相同期ループPLLが禁止されている間にトラックジャンプを開始させることを特徴とする請求項15記載のトラックジャンプ方法。
【請求項18】前記ステップ(b)は、前記ウォブル信号のPLLを禁止し、PLL-ウォブル信号をトラックジャンプ開始前の値に維持することを特徴とする請求項17記載のトラックジャンプ方法。
【請求項19】前記ステップ(b)は、PLLがかけられたウォブル信号をカウントしてヘッダ領域を示すヘッダマスク信号を生成することを特徴とする請求項17記載のトラックジャンプ方法。
【請求項20】前記ステップ(b)は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオンされる区間では前記ウォブル信号のPLLを禁止することを特徴とする請求項17記載のトラックジャンプ方法。
【請求項21】(c)トラックジャンプが完了すると、ウォブル信号の位相同期ループPLLを再開するステップをさらに含むことを特徴とする請求項15記載のトラックジャンプ方法。
【請求項22】前記ステップ(c)は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号がオンする時点まではトラックジャンプを継続することを特徴とする請求項21記載のトラックジャンプ方法。
【請求項23】基準周波数の認識可能な情報がウォブル信号としてトラック上にウォブリングされている記録可能なデータ領域の間に位相の相違する複数のヘッダ領域が配置されている光記録媒体のトラックジャンプ方法において、
(a)トラックジャンプ命令が受信された時に前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点なのか否かを確認するステップと、
(b)前記確認ステップ(a)の確認結果に基づいてトラックジャンプを開始させるか否かを決定するステップと
を備えることを特徴とするトラックジャンプ方法。
【請求項24】前記ステップ(a)の確認結果として、前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点であることが確認された場合は前記トラックジャンプを開始させることを特徴とする請求項23記載のトラックジャンプ方法。
【請求項25】前記ステップ(a)は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオフ時点を、ヘッダ領域の終わる地点として決定することを特徴とする請求項24記載のトラックジャンプ方法。
【請求項26】ウォブル信号の位相同期ループPLLが禁止されている間にトラックジャンプを開始させることを特徴とする請求項24記載のトラックジャンプ方法。
【請求項27】(c)トラックジャンプが完了すると、ウォブル信号の位相同期ループPLLを再開するステップをさらに含むことを特徴とする請求項23記載のトラックジャンプ方法。」

