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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1161258
審判番号 不服2004-3578  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-24 
確定日 2007-07-20 
事件の表示 特願2000-307652「燃料供給装置及び燃料ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月26日出願公開、特開2001-173534〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、本願は、平成12年10月6日(パリ条約による優先権主張1999年10月7日、独国)の出願であって、平成15年11月18日付けで拒絶査定がなされ、平成16年2月24日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、平成16年3月25日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成16年3月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月25日付けの手続補正を却下する。

[理由1]
1.補正後の本願発明1
平成16年3月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、本願の明細書における特許請求の範囲の請求項1は、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料タンクに通じたサージポット内で該サージポットからエンジンに至る燃料供給管路に燃料を圧送する電動燃料ポンプと、エンジンからの還流燃料をサージポットへ送る燃料還流管路と、電動燃料ポンプの作動中に燃料還流管路からの還流燃料で駆動されてサージポットを燃料で満たす吸引ジェットポンプとを有する内燃機関用燃料供給装置において、前記電動燃料ポンプ(5)が該電動燃料ポンプのための電子制御装置(18)及び該電子制御装置に燃料供給管路及び/又は燃料還流管路内の圧力情報を制御入力として与える圧力検知手段と共に1つの構造ユニットを構成し、該ユニットには少なくとも1つの液圧制御入力用の入口が設けられ、該液体制御入力用入口が前記圧力検知手段の受圧部に通じていると共に燃料供給管路及び/又は燃料還流管路に接続され、前記電子制御装置が前記圧力検知手段から与えられる圧力情報に基づいて前記吸引ジェットポンプの駆動圧力を一定に保つように電動燃料ポンプを制御することを特徴とする燃料供給装置。」
と補正された。
これは、補正前(平成15年9月11日付けの手続補正)の、請求項1に記載した発明を特定する事項である「燃料タンクに通じたサージポット内で該サージポットからエンジンに至る燃料供給管路に燃料を圧送する電動燃料ポンプと、エンジンからの還流燃料をサージポットへ送る燃料還流管路とを有する内燃機関用燃料供給装置」なる事項を、「燃料タンクに通じたサージポット内で該サージポットからエンジンに至る燃料供給管路に燃料を圧送する電動燃料ポンプと、エンジンからの還流燃料をサージポットへ送る燃料還流管路と、電動燃料ポンプの作動中に燃料還流管路からの還流燃料で駆動されてサージポットを燃料で満たす吸引ジェットポンプとを有する内燃機関用燃料供給装置」なる事項に限定するものである。
よって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-298660号公報(以下、「引用文献1」という。)
(A)引用文献1記載の事項1
引用文献1には、次の事項が図面とともに記載されている。

a)「電動式燃料ポンプは、一定の周波数で、差圧信号の関数として変化するデューティサイクルにてモーターにパルス直流電流を供給する望ましくはアナログ式又はデジタル式のパルス幅変調アンプによってかかる差圧の関数として駆動する。」(3頁左上欄12ないし17行。下線は、理解の便のため、当審で付した。以下同様。)

b)「圧力センサは返送ラインと連結し、電気圧力信号を送るように燃料の背圧と大気圧との差に応答し、燃料ポンプはかかる信号の関数として駆動する。」(3頁右下欄7ないし10行)

c)「第1図は本発明の1実施例による燃料送給装置10を示すものであり、燃料タンク16内にあって該タンクによって包囲される筒体14内に取付けた電動式燃料ポンプ12を備える。燃料ポンプ12は燃料ライン18を通ってエンジン22の上に担持される燃料レール20に加圧燃料を送出す。レール20における余分な燃料は圧力調整装置26を包含する燃料返送ライン24を通ってタンク16に戻る。」(第4頁左上欄14行ないし右上欄2行)

