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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1160094
審判番号 不服2004-14903  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-15 
確定日 2007-07-02 
事件の表示 特願2000- 79580「選択対象物の最適配置化方法及び最適配置化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月28日出願公開、特開2001-265839〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成12年3月22日の出願であって、平成16年6月11日に拒絶査定がされ、これに対して平成16年7月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成16年8月16日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成16年8月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成16年8月16日付けの補正を却下する。

[理由]
(1)当該補正後の本願特許請求の範囲
当該補正による特許請求の範囲の請求項2の記載は、次のとおりのものである。

【請求項2】 複数種の選択対象物を任意に配置するエリアの形状モデルを記憶するエリアモデル記憶手段と、
前記各選択対象物の形状モデルを記憶する対象物モデル記憶手段と、
前記エリア及び選択対象物の形状モデルを画像表示する画像出力手段と、
前記画像上で各選択対象物の形状モデルを前記エリアの形状モデル上に配置操作するモデル操作手段と、
前記配置操作に応じて前記エリアの形状モデル上に前記各選択対象物の形状モデルを配置するコントローラと、
前記配置操作による配置に応じて前記エリアに実際に配置した各選択対象物の選択頻度情報を収集し前記コントローラに入力する頻度情報入力手段とを備え、
前記頻度情報入力手段は、前記選択頻度情報に応じて前記モデル操作手段の配置操作により前記エリアの形状モデル上で選択頻度の高かった選択対象物と選択頻度の低かった選択対象物との場所を交互に移動して再配置したとき該再配置前後の選択頻度情報を比較して前記選択対象物又は配置箇所の良否を判断可能とするために該再配置後の選択頻度情報を前記コントローラへ入力することを特徴とする選択対象物の最適配置化装置。
(下線部は補正箇所)

(2)当該補正前の特許請求の範囲
これに対し、当該補正前の特許請求の範囲の記載は、出願当初の特許請求の範囲を平成16年5月10日付けで補正したものであって、その請求項1から6は以下のとおりである。

【補正前請求項1】 複数種の選択対象物を任意に配置するエリアに前記各選択対象物を配置し、該配置に対応して各選択対象物の選択頻度情報を収集し、
前記選択頻度情報に応じて選択頻度の高かった選択対象物と選択頻度の低かった選択対象物との場所を交互に移動して再配置し、該再配置後の各選択対象物の選択頻度により場所及び選択対象物の良否を判断することを特徴とする選択対象物の最適配置化方法。
【補正前請求項2】 複数種の選択対象物を任意に配置するエリアの形状モデルを記憶するエリアモデル記憶手段と、
前記各選択対象物の形状モデルを記憶する対象物モデル記憶手段と、
前記エリア及び選択対象物の形状モデルを画像表示する画像出力手段と、
前記画像上で各選択対象物の形状モデルを前記エリアの形状モデル上に配置操作するモデル操作手段と、
前記配置操作に応じて前記エリアの形状モデル上に前記各選択対象物の形状モデルを配置するコントローラと、
前記配置操作による配置に応じて前記エリアに実際に配置した各選択対象物の選択頻度情報を収集し前記コントローラに入力する頻度情報入力手段とを備え、
前記コントローラは、前記選択頻度情報に応じて前記モデル操作手段の配置操作により前記エリアの形状モデル上で選択頻度の高かった選択対象物と選択頻度の低かった選択対象物との場所を交互に移動して再配置し、該再配置後の各選択対象物の選択頻度情報により場所及び選択対象物の良否を判断することを特徴とする選択対象物の最適配置化装置。
【補正前請求項3】 請求項2記載の選択対象物の最適配置化装置であって、
前記画像出力手段は、前記エリア及び選択対象物の形状モデルを平面図又は鳥瞰図の少なくとも一方で画像表示することを特徴とする選択対象物の最適配置化装置。
【補正前請求項4】 請求項2又は3記載の選択対象物の最適配置化装置であって、
前記エリアは、遊戯機を配置する遊戯場であり、
前記複数種の選択対象物は、複数種の遊戯機であり、
前記選択頻度情報は、前記各遊戯機の集金情報であることを特徴とする選択対象物の最適配置化装置。
【補正前請求項5】 請求項4記載の選択対象物の最適配置化装置であって、
前記エリアの形状モデルは、エリア環境情報を備えていることを特徴とする選択対象物の最適配置化装置。
【補正前請求項6】 請求項5記載の選択対象物の最適配置化装置であって、
前記エリア環境情報は、電源コンセントの位置情報、出入口の位置情報、非常口の位置情報、内装情報の少なくとも一つであることを特徴とする選択対象物の最適配置化装置。

(3)当該補正の適否

当該補正後の請求項2と補正前の全ての請求項を対比するに、補正後の請求項2は、補正前の請求項2における「前記コントローラは、前記選択頻度情報に応じて前記モデル操作手段の配置操作により前記エリアの形状モデル上で選択頻度の高かった選択対象物と選択頻度の低かった選択対象物との場所を交互に移動して再配置し、該再配置後の各選択対象物の選択頻度情報により場所及び選択対象物の良否を判断する」を、「前記頻度情報入力手段は、前記選択頻度情報に応じて前記モデル操作手段の配置操作により前記エリアの形状モデル上で選択頻度の高かった選択対象物と選択頻度の低かった選択対象物との場所を交互に移動して再配置したとき該再配置前後の選択頻度情報を比較して前記選択対象物又は配置箇所の良否を判断可能とするために該再配置後の選択頻度情報を前記コントローラへ入力する」とするものである。

