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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1153301
審判番号 不服2004-18496  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-08 
確定日 2007-03-08 
事件の表示 平成 7年特許願第330818号「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月30日出願公開、特開平 9-172144〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件は平成7年12月19日の出願であって、平成16年7月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年9月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後、当審において平成18年1月17日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の同年3月27日付けで意見書と手続補正書が提出され、その後、当審において同年6月30日付けで最後の拒絶理由が通知され、その指定期間内の同年8月31日に手続補正書が提出されたものである。

2.平成18年8月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成18年8月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正の内容
本件補正は、平成18年3月27日付けで補正された特許請求の範囲を補正するものであって、補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4(以下、それぞれ「補正前請求項1」ないし「補正前請求項4」という。)の内、補正前請求項1、補正前請求項2及び補正前請求項4を、それぞれ本件補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1、2及び4(以下、「補正後請求項1」、「補正後請求項3」及び「補正後請求項4」という。)に補正すると共に、0010段落、0011段落を補正するものである。
そして、補正後請求項1、補正後請求項2及び補正後請求項4に係る発明は、以下のとおりである。

「【請求項1】入力又は出力となる端子を有する入出力部と、該入出力部との間で信号を伝達して信号処理を行う内部回路と、前記入出力部に設けられた電源線間保護回路とを有し、
前記入出力部に前記端子に一端が接続された抵抗と該抵抗の他端と電源電圧線との間に前記抵抗の他端側から電源電圧線へ順方向となるように接続された第1のダイオード素子と、前記抵抗の他端と前記基準電圧線との間に基準電圧線側から前記抵抗の他端側へ順方向となるように接続された第2のダイオード素子とを有する半導体装置において、
前記電源線間保護回路は、
前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに前記端子の電圧に拘わらず基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、
前記電源電圧線と基準電圧線間に、ソースが基準電圧線側に接続され、ドレインが電源電圧線側に接続され、ゲートが電源電圧線側に接続され、ゲート電圧が閾値電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路と、
を有していることを特徴とする半導体装置。」
「【請求項2】前記抵抗を拡散抵抗で形成したことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。」
「【請求項4】入力又は出力となる端子を有する入出力部と、該入出力部との間で信号を伝達して信号処理を行う内部回路と、前記入出力部に設けられた電源線間保護回路とを有し、
前記入出力部に前記端子に一端が接続された抵抗と該抵抗の他端と電源電圧線との間に前記抵抗の他端側から電源電圧線へ順方向となるように接続された第1のダイオード素子と、前記抵抗の他端と前記基準電圧線との間に基準電圧線側から前記抵抗の他端側へ順方向となるように接続された第2のダイオード素子とを有する半導体装置において、
前記電源線間保護回路は、
前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに前記端子の電圧に拘わらず基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と
前記電源電圧線と基準電圧線間に、ベースが未接続のトランジスタ素子であって、そのエミッタが基準電圧線側に接続され、コレクタが電源電圧線側に接続され、電源電圧線の電圧が基準電圧線の電圧に対しパンチスルー電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するトランジスタ素子を有する第2経路とを有していることを特徴とする半導体装置。」

(2)補正事項の整理
[補正事項1]
補正前請求項1の「入力又は出力となる端子を有する入出力部と、該入出力部との間で信号を伝達して信号処理を行う内部回路とを有し、
前記入出力部に前記端子に一端が接続された抵抗と該抵抗の他端と電源電圧線との間に前記抵抗の他端側から電源電圧線側へ順方向となるように接続された第1のダイオード素子と、前記抵抗の他端と前記基準電圧線との間に基準電圧線側から前記抵抗の他端側へ順方向となるように接続された第2のダイオード素子とを有する半導体装置において、
前記入出力部に、
前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに端子の電圧に拘わらず基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、
前記電源電圧線と基準電圧線間に、トランジスタ素子であって、ソースが基準電圧線側に接続され、ドレインが電源電圧線側に接続され、ゲートが電源電圧線側に接続され、ゲート電圧が閾値電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路と、
前記抵抗の前記端子側のダイオード素子と、
を設けたことを特徴とする半導体装置。」を
補正後請求項1の「入力又は出力となる端子を有する入出力部と、該入出力部との間で信号を伝達して信号処理を行う内部回路と、前記入出力部に設けられた電源線間保護回路とを有し、
前記入出力部に前記端子に一端が接続された抵抗と該抵抗の他端と電源電圧線との間に前記抵抗の他端側から電源電圧線へ順方向となるように接続された第1のダイオード素子と、前記抵抗の他端と前記基準電圧線との間に基準電圧線側から前記抵抗の他端側へ順方向となるように接続された第2のダイオード素子とを有する半導体装置において、
前記電源線間保護回路は、
前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに前記端子の電圧に拘わらず基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、
前記電源電圧線と基準電圧線間に、ソースが基準電圧線側に接続され、ドレインが電源電圧線側に接続され、ゲートが電源電圧線側に接続され、ゲート電圧が閾値電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路と、
を有していることを特徴とする半導体装置。」と補正すること。