d)「特に、圧力調整装置26の下流にて燃料戻りライン24に絞り50を位置決めして戻りラインを通過する燃料流を制限し、これによって噴射装置に必要な燃料の逆関数として変化する返送ラインに燃料の背圧を生じさせる。絞り50と調整装置26との間にて返送ライン24と連結する圧力センサ52は、返送ライン24の燃圧と周囲の大気圧との差の関数として電気出力信号を送る。圧力センサ52はパルス幅変調アンプ54に接続する。同様にアンプ54は車の電気システムから直流電力を受け、パルス幅変調出力信号を送ってポンプ12の電気モーターを通電させる。アンプ54のパルス幅変調出力は一定の周波数にて、又圧力センサ52の出力の関数として、望ましくは逆一次関数として変化するデューティサイクルにて供給されることが望ましい。例えばエンジン操作が加速されて燃料要求が高い期間のように燃料返送ライン24の圧力が低い場合、アンプ出力のデューティサイクルは高い。従ってポンプ12に加えられる平均直流電力は高くなるのでポンプに通電される。他方、返送ライン24の燃料背圧が高い場合、例えばエンジンが緩速運転している故に燃料要求が低い場合、アンプ出力のデューティサイクルは相応して低く、燃料ポンプは低いレベルで通電される。」(4頁左下欄12行ないし右下欄16行)

e)「第1図及び第3図に示す本発明の好適実施例の場合、絞り50は、筒体14の入口60と周囲のタンクとを連結する直角管58を含むジェットポンプ56内のノズルオリフィスの型式をとる。かくて、オリフィス50を通る返送燃料の高圧流によりフィルタ62を介して周囲のタンク16から燃料は吸出されるか又は引出され、吸出された返送燃料は入口60を通って筒体14に送られる。」(4頁右下欄17行ないし5頁左上欄4行)

f)「4.図面の簡単な説明
第1図は本発明の好適実施例の1つによる内燃機関用送給装置の概略図、」(5頁左下欄16ないし18行)

(B)ここで、上記2.(1)(A)の記載および図1,2から、以下のことがわかる。

a)上記(A)a),c),e),f)および図1から、燃料タンク16に連結した筒体14内で筒体14からエンジン22に至る燃料ライン18に燃料を送出する電動式燃料ポンプ12と、エンジン22からの返送燃料を筒体14へ送る燃料返送ライン24と、電動式燃料ポンプ12の駆動中に燃料返送ライン24からの返送燃料で駆動されて筒体14に燃料を送るジェットポンプ56とを有する内燃機関用燃料送給装置10であることがわかる。

b)上記(A)a),c),d)および図1から、電動式燃料ポンプ12のためのパルス幅変調アンプ54及びパルス幅変調アンプ54に燃料返送ライン24内の燃圧を電気出力信号として送る圧力センサ52が燃料返送ライン24に備えられ、パルス幅変調アンプ54が圧力センサ52から送られる燃圧に基づいて電動式燃料ポンプ12を駆動する燃料送給装置10であることがわかる。

c)上記(A)d)から、パルス幅変調アンプ54が圧力センサ52から送られる燃圧に基づいて、圧力センサ52の出力の関数として逆一次関数として変化するよう、燃料返送ライン24の燃圧が低い場合、ポンプ12に加えられる平均直流電力は高くなり、燃料返送ライン24の燃圧が高い場合、ポンプ12に加えられる平均直流電力は低くなるように電動式燃料ポンプ12を駆動することがわかる。

d)上記(A)a),b),c),d),f)および図1から、直流モーターとポンプとを有して燃料流を吸引・吐出する内燃機関用電動式燃料ポンプ12において、燃料入口及び燃料出口とを備え、燃料流の燃圧に応答する燃料返送ライン24の圧力センサ52、及び圧力センサ52から送られる燃圧に基づいて、内燃機関用電動式燃料ポンプ12の駆動を、エンジン22による燃料要求に相応して、直流モーターを駆動するパルス幅変調アンプ54を有する、内燃機関用電動式燃料ポンプ12であることがわかる。

