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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 D06F
管理番号 1161330
審判番号 不服2004-19846  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-24 
確定日 2007-07-19 
事件の表示 平成 7年特許願第273891号「除湿装置付き衣類乾燥機」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月28日出願公開、特開平 9-108496〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件の出願(以下、「本願」という。)は、平成7年10月23日の出願であって、平成15年10月10日付け拒絶理由(発送日:同月21日)に対して同年12月15日付けで手続補正がなされたが、平成16年8月17日付け(発送日:同月24日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月24日付けで審判請求がなされるとともに、同年10月21日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年10月21日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年10月21日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)本願補正発明
平成16年10月21日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項2は、次のとおりに補正された。

「室内の空気を吸い込む室内空気吸い込み口および乾燥用空気の吹き出し口を設けた本体と、室温では空気中の湿気を吸着し高温では吸着した湿気を脱湿する吸着剤と、前記吸着剤の再生側を加熱する加熱手段と、前記室内空気吸い込み口から室内の空気を吸い込む第1送風ファンと、前記加熱手段によって暖められた空気を吸着剤に通過させて脱湿し、多湿となった空気を前記第1送風ファンにより吸い込まれた室内空気で冷却する熱交換器と、前記加熱手段によって暖められた空気が前記吸着剤および熱交換器を通過するように前記本体内に循環経路として形成した第1風洞と、前記加熱手段によって暖められた空気を前記第1風洞内で循環させる第2送風ファンと、前記第1送風ファンにより吸い込まれた空気を前記熱交換器通過後に、前記吸着剤の吸着側を通過させて前記乾燥用空気の吹き出し口から室内へ放出するように前記本体内に形成した第2風洞と、前記吸着剤の吸着側と再生側を入れ替える駆動手段とを備えた除湿装置付き衣類乾燥機。」

本件補正は、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「本体内に形成した第1風洞」について、「循環経路として」との限定を付加し、「本体内に循環経路として形成した第1風洞」としたものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した実願平4-54244号(実開平6-10782号)のCD-ROM(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。

ア.「吸湿剤を担持させたハニカム構造ローターにより除湿を行い、除湿と並行して加熱空気による吸湿剤の再生を行うようにした乾式除湿機を、被乾燥物を収容する乾燥室の中または外に設置し、除湿機の湿り空気吸入口および低湿度空気の排出口を室内に開口させ、除湿機の再生用空気取り入れ口および高湿度再生排気の排出口を室外に開口させたことを特徴とする衣類等の乾燥装置。」(請求項1)

イ.「本考案による衣類等の乾燥装置は、シリカゲル、モレキュラーシーブ等の吸湿剤を担持させたハニカム構造ローターにより除湿を行い、除湿と並行して加熱空気による吸湿剤の再生を行うようにした乾式除湿機(以下、乾式除湿機という)により、洗濯物、濡れた衣類、靴その他のレジャー用品等の被乾燥物を適当な通気間隙を設けて収容した乾燥室内の湿った空気の除湿を行い、乾式除湿機により除湿された低湿度空気を乾燥室に戻す。これにより乾燥室内空気の絶対湿度を低下させ、濡れた被乾燥物の乾燥を行う。」(第0006段落)

ウ.「ハニカム構造のローター1は、セラミック繊維を主原料とし吸湿剤を担持させたシートの波形に型付け加工したもの(2)と未加工のもの(3)とを重ねて巻き上げたものであって、巻き上げの中心を回転の軸にして矢印方向に回転するようになっている。ローター1の長手方向には、型付けされたシート2により形成された通気間隙3が伸びているので、ここに湿った空気Q1を送り込むと、空気中の水分がローター1上の吸湿剤に吸着されて除湿が行われ、反対側から低湿度空気Q2が排出される。ローター1における通気間隙4の開口面の一部を仕切り板5で扇形に仕切り、その領域だけは湿った空気Q1が流れないようにし、加熱器6で加熱された再生用空気Q3を流すと、この領域(再生ゾーンR)では再生用空気Q3で加熱されたローター1上の吸湿剤から水分が放出され、放出された水分を含む再生排気Q4が反対側から排出される。上述のようにして、乾式除湿機では除湿ゾーンDにおける水分吸着と再生ゾーンRにおける吸湿剤再生が同時に並行して行われ、常時、安定した除湿能力が発揮される。」(第0008段落)