[補正事項2]
補正前請求項2の「前記抵抗を拡散抵抗で形成することにより分布定数的にダイオードを形成したことしたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。」を
補正後請求項2の「前記抵抗を拡散抵抗で形成したことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。」と補正すること。

[補正事項3]
補正前請求項4の「前記第2の経路のトランジスタ素子はベースが未接続のトランジスタであり、そのパンチスルー電圧を前記順方向電圧としたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。」を
補正後請求項4の「入力又は出力となる端子を有する入出力部と、該入出力部との間で信号を伝達して信号処理を行う内部回路と、前記入出力部に設けられた電源線間保護回路とを有し、
前記入出力部に前記端子に一端が接続された抵抗と該抵抗の他端と電源電圧線との間に前記抵抗の他端側から電源電圧線へ順方向となるように接続された第1のダイオード素子と、前記抵抗の他端と前記基準電圧線との間に基準電圧線側から前記抵抗の他端側へ順方向となるように接続された第2のダイオード素子とを有する半導体装置において、
前記電源線間保護回路は、
前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに前記端子の電圧に拘わらず基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と
前記電源電圧線と基準電圧線間に、ベースが未接続のトランジスタ素子であって、そのエミッタが基準電圧線側に接続され、コレクタが電源電圧線側に接続され、電源電圧線の電圧が基準電圧線の電圧に対しパンチスルー電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するトランジスタ素子を有する第2経路とを有していることを特徴とする半導体装置。」と補正すること。

[補正事項4]
明細書の0010段落、0011段落を補正すること。

(3)本件補正についての検討
(3-1)補正の目的の適否について
[補正事項1について]
補正事項1は、補正前請求項1の「入力又は出力となる端子を有する入出力部と、該入出力部との間で信号を伝達して信号処理を行う内部回路とを有し」を、補正後請求項1の「入力又は出力となる端子を有する入出力部と、該入出力部との間で信号を伝達して信号処理を行う内部回路と、前記入出力部に設けられた電源線間保護回路とを有し」と補正すること(補正事項1-1)と、
補正前請求項1の「前記入出力部に、」「前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに」「基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、前記電源電圧線と基準電圧線間に、」「電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路と、前記抵抗の前記端子側のダイオード素子と、を設けたことを特徴とする半導体装置」を、補正後請求項1の「前記電源線間保護回路は、前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに」「基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、前記電源電圧線と基準電圧線間に、」「電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路と、を有していることを特徴とする半導体装置。」と補正すること(補正事項1-2)と、
補正前請求項1の「端子の電圧」を、補正後請求項1の「前記端子の電圧」と補正すること(補正事項1-3)と、
補正前請求項1の「トランジスタ素子であって、ソースが基準電圧線側に接続され、ドレインが電源電圧線側に接続され、ゲートが電源電圧線側に接続され、ゲート電圧が閾値電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子」を、補正後請求項1の「ソースが基準電圧線側に接続され、ドレインが電源電圧線側に接続され、ゲートが電源電圧線側に接続され、ゲート電圧が閾値電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子」と補正すること(補正事項1-4)に区分できる。