(C)引用文献1記載の発明
したがって、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。

「燃料タンク16に連結した筒体14内で該筒体14からエンジン22に至る燃料ライン18に燃料を送出する電動式燃料ポンプ12と、エンジン22からの返送燃料を筒体14へ送る燃料返送ライン24と、電動式燃料ポンプ12の駆動中に燃料返送ライン24からの返送燃料で駆動されて筒体14に燃料を送るジェットポンプ56とを有する内燃機関用燃料送給装置10において、電動式燃料ポンプ12のためのパルス幅変調アンプ54及び該パルス幅変調アンプ54に燃料返送ライン24内の燃圧を電気出力信号として送る圧力センサ52が燃料返送ライン24に備えられ、パルス幅変調アンプ54が圧力センサ52から送られる燃圧に基づいて、圧力センサ52の出力の関数として逆一次関数として変化するよう、燃料返送ライン24の燃圧が低い場合、ポンプ12に加えられる平均直流電力は高くなり、燃料返送ライン24の燃圧が高い場合、ポンプ12に加えられる平均直流電力は低くなるように電動式燃料ポンプ12を駆動する燃料送給装置10。」
(以下、「引用文献1記載の発明1」という。)

「直流モーターとポンプとを有して燃料流を吸引・吐出する内燃機関用電動式燃料ポンプ12において、燃料入口及び燃料出口とを備え、燃料流の燃圧に応答する燃料返送ライン24の圧力センサ52、及び圧力センサ52から送られる燃圧に基づいて、内燃機関用電動式燃料ポンプ12の駆動を、エンジン22による燃料要求に相応して、直流モーターを駆動するパルス幅変調アンプ54を有する、内燃機関用電動式燃料ポンプ12。」(以下、「引用文献1記載の発明2」という。)

3.対比
そこで、本願補正発明1と引用文献1記載の発明1を対比するに、引用文献1記載の発明1における「燃料タンク16」は、その技術的意義からみて、本願補正発明1における「燃料タンク」に相当し、以下同様に、「連結した」は「通じた」に、「筒体14」は「サージポット」に、「エンジン22」は「エンジン」に、「燃料ライン18」は「燃料供給管路」に、「送出する」は「圧送する」に、「電動式燃料ポンプ12」は「電動燃料ポンプ」に、「返送燃料」は「還流燃料」、「燃料返送ライン24」は「燃料還流管路」に、「駆動中」は「作動中」に、「ジェットポンプ56」は「吸引ジェットポンプ」に、「燃料送給装置10」は「燃料供給装置」に、「パルス幅変調アンプ54」は「電子制御装置」に、「燃圧」は「圧力情報」に、「電気出力信号」は「制御入力」に、「送る」は「与える」に、「圧力センサ52」は「圧力検知手段」に、「備えられ」は「設けられ」に、「送られる」は「与えられる」に、「駆動する」は「制御する」に、それぞれ相当する。
そして、引用文献1記載の発明1における「筒体14に燃料を送る」は、「サージポットに燃料を供給する」限りにおいて、本願補正発明1における「サージポットを燃料で満たす」に、相当する。
してみると、本願補正発明1と引用文献1記載の発明とは、
「燃料タンクに通じたサージポット内で該サージポットからエンジンに至る燃料供給管路に燃料を圧送する電動燃料ポンプと、エンジンからの還流燃料をサージポットへ送る燃料還流管路と、電動燃料ポンプの作動中に燃料還流管路からの還流燃料で駆動されてサージポットに燃料を供給する吸引ジェットポンプとを有する内燃機関用燃料供給装置において、該電動燃料ポンプのための電子制御装置及び該電子制御装置に燃料還流管路内の圧力情報を制御入力として与える圧力検知手段が設けられ、前記電子制御装置が前記圧力検知手段から与えられる圧力情報に基づいて電動燃料ポンプを制御する燃料供給装置。」
である点で一致し、次の相違点1ないし3で相違している。

