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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 E02B |
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管理番号 | 1160463 |
審判番号 | 不服2005-21851 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-11-11 |
確定日 | 2007-07-11 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 75457号「水路用コンクリートブロック」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月16日出願公開、特開平 9-242047〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年3月6日の出願であって、平成17年9月29日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成17年11月11日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年12月12日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成17年12月12日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年12月12日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりとなった。 「側壁を垂直または外側に傾斜させた断面U形とされたコンクリートブロックにおける側壁又は隔壁部分に頂辺部からの切欠部を形成し、該切欠部に間伐木材、擬木部材、石材または擬石模様部体からなる柵状植物着生部体を取付けたことを特徴とする水路用コンクリートブロック。」 (2)当審の判断 ところで、本願明細書には、「【0015】・・・。図9のものは・・・切欠部2が対設されたものに対し同じく横杆材4および両端に段部を形成した板材や擬木や擬木模様とした横柵板部材4aを組み込んだもので、・・・。 【0018】図8、図9のものは本木および擬木材が横方向の部材として用いられたものであるが、図12と図13には縦方向として組込まれた場合が示され、即ち図12のものは図2に示したようなコンクリートブロック1の切欠部3に対して縦方向に間伐材を利用した丸太や擬木模様とした縦杆部材を隙間を開けて列設して横杆部材で連結した縦杆柵部材4bが嵌合された場合が示され・・・。」と記載されていることからすると、切欠部に対して組み込まれる部材としては「横柵」の部材に加え、「縦杆柵」の部材も含まれているものといえる。 一方、本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「横柵部材」は、「柵状植物着生部体」と補正されたため、当該「柵状部体」は「横柵」であるという限定が削除されたものといえる。すなわち、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された「柵状植物着生部体」は、本願明細書の上記段落【0018】に記載された「縦杆柵部材4b」も新たに含むこととなった。 してみれば、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当したものということはできない。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 なお、本件補正の内容を見ると、請求項の数は7から4へと減少されているものの、例えば、補正後の特許請求の範囲の請求項4は、補正前の特許請求の範囲の請求項7の記載をそのまま引用し、「【請求項4】・・・請求項1?6の何れか1つに記載の・・・ブロック。」と記載しているように、上記補正後の請求項4は、特許請求の範囲に既に存在もしない請求項5や6を引用してものとされており、本件補正はその記載において慎重さを欠いているといわざるを得ない。 3-1.本願発明について 平成17年12月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「側壁を垂直または外側に傾斜させた断面U形とされたコンクリートブロックにおける側壁部分に頂辺部からの切欠部を形成し、該切欠部に横柵部材を取付けたことを特徴とする水路用コンクリートブロック。」 3-2.引用文献に記載された事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、実願昭59-9901号(実開昭60-126523号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、「U形溝」の発明に関して、図面の第1図?第2図とともに、次の事項が記載されている。 (イ)「2.実用新案登録請求の範囲(1)U形溝の側壁に切欠き形成されていて,側壁の上端側が開放された切欠部と,この切欠部の対向壁面に,夫夫凹設された差込み溝と,この差込み溝に差し込みおよび抜き取り自在となした網板と,この網板の上縁部に蝶着されていて,U形溝の溝内側へのみ回動して切欠部を開閉する逆流阻止板とを備えた湧き水の流入口を有するU形溝。」 (第1ページ第4行?第11行) (ロ)「第1図および第2図において,1は,U形溝を示しており,このU形溝1の側壁2には,側壁2の上端側が開放された長方形の切欠部3が形成されている。この切欠部3は,その対向壁面に,夫夫,差込み溝4が凹設されている。網板5は,この差込み溝4に対して差し込み,および抜き取り自在に形成されたものである。逆流阻止板6は、この網板5の上縁部に蝶着されて,U形溝1の溝7の内側へのみ回動して,前記切欠部3を開閉するものである。