というものであったところ、

「【請求項1】基準周波数の認識可能な情報がウォブル信号としてトラック上にウォブリングされている記録可能なデータ領域の間に前記データ領域の形状の区分のために位相の相違する複数のヘッダ領域が配置されている回転中の光記録媒体でのトラックジャンプ方法であって、
トラックジャンプ命令を受信する段階と、
前記トラックジャンプ命令が受信されると、この受信時点で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点なのか否かを確認する段階と、
前記確認段階で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点ではないと確認された場合は前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認されるまでトラックジャンプを行わずに待機する段階と、
前記確認段階で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点と確認された場合、及び前記待機段階で前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認された場合は前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止し、PLL-ウォブル信号をトラックジャンプ以前の値に維持してトラックジャンプを行う段階と、
前記トラックジャンプ段階においてヘッダ領域の前の地点でトラックジャンプが完了すると、前記ウォブル信号のPLLを再開する段階と
を備えることを特徴とするトラックジャンプ方法。
【請求項2】前記確認段階は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオフ時点をヘッダ領域の終わる地点と判断することを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項3】前記確認段階は、前記光記録媒体からの光反射信号の和を一定のレベルでスライスしてヘッダ領域を示すヘッダマスク信号を生成することを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項4】前記確認段階は、前記光記録媒体からのトラック長手方向に分割された光反射信号の差を一定のレベルでスライスしてヘッダ領域を示すヘッダマスク信号を生成することを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項5】前記確認段階は、PLLがかけられたウォブル信号をカウントしてヘッダ領域を示すヘッダマスク信号を生成することを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項6】前記PLL再開段階は、前記トラックジャンプの完了時にPLLがかけられたウォブル信号をカウントしてヘッダ領域を示すヘッダマスク信号を生成することを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項7】前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止する段階は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオンされる区間では前記ウォブル信号のPLLを禁止する段階を含むことを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項8】前記PLL再開段階は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオン時点の以前にトラックジャンプを終えることを特徴とする請求項1記載のトラックジャンプ方法。
【請求項9】基準周波数の認識可能な情報がウォブル信号としてトラック上にウォブリングされている記録可能なデータ領域の間に位相の相違する複数のヘッダ領域が配置されている光記録媒体のトラックジャンプ方法において、
(a)トラックジャンプ命令が受信された時に前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点なのか否かを確認するステップと、
(b)前記ステップ(a)で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点であると確認された場合は、前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止し、かつ、PLL-ウォブル信号をトラックジャンプ以前の値に維持してトラックジャンプを開始させるとともに、ヘッダ領域の前の地点でトラックジャンプが完了すると、前記ウォブル信号のPLLを再開するステップと
を備えることを特徴とするトラックジャンプ方法。
【請求項10】前記ステップ(a)は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオフ時点を、ヘッダ領域の終わる地点として決定することを特徴とする請求項9記載のトラックジャンプ方法。
【請求項11】前記ステップ(b)は、PLLがかけられたウォブル信号をカウントしてヘッダ領域を示すヘッダマスク信号を生成することを特徴とする請求項9記載のトラックジャンプ方法。
【請求項12】前記ステップ(b)は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオンされる区間では前記ウォブル信号のPLLを禁止することを特徴とする請求項9記載のトラックジャンプ方法。
【請求項13】前記ステップ(b)は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号がオンする時点まではトラックジャンプを継続することを特徴とする請求項9記載のトラックジャンプ方法。
【請求項14】基準周波数の認識可能な情報がウォブル信号としてトラック上にウォブリングされている記録可能なデータ領域の間に位相の相違する複数のヘッダ領域が配置されている光記録媒体のトラックジャンプ方法において、
(a)トラックジャンプ命令が受信された時に前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域なのか否かを確認するステップと、
(b)前記確認ステップ(a)の確認結果に基づいてトラックジャンプを開始させるか否かを決定し、前記確認結果がヘッダ領域の終わる地点である時にトラックジャンプを開始させる一方、前記トラックジャンプ中には前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止し、かつ、PLL-ウォブル信号をトラックジャンプ以前の値に維持するとともに、ヘッダ領域の前の地点でトラックジャンプが完了すると、前記ウォブル信号のPLLを再開するステップと
を備えることを特徴とするトラックジャンプ方法。
【請求項15】前記ステップ(a)の確認結果として、前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点であることが確認された場合は前記トラックジャンプを開始させることを特徴とする請求項14記載のトラックジャンプ方法。
【請求項16】前記ステップ(a)は、ヘッダ領域を示すヘッダマスク信号のオフ時点を、ヘッダ領域の終わる地点として決定することを特徴とする請求項15記載のトラックジャンプ方法。」

と、請求項数を27から16にして、上記下線部分を追加するものである。即ち、本件補正の請求項1については、本件補正前の請求項3の構成を加えるとともに、段落[0031]の14?22行の記載事項をもとに「前記トラックジャンプ段階においてヘッダ領域の前の地点でトラックジャンプが完了すると、ウォブル信号のPLLを再開する段階」を付加する内容のもの、また、本件補正の請求項9については、本件補正前の請求項15に請求項17,18,21の構成を加えるとともに、段落[0031]の14?22行の記載事項をもとに「ヘッダ領域の前の地点でトラックジャンプが完了すると、ウォブル信号のPLLを再開する」を付加する内容のもの、また、本件補正の請求項14については、本件補正前の請求項23に請求項18,26,27の構成を加えるとともに、段落[0031]の14?22行の記載事項をもとに「ヘッダ領域の前の地点でトラックジャンプが完了すると、ウォブル信号のPLLを再開する」を付加する内容のものである。

2.本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲において、本件補正前の請求項数の削除と、独立請求項1,15,23に係る各発明において、発明を特定するために必要な事項である「トラックジャンプ中」及び「トラックジャンプが完了」後におけるPLL-ウォブル信号を限定して減縮するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の規定を満たすものと認める。

3.独立特許要件
次に、本件補正の請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するか)について、以下に検討する。