〔相違点1〕
本願補正発明1は、「前記電動燃料ポンプ(5)が該電動燃料ポンプのための電子制御装置(18)及び該電子制御装置に燃料供給管路及び/又は燃料還流管路内の圧力情報を制御入力として与える圧力検知手段と共に1つの構造ユニットを構成し、該ユニットには少なくとも1つの液圧制御入力用の入口が設けられ、該液体制御入力用入口が前記圧力検知手段の受圧部に通じていると共に燃料供給管路及び/又は燃料還流管路に接続され」るのに対し、引用文献1記載の発明1では、「電動式燃料ポンプ12のためのパルス幅変調アンプ54及び該パルス幅変調アンプ54に燃料返送ライン24内の燃圧を電気出力信号として送る圧力センサ52が燃料返送ライン24に備えられ」る点。

〔相違点2〕
本願補正発明1は、「前記電子制御装置が前記圧力検知手段から与えられる圧力情報に基づいて前記吸引ジェットポンプの駆動圧力を一定に保つように電動燃料ポンプを制御する」のに対し、引用文献1記載の発明1は、「パルス幅変調アンプ54が圧力センサ52から送られる燃圧に基づいて、圧力センサ52の出力の関数として逆一次関数として変化するよう、燃料返送ライン24の燃圧が低い場合、ポンプ12に加えられる平均直流電力は高くなり、燃料返送ライン24の燃圧が高い場合、ポンプ12に加えられる平均直流電力は低くなるように電動式燃料ポンプ12を駆動する」点。

〔相違点3〕
「サージポットに燃料を供給する」点について、本願補正発明1は「サージポットを燃料で満たす」のに対し、引用文献1記載の発明1は「筒体14に燃料を送る」点。

4.判断
上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
燃料供給管路又は燃料還流管路の場合について検討すると、電動燃料ポンプが該電動燃料ポンプのための電子制御装置及び圧力検知手段と共に1つの構造ユニットを構成すること、及び燃料供給管路内の圧力情報を制御入力とすることは、それぞれ周知の技術である。(例えば、特開平4-287886号公報(【0006】、【0008】ないし【0010】、図1、図2等参照。)、特開平3-242457号公報(5頁左下欄14行ないし6頁右上欄14行、第2図、第3図等参照。)等参照。)
そして、引用文献1記載の発明1における燃料還流管路に圧力検知手段を設ける代わりに、電動燃料ポンプが電子制御装置及び圧力検知手段と共に1つの構造ユニットとする周知の技術を適用して、上記相違点1に係る本願補正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。さらに、上記周知の技術より、引用文献1記載の発明1において、燃料供給管路内の圧力情報を制御入力として、上記相違点1に係る本願補正発明1の構成とすることも、当業者が容易に想到し得たものである。
また、燃料供給管路及び燃料還流管路内の圧力情報を制御入力として与えるとみても、上記引用文献1記載の発明1に、上記周知の技術を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(2)相違点2について
引用文献1記載の発明1は、燃料返送ライン24を流れる返送燃料でジェットポンプ56を駆動するのであるから、燃料返送ライン24の燃圧は、ジェットポンプ56の駆動圧力であることがわかる。
また、引用文献1記載の発明1は、圧力センサ52の出力の関数として逆一次関数として変化するように、燃料返送ライン24の燃圧が低い場合、ポンプ12に加えられる平均直流電力は高くなり、燃料返送ライン24の燃圧が高い場合、ポンプ12に加えられる平均直流電力は低くなるように電動式燃料ポンプが駆動されるものであるから、電動式燃料ポンプの平均直流電力を制御することで、燃料返送ライン24の燃圧、つまりジェットポンプの駆動圧力をフィードバック制御していることがわかる。
そこで、引用文献1記載の発明1において、ジェットポンプの駆動圧力を一定に保つように電動燃料ポンプの制御を行うことは、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、引用文献1記載の発明1において、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(3)相違点3について
サージポットに燃料を供給する際に、サージポットを燃料で満たすことは、設計条件などを鑑み、当業者が適宜成し得る程度の設計的事項に過ぎないものである。
したがって、引用文献1記載の発明1において、上記相違点3に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

