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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1160203
審判番号 不服2005-25359  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-28 
確定日 2007-07-05 
事件の表示 平成 9年特許願第339922号「電子レンジ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 2日出願公開、特開平11-176569〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯,本願発明
本願は,平成9年12月10日の出願であって,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成17年12月28日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載されたとおりの次のものと認められる。なお,前記手続補正は,補正前の請求項1ないし6を削除するものである。

「調理室内にマイクロ波を照射するマグネトロンと,
前記マグネトロンに電源を与える高圧トランスと,
前記高圧トランスの給電路に介在されたリレーと,
前記リレーを電源周波数が「60Hz」である場合に一定周期でオンオフし,前記リレーのオン時間を電源周波数が「60Hz」である場合および電源周波数が「50Hz」である場合で相互に変えることに基づいて前記マグネトロンの平均出力を一定になるように調整する制御手段と,
前記リレーが動作しているか否かを判別する判別手段とを備え,
前記判別手段は,前記高圧トランスに印加される電圧を検出するフォトカプラを有し,このフォトカプラからの出力信号に基づいて前記リレーが動作しているか否かを判別することを特徴とする電子レンジ。」

2. 引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物である特開昭63-53890号公報(以下,「引用例」という。)には,図面と共に以下の記載がある。

ア. 「この発明は,調理器たとえば電子レンジに関する。」(1頁左欄末行ないし右欄1行)

イ. 「(発明が解決しようとする問題点)
この発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,電源周波数の違いにかかわらず常に適切な加熱出力を得ることができ,これにより仕様の異なる部品の採用を止めて部品数の削減を図ることができ,コストの低減,部品管理の簡略化,組立時における点検作業の容易化を可能とし,さらには引越などに際しての部品交換を不要として経費の節減を図ることができるすぐれた調理器を提供することにある。」(2頁左上欄1行ないし10行)

ウ. 「(問題点を解決するための手段)
電源周波数を判別する手段と,この判別結果が所定周波数のとき全調理時間のうち所定の時間だけ高周波出力を低減する手段とを設ける。
(作用)
電源周波数が50Hzの場合は初めから終わりまで高周波出力一定であるが,電源周波数が60Hzの場合には全調理時間のうちの所定の時間だけ高周波出力が低下する。」(2頁左上欄12行ないし末行)

エ. 「以下,この発明の一実施例について図面を参照して説明する。
第1図において,1は商用交流電源で,この電源1にはヒューズ2,ドアスイッチ3,4,およびリレー接点(常閉接点)24bを直列に介して高圧トランス5の一次コイル5aが接続される。
・・・中略・・・
高圧トランス5の二次コイル5bには高圧コンデンサ7および高圧ダイオード8からなる半波倍電圧整流回路を介して高周波発生装置であるところのマグネトロン9のアノード・カソード間が接続される。
・・・中略・・・
また,電源1には上記ヒューズ2および降圧トランス10を介して制御部20が接続される。この制御部20は,マイクロコンピュータおよびその周辺回路などからなり,内部に周波数判別回路21を有し,外部に操作部22,表示部23,およびリレー24を接続している。」(2頁右上欄2行ないし左下欄6行)

オ. 「つぎに,上記のような構成において作用を説明する。
加熱室内に食品を収めてドアを閉じるとともに,操作部22で所望の調理時間tを設定する。こうして,調理の準備が完了したところで電源1を投入すると,マグネトロン9が発振動作し,高周波電波が加熱室内に供給される。つまり,誘電調理の開始となる。このとき,電源周波数が50Hzであれば高周波出力500W,60Hzであれば高周波出力600Wとなる。
電源1の投入時,降圧トランス10の二次側に生じる電圧によって制御部20が作動しており,調理時間のカウントが行なわれる。また,降圧トランス10の二次側に生じる電圧の周波数つまり電源周波数が周波数判別回路21で判別される。
周波数判別回路21が電源周波数50Hzを判別した場合,第2図に示すように,制御部20は予め設定された調理時間tが経過するまでマグネトロン9を連続して発振動作させる。そして,設定調理時間tが経過すると,そこでリレー24を励磁し,接点24bを開放してマグネトロン9への通電を遮断する。つまり,高周波出力500Wによる調理が設定時間tだけ実行される。
周波数判別回路21が電源周波数60Hzを判別した場合,第3図に示すように,制御部20は全調理時間tのうち最後のΔt時間だけリレー24を励磁し,マグネトロン9への通電を遮断する。
・・・中略・・・
このように,電源周波数が60Hzの場合は最後のΔt時間だけ高周波出力を0Wとすることにより,全調理時間tにおける高周波出力の平均値は500Wとなり,つまり電源周波数50Hzの場合と同じ高周波出力を得ることができ,加熱過剰を生じることなく,適正な調理を行うことができる。特に,電源周波数の違いにかかわらず常に適切な加熱出力を得ることができるので,仕様の異なる部品を採用する必要がなく,部品数の削減を図ることができる。」(2頁左下欄7行ないし3頁左上欄19行)