ここで、補正事項1-2について検討する。
補正前請求項1の「を設けたことを特徴とする半導体装置。」と、補正後請求項1の「を有していることを特徴とする半導体装置。」とは、表現は多少異なるものの、その技術的内容は同等である。さらに、補正前請求項1の「前記入出力部に、」「前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに」「基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、前記電源電圧線と基準電圧線間に、」「電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路と、を設けた」を、補正後請求項1の「前記電源線間保護回路は、前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに」「基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、前記電源電圧線と基準電圧線間に、」「電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路と、を有している」と補正することは、電源線間保護回路を備えることを明確にする補正であって、平成18年6月30日付けの最後の拒絶理由で指摘した「請求項1は、電源線間保護回路が設けられていないため、「前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに端子の電圧に拘わらず基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路」及び「前記電源電圧線と基準電圧線間に、トランジスタ素子であって、ソースが基準電圧線側に接続され、ドレインが電源電圧線側に接続され、ゲートが電源電圧線側に接続され、ゲート電圧が閾値電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路」が、どのような構成に設けられるのか不明確である。」に応答する補正である。
しかし、補正事項1-2は、補正前請求項1の「入出力部に」設けられた構成である「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」を実質的に削除する補正である。平成18年6月30日付けの拒絶理由は、「請求項1の「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」の「ダイオード素子」は、何と何の間に設けられるのか不明である。」と指摘するものであって、ダイオード素子の存在自体が不明確としているのではないから、「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」との構成を削除する補正は、明りょうでない記載の釈明には該当しない。
仮に、「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」が明りょうでないとしても、明りょうでない記載の釈明の「釈明」とは、不明りょうさを正して、「その記載本来の意味内容」を明らかにすることであって、補正前請求項1から「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」を削除する補正を行っても、「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」という記載(構成)本来の意味内容は明らかにはならないから、明りょうでない記載の釈明には該当しない。
また、補正前請求項1の「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」との構成を削除することは、誤った記載を本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな字句・語句の誤りを、その意味内容の字句・語句に正すこととも認められないから、誤記の訂正にも該当しない。
そして、補正前請求項1から「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」との構成を削除する補正が、特許法特許請求の範囲の減縮、請求項の削除にも該当しないことは明らかである。
よって、補正事項1-2を含む補正事項1についての補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないから、補正事項1-1、補正事項1-3、補正事項1-4を検討するまでもなく、特許法第17条の2第4項のいずれの規定にも適合しない。

[補正事項2について]
補正事項2は、補正前請求項2の「前記抵抗を拡散抵抗で形成することにより分布定数的にダイオードを形成したこと」の「で形成することにより分布定数的にダイオード」を削除する補正である。平成18年6月30日付けの拒絶理由は、「「前記抵抗を拡散抵抗で形成することにより分布定数的にダイオードを形成」とは、具体的にどのような構造であるか不明である。」と指摘するものであるが、請求項から「で形成することにより分布定数的にダイオード」を削除する補正は、「明りょうでない記載の釈明」には該当しない。言い換えると、「明りょうでない記載の釈明」の「釈明」とは、不明りょうさを正して、「その記載本来の意味内容」を明らかにすることであるから、「で形成することにより分布定数的にダイオード」を削除する補正を行っても、「で形成することにより分布定数的にダイオード」という記載(構成)本来の意味内容は明らかにはならない。
したがって、補正前請求項2から「で形成することにより分布定数的にダイオード」を削除する補正は、明りょうでない記載の釈明に該当しない。
また、補正前請求項2の「で形成することにより分布定数的にダイオード」との構成を削除することは、誤った記載を本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな字句・語句の誤りを、その意味内容の字句・語句に正すこととも認められないから、誤記の訂正にも該当しない。
さらに、補正前請求項1から「で形成することにより分布定数的にダイオード」との構成を削除する補正が、特許請求の範囲の減縮、請求項の削除にも該当しないことは明らかである。
よって、補正事項2についての補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないから、特許法第17条の2第4項のいずれの規定にも適合しない。