エ.「また、回転するローター1は、再生ゾーンRにおいて高温の再生用空気Q3で加熱されているため、再生ゾーンRから除湿ゾーンDへ入った直後はかなりの熱量を保有している。この熱量は、ローター1が除湿ゾーンDに入ったあと送り込まれる常温の湿った空気Q1に伝達され、空気Q1の温度を上昇させる。そこで、再生ゾーンRから除湿ゾーンDに入ったばかりのローター1aと接触して出てきた高温の低湿度空気は別の仕切り板7を付加して空気Q1の出口側で鎖線8のように分流させ、これを再生用空気Q3として利用する方式(パージ方式)を採用すると、加熱器6で再生用空気Q3を加熱するのに使われた熱量の大部分を回収し、消費電力の少ない除湿を行うことができる。」(第0009段落)

オ.「乾式除湿機の本体部分は、乾燥室が浴室など機械設置に適さないもの場合は乾燥室の外に設置するのが適当であるが、特に不都合がない場合は乾燥室の中に設置してもよい。
高湿度の再生排気は屋外に排出することが望ましいが、屋内に排出しても特に不都合がない場合は、屋内に排出されるようにしても差し支えない。パージ方式によらない乾式除湿機を用いる場合、再生用空気の取り入れは屋内、屋外、いずれからでもよく、季節によって切り替えるようにしてもよい。たとえば、外気温度が高い夏季は屋外から再生用空気を取り入れ、反対に屋内のほうが暖かい冬季は屋内で再生用空気を取り入れると、再生用空気加熱のためのヒーター容量を小さくすることができる。」(第0011段落)

カ.「図2は、ユニットバス(内部空間5.376m3)を乾燥室10として利用する実施例を示す。乾式除湿機11は、ユニットバスの壁12の外側に取り付けられていて、その湿り空気Q1の吸入口13と低湿度空気Q2の排出口14が、壁12を貫通させたパイプにより乾燥室1内に通じており、一方、再生用空気Q3の取り入れ口15と高湿度再生排気Q4の排出口16が、図示してないダクトにより屋外に通じている。」(第0012段落)

また、図1及び図2、そして上記「カ.」の記載から、引用例1の乾式除湿機には、湿り空気吸入口13と低湿度空気排出口14を結ぶ経路、及び、再生用空気取り入れ口15と高湿度再生排気の排出口16を結ぶ経路が本体内に備えられていることは明らかである。
さらに、引用例1の乾式除湿機には、湿り空気吸入口13から空気を吸い込み低湿度空気排出口14から吐出するための送風手段が備えられていることは、技術常識からして明らかである。
加えて、引用例1の乾式除湿機には、回転させて使用するハニカム構造ローター1を回転駆動させる駆動手段が備えられていることも、技術常識から明らかである。

したがって、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。

「乾燥室(10)内の空気を吸い込む湿り空気吸入口(13)および低湿度空気排出口(14)を設けた本体と、乾燥室(10)内の湿った空気(Q1)から湿気を吸着し高温では吸着した湿気を脱湿するハニカム構造ローター(1)と、前記ハニカム構造ローター(1)の再生ゾーン(R)を加熱する加熱器(6)と、湿り空気吸入口(13)から乾燥室(10)内の空気を吸い込む送風手段と、加熱器(6)によって加熱された空気が前記ハニカム構造ローター(1)を通過するように本体内に形成した経路と、送風手段により乾燥室(10)内から吸い込まれた空気を、前記ハニカム構造ローター(1)の除湿ゾーン(D)を通過させて低湿度空気排出口(14)から乾燥室(10)内へ放出させるように本体内に形成した経路と、前記ハニカム構造ローター(1)の除湿ゾーン(D)と再生ゾーン(R)を入れ替えるように前記ハニカム構造ローター(1)を回転させる駆動手段とを備えた乾式除湿機。」