(3-1)本件補正後発明
本件補正での【請求項1】に係る発明は、上記1.に記載している以下のとおりのものである。
「基準周波数の認識可能な情報がウォブル信号としてトラック上にウォブリングされている記録可能なデータ領域の間に前記データ領域の形状の区分のために位相の相違する複数のヘッダ領域が配置されている回転中の光記録媒体でのトラックジャンプ方法であって、
トラックジャンプ命令を受信する段階と、
前記トラックジャンプ命令が受信されると、この受信時点で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点なのか否かを確認する段階と、
前記確認段階で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点ではないと確認された場合は前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認されるまでトラックジャンプを行わずに待機する段階と、
前記確認段階で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点と確認された場合、及び前記待機段階で前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認された場合は前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止し、PLL-ウォブル信号をトラックジャンプ以前の値に維持してトラックジャンプを行う段階と、
前記トラックジャンプ段階においてヘッダ領域の前の地点でトラックジャンプが完了すると、前記ウォブル信号のPLLを再開する段階と
を備えることを特徴とするトラックジャンプ方法。」(以下「本件補正後発明」という。)

(3-2)刊行物について
これに対して、原査定の理由で引用された刊行物である、特開平11-66563号公報(以下「刊行物1」という。)には、光ディスク装置に関するものであって、図面と共に以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(i)「【請求項1】データを記録するトラックに沿ってウォブル信号を含んだ光ディスクを回転させ、光ヘッドによって該光ディスクのトラックを走査することにより、該光ディスクの記録及び再生の少なくとも一方を行う光ディスク装置において、
前記光ヘッドの出力から前記光ディスクの前記ウォブル信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された前記ウォブル信号に基づいて、同期クロック信号を生成する同期クロック生成手段と、
前記同期クロック生成手段によって生成された前記同期クロック信号によって、前記光ディスクへのデータの記録及び該光ディスクからのデータの再生の少なくとも一方を行う記録再生手段とを備える光ディスク装置。
【請求項2】?【請求項8】 ・・・(省略)・・・
【請求項9】前記同期クロック生成手段は、前記ウォブル信号に同期する同期クロック信号を生成するPLL回路、及び前記PLL回路の同期動作をホールドするホールド手段を備え、
前記ホールド手段は、前記光ヘッドの出力に前記ウォブル信号が含まれていないときに、前記PLL回路の同期動作をホールドする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項10】前記光ディスクのトラックに沿って、アドレス領域及びデータ記録領域が交互に形成される請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項11】前記光ヘッドによる前記光ディスクの前記アドレス領域の走査直後に、前記抽出手段によって抽出されたウォブル信号を一定期間だけマスクするマスク手段を備える請求項10に記載の光ディスク装置。
【請求項12】前記同期クロック生成手段は、前記ウォブル信号に同期する同期クロック信号を形成するPLL回路、及び前記PLL回路の同期動作をホールドするホールド手段を備え、
前記ホールド手段は、前記光ヘッドによる前記光ディスクの前記アドレス領域走査時、前記光ヘッドによる前記光ディスクのトラック横断時、及び前記光ヘッドによる前記光ディスクの前記ウォブル信号が含まれていない領域の走査時に、前記PLL回路の同期動作をホールドする請求項11に記載の光ディスク装置。」
(ii)「【0002】【従来の技術】周知の様に、記録再生可能な光ディスクでは、光ディスク上のトラックを複数のセクターに分割し、これらのセクター単位で、データの記録及び再生が行われる。また、光ディスクを一定回転速度で回転させた状態で、データの記録及び再生を行うことが多い(CAV;Constant Angular Velocity)。例えば、光ディスクのトラックのウォブルを検出して、光ディスクの回転速度に対応する周期のウォブル信号を形成し、このウォブル信号に基づいて、光ディスクを一定回転速度で回転させ、この後に基準クロック信号に同期してデータの記録及び再生を行う。