よって、本願補正発明1は、引用文献1記載の発明1および上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものと認められ、しかも、本願補正発明は、全体構成でみても、引用文献1記載の発明1および上記周知の技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

以上から、本願補正発明1は、引用文献1記載の発明1、上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由2]
1.補正後の本願発明7
平成16年3月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、本願の明細書における特許請求の範囲の請求項7は、
「【請求項7】 直流モータとポンプ構体とを内蔵して燃料流を吸引・吐出する一体化構造ユニットを構成している内燃機関用燃料ポンプにおいて、燃料入口及び燃料出口と少なくとも1つの液圧制御入力用入口(13)とを有するポンプハウジングを備え、該ポンプハウジングの内部に、前記ポンプ構体(16)、直流モータ(17)、燃料流の圧力情報を検出する圧力検知手段、及び圧力検知手段から与えられる圧力情報に基づいて燃料ポンプの作動を内燃機関による実際の燃料消費量にリアルタイムで適合するように前記直流モータを制御する電子制御装置が組み込まれ、該液体制御入力用入口が前記圧力検知手段の受圧部に通じていることを特徴とする内燃機関用燃料ポンプ。」と補正された。
これは、補正前(平成15年9月11日付けの手続補正)の、請求項7に記載した発明を特定する事項である圧力検知手段と電子制御装置を、「燃料流の圧力情報を検出する圧力検知手段、及び圧力検知手段から与えられる圧力情報に基づいて燃料ポンプの作動を内燃機関による実際の燃料消費量にリアルタイムで適合するように前記直流モータを制御する電子制御装置が組み込まれ」と限定するものである。
よって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項7に記載された発明(以下「本願補正発明7」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.対比
そこで、本願補正発明7と引用文献1記載の発明2を対比するに、[理由1]3.と同様に、引用文献1記載の発明2における「直流モーター」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「直流モータ」に相当し、「ポンプ」は「ポンプ構体」に相当し、以下同様に、「電動式燃料ポンプ12」は「燃料ポンプ」に、「応答する」は「検出する」に、「駆動」は「作動」に、「エンジン22」は「内燃機関」に、それぞれ相当する。そして、引用文献1記載の発明2における「有して」は、「備えて」限りにおいて、本願補正発明7における「内蔵して」に、相当する。また、引用文献1記載の発明2における「有する」は、「備える」限りにおいて、本願補正発明7における「組み込まれ」に、相当する。さらに、引用文献1記載の発明2における「エンジン22による燃料要求に相応して」は、「内燃機関で必要な燃料に適合するように」の限りにおいて、本願補正発明7における「内燃機関による実際の燃料消費量にリアルタイムで適合するように」に、相当する。

本願補正発明7と引用文献1記載の発明2とは、
「直流モータとポンプ構体とを備えて燃料流を吸引・吐出する内燃機関用燃料ポンプにおいて、燃料入口及び燃料出口とを備え、燃料流の圧力情報を検出する圧力検知手段、及び圧力検知手段から与えられる圧力情報に基づいて燃料ポンプの作動を内燃機関で必要な燃料に適合するように直流モータを制御する電子制御装置を備える、内燃機関用燃料ポンプ。」
である点で一致し、次の相違点で相違している。

〔相違点〕
本願補正発明7は、直流モータとポンプ構体とを内蔵して燃料流を吸引・吐出する一体化構造ユニットを構成している内燃機関用燃料ポンプにおいて、燃料入口及び燃料出口と少なくとも1つの液圧制御入力用入口(13)とを有するポンプハウジングを備え、該ポンプハウジングの内部に、前記ポンプ構体(16)、直流モータ(17)、燃料流の圧力情報を検出する圧力検知手段、及び圧力検知手段から与えられる圧力情報に基づいて燃料ポンプの作動を内燃機関による実際の燃料消費量にリアルタイムで適合するように前記直流モータを制御する電子制御装置が組み込まれ、該液体制御入力用入口が前記圧力検知手段の受圧部に通じているのに対し、引用文献1記載の発明2では、直流モーターとポンプ構体とを有して燃料流を吸引・吐出する内燃機関用燃料ポンプにおいて、燃料入口及び燃料出口とを備え、燃料流の圧力情報を検出する燃料還流管路の圧力検知手段、及び圧力検知手段から送られる圧力情報に基づいて、燃料ポンプの作動を、内燃機関による燃料要求に相応して、直流モータを制御する電子制御装置を有する点。