[補正事項3について]
補正事項3は、補正前請求項4を独立請求項に改める補正であるから、引用する補正前請求項1に記載される構成を含む補正前請求項4の構成を補正前請求項4として、補正後請求項4と比較検討する。
補正事項3は、補正前請求項4の「入力又は出力となる端子を有する入出力部と、該入出力部との間で信号を伝達して信号処理を行う内部回路とを有し」を、補正後請求項4の「入力又は出力となる端子を有する入出力部と、該入出力部との間で信号を伝達して信号処理を行う内部回路と、前記入出力部に設けられた電源線間保護回路とを有し」と補正すること(補正事項3-1)と、
補正前請求項4の「前記入出力部に、」「前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに」「基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、前記電源電圧線と基準電圧線間に、」「電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路と、前記抵抗の前記端子側のダイオード素子と、を設けたことを特徴とする半導体装置」を、補正後請求項4の「前記電源線間保護回路は、前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに」「基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、前記電源電圧線と基準電圧線間に、」「電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するトランジスタ素子を有する第2経路とを有していることを特徴とする半導体装置。」と補正すること(補正事項3-2)と、
補正前請求項4の「端子の電圧」を、補正後請求項4の「前記端子の電圧」と補正すること(補正事項3-3)と、
補正前請求項4の「前記電源電圧線と基準電圧線間に、トランジスタ素子であって、ソースが基準電圧線側に接続され、ドレインが電源電圧線側に接続され、ゲートが電源電圧線側に接続され、ゲート電圧が閾値電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路」を、補正後請求項4の「前記電源電圧線と基準電圧線間に、ベースが未接続のトランジスタ素子であって、そのエミッタが基準電圧線側に接続され、コレクタが電源電圧線側に接続され、電源電圧線の電圧が基準電圧線の電圧に対しパンチスルー電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するトランジスタ素子を有する第2経路」と補正すること(補正事項3-4)に区分できる。

ここで、補正事項3-2について検討する。
補正前請求項4の「を設けたことを特徴とする半導体装置。」と、補正後請求項4の「を有していることを特徴とする半導体装置。」とは、表現は多少異なるが、その技術的内容は同等である。さらに、補正前請求項4の「前記入出力部に、」「前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに」「基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、前記電源電圧線と基準電圧線間に、」「電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路と、を設けた」を、補正後請求項4の「前記電源線間保護回路は、前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに」「基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、前記電源電圧線と基準電圧線間に、」「電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路とを有している」と補正することは、入出力部が電源線間保護回路を備えることを明確にする補正であって、補正前請求項4は補正前請求項1を引用しているから、平成18年6月30日付けの最後の拒絶理由で指摘した「請求項1は、電源線間保護回路が設けられていないため、「前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに端子の電圧に拘わらず基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路」及び「前記電源電圧線と基準電圧線間に、トランジスタ素子であって、ソースが基準電圧線側に接続され、ドレインが電源電圧線側に接続され、ゲートが電源電圧線側に接続され、ゲート電圧が閾値電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路」が、どのような構成に設けられるのか不明確である。」に応答する補正である。
しかし、補正事項3-2は、補正前請求項4の「入出力部に」設けられた構成である「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」を実質的に削除する補正である。平成18年6月30日付けの拒絶理由は、「請求項1の「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」の「ダイオード素子」は、何と何の間に設けられるのか不明である。」と指摘するものであって、ダイオード素子の存在自体が不明確としているのではないから、「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」との構成を削除する補正は、明りょうでない記載の釈明には該当しない。
仮に、「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」が明りょうでないとしても、明りょうでない記載の釈明の「釈明」とは、不明りょうさを正して、「その記載本来の意味内容」を明らかにすることであって、補正前請求項4から「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」を削除する補正を行っても、「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」という記載(構成)本来の意味内容は明らかにはならないから、明りょうでない記載の釈明には該当しない。
また、補正前請求項4の「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」との構成を削除することは、誤った記載を本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな字句・語句の誤りを、その意味内容の字句・語句に正すこととも認められないから、誤記の訂正にも該当しない。
そして、補正前請求項4から「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」との構成を削除する補正が、特許法特許請求の範囲の減縮、請求項の削除にも該当しないことは明らかである。
よって、補正事項3-2を含む補正事項3についての補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないから、補正事項3-1、補正事項3-3、補正事項3-4を検討するまでもなく、特許法第17条の2第4項のいずれの規定にも適合しない。

したがって、他の補正事項について検討するまでもなく、補正事項1-2についての補正を含む補正事項1についての補正、補正事項2についての補正及び補正事項3-2についての補正を含む補正事項3についての補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当せず、特許法第17条の2第4項各号のいずれの規定にも適合しない。