【0003】・・・(省略)・・・
【0004】図6は、従来のディスク記録再生装置のブロック図を示している。図6において、101はモーター、102は光ディスク、103は光ヘッド、104は光ヘッド103の出力信号から再生信号及びフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号を作り出す再生信号/サーボ信号検出回路、105は再生信号を2値化する再生信号2値化回路、106は2値化された再生信号を復調して再生データを生成する復調器、107は光ヘッド103の光源となるレーザーを駆動するためのレーザー駆動回路、108は変調後のデータからレーザー駆動回路107においてレーザーを光変調させる為の信号を生成する記録信号生成回路、109は記録するデータを変調して前記記録信号生成回路108への信号を生成する変調器、110は前記再生信号/サーボ信号検出回路104のサーボ信号を用いて光ヘッド103を制御し、更にモーター101を制御するフォーカス/トラッキング制御手段、111はデータの記録/再生を行うのに必要な各種ゲート信号を発生させる為の基準クロック信号を発生する基準クロック発生器、112は前記基準クロック発生器111の基準クロック信号を元に各種ゲート信号を発生するゲート信号発生器、123は復調器106の復調された再生データのエラー訂正と該再生データからのアドレスの検出を行うエラー訂正/アドレス検出器、124はバイアス電圧を発生するバイアス回路、125は再生信号/サーボ信号検出回路104の出力するトラッキング誤差信号とバイアス回路124の発生するバイアス電圧を比較して異常ジャンプを検出する比較器、126はモーター101の回転数を基準クロック信号を用いて検出する回転数誤差検出回路をそれぞれ示している。」
(iii)「【0072】光ディスク2は、例えば図2(a),(b)に示す様なDVD-RAMフォーマットを有する。」
(iv)「【0078】図2(b)には、1つのゾーン内の複数のトラックT1,T2,……を示している。各トラックT1,T2,……毎に、複数のセクターS1,S2,……が形成されている。1周のトラックは、ランドトラック及びグルーブトラックの一方からなり、その外周のトラックは、他方からなる。各トラックは、ランドトラック及びグルーブトラックを交互に繰り返しており、相互に連続してスパイラル状に形成されている。
【0079】ランドトラック及びグルーブトラックは、トラックのトラッキング方向に対して垂直方向に正弦波状にウォブルしている。
【0080】各セクターS1,S2,……の先頭には、ランドトラック及びグルーブトラックのいずれも存在しないそれぞれのアドレス領域A1,A2,……が形成されている。これらのアドレス領域には、内周側あるいは外周側に1/2トラックピッチの距離をずらして、アドレスが記録されている。
【0081】各セクターS1,S2,……においては、アドレスに引き続いて、ランドトラック及びグルーブトラックのいずれかにデータが記録される。」
(v)「【0085】この2値化されたウォブル信号は、位相/周波数比較器17、チャージポンプ18、ローパスフィルター19、VCO20、分周器21から構成されたPLL回路に入力される。このPLL回路では、該2値化されたウォブル信号の位相に、VCO20から出力されたクロック信号を分周器21によって分周した分周信号の位相が追従する様に、該VCO20を制御し、該2値化されたウォブル信号に同期し、かつ該2値化されたウォブル信号の整数倍の同期クロック信号を生成する。
【0086】したがって、この同期クロック信号は、光ヘッド3の出力信号に含まれるウォブル信号に常に同期している。図3(d)には、この同期クロック信号を分周器21によって分周した信号を示す。」
(vi)「【0117】チャージポンプ18は、VCO20を含むPLL回路の同期動作をホールドし、その出力である同期クロック信号の周波数を保持する機能を持つ。例えば、フォーカス/トラッキング制御手段10の制御によって、光ヘッド3が光ディスク2のトラックを横断させているときに、この旨を示す信号をフォーカス/トラッキング制御手段10からチャージポンプ18に受けた場合、あるいは光ヘッド3が光ディスク2のアドレス領域を走査しているときに、この旨を示す信号をゲート信号発生器12からチャージポンプ18に受けた場合、さらにはウォブル信号の欠落を示す信号を2値化回路15からチャージポンプ18に受けた場合に、VCO20を含むPLL回路の同期動作をホールドする。これによって、シークによる検索動作中、アドレス領域の走査中、ウォブル信号の欠落等、VCO20を含むPLL回路に対する外乱を最小限に抑制して、同期クロック信号の安定性を高めることができる。」
(vii)「【0125】6. 同期クロック信号の生成については、シークによる検索動作中、アドレス領域の走査中、ウォブル信号が欠落したとき等には、同期クロック信号を生成するPLL回路をホールドすことにより、同期クロック信号生成の安定性を高めることができる。」

