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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680155 審決 特許
無効200680074 審決 特許
無効200480273 審決 特許
無効200580150 審決 特許
無効200680178 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B07B
管理番号 1156707
審判番号 無効2005-80311  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-10-31 
確定日 2007-05-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第3666800号発明「生ごみ様廃棄物の異物分離装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3666800号の請求項1?12に係る発明は、平成12年12月18日に特許出願され、平成17年4月15日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、平成17年10月31日に共立工業株式会社(以下、「請求人」という。)より、その請求項1に係る発明の特許について無効審判の請求がなされた。そして、その後、平成18年1月25日付けで被請求人より答弁書が提出され、平成18年11月20日付けで請求人及び被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、平成18年12月1日に口頭審理がなされるとともに、請求人及び被請求人より口頭審理陳述要領書(2)が提出され、平成19年1月12日付けで請求人より上申書が提出された。

2.本件特許発明
本件特許第3666800号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
【請求項1】断面の一部分が弧状である周壁を有する筒体、前記弧状周壁の中心軸線に沿って延びる回転軸、前記回転軸に固定され前記弧状周壁に褶動可能な突端縁を有し且つ前記回転軸に沿って延びる複数の板状羽根、前記筒体の弧状周壁に穿った複数の貫通細孔、前記筒体の非弧状周壁と前記羽根の突端縁との間に形成され筒体長手方向に延びる空気流路、前記流路内の気流を筒体長手方向に案内する気流案内手段、及び前記筒体周壁の気流上流との対向部位に前記中心軸線と交差する向きに穿った廃棄物投入口を備え、前記投入口から筒体内に投入した生ごみ様廃棄物を前記羽根の回転で砕いて該廃棄物中の異物を分離し、前記異物を前記気流により筒体外へ搬出し、異物分離後の廃棄物を前記細孔から排出してなる生ごみ様廃棄物の異物分離装置。

3.請求人の主張及び証拠方法
これに対して、請求人は、本件特許の請求項1に係る発明の特許を無効とするとの審決を求め、その理由として、以下の無効理由1及び2をあげて、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するので、無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出している。
[無効理由1]
本件特許発明は、その出願の日前に出願され、その出願後に出願公開された甲第1号証である特願平11-199027号(特開2001-25754号公報)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
なお、請求人は、無効理由1の甲第1号証を証拠とする特許法第29条の2違反の主張については、口頭審理において撤回した(第1回口頭審理調書)。
[無効理由2]
本件特許発明は、その出願前に頒布された刊行物である甲第2号証として提示した特許第3450726号公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、甲第2号証については、口頭審理において特許第3450726号公報から、その公開公報である特開2000-167426号公報に訂正された(第1回口頭審理調書)。

4.被請求人の反論
被請求人は、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではないから、また、本件特許発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、本件特許無効の審判請求は成り立たない旨、反論している。