(3-2)むすび
以上のとおり、適法でない補正事項1、補正事項2及び補正事項3についての補正を含む本件補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当せず、特許法第17条の2第4項各号の規定に適合しないから、適法でない補正を含む本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成18年8月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成18年3月27日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1ないし4に係る発明は、その請求項1ないし4に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】入力又は出力となる端子を有する入出力部と、該入出力部との間で信号を伝達して信号処理を行う内部回路とを有し、
前記入出力部に前記端子に一端が接続された抵抗と該抵抗の他端と電源電圧線との間に前記抵抗の他端側から電源電圧線側へ順方向となるように接続された第1のダイオード素子と、前記抵抗の他端と前記基準電圧線との間に基準電圧線側から前記抵抗の他端側へ順方向となるように接続された第2のダイオード素子とを有する半導体装置において、
前記入出力部に、
前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに端子の電圧に拘わらず基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路と、
前記電源電圧線と基準電圧線間に、トランジスタ素子であって、ソースが基準電圧線側に接続され、ドレインが電源電圧線側に接続され、ゲートが電源電圧線側に接続され、ゲート電圧が閾値電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路と、
前記抵抗の前記端子側のダイオード素子と、
を設けたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】前記抵抗を拡散抵抗で形成することにより分布定数的にダイオードを形成したことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】前記第2の経路のトランジスタ素子が前記内部回路で用いられるトランジスタのチャンネル長よりも長いチャンネル長でフィールド酸化膜をゲート酸化膜として用いることにより形成された電界効果型トランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】前記第2の経路のトランジスタ素子はベースが未接続のトランジスタであり、そのパンチスルー電圧を前記順方向電圧としたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。」

4.平成18年6月30日付け当審拒絶理由通知の概要
当審が「最後の拒絶理由」として通知した平成18年6月30日付け拒絶理由通知の概要は、以下のとおりである。

「1)本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

2)本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



●理由 1) 2)
・請求項1ないし4
・備考
請求項1の「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」の「ダイオード素子」は、何と何の間に設けられるのか不明である。さらに、明細書の発明の詳細な説明を参酌しても「ダイオード素子」が、何と何の間に設けられているのかを理解することができない。
仮に、「ダイオード素子」の一方が「前記抵抗の前記端子側」に接続しているとしても、ダイオード素子は2端子素子であるから、他方が何に接続しているのか依然として不明である。
請求項1を引用する請求項2ないし4も請求項1と同様の理由で拒絶すべきものである。

・請求項2
・備考
請求項2の「前記抵抗を拡散抵抗で形成することにより分布定数的にダイオードを形成」とは、具体的にどのような構造であるか不明である。さらに、「前記抵抗を拡散抵抗で形成することにより分布定数的にダイオードを形成」がどのような構成であるのか、明細書の発明の詳細な説明に記載されていない。


●理由 2)
・請求項1ないし4
・備考
(1)請求項1は、電源線間保護回路が設けられていないため、「前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに端子の電圧に拘わらず基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路」及び「前記電源電圧線と基準電圧線間に、トランジスタ素子であって、ソースが基準電圧線側に接続され、ドレインが電源電圧線側に接続され、ゲートが電源電圧線側に接続され、ゲート電圧が閾値電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路」が、どのような構成に設けられるのか不明確である。
(2)請求項1を引用する請求項2ないし4も請求項1と同様の理由で不明確である。

・請求項4
・備考
請求項4には、「前記第2の経路のトランジスタ素子はベースが未接続のトランジスタであり、・・・請求項1に記載の半導体装置」と記載されている。しかし、請求項1の「トランジスタ素子」は、「ソース」、「ドレイン」、「ゲート」を備える「トランジスタ素子」であって、「ベース」を備える「トランジスタ素子」ではない。
したがって、請求項1を引用する請求項4に係る発明で用いられている「ベースが未接続のトランジスタ」は、どのようなトランジスタ素子を特定しているのか不明確である。」