以上の記載を、図面を参照して総合整理すると、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認める。
「アドレス領域及びデータ記録領域が交互に形成され、データ記録領域にデータを記録するトラックに沿ってウォブル信号を含んだ光ディスクを回転させ、光ヘッドによって該光ディスクのトラックを走査することにより、該光ディスクの記録及び再生の少なくとも一方を行う光ディスク装置において、
前記光ヘッドの出力から前記光ディスクの前記ウォブル信号を抽出する抽出手段と、抽出された前記ウォブル信号に基づいて、同期クロック信号を生成する同期クロック生成手段と、生成された前記同期クロック信号によって、前記光ディスクへのデータの記録及び該光ディスクからのデータの再生の少なくとも一方を行う記録再生手段を有するもので、
前記同期クロック生成手段は、ウォブル信号に同期する同期クロック信号を生成するPLL回路、及び、前記PLL回路の同期動作をホールドするホールド手段を備え、前記ホールド手段は、前記光ヘッドによる前記光ディスクの前記アドレス領域走査時、前記光ヘッドによる前記光ディスクのトラック横断時、及び前記光ヘッドによる前記光ディスクの前記ウォブル信号が含まれていない領域の走査時にホールドする、
光ディスク装置。」(以下「刊行物1発明」という。)

同じく、原査定の理由で引用された刊行物である、特開平1-217732号公報(以下「刊行物2」という。)には、光学的情報記録再生装置に関するものであって、図面と共に以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(viii)「【特許請求の範囲】(1)記録媒体の一部の領域が他の領域にくらべてトラッキング制御上において好ましくない部分を有する光学的情報記録媒体を使用して光学的に情報の記録及び/又は再生を行なう装置であって、
前記一部の領域を検知する手段を備え、前記一部の領域を避けてジャンプするトラッキングサーボ制御手段を有することを特徴とする光学的情報記録再生装置。
(2)前記トラッキング制御上において好ましくない原因が低反射率であることを特徴とする請求項第1項記載の光学的情報記録再生装置。
(3)あらかじめ、アドレス等のプリフォーマット部分を有する光学的情報記録媒体を使用し、光学的に情報の記録及び/又は再生を行なう装置であって、
前記プリフォーマット部分を検知する手段を備え、前記プリフォーマット部分を避けてジャンプするトラッキングサーボ制御手段を有することを特徴とする光学的情報記録再生装置。」(第1頁左下欄第4行?右下欄第4行目)
(ix)「光磁気信号を用いて、信号の再生、記録、消去を行ない得るディスク3の構成を第8図に示す。
同図において、4は例えば、渦巻状に溝を掘ったトラック案内溝である。光磁気信号はこのトラック案内溝と隣のトラック案内溝の中程に記録される。5は光磁気ディスクをデータ情報等として用いる場合のトラックアドレス、セクタアドレス、セクタマーク等の検出パターンがトラック案内溝と隣りのトラック案内溝の中程に掘られたプリフォーマットビットである。プリフォーマットビット5でアドレスを読み、該アドレスに対応したデータを周方向に次のプリフォーマットビット5までの間に光磁気信号で再生、記録又は消去を行なう。」(第2頁左上欄第9行?右上欄第2行目)
(x)「前記一部の領域を検知する手段を備え、前記一部の領域を避けてジャンプするトラッキングサーボ制御手段を有することを特徴とする光学的情報記録再生装置により達成される。
そのようなトラッキング制御上において好ましくない部分としては、前述のように反射率が低下するアドレス等のプリフォーマット部分がある。
[作用]
本発明の光学的情報記録再生装置によれば、トラックジャンプ動作時に、そのトッキングに好ましくない部分を避ける事により、トッキングサーボ系の安定性を増大させることができる。
又、本発明の光学的情報記録再生装置の一実施例によれば、プリフォーマットビット時のサーボ系の不安定性を解決すべくプリフォーマット検出手段を設け、トラックジャンプ動作時に、そのプリフォーマットビットを避ける事により、光磁気ディスク装置等において、トッキングサーボ系の安定性を増大させることができる。」(第2頁左下欄第19行?右下欄第17行目)
(xi)「目標のトラックにアクセスする際、トラックジャンプで該トラックを飛越すが、CPU17は、プリフォーマット検出出力20-aの信号を鑑視し続け、プリフォーマット部分が通過した事を確認してからサーボのループスイッチ14をOFFにして、オーブンにする(第2図における20-b)、続いて、ジャンプ発生回路を働かせ、ジャンプを行なう(20-c)。駆動信号は20-dの如くなる。プリフォーマット部と次のプリフォーマット部に達するまでの時間は、通常、トラックジャンプに要する時間の2倍程度はあり、次のプリフォーマット部が訪れる迄にはサーボは整定し、サーボ系が不安定になる事はない。
前記実施例では、ブリフォーマット部分が、通過した後で、ジャンプ動作を行なうタイミングで構成したが、これに限定されることなく、例えば、ジャンプ動作がプリフォーマット部分より長い時間を要する場合はプリフォーマット部分を検知し始めたら、すぐジャンプ動作を行なってもオーバーラップする事なく安定に、しかも、短い時間でジャンプする事が可能である。
又、前記実施例では、プリフォーマット検出部19を別に設けた場合を示したが実際の装置においては、アドレスを読取る際、プリフォーマット検出部は必ず必要であることから、該RF信号処理系の回路に含まれているので、該RF信号処理回路からの出力信号を用いることにより本発明を構成する事が可能である。
本発明は前記実施例に限らず神々の変形、応用が可能である。
例えば、前記実施例においては、記録媒体の一部の領域が他の領域にくらべてトラッキング制御しにおいて好ましくない部分がプリフォーマット部である場合を示したが、その部分は必ずしもプリフォーマット部のみに限定されるものではない。」(第3頁右下欄第14行?第4頁右上欄第9行目)