また、原査定の拒絶の理由に引用した特開昭58-118799号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

キ.「本発明は、除湿型熱風乾燥方法とその装置に関するもので、特に、衣類等の被乾燥物を乾燥する際の乾燥時間の短縮と乾燥効率の向上とを図ったものである。」(第1頁右下欄第1-4行)
ク.「本発明の目的は、供給空気を吸湿剤等で除湿して乾燥速度を上げると同時に、その吸湿剤の再生に用いた熱も有効に回収させることにより、乾燥速度が速くてしかも省エネルギー型とすることのできる除湿型熱風乾燥方法とその装置を提供することにある。」(第2頁右上欄第9-14行)

ケ.「被乾燥物に供給する空気を除湿剤により除湿する除湿器と、上記除湿剤の再生を高温高湿ガスにより行なう再生器と、再生に使用した後のガスより熱回収すると共にガス中の水分を凝縮させて除去するコンデンサと、上記再生用のガスの加熱を行なう再生用ヒータと、再生用ガスを上記再生器、コンデンサ及び再生用ヒータの間で閉リープ状に循環させるファンとを備え、供給空気を上記再生器及びコンデンサを介して被乾燥物側に供給する構成とする」(第2頁左下欄第1-10行)

コ.「本発明は、再生に用いた熱を回収するには、再生操作を閉ループにして、その湿度をさらに高くすると同時に温度を高くして、いわゆる質の良い熱エネルギーにしておくことにより、それからの熱回収を可能にしたものである。」(第2頁右下欄第4-8行)

サ.「第3図において、第1図に示した前処理器130として、供給空気10を除湿する除湿器200と、除湿に用いた除湿剤を高温高湿ガスで再生する再生器210と、再生用熱風20を発生する再生用ヒータ230と、再生用熱風を閉ループ状に循環させるフアン240と、再生に用いた熱を供給空気側へ回収するコンデンサ220とが設置される。」(第2頁右下欄第12-19行)

シ.「供給空気10が除湿器200で除湿され、・・・、乾温風13となる。この乾温風13がコンデンサ220で、再生用湿熱風21により、熱を回収し、・・・乾温風14となり、この乾温風14がヒータ100で加熱されて・・・乾熱風11’となり、乾燥室110内の被乾燥物を乾燥した後、・・・湿風12となつて、フアン120により排出される」(第3頁左上欄第9-19行)

ス.「除湿器200の除湿剤は、再生用ヒータ230で湿度が高い状態で加熱された、・・・再生熱風20により、再生器210で加熱再生され、再び除湿器200に戻る。再生熱風20は、その時、除湿剤に熱を与えると同時に水分をとり、・・・、湿熱風21となる。この湿熱風21は再生用のフアン240によりコンデンサ220へ導びかれ、ここで除湿器200を通過してきた乾温風13により冷却され、温度低下と共に水分23も(凝縮)除去され、・・・、この顕熱(温度低下分の熱量)と潜熱(水分除去分の熱量)が、乾温風13へ完全に回収される・・・。コンデンサ220を出た再生温風22は、再生用ヒータ230により、コンデンサ220で失つた熱量分・・・だけ加熱され、再び再生熱風20となつて再生器210へ送り込まれて循環回路を形成す」(第3頁右上欄第1-20行)

セ.「このように、除湿剤の再生に用いる熱量は、再生器210の出口の湿熱風21の状態が高湿高温状態・・・であるため、コンデンサ220で供給空気側の乾温風13に完全に回収できると同時に、再生用の湿熱風21から水分も除去できることになり、再び再生用空気として利用でき、再生ループでの熱のロスは全くないことになる。」(第3頁左下欄第1-7行)

ソ.「除湿量を増すことにより、さらに乾燥速度Vを向上させることができ、場合によつては供給空気側のヒータ100を省略することが可能となる。」(第3頁右下欄第4-7行)