5.当審の判断
(5-1)請求項1ないし4について
(a)[特許法第36条第6項2号について]
請求項1の「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」は、何と何の間に設けられているのか不明である。ダイオード素子は2端子素子であるから、仮に、一方が「前記抵抗の前記端子側」に接続しているとしても、他方が何に接続しているのか不明である。
請求項1に係る発明の「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」「を設け」るという記載には、例えば(a1)前記抵抗と前記端子の間にダイオードのアノードが接続され、電源電圧線にカソードが接続している構成、(a2)前記抵抗と前記端子の間にダイオードのカソードが接続され、電源電圧線にアノードが接続している構成、(a3)前記抵抗と前記端子の間にダイオードのアノードが接続され、基準電位線にカソードが接続している構成、(a4)前記抵抗と前記端子の間にダイオードのカソードが接続され、基準電位線にアノードが接続している構成、(a5)前記抵抗と前記端子の間にダイオードのアノードが接続され、他の端子にカソードが接続している構成、(a6)前記抵抗と前記端子の間にダイオードのカソードが接続され、他の端子にアノードが接続している構成、(a7)ダイオードのアノードは前記端子側にあってカソードは前記抵抗側にある構成、(a8)ダイオードのカソードが前記端子側にあってアノードが前記抵抗側にある構成、のように、極めて多様の構成が考えられる。そして、少なくとも前記(a1)ないし前記(a8)の構成は、回路動作や電流の流れる経路が異なっているため異なるものであると認められるが、請求項1に係る発明は、前記(a1)ないし前記(a8)のいずれの構成を示しているのか、さらに、これ以外の別の構成を示しているのか不明である。
したがって、請求項1に係る発明は、「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」の「アノード」及び「カソード」が、どのように接続されているのかを特定することができないため、その構成が明確ではない。
請求項1を引用する請求項2ないし請求項4も、上記請求項1と同様の理由で、その構成が明確ではない。

(b)[特許法第36条第4項について]
請求項1に係る発明の「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」「を設け」るという記載には、少なくとも前記(a1)ないし前記(a8)の構成が考えられる。
一方、本願の明細書には、図1と共に回路動作と電流経路について
「・・・通常の動作状態では、端子T1には定格電圧内の電圧が入出力されるだけなので、ダイオード12、13及び電源間保護回路4に電流は流れない。
一方、静電気等が端子T1に印加された場合には、以下のような動作を行う。即ち、端子T1に(VH+VF)以上で異常電圧以下の電圧が印加された場合にはI1で示す経路に沿って電流が流れ、異常電圧を越える電圧が印加されて電源電圧線の電圧が部分的に上昇したような場合にはI1で示す経路で電流が流れるとともに、I3で示す経路に沿って導通した電源間保護回路4を介して基準電位線にも電流が流れるようになる。同様に、絶対値が(VL -VF)以上で異常電圧以下の電圧が印加された場合にはI2で示す経路で電流が流れ、異常電圧を越える電圧が印加されて基準電位線の電圧が部分的に低下したような場合にはI2で示す経路で電流が流れるとともに、I4で示す経路に沿って導通した電源間保護回路4を介して電源電圧線にも電流が流れるようになる。」(0016?0017段落)、
「入出力部1の基準電位線に静電気等による電圧印加により大電流が流れて基準電位線の電圧が部分的に電源間保護回路4で予め設定した電圧よりも高くなったような場合には、電源間保護回路4を介して基準電位線から電源電圧線に向けて電流が流れるようになる。」(0018段落)
「・・・抵抗11の端子T1側にもダイオードを付加・・・することができる。」(0024段落)
と記載されているが、これらの記載を参酌しても、抵抗11の端子T1側に付加したダイオードの一端は何に接続し、他端は何に接続しているのか不明である。
請求項1に係る発明には、少なくとも前記(a1)ないし前記(a8)のようにダイオードを設けた構成が含まれるが、出願当初明細書には、前記(a1)ないし前記(a8)の構成のようにダイオードを接続したことも、さらに、「抵抗11の端子T1側に」「ダイオードを付加」した際の具体的な回路動作や電流経路も記載されていない。
また、平成18年3月27日付けの意見書には、「ここで、請求項1中に追加した「前記端子側のダイオード素子」という記載・・・は、明細書の段落0024の記載を根拠とするものであります。
本願発明では、端子T1に高い電圧が印加されたときダイオード12を通して電源電圧線側へ電流がI1で示す如く流れますが、抵抗I1が存在しているので、この抵抗11によって電圧降下がなされます。したがって、その電源電圧線の電圧上昇が抑えられます。そのため、電源間保護回路4の負担が軽減されるので、例えば図2で示す如くダイオード素子4dとトランジスタ素子4cを1つずつ設けるだけでも充分に電源間保護を図ることができます。」(意見書第1頁下から5行?第2頁第4行)と記載されているだけであって、請求項1に係る発明の「前記端子側のダイオード素子」を、どのように接続したのか、また、「前記端子側のダイオード素子」を設けた際の具体的な回路動作や電流経路は、何ら説明されていない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明には、「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」「を設け」た請求項1に係る発明について、「前記抵抗の前記端子側のダイオード素子」がどのように接続されているのかを理解することができる程度に記載されていないため、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
請求項1を引用する請求項2ないし4も、上記請求項1と同様の理由で、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