(3-3)対比・判断
〔対比〕
(a)刊行物1発明の「データ記録領域にデータを記録するトラックに沿ってウォブル信号含んだ」及び「光ヘッドの出力から前記光ディスクの前記ウォブル信号を抽出する抽出手段と、抽出された前記ウォブル信号に基づいて、同期クロック信号を生成する同期クロック生成手段と、生成された前記同期クロック信号によって、前記光ディスクへのデータの記録及び該光ディスクからのデータの再生の少なくとも一方を行う記録再生手段」であるが、データ記録領域に設けられたウォブル信号に関する作用は上記の後者に記載がある。ここで、同期クロック信号であるが基準周波数に対応するもので、具体的には「2値化されたウォブル信号は、位相/周波数比較器17、チャージポンプ18、ローパスフィルター19、VCO20、分周器21から構成されたPLL回路に入力され・・・(中略)・・・ウォブル信号に同期し、かつ該2値化されたウォブル信号の整数倍の同期クロック信号を生成・・・(中略)・・・同期クロック信号は、光ヘッド3の出力信号に含まれるウォブル信号に常に同期している」(上記(v)の【0085】【0086】を参照)との記載があるから、これは本件補正後発明における「基準周波数の認識可能な情報がウォブル信号としてトラック上にウォブリングされている記録可能なデータ領域」に相当する。
(b)刊行物1発明の「アドレス領域及びデータ記録領域が交互に形成され、データ記録領域にデータを記録するトラック」であるが、このトラックの構造については「各トラックT1,T2,……毎に、複数のセクターS1,S2,……が形成されている。1周のトラックは、ランドトラック及びグルーブトラックの一方からなり、その外周のトラックは、他方からなる。各トラックは、ランドトラック及びグルーブトラックを交互に繰り返しており、相互に連続してスパイラル状に形成・・・各セクターS1,S2,……の先頭には、ランドトラック及びグルーブトラックのいずれも存在しないそれぞれのアドレス領域A1,A2,……が形成されている。これらのアドレス領域には、内周側あるいは外周側に1/2トラックピッチの距離をずらして、アドレスが記録されている」(上記(iv)の【0078】?【0080】を参照)というものである。そして、上記アドレス領域は本件補正後発明での「ヘッダ領域」であるし、アドレス領域を示す【図2】【図3】等も参照していくと、これは本件補正後発明における「記録可能なデータ領域の間に前記データ領域の形状の区分のために位相の相違する複数のヘッダ領域が配置」に相当する。
(c)刊行物1発明の「同期クロック生成手段」は「PLL回路の同期動作をホールドするホールド手段」の一つとして「光ディスクのトラック横断時」をあげている。具体的にはチャージポンプ18のもつ作用で、「VCO20を含むPLL回路の同期動作をホールドし、その出力である同期クロック信号の周波数を保持する機能を持つ。・・・(中略)・・・。これによって、VCO20を含むPLL回路に対する外乱を最小限に抑制して、同期クロック信号の安定性を高める」(上記(vi)を参照)とするものである。そして、ホールドは維持であるから、これは本件補正後発明における「前記トラックジャンプ命令が受信されると、前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止し、PLL-ウォブル信号をトラックジャンプ以前の値に維持してトラックジャンプを行う段階」に相当する。