タ.「第5図は本発明の他の実施例を示すブロツク構成図で、除湿器200とコンデンサ220の設置場所を、第3図実施例の場合と逆にしたものであり、第5図実施例によつても同じ効果を生じ、除湿剤性能の向上により、コンデンサ性能向上及び小形化に有利な構成である。」(第3頁右下欄第8-13行)

これらの記載及び図面を参照すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されている。

「再生用ヒータ(230)によって加熱された再生熱風(20)を除湿剤に通過させて脱湿し、多湿となった湿熱風(21)を供給空気(10)で冷却するコンデンサ(220)と、再生用ヒータ(230)によって加熱された再生熱風(20)が除湿剤およびコンデンサ(220)を通過するように循環経路として形成した再生ループと、再生用ヒータ(230)によって加熱された再生熱風(20)を再生ループ内で循環させるフアン(240)とを備え、供給空気(10)をコンデンサ(220)に通過させた後に、除湿器(200)の除湿剤に通過させて、乾燥室へ放出させるように形成した除湿型熱風乾燥装置。」

(3)対比
本願補正発明と上記引用例1発明とを対比する。

引用例1発明の「乾燥室」は、本願補正発明の「室」に相当し、以下同様に、「湿り空気吸入口」は「室内空気吸い込み口」に、「低湿度空気排出口」は「乾燥用空気の吹き出し口」に、「ハニカム構造ローター」は「吸着剤」に、「再生ゾーン」は「再生側」に、「加熱器」は「加熱手段」に、「除湿ゾーン」は「吸着側」に、「乾式除湿機」は「除湿装置付き衣類乾燥機」に相当する。
また、乾燥室内の湿った空気の温度は、通常、乾燥室内の室温と等しい温度である。

したがって、両者は、

「室内の空気を吸い込む室内空気吸い込み口および乾燥用空気の吹き出し口を設けた本体と、室温では空気中から湿気を吸着し高温では吸着した湿気を脱湿する吸着剤と、吸着剤の再生側を加熱する加熱手段と、室内空気吸い込み口から室内の空気を吸い込む送風手段と、加熱手段によって暖められた空気が吸着剤を通過するように本体内に形成した経路と、送風手段により吸い込まれた空気を、吸着剤の吸着側を通過させて乾燥用空気の吹き出し口から室内へ放出させるように本体内に形成した経路と、吸着剤の吸着側と再生側を入れ替える駆動手段とを備えた除湿装置付き衣類乾燥機。」

の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明では、室内空気吸い込み口から室内の空気を吸い込む「第1送風ファン」を備えているのに対し、引用例1発明では、送風手段を備えてはいるが、送風ファンであるか否か不明な点。

[相違点2]
本願補正発明では、加熱手段によって暖められた空気を吸着剤に通過させて脱湿し、多湿となった空気を送風手段により吸い込まれた室内空気で冷却する熱交換器と、加熱手段によって暖められた空気が前記吸着剤および熱交換器を通過するように本体内に循環経路として形成した第1風洞と、加熱手段によって暖められた空気を第1風洞内で循環させる第2送風ファンと、送風手段により吸い込まれた室内空気を熱交換器通過後に、吸着剤の吸着側を通過させて前記乾燥用空気の吹き出し口から室内へ放出するように形成した第2風洞、とを有しているのに対し、
引用例1発明では、加熱手段によって暖められた空気を吸着剤に通過させて脱湿し、多湿となった空気を送風手段により吸い込まれた室内空気で冷却する熱交換器と、加熱手段によって暖められた空気を第1風洞内で循環させる第2送風ファンとを有しておらず、
また、加熱手段によって暖められた空気が吸着剤を通過するように形成した経路を有してはいるものの、その経路は、加熱手段によって暖められた空気が熱交換器をも通過するように循環経路として形成した第1風洞でなく、
さらに、送風手段により吸い込まれた室内空気を吸着剤の吸着側を通過させて乾燥用空気の吹き出し口から室内へ放出するように形成した経路を有してはいるものの、その経路は、送風手段により吸い込まれた室内空気を熱交換器通過後に、吸着剤の吸着側を通過させたものでなく、また、風洞であるか否か不明な点。