ここで補正前、補正後の内容を対比するに、コントローラが「前記配置操作に応じて前記エリアの形状モデル上に前記各選択対象物の形状モデルを配置する」構成要件であることは、補正前、補正後のいずれの請求項の記載からも明らかではあるものの、補正前の請求項2に係る発明では、コントローラが、「再配置後の各選択対象物の選択頻度情報により場所及び選択対象物の良否を判断するもの」であることを構成要件としている。
これに対し、補正後の請求項2に係る発明では、「該再配置前後の選択頻度情報を比較して前記選択対象物又は配置箇所の良否を判断可能とするために」は「頻度情報入力手段」に対する修飾文にすぎず、「コントローラ」は該情報入力手段から情報が入力される対象ではあるものの、コントローラが「再配置後の各選択対象物の選択頻度情報により場所及び選択対象物の良否を判断する」ことを発明の構成要件としていない。

結果、当該補正後の請求項2は、補正前の請求項2に係る発明における「再配置後の各選択対象物の選択頻度情報により場所及び選択対象物の良否を判断する」コントローラたる構成要件を除外し、その発明の範囲を拡張するものとなる。

(併せて論ずれば、「判断する」と「判断可能とする」の語意も異なる。前者は「判断」は必須事項であるのに対し、後者は「可能」とするのであって、「判断すること」は必須要件ではない。この点においても、当該補正は発明の範囲の拡張である。)

したがって、当該補正は特許法第17条の2第4項各号で規定する補正、すなわち、請求項削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、拒絶理由に対する明瞭でない記載の釈明の何れの要件をも満たす補正ではないから、同条同項の規定に違反するものである。
よって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明の認定
平成16年8月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成16年5月10日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項6までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1の内容は、下記のとおりである。

【請求項1】 複数種の選択対象物を任意に配置するエリアに前記各選択対象物を配置し、該配置に対応して各選択対象物の選択頻度情報を収集し、
前記選択頻度情報に応じて選択頻度の高かった選択対象物と選択頻度の低かった選択対象物との場所を交互に移動して再配置し、該再配置後の各選択対象物の選択頻度により場所及び選択対象物の良否を判断することを特徴とする選択対象物の最適配置化方法。

2.拒絶査定の理由

原査定の拒絶理由の内、〈理由1〉は、本願請求項1に係る内容は、何ら自然法則を用いていない。特に「良否を判断する」構成については人間の精神活動そのものであって、特許法第29条第1項柱書き違背であるとするものである。

3.当審における判断

審判請求人(出願人)は、平成16年5月10日付け手続補正書と同日で提出した意見書において、「本願請求項1に係るものは、その補正により「択頻度の高かった選択対象物と選択頻度の低かった選択対象物との場所を交互に移動して再配置し、該再配置後の各選択対象物の選択頻度により場所及び選択対象物の良否を判断する」ことができるものであり、単なる手順の記載ではなく、特許法第2条でいう「発明」に該当します。」との主張をしている。

しかしながら、本願請求項1の内容は、再配置後の各選択対象物の選択頻度により場所及び選択対象物の良否を判断する事項について、その判断基準を発明の構成要件としていない。
自然法則を用いた判断基準としての良否の判断基準が構成として存在しない以上、何をもって良否を判断するかは人間の精神活動にゆだねられているとしか解釈できない。
発明の詳細な説明には、請求項1における各手順を実行する主体が、装置やコンピュータ等のものであるとも、人間であるとも限定されていないが、人間でないと判断される根拠も存在しないから、請求項1に係る内容は、人間の精神活動により良否を判断するものと解することが妥当である。

よって、本願請求項1に係る内容は人間の精神活動における手順と判断できるから、これを、自然法則を利用した技術的思想の創作とすることはできない。


なお、拒絶査定不服審判に対する当審の判断は上記のとおりであるが、以下、審査において拒絶理由は通知されてはいないものの、当審において潜在する他の拒絶理由について検討したので、その見解を以下に示す。

(1)例えば、多くの商品を小売りするスーパーマーケット等の小売業において、種々の商品の売り上げ量情報を収集し、配置場所を入れ替えることにより、試行錯誤して商品の最適配置を行って売り上げを高めることが、人間の行為として日常実行されていることが周知である。
そのような周知事項を鑑みれば、平成16年5月10日付け補正による請求項1に係る内容は特許法第29条違背の疑いがある。

(2)本願発明は「最適配置化方法」「最適配置化装置」とされているが、各請求項、発明の詳細な説明には、何をもって最適配置が可能になるか記載されていない。
「選択対象物を再配置し、選択頻度を色分けするなどし、該再配置前後の情報を用いて選択頻度の高かった遊戯機と、選択頻度の低かった遊戯機との場所を交互に移動し、その結果、各遊戯機の選択頻度が元のままであれば選択頻度の低い遊戯機は機械そのものに問題があり、選択頻度の高い遊戯機は機械そのものが良いものであると判断すること」が明かであったとしても、これは個々の遊技機、個々の配置場所に対する判断をしているだけであって、全ての遊技機をどう配置すれば最適となることを意味しない。
すなわち、本願明細書には「最適化」について記載されていないから、これは特許法第36条違背の疑いがある。


4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第2条で規定する「自然法則を利用した技術的思想の創作」である発明ではないから、特許法第29条第1項柱書きにおける産業上利用できる発明とは認められない。
故に、同第29条第1項の規定により特許を受けることができない。

したがって、残る請求項2から請求項6に係る各発明について特に検討するまでもなく、また、他の拒絶理由について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-09 
結審通知日 2007-05-10 
審決日 2007-05-22 
出願番号 特願2000-79580(P2000-79580)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 14- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 幸雄加舎 理紅子  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 加藤 恵一

松永 稔
発明の名称 選択対象物の最適配置化方法及び最適配置化装置  
代理人 須藤 雄一  

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