結局、本件補正後発明と刊行物1発明との[一致点]と[相違点]は以下のようになる。

[一致点]
「基準周波数の認識可能な情報がウォブル信号としてトラック上にウォブリングされている記録可能なデータ領域の間に前記データ領域の形状の区分のために位相の相違する複数のヘッダ領域が配置されている回転中の光記録媒体でのトラックジャンプ方法であって、
トラックジャンプ命令を受信する段階と、
前記トラックジャンプ命令が受信されると、前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止し、PLL-ウォブル信号をトラックジャンプ以前の値に維持してトラックジャンプを行う段階と、
を備えることを特徴とするトラックジャンプ方法。」の点で一致する。

[相違点]
(イ)トラックジャンプ命令が受信され、トラックジャンプを行うまでの段階であるが、本件補正後発明のものは「この受信時点で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点なのか否かを確認する段階と、
前記確認段階で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点ではないと確認された場合は前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認されるまでトラックジャンプを行わずに待機する段階と、
前記確認段階で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点と確認された場合、及び前記待機段階で前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認された場合は」というものであるが、刊行物1発明のものには、上記のような光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点なのか否かを確認する段階、確認された場合、されない場合の待機する段階、等々に関する構成の記載がない点。
(ロ)トラックジャンプ完了後に関して、本件補正後発明のものは「トラックジャンプ段階においてヘッダ領域の前の地点でトラックジャンプが完了すると、前記ウォブル信号のPLLを再開する段階」を有するものであるが、刊行物1発明のものにはこのことについて明確に記載がない点。

〔判断〕
相違点(イ)に関して、
刊行物2の上記(3-2)の摘記事項(viii)?(xi)には、本件補正後発明と対応して、大要、「トラック案内溝と隣のトラック案内溝の中程にアドレス等のプリフォーマットピット(これは、本件補正後発明の「ヘッダ領域」に相当する)、を形成してある光学的情報記録再生装置のもので、目標のトラックにアクセスするトラックジャンプ動作時(これは、本件補正後発明の「トラックジャンプ命令を受信時点」に相当する)、サーボ系が不安定になる事のないように、CPU17は、プリフォーマット検出出力20-aの信号を鑑視し続け、プリフォーマット部分が通過した事を確認(これは、本件補正後発明の「受信時点で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点なのか否かを確認する段階」に相当する)してからサーボのループスイッチ14をOFFにして、オーブンにする(第2図における20-b)(ここで、プリフォーマットの監視するという技術的意義は、サーボ系が不安定とならないようにするもので、その為に、プリフォーマット部分の通過の確認がされたかをみているもので、確認されなければOFF状態としないことは、特に第2図を参酌して明らかで、これは本願補正後の「現在の位置がヘッダ領域の終わる地点ではないと確認された場合は前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認されるまでトラックジャンプを行わずに待機する段階」に相当する)、続いて、ジャンプ発生回路を働かせ、ジャンプを行なう(20-c)(これは、サーボ系の不安定性を解決、及び、第2図でプリフォーマット検出信号のある場合にはジャンプ指令を出力していないから、本願補正後の「確認段階で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点と確認された場合、及び前記待機段階で前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認された場合」に相当)する」との、トラックジャンプ方法で共通する事項の記載がある。
したがって、刊行物1発明においてトラックジャンプの際、上記刊行物2の技術構成を採用して、上記相違点(イ)のようにしていくことは当業者が適宜容易に想到できるものと認める。