湧き水は,網板5を通過したる後に,その流入力によって逆流阻止板6を溝7の内側に回動させて,溝7に流入する。また,溝7が満水になれば,逆流阻止板6がその水圧を受けて切欠部3を閉鎖するので,溝7内から外部に逆流することがなくなる。」 (第3ページ第8行?第4ページ第4行) (ハ)また、第1図及び第2図には、網板5及び逆流阻止版6の形状が、それぞれ切欠部3と同じ略長方形形状である態様が示されている。 そして、上記記載事項(イ)?(ロ)並びに図面に記載された内容(ハ)を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「U形溝の側壁に切欠き形成されていて、側壁の上端側が開放された長方形の切欠部と、この切欠部の対向壁面に、夫夫凹設された差込み溝と、この差込み溝に差し込みおよび抜き取り自在となした長方形の網板と、この網板の上縁部に蝶着されていて、U形溝の溝内側へのみ回動して切欠部を開閉する略長方形形状の逆流阻止板とを備え、溝が満水になると逆流阻止板がその水圧を受けて切欠部を閉鎖することで溝内から外部に逆流することがなくなる、湧き水の流入口を有するU形溝。」 3-3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「側壁の上端側が開放された長方形の切欠部」は、本願発明の「頂辺部からの切欠部」に相当する。また、引用発明の「U形溝」は湧き水が流入するものであることから、当該U形溝が水路用であることは当業者にとって明らかである。 してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「側壁部分に頂辺部からの切欠部を形成し、該切欠部に部材を取付けた、水路用の断面U形の部材。」 (相違点1) 本願発明では、水路用の断面U形の部材は、側壁を垂直または外側に傾斜としたコンクリートブロックであるのに対し、引用発明の断面U形の部材が当該形状のコンクリートブロックであるか否か定かでない点。 (相違点2) 本願発明では、切欠部に取付けられた部材は「横柵部材」であるのに対し、引用発明の「網板」及び「逆流阻止板」は、略長方形形状であるものの「横柵部材」であるか否か明らかではない点。 3-4.当審の判断 上記の相違点について検討する。 (相違点1について) 水路を形成するにあたり、側壁を垂直させた断面U形のコンクリートブロックで構成することが、例えば実願平5-35884号(実開平7-8477号)のCD-ROM等にみられるように従来より周知であることを考慮すれば、引用発明のU形溝を上記形状のコンクリートブロックとすることは、当業者であれば適宜なし得る事項にすぎないことである。 (相違点2について) 本願発明における切欠部に取付けられた「横柵部材」とは、如何なる構造の部材を意味するのかその技術的意義は必ずしも明らかでないことから、本願明細書及び図面の記載を参照する。 本願明細書には「【0015】図8以下には上記した図1?図6のようなU形コンクリートブロック1または合成U形ブロック15を用いて形成された本発明の水路用コンクリートブロックが示されている。・・・図9のものは・・・両端に段部を形成した板材や擬木や擬木模様とした横柵板部材4aを組み込んだもので、何れにしても各横杆部材や横棚板部材(当審注:「横柵板部材」の誤りとみられる。)の端部には切欠段部12、12aを形成して切欠部2、2aに対する取合い係合を図り、安定にセットされるようになっている。」と記載されており、また、本発明による水路用コンクリートブロックの切欠部に設置せしめる横杆材の各例を示した斜面図であるところの第7図には、高さ方向の辺の長さに対して幅方向の辺が長い横長の形状をした横柵板部材4aが例示されている。 さらに、本願の明細書には、「【0025】上記したような本発明によるものは側壁を重ねまたは外側に傾斜させて断面U形とされたコンクリートブロックにおける側壁部分に頂辺部からの切欠部を形成し、該切欠部に柵状植物着生部体を取付けたことにより・・・棚状(当審注:柵状の誤りとみられる)植物着生部体の背面に天然石材を充填することで、畦、水田と連通して多種の生物の種の保存が図れる。」と記載されている。 以上の明細書及び図面の記載を参酌すれば、本願発明の「横柵部材」は、横長の板部材を含み、横柵部材の背面と水路が連通することも可能であれば、それ自体が水を通過させる機能を備えていないものも含まれると解することができる。 してみれば、引用発明の逆流阻止板は、当該板の背面と水路が連通できる板部材として構成されているものであるから、本願明細書記載の「横柵板部材」と共通するものであることは明らかである。 さらに、引用発明における逆流阻止板も長方形形状であるところ、その縦横比を如何に設定するかは、溝の深さや湧き水の水位等を考慮しつつ、湧き水の流入と溝が満水になった際の逆流阻止という引用発明の作用を奏するために適宜設定されるべきものであることは明らかであり、引用発明における逆流阻止板の縦横比を調整し横長の長方形形状板部材とすることは、当業者が適宜設計しうる事項といわざるを得ない。 よって、上記(相違点2)は、実質的な相違ではない。 そして、本願発明が奏する作用・効果を検討してみても、引用発明の技術から、当業者が予測しうる範囲のものであって、格別なものとすることはできない。 3-5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-04-25 |
結審通知日 | 2007-05-08 |
審決日 | 2007-05-22 |
出願番号 | 特願平8-75457 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E02B)
P 1 8・ 572- Z (E02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深田 高義、西田 秀彦 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
峰 祐治 石井 哲 |
発明の名称 | 水路用コンクリートブロック |
代理人 | 白川 一一 |