5.甲第2号証の記載事項
請求人が提出した甲第2号証(特開2000-167426号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「この種の分離装置として、図7に示す分離装置51が従来から知られている。この分離装置51は、例えば、同図に示す分離対象の期限切れ食品Z,Zを、容器X1や袋X2などのパックゴミと、食品本体Y1,Y2を破砕した生ゴミとに分離する装置であって、脚部52上に載置された鉄製のドラム3と、ドラム3の内部に取り付けられた鉄製の羽根車54と、羽根車54を回転させるためのモータMとを備えて構成されている。・・・したがって、羽根車54は、モータMの回転に伴って、図11に示す矢印Eの向きで回転させられる。・・・」(段落【0003】)
(イ)「ドラム3は、図7に示すように、全体として円筒状に形成されている。このドラム3の端面3a,3bには、ドラム3の内部に羽根車54を回転自在に取り付けるためのベアリング10,10が配設されている(同図は、端面3a側のベアリング10のみを図示している)。このドラム3の一端側には、期限切れ食品Z,Zなどをドラム3内に供給可能な供給口11が、その端面3aを半円状に開口して形成されると共に、作業者によって投入された期限切れ食品Zを供給口11に案内するための案内口12が配設されている。一方、ドラム3の他端側には、期限切れ食品Z,Zの容器X1や袋X2などのパックゴミを排出口13から排出するためのダクト14が配設されている。また、ドラム3の下部には、同図に示すように、期限切れ食品Z,Zの食品本体Y1,Y2などを破砕した生ゴミを排出するための複数の孔15,15,・・が形成されている。さらに、ドラム3の内部には、羽根車54の回転に伴って発生する風を排出口13側に導風するための複数の導風板16,16,・・が配設されている。」(段落【0004】)
(ウ)「羽根車54は、図8に示すように、ベアリング10,10によって両端を保持されると共にプーリ30bが一端に固定される丸棒状の回転軸60と、回転軸60に固定された平板状の4枚の破砕羽根61,61,・・と、破砕羽根61の両端に配設された補強部材62,62,・・と、破砕羽根61の先端に固定されドラム3内に配設された状態で破砕羽根61の先端およびドラム3の内壁の間を閉塞する板ゴム23,23,・・とを備えている。」(段落【0005】)
(エ)「一方、分離処理の際には、図11に示す矢印Eの向きで羽根車54を高速に回転させる。この際に、ドラム3の内部では、羽根車54の回転に伴って図12に示す矢印F1,F2の向きで風が発生し、その発生した風は、導風板16,16,・・によって同図に示す矢印Gの向きで導風され、図11に示す矢印Hの向きで排出口13から排出される。・・・この状態で、期限切れ食品Z,Zを案内口12に投入すると、その期限切れ食品Z,Zは、案内口12によって供給口11に案内され、供給口11からドラム3の内部に供給される。この後、破砕羽根61,61,・・が容器X1や袋X2を破くことにより、ドラム3の内部において期限切れ食品Z,Zが、容器X1および袋X2を破砕したパックゴミと、食品本体Y1,Y2を破砕した生ゴミとに分離される。」(段落【0007】)
(オ)「この際に、パックゴミと比較して質量の大きい生ゴミは、破砕羽根61,61,・・によってさらに細かく破砕されると共に、図11,12に示す矢印Jの向きで孔15,15,・・からドラム3の外部に排出される。一方、質量の小さいパックゴミは、ドラム3内で発生した風によって図12に示す矢印Gの向きでドラム3内を移動させられ、図11に示す矢印Hの向きで排出口13からドラム3の外部に排出される。この結果、期限切れ食品Z,Zは、孔15,15,・・から排出された生ゴミと、排出口13から排出されたパックゴミとに分離される。」(段落【0008】)
(カ)図7には、分離装置の一部を切り欠いた状態の斜視図として、ドラム3、ベアリング10、供給口11、排出口13、複数の孔15及び導風板16の配設状態が示され、図11には、図7におけるB-B線断面図として、ドラム3の内壁と羽根車54及び導風板16との位置関係が示され、図12には、ドラム3内で発生する風の流れが示されている。

6.当審の判断
請求人は、本件発明は甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張しているので、以下に検討する。