ところで,前記リレー24は,リレー接点24bが常閉接点であるから,励磁によりオフとなり,マグネトロンへの通電が遮断する(記載事項エ,オ参照)。

したがって,記載事項アないしオ及び第1図から,引用例には次の発明(以下,「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。

加熱室内に高周波電波を照射するマグネトロン9と,
前記マグネトロン9に電源を与える高圧トランス5と,
前記高圧トランス5の給電路に介在されたリレー24と,
前記リレー24を電源周波数が「60Hz」である場合に全調理時間tのうち所定の時間例えば最後のΔt時間だけリレー24をオフし,前記リレー24のオン時間を電源周波数が「60Hz」である場合および電源周波数が「50Hz」である場合で相互に変えることに基づいて前記マグネトロンの平均出力を一定になるように調整する制御部20と,を備えている電子レンジ。

3. 対比,一致点・相違点
本願発明と引用例発明を対比すると,引用例発明の「加熱室」,「高周波電波」及び「制御部20」は,それぞれ本願発明の「調理室」,「マイクロ波」及び「制御手段」に相当する。

したがって,両発明は,
調理室内にマイクロ波を照射するマグネトロンと,
前記マグネトロンに電源を与える高圧トランスと,
前記高圧トランスの給電路に介在されたリレーと,
前記リレーのオン時間を電源周波数が「60Hz」である場合および電源周波数が「50Hz」である場合で相互に変えることに基づいて前記マグネトロンの平均出力を一定になるように調整する制御手段と,を備えている電子レンジの点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
前記リレーを,電源周波数が「60Hz」である場合に,本願発明では,一定周期でオンオフするのに対して,引用例発明では,全調理時間tのうち所定の時間例えば最後のΔt時間だけオフする点。

[相違点2]
本願発明では,前記リレーが動作しているか否かを判別する判別手段を備え,前記判別手段は,前記高圧トランスに印加される電圧を検出するフォトカプラを有し,このフォトカプラからの出力信号に基づいて前記リレーが動作しているか否かを判別するのに対して,引用例発明では,このような判別手段を備えない点。

4. 相違点についての検討
[相違点1について]
調理室内にマイクロ波を照射するマグネトロン,前記マグネトロンに電源を与える高圧トランス及び前記高圧トランスの給電路に介在されたリレーを備えた電子レンジにおいて,前記リレーを電源周波数が「60Hz」である場合に一定周期でオンオフし,前記リレーのオン時間を電源周波数が「60Hz」である場合および電源周波数が「50Hz」である場合で相互に変えることに基づいて前記マグネトロンの平均出力を一定になるように調整することは従来周知である(例えば,特開平2-139891号公報(3頁右上欄15行ないし4頁左上欄5行及び第2図とその説明箇所),特開平2-132790号公報(2頁右上欄,4頁右下欄2行ないし10行及び第2図とその説明箇所),特開昭59-96695号公報(第2頁及び図面)を参照のこと。)。

したがって,引用例発明において,相違点1における本願発明の構成を採ることは当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2について]
調理室内にマイクロ波を照射するマグネトロン,前記マグネトロンに電源を与える高圧トランス及び前記高圧トランスの給電路に介在されたリレーを備えた電子レンジにおいて,前記マグネトロンへの通電状態と前記リレーの駆動信号に基づいて前記リレーが正常に動作しているか否かを判別する判別手段を設けることは従来周知であり(例えば,特開平2-56891号公報(実施例の欄),特開平1-176696号公報(特許請求の範囲),特開昭64-12495号公報(3頁右下欄,5頁左上欄)を参照のこと。),かつ,前記マグネトロンへの通電状態を示す手段として,前記高圧トランスに印加される電圧を検出するフォトカプラからの出力信号を用いることは単なる設計事項である(例えば,前記特開平1-176696号公報(3頁)を参照のこと。)。

したがって,引用例発明において,相違点2における本願発明の構成を採ることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の効果は,引用例発明及び周知技術から予測し得る程度のものであって,格別なものでない。

5. まとめ
したがって,本願発明は,引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,本願の他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-26 
結審通知日 2007-05-08 
審決日 2007-05-21 
出願番号 特願平9-339922
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉浦 貴之  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
新海 岳
発明の名称 電子レンジ  
代理人 佐藤 強  
代理人 佐藤 強  

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