(4)判断
相違点1について
送風手段として送風ファンを用いることは常套手段である。
したがって、引用例1発明において、送風手段として送風ファンを用い、上記相違点1に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。

相違点2について
引用例2発明の「再生用ヒータ」は、本願補正発明の「加熱手段」に相当し、以下同様に、「除湿剤」は「吸着剤」に、「コンデンサ」は「熱交換器」に、「再生ループ」は「第1風洞」に、「フアン(240)」は「第2送風ファン」に、「除湿器」は「吸着側」に、「除湿型熱風乾燥装置」は「除湿装置付き衣類乾燥機」に相当する。
また、引用例2発明の「供給空気」は、引用例1発明の「送風手段により吸い込まれた室内空気」と同様に、乾燥室に供給する衣類乾燥用空気といえるものである。

したがって、引用例2には、

「加熱手段によって暖められた空気を吸着剤に通過させて脱湿し、多湿となった空気を衣類乾燥用空気で冷却する熱交換器と、加熱手段によって暖められた空気が吸着剤および熱交換器を通過するように循環経路として形成した第1風洞と、加熱手段によって暖められた空気を第1風洞内で循環させる第2送風ファンとを備え、衣類乾燥用空気を熱交換器通過後に、吸着剤の吸着側を通過させて、乾燥室へ放出するように形成した除湿装置付き衣類乾燥装置。」

が記載されている。

また、本願発明において、「風洞」とは、「空気を通過させる経路」と相違するものではなく、表現上の差異があるのみで、実質的に差異はない。

そして、引用例2発明の課題は、上記「2.ク」に記載されるように、熱を有効に回収し、省エネルギー型とすることであり、除湿装置付き衣類乾燥装置において当然考慮されるべきものであって、引用例1に記載された除湿装置付き衣類乾燥装置もこのような課題を有することは当業者にとって明らかなことである。

したがって、引用例1発明において、加熱手段によって暖められた空気を吸着剤に通過させて脱湿し、多湿となった空気を送風手段により吸い込まれた室内空気で冷却する熱交換器と、加熱手段によって暖められた空気を第1風洞内で循環させる第2送風ファンとを付加し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。

しかも、本願補正発明の作用効果は、引用例1及び引用例2に記載された事項から当業者が予測できた範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1発明及び引用例2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年10月21日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年12月15日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「室内の空気を吸い込む室内空気吸い込み口および乾燥用空気の吹き出し口を設けた本体と、室温では空気中の湿気を吸着し高温では吸着した湿気を脱湿する吸着剤と、前記吸着剤の再生側を加熱する加熱手段と、前記室内空気吸い込み口から室内の空気を吸い込む第1送風ファンと、前記加熱手段によって暖められた空気を吸着剤に通過させて脱湿し、多湿となった空気を前記第1送風ファンにより吸い込まれた室内空気で冷却する熱交換器と、前記加熱手段によって暖められた空気が前記吸着剤および熱交換器を通過するように前記本体内に形成した第1風洞と、前記加熱手段によって暖められた空気を前記第1風洞内で循環させる第2送風ファンと、前記第1送風ファンにより吸い込まれた空気を前記熱交換器通過後に、前記吸着剤の吸着側を通過させて前記乾燥用空気の吹き出し口から室内へ放出するように前記本体内に形成した第2風洞と、前記吸着剤の吸着側と再生側を入れ替える駆動手段とを備えた除湿装置付き衣類乾燥機。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用例、及びその記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明から「本体内に形成した第1風洞」の限定事項である「循環経路として」という構成を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに「循環経路として」という構成を付加した本願補正発明が、上記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明及び引用例2発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明及び引用例2発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び引用例2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-17 
結審通知日 2007-05-22 
審決日 2007-06-04 
出願番号 特願平7-273891
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D06F)
P 1 8・ 575- Z (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 由希子金丸 治之  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
関口 哲生
発明の名称 除湿装置付き衣類乾燥機  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  

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