(1)甲第2号証との対比
甲第2号証には、摘記事項(ア)?(ウ)及び図7によると、「分離対象の期限切れ食品を、パックゴミと食品本体を破砕した生ゴミとに分離する装置であって、鉄製のドラム3と、ドラム3の内部に取り付けられた鉄製の羽根車54と、羽根車54を回転させるためのモータMとを備え、ドラム3は、全体として円筒状に形成され、ドラム3の端面3a,3bには、ドラム3の内部に羽根車54を回転自在に取り付けるためのベアリング10が配設され、このドラム3の一端側には、期限切れ食品をドラム3内に供給可能な供給口11が、その端面3aを半円状に開口して形成されると共に、作業者によって投入された期限切れ食品を供給口11に案内するための案内口12が配設され、一方、ドラム3の他端側には、期限切れ食品の容器や袋などのパックゴミを排出口13から排出するためのダクト14が配設され、ドラム3の下部には、期限切れ食品の食品本体などを破砕した生ゴミを排出するための複数の孔15が形成され、さらに、ドラム3の内部には、羽根車54の回転に伴って発生する風を排出口13側に導風するための複数の導風板16が配設され、羽根車54は、ドラム3の端面3a,3bに配設されたベアリング10によって両端を保持される回転軸60と、回転軸60に固定された平板状の4枚の破砕羽根61と、破砕羽根61の先端に固定されドラム3内に配設された状態で破砕羽根61の先端およびドラム3の内壁の間を閉塞する板ゴム23とを備えている」ものが記載され、さらに、図11によると、「全体として円筒状に形成されたドラム3の断面」は、「下半分が破砕羽根61の先端に固定されたゴム23との間で閉塞されるように円弧状に形成されるとともに、上半分が破砕羽根61の先端に固定されたゴム23との間に導風板16を配設する空間を確保するために楕円状に形成されている」ものといえる。
そして、上記「期限切れ食品を、パックゴミと生ゴミとに分離する装置」については、摘記事項(エ)、(オ)、図11及び図12に、「分離処理の際に、図11に示す矢印Eの向きで羽根車54を高速に回転させ、この際に、ドラム3の内部では、羽根車54の回転に伴って図12に示す矢印F1,F2の向きで風が発生し、その発生した風は、導風板16によって同図に示す矢印Gの向きで導風されて、図11に示す矢印Hの向きで排出口13から排出され、この状態で、期限切れ食品を案内口12に投入すると、案内口12によって供給口11に案内され、供給口11からドラム3の内部に供給され、この後、破砕羽根61が容器や袋を破くことにより、ドラム3の内部において期限切れ食品が、容器及び袋を破砕したパックゴミと、食品本体を破砕した生ゴミとに分離され、この際に、パックゴミと比較して質量の大きい生ゴミは、破砕羽根61によってさらに細かく破砕されると共に、孔15からドラム3の外部に排出され、一方、質量の小さいパックゴミは、ドラム3内で発生した風によって図12に示す矢印Gの向きでドラム3内を移動させられ、排出口13からドラム3の外部に排出され、この結果、期限切れ食品は、孔15から排出された生ゴミと、排出口13から排出されたパックゴミとに分離される」ことが記載されているといえる。
これらの摘記事項及び図示内容を総合して、本件特許発明の記載ぶりに則して整理すると、甲第2号証には、
「全体として円筒状で、その断面の下半分が円弧状に形成されるとともに、上半分が楕円状に形成されるドラムと、ドラムの端面に配設されたベアリングによって両端を保持される回転軸と、回転軸に固定された平板状の4枚の破砕羽根と、破砕羽根の先端に固定されドラム内に配設された状態で破砕羽根の先端及びドラムの内壁の間を閉塞する板ゴムとを備える羽根車と、ドラムの下部に形成され、破砕した生ゴミを排出するための複数の孔と、ドラム断面が楕円状に形成された内壁と破砕羽根の先端に固定されたゴムとの間に確保された空間に配設され、羽根車の回転に伴って発生する風を排出口側に導風するための複数の導風板と、ドラムの一端側の端面を半円状に開口して形成され、期限切れ食品をドラム内に供給可能な供給口と、ドラムの他端側に配設され、パックゴミを排出するための排出口と、を備え、供給口からドラムの内部に供給された期限切れ食品を、破砕羽根が容器や袋を破くことにより、ドラムの内部において期限切れ食品が、パックゴミと、食品本体を破砕した生ゴミとに分離され、この際に、パックゴミと比較して質量の大きい生ゴミは、破砕羽根によってさらに細かく破砕されると共に、複数の孔からドラムの外部に排出され、一方、質量の小さいパックゴミは、ドラム内で発生した風によってドラム内を移動させられ、排出口からドラムの外部に排出される、分離対象の期限切れ食品を、パックゴミと食品本体を破砕した生ゴミとに分離する装置」の発明(以下、「甲第2号証発明」という。)が記載されていると認められる。
そこで、本件特許発明と甲第2号証発明とを対比すると、甲第2号証発明の「ドラム」は、全体として円筒状で、その断面の下半分が円弧状に形成されるとともに、上半分が楕円状に形成されているものであるから、本件特許発明の「筒体」に相当し、さらに、甲第2号証発明のドラム断面として「下半分が円弧状に形成され」及び「上半分が楕円状に形成され」は、ドラムの断面形状によって周壁の断面形状も決定されることが明らかであるから、本件特許発明の「断面の一部分が弧状である周壁」及び「非弧状周壁」にそれぞれ相当するものといえ、以下同様に、「破砕羽根」は「板状羽根」に、「板ゴム」は「突端縁」に、「複数の孔」は「複数の貫通細孔」に、「ドラム断面が楕円状に形成された内壁と破砕羽根の先端に固定されたゴムとの間に確保された空間」は「空気流路」に、「複数の導風板」は「気流案内手段」に、「供給口」は「廃棄物投入口」に、「期限切れ食品」は「生ごみ様廃棄物」に、「パックゴミ」は「異物」に、「食品本体を破砕した生ゴミ」は「異物分離後の廃棄物」に、「分離対象の期限切れ食品を、パックゴミと食品本体を破砕した生ゴミとに分離する装置」は「生ごみ様廃棄物の異物分離装置」に、それぞれ相当するから、両者は、
「断面の一部分が弧状である周壁を有する筒体、前記弧状周壁の中心軸線に沿って延びる回転軸、前記回転軸に固定され前記弧状周壁に褶動可能な突端縁を有し且つ前記回転軸に沿って延びる複数の板状羽根、前記筒体の弧状周壁に穿った複数の貫通細孔、前記筒体の非弧状周壁と前記羽根の突端縁との間に形成され筒体長手方向に延びる空気流路、前記流路内の気流を筒体長手方向に案内する気流案内手段、及び廃棄物投入口を備え、前記投入口から筒体内に投入した生ごみ様廃棄物を前記羽根の回転で砕いて該廃棄物中の異物を分離し、前記異物を前記気流により筒体外へ搬出し、異物分離後の廃棄物を前記細孔から排出してなる生ごみ様廃棄物の異物分離装置。」の点で一致するものの、以下の点で相違する。
[相違点a]本件特許発明の廃棄物投入口は、「前記筒体周壁の気流上流との対向部位に中心軸線と交差する向きに穿」たれているのに対し、甲第2号証発明の供給口は、「ドラムの一端側の端面を半円状に開口して形成され」ている点。