相違点(ロ)に関して、
刊行物1発明のものは、ホールドすることについて「同期クロック信号の生成については、シークによる検索動作中、・・・(中略)・・・、同期クロック信号を生成するPLL回路をホールドすことにより、同期クロック信号生成の安定性を高めることができる」としているもので、トラックジャンプ終了後ウォブル信号が良好に検出されるようになった時点で通常のPLL動作を再開することは当然に行われるべき構成にすぎないから、上記相違点(ロ)については何ら格別の差異は見出せない、ないし、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項と認める。

なお、審判請求人は審判請求理由で、「引用例1,2には、「トラックジャンプ命令の受信時点で光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点なのか否かを確認し、ヘッダ領域の終わる地点でなければヘッダ領域の終わる地点に達するまでトラックジャンプを行わずに待機し、この待機中にヘッダ領域の終わる地点に達した場合、及びトラックジャンプ命令の受信時点でヘッダ領域の終わる地点と確認された場合」について、「ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止し、かつPLL-ウォブル信号をトラックジャンプ以前の値に維持してトラックジャンプを開始させるとともに、ヘッダ領域の前の地点でトラックジャンプを停止する」について、開示されていない。」と主張するが、上記の前者に関しての技術的思想は、直接的な表現でないとしても刊行物2に記載があるし、また上記後者は、本件補正後発明には記載のない『ヘッダ領域の前の地点でトラックジャンプを停止する』を除いて、刊行物1に技術常識を踏まえ実質的に記載あることは上記判断したとおりである。
請求人はさらに、「引用例2に記載された発明は、「プリフォーマット信号」を開示するものであって、本願発明のような、「異なる位相を有する複数のヘッダ領域がデータ領域の間に位置している」ものではない。」との主張については、刊行物1記載の発明に記載があるとしているもので、刊行物2に記載されているとの判断はしていない。

結局、本件補正後発明は、刊行物1及び刊行物2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願発明
1.本願発明
平成16年9月29日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項に係る発明は、平成15年12月17日付け手続補正で補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、その【請求項1】に係る発明は、上記1.に記載している以下のとおりのものである。
「基準周波数の認識可能な情報がウォブル信号としてトラック上にウォブリングされている記録可能なデータ領域の間に前記データ領域の形状の区分のために位相の相違する複数のヘッダ領域が配置されている回転中の光記録媒体でのトラックジャンプ方法であって、
トラックジャンプ命令を受信する段階と、
前記トラックジャンプ命令が受信されると、この受信時点で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点なのか否かを確認する段階と、
前記確認段階で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点ではないと確認された場合は前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認されるまでトラックジャンプを行わずに待機する段階と、
前記確認段階で前記光記録媒体の現在の位置がヘッダ領域の終わる地点と確認された場合、及び前記待機段階で前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認された場合は前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止しトラックジャンプを行う段階と、
前記トラックジャンプ段階でトラックジャンプが完了すると、前記ウォブル信号のPLLを再開する段階と
を備えることを特徴とするトラックジャンプ方法。」(以下「本願発明」という。)

2.刊行物
これに対して、当審で引用された刊行物1及び刊行物2に記載された事項は、上記したとおりである(上記「II.〔理由〕3.(3-2)の刊行物について」を参照)。

3.対比・判断
本願発明は、上記II.で検討した本件補正後発明から、トラックジャンプについて「待機段階で前記光記録媒体の位置がヘッダ領域の終わる地点に達したことが確認された場合は前記ウォブル信号の位相同期ループPLLを禁止し、PLL-ウォブル信号をトラックジャンプ以前の値に維持してトラックジャンプを行う段階と、
前記トラックジャンプ段階においてヘッダ領域の前の地点でトラックジャンプが完了する」と、記載のある構成から下線部分の構成要件を削除しているものである。
即ち、トラックジャンプ方法について、上位概念の構成としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を実質的に全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正後発明が、上記「II.〔理由〕3.(3-3)の対比・判断」に記載したとおり、刊行物1及び刊行物2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に記載された発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-15 
結審通知日 2006-09-19 
審決日 2006-09-27 
出願番号 特願2000-215973(P2000-215973)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五貫 昭一  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 片岡 栄一
中村 豊
発明の名称 トラックジャンプ方法  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 紺野 正幸  
代理人 山川 茂樹  
代理人 西山 修  
代理人 山川 政樹  

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