よって、本願は、特許法第36条第4項及び第6項第2号のいずれの要件も、依然として満たしていない。

(5-2)請求項2について
(a)[特許法第36条第6項2号について]
請求項2に係る発明の「前記抵抗を拡散抵抗で形成することにより分布定数的にダイオードを形成」は、どのような構成を特定しているのか不明であるから、請求項2に係る発明は不明確である。

(b)[特許法第36条第4項について]
請求項2に係る発明の「前記抵抗を拡散抵抗で形成することにより分布定数的にダイオードを形成」について、本願明細書には、0024段落に「・・・抵抗11を拡散抵抗で形成することににより分布定数的にダイオードを形成したり・・・することができる。」と記載されている。しかし、「抵抗11を拡散抵抗で形成することににより分布定数的にダイオードを形成」とは、どのような構造なのかは具体的に記載がなく不明である。
さらに、平成18年3月27日付けの意見書を参照しても、「・・・及び請求項2の記載は、明細書の段落0024の記載を根拠とするものであります。」(意見書第1頁下から4行?下から3行)と記載されているだけであって、「前記抵抗を拡散抵抗で形成することにより分布定数的にダイオードを形成」することを出願当初明細書の記載を用いて説明していない。
したがって、請求項2に係る発明は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

よって、本願は、特許法第36条第4項及び第6項第2号のいずれの要件も、依然として満たしていない。

(5-3)請求項1ないし4について
[特許法第36条第6項2号について]
請求項1には、「前記電源電圧線と前記基準電圧線間に、基準電圧線が電源電圧線よりも順方向電圧分以上高い電圧になったときに端子の電圧に拘わらず基準電圧線側から電源電圧線側へ導通するように接続されたダイオード素子を有する第1の経路」及び「前記電源電圧線と基準電圧線間に、トランジスタ素子であって、ソースが基準電圧線側に接続され、ドレインが電源電圧線側に接続され、ゲートが電源電圧線側に接続され、ゲート電圧が閾値電圧を超えたときに電源電圧線側から基準電圧線側へ導通するように接続されたトランジスタ素子を有する第2の経路」が、どのような構成に設けられるのか、何ら記載がないため明確ではない。
したがって、請求項1に係る発明は、その構成が不明確である。
請求項1を引用する請求項2ないし4も請求項1と同様の理由で、その構成が明確ではない。
よって、本願は、特許法第36条第6項第2号の要件を、依然として満たしていない。

(5-4)請求項4について
[特許法第36条第6項2号について]
請求項4には、「前記第2の経路のトランジスタ素子はベースが未接続のトランジスタであり、・・・請求項1に記載の半導体装置」と記載されている。しかし、請求項1の「トランジスタ素子」は、「ソース」、「ドレイン」、「ゲート」を備える「トランジスタ素子」であって、「ベース」を備える「トランジスタ素子」ではない。 一般的に「ベース」を備える「トランジスタ素子」は、「ソース」、「ドレイン」、「ゲート」を備える「トランジスタ素子」とは、別の「トランジスタ素子」である。
したがって、請求項1を引用する請求項4に係る発明で用いられている「ベースが未接続のトランジスタ」は、どのようなトランジスタ素子を特定しているのか明確ではない。
よって、本願は、特許法第36条第6項第2号の要件を、依然として満たしていない。

以上のとおり、本願の明細書の記載は、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

6.むすび
したがって、本願は、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-21 
結審通知日 2006-12-05 
審決日 2007-01-23 
出願番号 特願平7-330818
審決分類 P 1 8・ 572- WZ (H01L)
P 1 8・ 571- WZ (H01L)
P 1 8・ 537- WZ (H01L)
P 1 8・ 574- WZ (H01L)
P 1 8・ 573- WZ (H01L)
P 1 8・ 536- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渕 真悟  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 今井 拓也
長谷山 健
発明の名称 半導体装置  
代理人 佐野 静夫  

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