(2)相違点の検討
本件特許発明の相違点aに係る「前記筒体周壁の気流上流との対向部位に前記中心軸線と交差する向きに穿った廃棄物投入口」の技術的事項について、その意味するところを明細書に基づいて以下にみておくと、
まず、「前記筒体周壁」については、「前記」と記載していることから、その前段の記載をみてみると、「断面の一部分が弧状である周壁を有する筒体」とあり、「筒体」は、断面の一部分が弧状である周壁を有するものであるから、当該「筒体周壁」なる用語は、「筒体の周壁」を意味するものと解され、そのことは、発明の詳細な説明の項に、「筒体2の周壁3の気流上流と対向する部位に、弧状周壁3aの中心軸線と交差する向き、即ち回転軸5と交差する向きに生ごみ様廃棄物Aの投入口16を穿つ。」(段落【0017】)と記載されていることからも明らかである。
また、「周壁」については、段落【0012】に、「断面の一部分が弧状である周壁3(弧状周壁3aと非弧状周壁3bとからなる。図4参照)を有する筒体2」と記載されていることから、「周壁」は、断面の一部分が弧状の周壁(弧状周壁)と他の部分が非弧状の周壁(非弧状周壁)とからなるものといえる。
つぎに、「気流上流」については、段落【0017】に、「板状羽根6の突端縁7と筒体2の非弧状周壁3bとの間に筒体2の長手方向に延びる空気流路12を形成し、空気流路12内の気流Gを筒体長手方向に案内する気流案内手段14を設ける。・・・気流案内手段14により、図3の矢印Gに示すように、空気流路12内に投入口16から排出口18へ向かう気流を形成する。」と記載され、ここで「気流」とは、板状羽根の突端縁と筒体の非弧状周壁との間に形成された筒体の長手方向に延びる空気流路内を流れる空気流を意味するものといえるから、「気流上流」とは、上記空気流路内を流れる空気流の上流を指すことは明らかである。
さらに、「前記中心軸線に交差する向きに穿った」については、請求項1に「断面の一部分が弧状である周壁を有する筒体、前記弧状周壁の中心軸線に沿って延びる回転軸」と記載され、ここで「前記中心軸線」とは、断面の一部分が弧状である周壁の中心軸線を意味するものといえるから、「前記中心軸線に交差する向きに穿った」とは、断面の一部分が弧状である周壁の中心軸線と交差する向きに孔をあけたことを意味することは明らかである。
以上のことから、「前記筒体周壁の気流上流との対向部位に前記中心軸線と交差する向きに穿った」とは、筒体の周壁のうち、板状羽根の突端縁と筒体の非弧状周壁との間に形成された筒体の長手方向に延びる空気流路内を流れる空気流の上流と向かい合う部分の位置に弧状周壁の中心軸線と交差する向きに孔をあけたことを意味するものといえる。