3.判断
上記相違点について検討する。
燃料入口及び燃料出口と液圧入力用入口とを有する燃料ポンプを備え、該燃料ポンプの内部に、ポンプ、直流モータ、燃料圧力検知手段、電子制御装置が組み込まれ、燃料供給側で燃料圧力を検知した点は、本願出願前、周知の技術である。(例えば、特開平4-287886号公報(【0006】、【0008】ないし【0010】、図1、図2等参照。)、特開平3-242457号公報(5頁左下欄14行ないし6頁右上欄14行、第2図、第3図等参照。)等参照。)
そして、燃料ポンプの作動を制御する際に、リアルタイムで制御を行うことは、当業者が容易になし得たものである。
上記引用文献1記載の発明2に、上記周知の技術を適用し、上記相違点に係る本願補正発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

よって、本願補正発明7は、引用文献1記載の発明2、上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものと認められ、しかも、本願補正発明は、全体構成でみても、引用文献1記載の発明2、上記周知の技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

以上から、本願補正発明7は、引用文献1記載の発明2、上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.以上のとおり、平成16年3月25日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1,7に係る発明は、平成15年9月11日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1,7に記載された事項により特定される、次のとおりである。

「【請求項1】 燃料タンクに通じたサージポット内で該サージポットからエンジンに至る燃料供給管路に燃料を圧送する電動燃料ポンプと、エンジンからの還流燃料をサージポットへ送る燃料還流管路とを有する内燃機関用燃料供給装置において、前記電動燃料ポンプ(5)が該電動燃料ポンプのための電子制御装置(18)及び該電子制御装置に燃料供給管路及び/又は燃料還流管路内の圧力情報を制御入力として与える圧力検知手段と共に1つの構造ユニットを構成し、該ユニットには少なくとも1つの液圧制御入力用の入口が設けられ、該液体制御入力用入口が前記圧力検知手段の受圧部に通じていると共に燃料供給管路及び/又は燃料還流管路に接続されていることを特徴とする燃料供給装置。」
(以下、「本願発明1」という。)

「【請求項7】 直流モータとポンプ構体とを内蔵して燃料流を吸引・吐出する一体化構造ユニットを構成している内燃機関用燃料ポンプにおいて、燃料入口及び燃料出口と少なくとも1つの液圧制御入力用入口(13)とを有するポンプハウジングを備え、該ポンプハウジングの内部に、前記ポンプ構体(16)、直流モータ(17)、該直流モータのための電子制御装置、及び該電子制御装置に燃料流の圧力情報を制御入力として与える圧力検知手段が組み込まれ、該液体制御入力用入口が前記圧力検知手段の受圧部に通じていることを特徴とする内燃機関用燃料ポンプ。」
(以下、「本願発明7」という。)

2.引用文献記載の発明
引用文献1には、上記第2.[理由1]2.のとおりのものが記載されている。

3.対比、判断
本願補正発明1は、本願発明1をさらに限定するものであり、本願補正発明7は、本願発明7をさらに限定するものであることから、本願補正発明1,7が、上記のとおり、引用文献1記載の発明1,2、上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明1,7も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-20 
結審通知日 2007-02-21 
審決日 2007-03-06 
出願番号 特願2000-307652(P2000-307652)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
P 1 8・ 575- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 嶋田 研司岩瀬 昌治  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 長馬 望
岩瀬 昌治
発明の名称 燃料供給装置及び燃料ポンプ  
代理人 花村 太  
代理人 佐藤 年哉  
代理人 佐藤 正年  

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