そこで、相違点aについて甲第2号証をさらに詳細に検討すると、甲第2号証発明の供給口は上記したとおり、「ドラムの一端側の端面を半円状に開口して形成され」たものである。そして、この「供給口」には、摘記事項(イ)の「ドラム3の一端側には、期限切れ食品Z,Zなどをドラム3内に供給可能な供給口11が、その端面3aを半円状に開口して形成されると共に、作業者によって投入された期限切れ食品Zを供給口11に案内するための案内口12が配設されている。」の記載からみて、作業者によって投入される期限切れ食品を供給口に案内するための案内口が付設されているといえるが、この案内口は、単にドラム内に投入される食品を供給口に案内するだけで、これによってドラム内への投入位置が変わるものではないことは明らかである。
また、摘記事項(エ)、図11及び図12によれば、羽根車54を高速に回転させると、ドラム3の内部では、羽根車54の回転に伴って風が発生し、その発生した風は、導風板16によって排出口13へ導風され、この状態で、期限切れ食品を案内口12を介して供給口11からドラム3の内部に供給され、この後、破砕羽根61が容器や袋を破くことにより、ドラム3の内部において期限切れ食品が、パックゴミと、食品本体を破砕した生ゴミとに分離されることが記載されているとみれることから、甲第2号証には、ドラム内部で羽根車の回転に伴って発生した風に随伴されるように、期限切れ食品をドラムの一端側の端面に開口した供給口からドラム内に供給することが記載され、期限切れ食品のドラム内への供給位置については、ドラムの一端側の端面とすることが記載されているのみで、ドラムの端面以外の箇所、例えばドラムの周壁から供給することも可能であることを示唆する記載は見当たらない。
これに対して、本件特許発明では、「筒体周壁」と「端面」との関係をみてみると、段落【0015】に、「筒体2の弧状周壁3aの中心軸線に沿って回転軸5を設け、・・・回転軸5は、筒体2の両端面に設けた軸受け5a、5bに支持することができる。」と記載され、「筒体」は、「周壁」と両「端面」とからなるものといえるから、「筒体」の「周壁」と「筒体」の「端面」とは別の部材を意味し、「周壁」に「端面」が含まれないことは明らかである。然るに、本件特許発明は、廃棄物投入口を、「筒体周壁の気流上流との対向部位に中心軸線と交差する向きに穿った」こと、すなわち、「筒体の周壁のうち、板状羽根の突端縁と筒体の非弧状周壁との間に形成された筒体の長手方向に延びる空気流路内を流れる空気流の上流と向かい合う部分の位置に弧状周壁の中心軸線と交差する向きに孔をあけた」ものであるから、甲第2号証発明の「ドラムの一端側の端面を半円状に開口して形成され、期限切れ食品をドラム内に供給可能な供給口」の構成と違うことは明らかである。
そして、甲第2号証発明には、上記したことから解るとおり、期限切れ食品のドラム内への供給に際して、相違点aに係る本件特許発明の構成を導き出す動機付けが見当たらないのである。

なお、請求人は、本件特許発明の「前記筒体周壁の気流上流との対向部位に前記中心軸線と交差する向きに穿った廃棄物投入口」との記載は、「『筒体』とはどこからどこまでのものをいうか、『筒体の非弧状周壁』とはどの部分をいうか、請求項の文言上明らかにされていないから」、「『気流上流』とはどこまでいうか、明確な定義は無い」ために、本件特許発明は、甲第2号証発明を含むものと解釈される旨を主張している(口頭審理陳述要領書及び口頭審理陳述要領書(2))。
この点については、上記したとおり、本件特許発明の「前記筒体周壁の気流上流との対向部位に前記中心軸線と交差する向きに穿った廃棄物投入口」との記載は、請求人が明確でないと主張するほどのものとはいえないだけでなく、本件特許発明が、甲第2号証発明を含むものと解釈できるともいえない。
また、請求人は、本件特許発明が、たとえ図示された実施例の装置に限定されると解釈されても、甲第2号証発明から容易に発明することができたものであると主張しているので、以下にその点を検討する。
請求人の具体的な主張は、「甲第2号証の図6において、ホッパ12は筒体の上半分と連通している。筒体の最上部は空気流路である。参考図(b)に示すように、ホッパ12を通じて投入される生ごみには、羽根の突端縁より上から投入されるものも含まれる。その生ごみは、分別処理に際し、廃棄物が板状羽根の回転向きに投入されるから、本件特許発明と全く同一の作用効果を生じる。本件特許発明は、単にホッパの位置を若干排出口の方向にシフトさせたに過ぎない。」というものである。
ここで、甲第2号証の「ホッパ12」(甲第2号証では、「案内口12」)は、本件特許発明の「廃棄物投入口」に相当するものではなく「投入ダクト17」に相当するものであり、甲第2号証において本件特許発明の「廃棄物投入口」に相当するのは、「供給口11」であるから、請求人の主張のうち、「ホッパ12」を「供給口11」と読み替えて検討すると、本件特許発明は、筒体にあける廃棄物投入口の位置を、従来技術である甲第2号証記載の異物分離装置が筒体の端面であるのに対して、筒体の周壁の気流上流との対向部位としたのであって、甲第2号証発明において、供給口11を通じて投入される生ごみが仮に板状羽根の突端縁より上から投入されるものも含み得るとしても、このことから、廃棄物投入口の位置を、筒体の周壁の気流上流との対向部位とすることは、甲第2号証記載の異物分離装置が期限切れ食品のドラム内への供給時の問題点を窺わせるものではないことから、ただちに導き出し得るものとはいえない。
したがって、請求人の主張を認めることはできない。

そして、本件特許発明は、上記相違点aとして記載された構成により、本件特許明細書記載の(イ)生ごみ様廃棄物をスムーズに筒体内へ取り入れることができるので、人の介在を必要とせずに大量の廃棄物を分別処理でき、(ロ)廃棄物中の異物が回転軸にからまることが少ないので、頻繁な運転停止を避け、装置の連続運転が可能であり、分別作業の効率化を図ることができるという、甲第2号証の記載からは予測することのできない格別顕著な効果を奏しているものである。
したがって、本件特許発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
よって、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

7.甲第3号証について
なお、請求人は、平成19年1月12日付け上申書において、甲第3号証として、特開平9-201580号公報を提示して、「本件特許の請求項1は、甲第2号証と対比しますと、「廃棄物投入口」を「筒体周壁の気流上流との対向部位に中心軸線と交差する向きに穿った」点のみが明確でありません。しかしながら、甲第3号証の「投入口16」は本件特許の請求項1の「廃棄物投入口」に相当し、甲第3号証の「生ゴミ処理槽12の周壁」は本件特許の請求項1の「筒体周壁」に相当し、甲第3号証の「回転軸54」は本件特許の請求項1の「回転軸」に相当します。そして、甲第3号証の明細書段落[0016]、[0031]及び図1に、「生ゴミ処理槽12」の上部に通風させる記載があることから、甲第3号証の「投入口16」は、本件特許の請求項1の「筒体周壁の気流上流との対向部位に中心軸線と交差する向き」と同等の部位に設けられております。このように記載されている甲第3号証記載の発明を、甲第2号証記載の発明に適用しまして本件特許の請求項1記載の発明とすることは当業者が容易になし得る程度であります。」と主張している。
ここで、上申書に添付して請求人が新たに提出した甲第3号証および当該証拠に基く請求人の主張について検討すると、請求人は、本件特許発明は、甲第2号証に記載された発明に加えて、この新たな証拠である甲第3号証に記載された発明を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができた発明であると主張しており、当該甲第3号証及びそれに基づく請求人の上記主張は、特許を無効にする根拠となる事実を実質的に変更するものといえなくもない。
しかし、念のために甲第3号証の記載事項を検討しておくと、甲第3号証(特開平9-201580号公報)には、段落【0002】に、生ゴミを微生物で処理する生ゴミ処理機にあっては、処理槽上部の投入口から生ゴミを処理槽内に投入し、撹拌羽根によって、微生物を担持した処理媒質と撹拌混合し、この微生物によって生ゴミを分解処理すること、さらに、この生ゴミ及び処理媒質中に含まれる微生物に酸素を供給するために処理槽内に空気を送り込み、微生物の活性を高く保つために槽内温度を適切に維持すると共に、生ゴミが持ち込む水分及び生ゴミの分解によって発生する水分のうち、余剰分を機外へ排出することが記載され、段落【0014】、【0016】、【0031】、【0032】及び図1の記載によれば、生ゴミ処理槽の上部には、長手方向に通風入口、投入口、通風出口がその順で設けられ、ブロワ(図示略)で空気を通風入口34から生ゴミ処理槽12内に供給し、排気ファン(図示略)で生ゴミ処理槽12内の空気を通風出口36から排出する生ゴミ処理機が記載されているといえる。
そして、甲第3号証の投入口についてみると、生ゴミ処理槽の周壁に、通風入口から通風出口への空気の流れ方向に対して上流側で、撹拌羽根の回転軸と交差する向きに孔をあけたものとみることもできるが、甲第2号証で示される、期限切れ食品を破砕して気流によって異物を除去する分離装置にあっては、装置内に配置された羽根車の回転によって廃棄物を破砕すると共に異物除去用の気流を発生するために、羽根車は、高速で回転する必要がある(例えば、甲第2号証の段落【0027】に、「羽根車4が図5に示す矢印Eの向きで毎分600回転程度で回転する」と記載。)のに対し、甲第3号証で示される生ゴミを微生物で処理する生ゴミ処理機にあっては、段落【0033】の記載によれば、処理槽内に配置された撹拌羽根による撹拌は、処理槽内の生ゴミ温度が低下せず、しかも生ゴミから過剰な水分が処理槽上方の空間部へ排出される程度のゆっくりとした、あるいは低頻度のものであり、撹拌羽根は高速で回転するものではなく、両者を同一視することはできない。
すなわち、甲第2号証発明は、筒体内で高速で回転する羽根車及び羽根車の回転によって発生する風の流れを前提として供給口を配置しなければならないものであり、一方、甲第3号証に記載の生ゴミ処理機は、処理槽内でゆっくり回転する撹拌羽根及びブロワで通風入口から供給されるわずかな空気を前提とするために、生ゴミの投入に支障をきたすことはないものといえ、投入口の配置を格別に考慮する必要はないものと解される。
してみると、甲第3号証記載の投入口は、その配置だけをみると本件特許発明の投入口と類似点はみられるものの、そのような配置を採用することの意味が異なることから、甲第3号証記載の投入口の配置を甲第2号証発明の投入口の配置として採用する動機付けが存在しないものといえるから、この主張は採用することができない。

8.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-13 
結審通知日 2007-03-16 
審決日 2007-03-22 
出願番号 特願2000-383465(P2000-383465)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (B07B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 大黒 浩之
斉藤 信人
登録日 2005-04-15 
登録番号 特許第3666800号(P3666800)
発明の名称 生ごみ様廃棄物の異物分離装置  
代理人 加藤 雄二  
代理人 市東 篤  
代理人 市東 禮次郎  
代理人 市東 篤  
代理人 市東 禮次郎  

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